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2話
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その日、私は近寄ることはないだろうと思っていた場所に足を運んでいた。
友達が行方不明となり2週間が経つ。周りの皆は既に彼女のことを気にも止めていない様子だ。
彼女はいつも教室の隅に1人でいた。別にいじめられていたわけではない。と思う。
と言うのも私は彼女のことをほとんど知らない。仲良くなろうとしていた最中に、彼女は姿を消したのだ。
女である私から見ても彼女はとても魅力的だった。
運動は苦手だったようだが頭は良く仕草や雰囲気にも品があった。
前髪が長くうつ向きがちなためその素顔を知る者は多くないだろうがその実、とてもかわいいのだ。
いつも無表情で笑ったところはあまり見たことはないが、愛想がよければ彼女は高嶺の花となり得ただろう。
そんな彼女が私に初めてお願いをしてきた。
それが最初で最後のお願いになるとは私は思いもしなかった。
「ねぇ、今日『あの家』に行ってみようかと思うんだけど一緒に来ない?」
『あの家』とは例の噂の家のことだろう。
「いや、私怖いの苦手で。それに今日は部活が長くなるから別の日にしない?」
私の所属するバレー部は今週末に試合を控えており、最近は練習が長くなっていた。
「私が消えちゃっても知らないよー」
「だから別の日にしようよ」
消えてもらっては困るのだ。
私はもっと仲良くなりたい。
「ホントに消えたら事件だけどね」
彼女はニヤリと歯を見せて笑った。
こんな楽しそうな彼女は見たことがなかった。
「なんか楽しそうだね」
「そう? 私オカルトとか実は好きなんだよね。だからずっと前からあの家に行ってみたかったんだ」
「そうなんだ。じゃあ来週の日曜日にしようよ」
知らなかった。正直あの家には近づきたくはない。だけど彼女がこんなに楽しそうに行きたいと言うのだ。ついて行かないわけにはいかないだろう。
「んーそうだねー」
気のない返事に私はもっと留意するべきだった。
彼女はこの日、例の噂の家に向かい、そして消えた。
彼女が消えた日から私はあの家の噂を調べ始めた。
一貫性を持たないそれはどこまでを噂と呼んでいいのか判断が難しく、私は調べることをやめた。
そして今日、実際に自分の目で確かめることにしたのだ。
時刻は20時前。
辺りは暗く、ポツリポツリと街灯の明かりが深い闇を薄暗く照らしている。
生ぬるい風が通りすぎ、私の歩みをさらに遅くした。
チカチカと点滅する街灯の下に白いワンピースを着た小さな女の子が俯いて立っているのが見えた。
近づくと、少女は裸足で、首から上のないボロボロの人形のようなものを大事そうに抱えていることが確認できた。
さらに近づくと、少女が何か鼻歌を歌っているのが微かに聞こえた。
その異様さに、私の歩みは完全に止まってしまった。
さらに次の瞬間、鼓膜が破けたかと思うほど頭部に圧力を感じ、私の意識は剥がれ落ちた。
友達が行方不明となり2週間が経つ。周りの皆は既に彼女のことを気にも止めていない様子だ。
彼女はいつも教室の隅に1人でいた。別にいじめられていたわけではない。と思う。
と言うのも私は彼女のことをほとんど知らない。仲良くなろうとしていた最中に、彼女は姿を消したのだ。
女である私から見ても彼女はとても魅力的だった。
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前髪が長くうつ向きがちなためその素顔を知る者は多くないだろうがその実、とてもかわいいのだ。
いつも無表情で笑ったところはあまり見たことはないが、愛想がよければ彼女は高嶺の花となり得ただろう。
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それが最初で最後のお願いになるとは私は思いもしなかった。
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「そう? 私オカルトとか実は好きなんだよね。だからずっと前からあの家に行ってみたかったんだ」
「そうなんだ。じゃあ来週の日曜日にしようよ」
知らなかった。正直あの家には近づきたくはない。だけど彼女がこんなに楽しそうに行きたいと言うのだ。ついて行かないわけにはいかないだろう。
「んーそうだねー」
気のない返事に私はもっと留意するべきだった。
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