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28話
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僕は、また重要な選択を間違えてしまったのかもしれない。
今日の彼女は最初から様子がおかしかった。それでも、最後に会ったときの後ろめたさから僕は彼女の提案を受け入れた。
提案自体は甘美なものに思えた。しかしそこには思わぬカラクリが存在した。
僕の気持ちが彼女に届くことは、もうない……
今後、僕がいくら好きと言ったところで、それは契約の延長であり、彼女からしてみれば、僕が恋人の役を演じているに過ぎない。
どれだけ真剣に言葉を紡いでも僕の言葉は意味を持たない。いや、意味は持っている。しかしそれは真意ではなく、せいぜい彼女にとっての安定剤程度のものだろう。
想像もしない形で僕らは結ばれた。
この契約から察するに、僕らは両想いだったのだろう。しかしそれは数分前までのこと。
僕らみたいなのはなんと言うんだろうか……
なんだか考える気力もなくなってきた。
「ねえ! ねえってば!」
顔を上げると目の前に彼女の顔があり僕は退けぞった。
「うわぁ! ごめん。なんだっけ?」
「そんなに嫌なの?」
色んな事を考えて黙りこくっていたからか彼女は心配そうに問いかける。
「そうじゃないんだ。ただ……」
説明ができないことがもどかしい。
「僕でいいのかなと思ってね」
嘘をついた。
そんなことは思っていない。言葉が続かず適当なことを言ったのだ。
言ってすぐに嘘をついたことへの罪悪感に苛(さいな)まれた。
これから先、こうした小さな嘘をいくつ重ねることになるのだろうか……
僕は、重要な選択を間違ったことを確信した。
そんな僕に彼女は言う。
「言ったでしょ。君がいいんだよ。だからさ、名前、教えてくれないかな?」
彼女の笑顔が僕の心にかかった霧を一瞬で払い除ける。
君が最期まで笑顔でいられるなら、道化でもなんでもいいと思えた。
僕は笑顔で答えた。
「佐々木健って言うんだ。別にポチでも構わないけどね。お嬢様の名前は?」
本当は知っていた。彼女の母が以前彼女の名前を口にしていたのを僕は覚えている。
だけどそれじゃフェアじゃない。それに彼女の口から聞きたかった。
「石塚恵です。よろしくね健。私のことは恵でいいよ」
「よろしく、石塚さん」
いつかの彼女みたいに僕はニヤリと笑って自慢の白い歯を見せてやった。
「ちょっと! 話聞いてた?」
ギャーギャーと騒ぎ出す彼女を見ていると、出会ったばかりの頃を思い出し少し気持ちが落ち着いた。
同時に、もう戻ることの出来ない道を僕らは歩み始めていることを自覚し、少し涙が出そうになった。
泥沼でもなんでもいい。
例えそれが君にとって真実でなくとも、僕にとっては嘘偽りなどないのだ。
どんなことだって君がいないことに比べれば些末な問題だ。
これから先のことは二人で考えて行けばいい。なんなら二人で堕ちていったっていいんだ。
僕はその瞬間まで君の『恋人役』を演じることを決意した。
今日の彼女は最初から様子がおかしかった。それでも、最後に会ったときの後ろめたさから僕は彼女の提案を受け入れた。
提案自体は甘美なものに思えた。しかしそこには思わぬカラクリが存在した。
僕の気持ちが彼女に届くことは、もうない……
今後、僕がいくら好きと言ったところで、それは契約の延長であり、彼女からしてみれば、僕が恋人の役を演じているに過ぎない。
どれだけ真剣に言葉を紡いでも僕の言葉は意味を持たない。いや、意味は持っている。しかしそれは真意ではなく、せいぜい彼女にとっての安定剤程度のものだろう。
想像もしない形で僕らは結ばれた。
この契約から察するに、僕らは両想いだったのだろう。しかしそれは数分前までのこと。
僕らみたいなのはなんと言うんだろうか……
なんだか考える気力もなくなってきた。
「ねえ! ねえってば!」
顔を上げると目の前に彼女の顔があり僕は退けぞった。
「うわぁ! ごめん。なんだっけ?」
「そんなに嫌なの?」
色んな事を考えて黙りこくっていたからか彼女は心配そうに問いかける。
「そうじゃないんだ。ただ……」
説明ができないことがもどかしい。
「僕でいいのかなと思ってね」
嘘をついた。
そんなことは思っていない。言葉が続かず適当なことを言ったのだ。
言ってすぐに嘘をついたことへの罪悪感に苛(さいな)まれた。
これから先、こうした小さな嘘をいくつ重ねることになるのだろうか……
僕は、重要な選択を間違ったことを確信した。
そんな僕に彼女は言う。
「言ったでしょ。君がいいんだよ。だからさ、名前、教えてくれないかな?」
彼女の笑顔が僕の心にかかった霧を一瞬で払い除ける。
君が最期まで笑顔でいられるなら、道化でもなんでもいいと思えた。
僕は笑顔で答えた。
「佐々木健って言うんだ。別にポチでも構わないけどね。お嬢様の名前は?」
本当は知っていた。彼女の母が以前彼女の名前を口にしていたのを僕は覚えている。
だけどそれじゃフェアじゃない。それに彼女の口から聞きたかった。
「石塚恵です。よろしくね健。私のことは恵でいいよ」
「よろしく、石塚さん」
いつかの彼女みたいに僕はニヤリと笑って自慢の白い歯を見せてやった。
「ちょっと! 話聞いてた?」
ギャーギャーと騒ぎ出す彼女を見ていると、出会ったばかりの頃を思い出し少し気持ちが落ち着いた。
同時に、もう戻ることの出来ない道を僕らは歩み始めていることを自覚し、少し涙が出そうになった。
泥沼でもなんでもいい。
例えそれが君にとって真実でなくとも、僕にとっては嘘偽りなどないのだ。
どんなことだって君がいないことに比べれば些末な問題だ。
これから先のことは二人で考えて行けばいい。なんなら二人で堕ちていったっていいんだ。
僕はその瞬間まで君の『恋人役』を演じることを決意した。
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