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第2話
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3章 依頼
満足そうな表情を浮かべながら彼はこう続けた、
「俺は4組の綾瀬だ。あんたは他人に興味が無いようだから俺のことなんて知らないだろうけどさ。」
確かに私は彼のことをまったく知らないが、私のことを知ったような言い方が非常に不愉快でならなかった。そのせいか、彼を見る目が自然ときついものになっていたのだろう。それを彼は察したようだった。
「なんだかいきなり嫌われちゃったみたいだな。別に警戒しないでくれ。あんたのことを少しだけ観察させてもらったのさ。」
さらっと気持ち悪いことを言ってのけたこの男。見た目は確かにさわやかで、それなりにモテそうではある印象だ。しかし、このたった数回の会話(一方的)で減点に減点が重なり私の中での評価は既に赤点ギリギリとなっている。とりあえず早く視界から消えてくれないかしら。
「あんたが妙に人と関わらないようにしてるからもしかしてと思ってさ。俺には人と触れ合うことに怯えているようにすら見えたぞ。なんでお前この力を使わないようにしてるんだ。」
【上から目線】【お前呼ばわり】。更なる減点により赤点が確定し私は彼と関わらないことを決めた。
「さようなら」
私は落第者となった彼に餞別として100点満点の笑顔で別れを告げ、探索を再開した。
「ちょっと待ってよ。謝るから。ちょっと俺の話を聞いてくれよ。」
謝るというのならちゃんと謝罪の言葉を加えてから頼みごとをしろと思ったが、他人の夢の中で対象とは別の人間と会話が生じることは始めてだったこともあり、私は彼の話を聞いてみることにした。
「あんたが夢に入り込めるんじゃないかと疑ってからあんたが誰かに触れてしまう瞬間を待っていたんだ。そいつに俺も接触し、その夢であんたがいれば俺の勝ちって寸法だ」
この綾瀬と言う男。私にとってなんの益ももたらさないどころか会話のたびにストレスを蓄積させる。勝ちってなんだ。お前が誰かに勝とうが負けようが知ったこっちゃないがなぜ私が負けたことになっているのか。絶対に許すまじ。百害あって一利なしと揶揄されるタバコだが父曰く、「一利ある だってストレス 消えるもの」 だそうで、そう考えると私にとって彼はタバコ以下となる。470円だとしても私は彼を買うことは無いだろう。
「で、夢で私に会ってあんた何がしたいわけ。」
「あんたじゃない。俺には綾瀬正義という名前があるんだ。」
どの口が言う。
一発引っ叩いてやろうかと思ったが夢の中では痛みを伴わないのでやめた。学校でコイツと顔を合わせたとき私は自分を抑える自信が無い。そもそもタダヨシなんて名前今始めて聞いたんだけど。なんでこんなドヤ顔なのコイツ。
「で、綾瀬君は私、一之瀬望になにかお願いでもあるのかしら。」
私って案外大人なのかもしれない。
「自己紹介は必要ないぞ、あんたのことは多少調べたから名前くらいは知って。ってなにしてんの。」
私は懇親のローキックを彼に放ってた。
「なんでもないわ。続けて。それから私のことは一之瀬と呼んでもらえるかしら。」
「なんだ、お前も名前で呼んで欲しかったのかよ。」
コイツ・・・。
「それでだ。俺は一之瀬にお願いがあっ。」
「お断りします。」
「なんで!?」
わかんねーのかよッ。と心の中でツッコミを入れて私はそれっぽい理由を並べてあげた。
「そもそも今日はじめて会ったあなたの頼みを聞く道理が無いわ。私には私の時間
の使い方がある。他人のために裂く時間なんて1秒も無いのよ。それに関して他人にとやかく言われる
ことが私は許せないの。分かったらもうついて来ないでね。」
「そうか。じゃあまたな」
不穏な言葉を残し彼は去っていった。「またな」って言った?明日学校休もうかしら。
久しぶりの夢から覚め、意識が覚醒へと向かっていく。
こんな不快な朝は初めてだ。
私はベッドから起き、軽く柔軟をし、奴を思い浮かべ、ローキックの練習がてら右足を振りぬいた。思いの丈が強すぎたのか勢いあまり私のつま先は学習机の側面へと吸い込まれ、拉げた。ちょっぴり涙が出た。
翌日。
特に何事も無く放課後を迎え、すばやく教室を出て下駄箱へと向かう。
【やせいのあやせがとびだしてきた】
私の中にポ○モンのようなゲーム画面が浮かんでいた。
「・たたかう ・どうぐ
・なかま ・にげる 」
すぐに「なかま」と「にげる」という選択肢は消えた。なぜなら私は友と呼べる人間も目の前のクソ野郎から逃げる理由も持ち合わせていない。また近くに鈍器のようなものはなく、「どうぐ」という選択肢が消えた。すぐに「たたかう」を選択し、ローキックを放った。まだ彼は一言も発していなかった。
渾身の一撃が直撃したにも関わらず彼は涼しい顔をしていた。アレ?まだ夢の中だったりします?
