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海老原楓(えびはら かえで)はクラスの皆から好かれている数少ない生徒の一人だった。
バレー部に所属しており運動はもちろんのこと勉強もできる学生のお手本のような人間だ。
僕は、そんな彼女のことが好きになった。
基本的に僕のことを気にかけるクラスメイトはいない。気にかけるどころか声をかけてくる人すらほとんどいないのである。
所謂、陰キャラというやつだ。いてもいなくてもクラスになんの影響も与えない存在。いや、マイナスな影響はあるのかもしれない。それが僕という人間だ。
そんな僕に彼女だけは挨拶をしてくれた。挨拶だけでなく普通の会話も交わしてくれる唯一の存在だった。
僕は偶然を装って彼女と学校の外で会う機会をうかがった。
初めて彼女のあとをつけたとき、偶然の遭遇という本来の目的を見失ってしまった。
その行為自体のスリルと興奮から抜け出せなくなってしまったのだ。
そう、僕は彼女のストーカーとなってしまったのである。
その行為は、犯罪であり、罪の対象となる行為のはずが、自分の中で崇高な行為という認識にすり代わり罪悪感は次第に薄れていった。
彼女に対する愛が僕を動かすのだ。
この世界で最も尊く清い、その愛が僕に彼女を守れと訴えかけてくる。
捻れに捻れた愛情が、僕を突き動かしていた。
しかしそれが愛とは呼べぬ薄っぺらい感情であることを僕は思い知ることとなる。
ある日、部活を終えた彼女は自宅とは違う方向へと歩き始めた。
僕はいつものルートから逸れたことに違和感とまた、なにか起こるのではないかというスリルにわずかな興奮を感じていた。
彼女の進む先は次第に闇が深まっていく。街灯の数は減り、生ぬるい風が時折肌をかすめる。
非常に不快で、気味が悪く直ぐにでも逃げ出したかった。
それでも逃げ出さなかったのは彼女への想いの強さだと自分を讃えた。
彼女は急に歩みを止めた。かと思うと暫くすると頭を抱えて倒れてしまった。
なにか、おかしい。こんな状況に出くわしたことがなく頭は混乱し始めた。
彼女を守るため、僕は今日まで彼女をつけてきた。
それなのに、僕は1歩も動くことができなかった。
彼女の傍らにいる白いワンピースの少女が不気味な笑みを浮かべ彼女に近寄る。
「離れろ!」
と叫んだはずなのに、思いは声にはならなかったようで口がパクパクと動いただけにとどまった。
幸か不幸かその少女が僕という存在に気づくことはなかった。
僕は、その一部始終をただ見守ることしかできなかった。
少女は倒れた彼女に近付くと、しゃがみこみ頭をなでた。そして、彼女に向けて掌をかざした。が、なにも起きることはなく、少し強い風が僕のアホ面にぶつかる。
風向きが変わったのか?
そんなことを考えていると少女は彼女を軽々と引きずり闇の中へと楽しそうに駆けて行った。
まるで、彼女が地面から浮いているかのように摩擦を感じさせない滑らかな動きで彼女は引きずられ、連れ去られた。
僕は、未だに動くことができずにいた。
今起きた出来事について何一つ理解できないということだけを、僕の脳が処理した。
バレー部に所属しており運動はもちろんのこと勉強もできる学生のお手本のような人間だ。
僕は、そんな彼女のことが好きになった。
基本的に僕のことを気にかけるクラスメイトはいない。気にかけるどころか声をかけてくる人すらほとんどいないのである。
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そんな僕に彼女だけは挨拶をしてくれた。挨拶だけでなく普通の会話も交わしてくれる唯一の存在だった。
僕は偶然を装って彼女と学校の外で会う機会をうかがった。
初めて彼女のあとをつけたとき、偶然の遭遇という本来の目的を見失ってしまった。
その行為自体のスリルと興奮から抜け出せなくなってしまったのだ。
そう、僕は彼女のストーカーとなってしまったのである。
その行為は、犯罪であり、罪の対象となる行為のはずが、自分の中で崇高な行為という認識にすり代わり罪悪感は次第に薄れていった。
彼女に対する愛が僕を動かすのだ。
この世界で最も尊く清い、その愛が僕に彼女を守れと訴えかけてくる。
捻れに捻れた愛情が、僕を突き動かしていた。
しかしそれが愛とは呼べぬ薄っぺらい感情であることを僕は思い知ることとなる。
ある日、部活を終えた彼女は自宅とは違う方向へと歩き始めた。
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非常に不快で、気味が悪く直ぐにでも逃げ出したかった。
それでも逃げ出さなかったのは彼女への想いの強さだと自分を讃えた。
彼女は急に歩みを止めた。かと思うと暫くすると頭を抱えて倒れてしまった。
なにか、おかしい。こんな状況に出くわしたことがなく頭は混乱し始めた。
彼女を守るため、僕は今日まで彼女をつけてきた。
それなのに、僕は1歩も動くことができなかった。
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「離れろ!」
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