23 / 34
第21話
しおりを挟む
すっかり日課となった早朝ランニングも今では少し物足りなさを感じてきた。
相棒である斎藤弘樹は律儀な男だ。休むことなく毎朝オレよりも先にうちの玄関先でストレッチを始めている。
「うぃーす」
玄関ドアを開けると見えた彼の背中に声をかけた。
「おはよん」
振り返り俺をとらえると適当な挨拶を返してきた。
「今日からちょっとだけ距離伸ばさない?なんか物足りなくなってきてさ」
「いんじゃない?ハルちゃんもペース早くなってきたし遅刻することもないだろうしね」
意地悪そうな笑顔を見せて俺をおちょくる。それをサラッと流して目的地を提案する。
「川の方行こうぜ。その方が気持ちいいだろうし」
「いいねー。あそこ結構人多いらしいからねー知り合いに会うかもねー」
そうなのか。まぁそれはそれで楽しそうだ。
朝日に照らされて煌(きら)めく水面(みなも)が気分を高揚させる。もう少し早ければ日の出が見れたのになぁ。
川幅は狭いが少し深いのか流れは緩やかだ。中央は底が見えず、近づいてみると水はあまりキレイではなかった。それでも立ち並ぶ住宅を見て走るよりは何倍もマシだ。
日の出が見れるように少し時間を早めるか。
川の流れに逆らうように上流の方へと向かう。
進行方向から一人の男が走ってきているのが見えた。おそらく同い年くらいだろうか。近づいてくる男の表情がわかるようになるまで近づいたとき男が会釈してきた。
俺は脳内データライブラリーを検索してみたが一致するデータは無かった。誰だっけ…
考え込んでいると弘樹から声がかかる。
「知り合い?」
「いや、わかんなくてさ…誰だっけな…」
「サッカー関係なんじゃないの?」
「それならたぶんわかるんだよなぁ。まぁ考えても出てこねえよたぶん。今日はそろそろ戻るか」
ちょっとモヤモヤするなぁ。
「そうしよっか。ならあの橋のところで折り返そうか。」
こうして暫定ランニングコースが決まった。
帰宅してシャワーを浴びると、思ったより時計の進みが早くそのまま朝食を済ませ急いで家を出た。遅刻ギリギリだなこりゃ。
自転車で急いでいると走っている男子生徒がいた。追い越す時にチラリと盗み見ると今朝の彼だった。
「アンタ、今朝の!」
「ども…」
俺を見ると俯(うつむ)きがちになる。会釈をしたのでさらに顔が下を向きその顔が見えなくなる。
「乗りなよ。あっ!もしかして先輩ですか?」
「いや、同じ1年、です。ありがと」
ホントはいけないんだけど二人乗りで学校の近くまで行くことにした。
「名前は?俺は橘遥(たちばなはるか)」
「三浦洋介(みうらようすけ)です」
「別に敬語じゃなくていいよ。洋介って呼んでいい?」
「うん」
「洋介は毎朝走ってるの?」
「うん」
こいつあんましゃべんないな。
「どれくらい?」
「10キロくらいかな…」
意外だ。俺よりも走ってやがる…
「俺と同じだね。陸上部?」
「いや…帰宅部…」
「え!?なんで走ってんの?」
衝撃だ。目標もなく10キロも走れるか?いや無理だわ。なんか理由があるんだろ。
「走ってる時…何も考えなくていいから」
「そうなんだ…」
どゆこと?よくわかんねえや。
「あ、そろそろ学校近いからあとは歩きで頼むわ。」
「うん。ありがとう」
「んじゃまたなぁ」
返事はなかった。
まぁよくわかんないけどなんかいいやつそうだな。
教室についてホームルームまで暇なので前の席の上田さんに洋介のことを聞いてみた。
「おい上田。」
「お、なんだいハル君。」
こいつなれなれしいな。
「三浦洋介って知ってる?」
「知ってるよぉ。隣のクラスのいじめられっ子でしょ?接点あったんだ?」
え…いじめられっ子?