「いいキックだな、一之瀬。お前もボクシングでもやってんのか?」
コイツ・・・。
一見綾瀬という男は細く見えるが蹴った感触からしてもかなり体を鍛えているようで、口ぶりからしてボクシングをやっているのだろう。蹴った方が痛いとか・・・ふざけんな。
学校では目立つので、近くの公園に場所を変えた。ちなみに私がローキックを放った昇降口には教師はいなかったが、数人の生徒がいたため目撃されてしまった。一生の不覚である。最近不覚を取りすぎじゃないか。
「で、話って何。頼みなら聞かないわよ。」
「まあ話だけでも聞いてくれよ。聞くだけでいいからさ。」
と言うなり許可もしてないのにベラベラと勝手に話し始めてしまった。
話はこうだ。
友達の成田和也という人間は好きな人がいるらしく、近々告白を考えているらしい。ところが、夢の中で何度告白してもフラれるそうで、日に日に弱気になってしまっているそうだ。「夢でも成功しないんじゃな」と今では告白自体を諦めかけている始末らしい。なんて女々しいのだろうか。好きなら好きとさっさと伝えればいいのに。
「で、私に夢の中でその恋人候補を演じろと言うの。」
「そうだ。」
「無理ね。」
この男の頭の中がどうなっているのか調べてみたくなった。
「綾瀬くん。あなた多少私のことを調べたなら私がどんな人間なのか知ってるでしょ。」
「でも、夢だし別に普段の一之瀬とは別の人格だったとしてもおかしくないだろ。夢の中ではやさしくて
気配りができる明るい一之瀬がいるかも知れないじゃん。」
コイツ・・・。
「じゃあ、そんな私が登場するのを待つしかないわね。ご愁傷様。」
「それが現れないから困ってんじゃんかよ。俺らは夢には入れても操作はできない。但し対象の意思と関
係なく自由に動くことはできる。つまり、一之瀬が和也の理想の恋人を演じてくれればいいんだよ。」
「無理ね。」
「ひとまず今日そいつの夢に入るから付き合ってくれ。現状を確認しときたい。」
「嫌よ。何で私がそんなことに・・・ちょっと綾瀬君何勝手に私に触れてるのよ。」
「いやさぁ。俺も最初になんでこんな簡単なことに気づかなかったんだろうと思ってさ。
俺が和也に触れば俺の夢は和也と繋がるわけでその状態で一之瀬に触れちゃえばおそらく同じ和也の夢
に繋がるんじゃないかな。」
確かにその可能性は高い。夢を見ない私に触れた場合、彼が繋がる夢はおそらく一つ前に触れた人間のまま、もしくはリセットされ夢を見ないといったケースが予想される。他にも可能性は多数あるが、全てが憶測に過ぎない。これは一度確認しておくべき事象であることは間違いないだろう。しかし二日も連続でこの綾瀬と夢を共有することを想像し私はぞっとしていた。
満足そうな表情を浮かべながら彼はこう続けた、
「俺は4組の綾瀬だ。あんたは他人に興味が無いようだから俺のことなんて知らないだろうけどさ。」
確かに私は彼のことをまったく知らないが、私のことを知ったような言い方が非常に不愉快でならなかった。そのせいか、彼を見る目が自然ときついものになっていたのだろう。それを彼は察したようだった。
「なんだかいきなり嫌われちゃったみたいだな。別に警戒しないでくれ。あんたのことを少しだけ観察させてもらったのさ。」
さらっと気持ち悪いことを言ってのけたこの男。見た目は確かにさわやかで、それなりにモテそうではある印象だ。しかし、このたった数回の会話(一方的)で減点に減点が重なり私の中での評価は既に赤点ギリギリとなっている。とりあえず早く視界から消えてくれないかしら。
「あんたが妙に人と関わらないようにしてるからもしかしてと思ってさ。俺には人と触れ合うことに怯えているようにすら見えたぞ。なんでお前この力を使わないようにしてるんだ。」
【上から目線】【お前呼ばわり】。更なる減点により赤点が確定し私は彼と関わらないことを決めた。
「さようなら」
私は落第者となった彼に餞別として100点満点の笑顔で別れを告げ、探索を再開した。
「ちょっと待ってよ。謝るから。ちょっと俺の話を聞いてくれよ。」
謝るというのならちゃんと謝罪の言葉を加えてから頼みごとをしろと思ったが、他人の夢の中で対象とは別の人間と会話が生じることは始めてだったこともあり、私は彼の話を聞いてみることにした。
「あんたが夢に入り込めるんじゃないかと疑ってからあんたが誰かに触れてしまう瞬間を待っていたんだ。そいつに俺も接触し、その夢であんたがいれば俺の勝ちって寸法だ」
この綾瀬と言う男。私にとってなんの益ももたらさないどころか会話のたびにストレスを蓄積させる。勝ちってなんだ。お前が誰かに勝とうが負けようが知ったこっちゃないがなぜ私が負けたことになっているのか。絶対に許すまじ。百害あって一利なしと揶揄されるタバコだが父曰く、「一利ある だってストレス 消えるもの」 だそうで、そう考えると私にとって彼はタバコ以下となる。470円だとしても私は彼を買うことは無いだろう。
「で、夢で私に会ってあんた何がしたいわけ。」
「あんたじゃない。俺には綾瀬正義という名前があるんだ。」
どの口が言う。
一発引っ叩いてやろうかと思ったが夢の中では痛みを伴わないのでやめた。学校でコイツと顔を合わせたとき私は自分を抑える自信が無い。そもそもタダヨシなんて名前今始めて聞いたんだけど。なんでこんなドヤ顔なのコイツ。
「で、綾瀬君は私、一之瀬望になにかお願いでもあるのかしら。」
私って案外大人なのかもしれない。
「自己紹介は必要ないぞ、あんたのことは多少調べたから名前くらいは知って。ってなにしてんの。」
私は懇親のローキックを彼に放ってた。
「なんでもないわ。続けて。それから私のことは一之瀬と呼んでもらえるかしら。」
「なんだ、お前も名前で呼んで欲しかったのかよ。」
コイツ・・・。
「それでだ。俺は一之瀬にお願いがあっ。」
「お断りします。」
「なんで!?」
わかんねーのかよッ。と心の中でツッコミを入れて私はそれっぽい理由を並べてあげた。
「そもそも今日はじめて会ったあなたの頼みを聞く道理が無いわ。私には私の時間
の使い方がある。他人のために裂く時間なんて1秒も無いのよ。それに関して他人にとやかく言われる
ことが私は許せないの。分かったらもうついて来ないでね。」
「そうか。じゃあまたな」
不穏な言葉を残し彼は去っていった。「またな」って言った?明日学校休もうかしら。
久しぶりの夢から覚め、意識が覚醒へと向かっていく。
こんな不快な朝は初めてだ。
私はベッドから起き、軽く柔軟をし、奴を思い浮かべ、ローキックの練習がてら右足を振りぬいた。思いの丈が強すぎたのか勢いあまり私のつま先は学習机の側面へと吸い込まれ、拉げた。ちょっぴり涙が出た。
翌日。
特に何事も無く放課後を迎え、すばやく教室を出て下駄箱へと向かう。
【やせいのあやせがとびだしてきた】
私の中にポ○モンのようなゲーム画面が浮かんでいた。
「・たたかう ・どうぐ
・なかま ・にげる 」
すぐに「なかま」と「にげる」という選択肢は消えた。なぜなら私は友と呼べる人間も目の前のクソ野郎から逃げる理由も持ち合わせていない。また近くに鈍器のようなものはなく、「どうぐ」という選択肢が消えた。すぐに「たたかう」を選択し、ローキックを放った。まだ彼は一言も発していなかった。
渾身の一撃が直撃したにも関わらず彼は涼しい顔をしていた。アレ?まだ夢の中だったりします?
「いいキックだな、一之瀬。お前もボクシングでもやってんのか?」
コイツ・・・。
一見綾瀬という男は細く見えるが蹴った感触からしてもかなり体を鍛えているようで、口ぶりからしてボクシングをやっているのだろう。蹴った方が痛いとか・・・ふざけんな。
学校では目立つので、近くの公園に場所を変えた。ちなみに私がローキックを放った昇降口には教師はいなかったが、数人の生徒がいたため目撃されてしまった。一生の不覚である。最近不覚を取りすぎじゃないか。
「で、話って何。頼みなら聞かないわよ。」
「まあ話だけでも聞いてくれよ。聞くだけでいいからさ。」
と言うなり許可もしてないのにベラベラと勝手に話し始めてしまった。
話はこうだ。
友達の成田和也という人間は好きな人がいるらしく、近々告白を考えているらしい。ところが、夢の中で何度告白してもフラれるそうで、日に日に弱気になってしまっているそうだ。「夢でも成功しないんじゃな」と今では告白自体を諦めかけている始末らしい。なんて女々しいのだろうか。好きなら好きとさっさと伝えればいいのに。
「で、私に夢の中でその恋人候補を演じろと言うの。」
「そうだ。」
「無理ね。」
この男の頭の中がどうなっているのか調べてみたくなった。
「綾瀬くん。あなた多少私のことを調べたなら私がどんな人間なのか知ってるでしょ。」
「でも、夢だし別に普段の一之瀬とは別の人格だったとしてもおかしくないだろ。夢の中ではやさしくて
気配りができる明るい一之瀬がいるかも知れないじゃん。」
コイツ・・・。
「じゃあ、そんな私が登場するのを待つしかないわね。ご愁傷様。」
「それが現れないから困ってんじゃんかよ。俺らは夢には入れても操作はできない。但し対象の意思と関
係なく自由に動くことはできる。つまり、一之瀬が和也の理想の恋人を演じてくれればいいんだよ。」
「無理ね。」
「ひとまず今日そいつの夢に入るから付き合ってくれ。現状を確認しときたい。」
「嫌よ。何で私がそんなことに・・・ちょっと綾瀬君何勝手に私に触れてるのよ。」
「いやさぁ。俺も最初になんでこんな簡単なことに気づかなかったんだろうと思ってさ。
俺が和也に触れば俺の夢は和也と繋がるわけでその状態で一之瀬に触れちゃえばおそらく同じ和也の夢
に繋がるんじゃないかな。」
確かにその可能性は高い。夢を見ない私に触れた場合、彼が繋がる夢はおそらく一つ前に触れた人間のまま、もしくはリセットされ夢を見ないといったケースが予想される。他にも可能性は多数あるが、全てが憶測に過ぎない。これは一度確認しておくべき事象であることは間違いないだろう。しかし二日も連続でこの綾瀬と夢を共有することを想像し私はぞっとしていた。
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