「それマジか?」
「アタシが今まで嘘ついたことある?」
「ねえけどまだお前の存在を認識して1週間くらいしか経ってねえよ。てかマジか…そうかあ…」
「彼がどうしたの?」
「えーと、いや…なんでもない」
まさかの展開だ。頭がついていってないなこれ。
でもなんで洋介はいじめられてるんだろうか…
踏み込んでいいのか悪いのか…ちょっと難しいなこりゃ…
相棒である斎藤弘樹は律儀な男だ。休むことなく毎朝オレよりも先にうちの玄関先でストレッチを始めている。
「うぃーす」
玄関ドアを開けると見えた彼の背中に声をかけた。
「おはよん」
振り返り俺をとらえると適当な挨拶を返してきた。
「今日からちょっとだけ距離伸ばさない?なんか物足りなくなってきてさ」
「いんじゃない?ハルちゃんもペース早くなってきたし遅刻することもないだろうしね」
意地悪そうな笑顔を見せて俺をおちょくる。それをサラッと流して目的地を提案する。
「川の方行こうぜ。その方が気持ちいいだろうし」
「いいねー。あそこ結構人多いらしいからねー知り合いに会うかもねー」
そうなのか。まぁそれはそれで楽しそうだ。
朝日に照らされて煌(きら)めく水面(みなも)が気分を高揚させる。もう少し早ければ日の出が見れたのになぁ。
川幅は狭いが少し深いのか流れは緩やかだ。中央は底が見えず、近づいてみると水はあまりキレイではなかった。それでも立ち並ぶ住宅を見て走るよりは何倍もマシだ。
日の出が見れるように少し時間を早めるか。
川の流れに逆らうように上流の方へと向かう。
進行方向から一人の男が走ってきているのが見えた。おそらく同い年くらいだろうか。近づいてくる男の表情がわかるようになるまで近づいたとき男が会釈してきた。
俺は脳内データライブラリーを検索してみたが一致するデータは無かった。誰だっけ…
考え込んでいると弘樹から声がかかる。
「知り合い?」
「いや、わかんなくてさ…誰だっけな…」
「サッカー関係なんじゃないの?」
「それならたぶんわかるんだよなぁ。まぁ考えても出てこねえよたぶん。今日はそろそろ戻るか」
ちょっとモヤモヤするなぁ。
「そうしよっか。ならあの橋のところで折り返そうか。」
こうして暫定ランニングコースが決まった。
帰宅してシャワーを浴びると、思ったより時計の進みが早くそのまま朝食を済ませ急いで家を出た。遅刻ギリギリだなこりゃ。
自転車で急いでいると走っている男子生徒がいた。追い越す時にチラリと盗み見ると今朝の彼だった。
「アンタ、今朝の!」
「ども…」
俺を見ると俯(うつむ)きがちになる。会釈をしたのでさらに顔が下を向きその顔が見えなくなる。
「乗りなよ。あっ!もしかして先輩ですか?」
「いや、同じ1年、です。ありがと」
ホントはいけないんだけど二人乗りで学校の近くまで行くことにした。
「名前は?俺は橘遥(たちばなはるか)」
「三浦洋介(みうらようすけ)です」
「別に敬語じゃなくていいよ。洋介って呼んでいい?」
「うん」
「洋介は毎朝走ってるの?」
「うん」
こいつあんましゃべんないな。
「どれくらい?」
「10キロくらいかな…」
意外だ。俺よりも走ってやがる…
「俺と同じだね。陸上部?」
「いや…帰宅部…」
「え!?なんで走ってんの?」
衝撃だ。目標もなく10キロも走れるか?いや無理だわ。なんか理由があるんだろ。
「走ってる時…何も考えなくていいから」
「そうなんだ…」
どゆこと?よくわかんねえや。
「あ、そろそろ学校近いからあとは歩きで頼むわ。」
「うん。ありがとう」
「んじゃまたなぁ」
返事はなかった。
まぁよくわかんないけどなんかいいやつそうだな。
教室についてホームルームまで暇なので前の席の上田さんに洋介のことを聞いてみた。
「おい上田。」
「お、なんだいハル君。」
こいつなれなれしいな。
「三浦洋介って知ってる?」
「知ってるよぉ。隣のクラスのいじめられっ子でしょ?接点あったんだ?」
え…いじめられっ子?
「それマジか?」
「アタシが今まで嘘ついたことある?」
「ねえけどまだお前の存在を認識して1週間くらいしか経ってねえよ。てかマジか…そうかあ…」
「彼がどうしたの?」
「えーと、いや…なんでもない」
まさかの展開だ。頭がついていってないなこれ。
でもなんで洋介はいじめられてるんだろうか…
踏み込んでいいのか悪いのか…ちょっと難しいなこりゃ…
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
痩せたがりの姫言(ひめごと)
エフ=宝泉薫
青春
ヒロインは痩せ姫。
姫自身、あるいは周囲の人たちが密かな本音をつぶやきます。
だから「姫言」と書いてひめごと。
別サイト(カクヨム)で書いている「隠し部屋のシルフィーたち」もテイストが似ているので、混ぜることにしました。
語り手も、語られる対象も、作品ごとに異なります。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる