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第2話
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キックオフのホイッスルと共に心地よい緊張感が身体に走る。昔から試合になると緊張で身体が強張ってしまう。何度試合をしてもこれだけは克服できていない。オリエンテーションと言えどもそれは同じようだ。いつもと違い相手の特徴・戦力だけでなく味方のことすら把握できていないチームで試合をするのは変な感覚だ。まずは難しいことは考えずボールに触れる回数を増やし、徐々に緊張をほぐさなくては迷惑をかけてしまうだけだ。チームの特徴を探るのはそれからでも遅くない。同じチームにはちらほらと知ってる顔がいた。スパイクも篠原の物だが足に馴染んでいる。心なしか調子がいいように感じる。
ワンタッチでボールを捌き数回ロングランを終えたところでようやく緊張も薄れ、頭も冴えてきた。
相手チームは4-4-2のダイヤモンドでSTには同じ一年が入っている。おそらく自分と似たタイプの人間だ。ボールを受けに低い位置まで降りて行ったりDFとボランチのマークの受け渡しが曖昧になるエリアでボールを受けたりするタイプだろう。あまりフィジカルは強くない。相手が寄せる前にボールを放すタイプだろう。
即席チームではディフェンス時のルールを細かいところまで共有できないためマークの受け渡しはどうしても曖昧になってしまう。このゲームでも何度かいい形を作られてしまうだろう。しかし数回ボールに触ったプレーを見る限り足元はそれほど上手くない印象だ。どちらかと言うとCFの身体の大きな先輩を警戒すべきだろう。STが流れてできた裏のスペースを狙われる回数が多くなってきている。
相手のDMFの先輩がかなりやっかいだ。普通に上手くて困る。おまけに両サイドハーフの先輩は守備の意識も高く中央で守備をするDMFを上手くサイドに引っ張ることができない。
中学の時はよくサイドハーフがディフェンスをサボって戻るのが遅れてできた穴を攻めたり攻められたりしたのだが高校ではそうもいかないようだ。
攻撃を組み立てるとき、俺はボールを持つ前にピッチの状況を完全に把握することを徹底していたのだが今はその余裕すらもない。
攻守の切り替えや展開の早さが中学の時とは1段階上のレベルで行われていた。
こちらは4-5-1のダブルボランチで中盤の枚数は多いのだが中央にスペースが上手く作れず攻めあぐねている。
サイドハーフの戻りが遅れれば、そのままそのサイドをせめたり、カバーするつめにDMFが流れれば空いた中央スペースを上手く使えるのだが…
さらに言うと、こちらがボールをロストして、高い位置で奪い返そうと全員でプレッシャーをかけてもDMFにボールが渡るとロングパス一本でこちらの最終ライン付近までボールが運ばれてしまう。相手のDMFはロングパスにかなり自信があるのだろう。徹底したロングカウンターを主軸にしており自陣の深い位置でボールをロストするリスクを抑えているようだ。即席で連度の低いままショートパスを繋ぐよりは理にかなっている戦術に思えた。溜めが無い分サイドハーフの選手にはきついだろうが守るこちらも同じことだ。
ポゼッションは高いがボールを持たされている嫌な感じだ。確かに先輩達は上手いしいいチームだな。狙うならあそこしかねえな。分析は終わりそろそろこちらも仕掛ける頃合だ。展開の早さにも慣れつつある。
相手のOMFは球際の駆け引きが苦手なようでいつもワンタッチや少ないタッチ数でボールを捌いていた。あまりボールを持ちたがらないタイプだ。ドリブルに自信が無いのだろうか。狙うならここしかない。ボールが入る前に首を振り仲間の位置を確認する際にコースをわざとあけボールが入ったら全力でパスコースに走り込み目的のコースを切り相手があわててパスの受け手を探しているところを奪う。あっさりと篠原がボールを奪いカウンターのチャンスとなる。
偶然にもこちらのOMFは篠原と一緒で同じ中学出身の中本輝だ。合図なんて今更要らなかった。篠原は相手のサイドハーフの戻りきれていない右サイドを駆け上がっていく。たまらず相手のDMFはサイドへ引きずられ篠原に寄せたことで中央に空いた大きなスペースに輝君は降りていきそれにCBが引きづられ中途半端なポジショニングになっている。逆サイドはこちらのサイドハーフを警戒しSBが外に流れゴール正面に大きなスペースが空いている。
鼓動が高鳴る。
考えるよりも先に身体は動いていた。
輝君とのワンツーで更にサイドをえぐった篠原はニアに走り込むCFではなくスペースに走り込む俺を視界の端に捕らえる。篠原がニヤリと笑ったように感じた。俺はいつの間にかかつて同じピッチでプレーしていたときのように篠原にボールを要求していた。
「レンッ」
どこにボールが蹴りこまれるかはわかっていた。あいつはいつも俺の欲しいところにクロスを上げてくれる。「はいはい。」と相槌を打つように蹴り込まれたクロス。
笑ってサッカーしてたか・・・なるほどね。ニヤケそうになるのを必死でこらえ、ドンピシャで足元に届けられたボールをダイレクトでサイドネットに流し込む。
蹴る瞬間のインパクト音。そして足に伝うボールの芯を捉えた瞬間の心地よい感覚。ボールがネットを揺らす音。そしてゴールを知らせるホイッスルが甲高く響く。
その全てが俺の脳を、心臓を、魂を掴み、俺を放さない。
血が滾り、興奮は収まらない。俺はかつて無いほどの高揚感を噛み締めていた。
たかが練習試合の1点。それなのになぜこんなにも高ぶっているのか自分でも理解できなかった。ただ、そこには小さくも煌々と燃える情熱が灯っていた。
ワンタッチでボールを捌き数回ロングランを終えたところでようやく緊張も薄れ、頭も冴えてきた。
相手チームは4-4-2のダイヤモンドでSTには同じ一年が入っている。おそらく自分と似たタイプの人間だ。ボールを受けに低い位置まで降りて行ったりDFとボランチのマークの受け渡しが曖昧になるエリアでボールを受けたりするタイプだろう。あまりフィジカルは強くない。相手が寄せる前にボールを放すタイプだろう。
即席チームではディフェンス時のルールを細かいところまで共有できないためマークの受け渡しはどうしても曖昧になってしまう。このゲームでも何度かいい形を作られてしまうだろう。しかし数回ボールに触ったプレーを見る限り足元はそれほど上手くない印象だ。どちらかと言うとCFの身体の大きな先輩を警戒すべきだろう。STが流れてできた裏のスペースを狙われる回数が多くなってきている。
相手のDMFの先輩がかなりやっかいだ。普通に上手くて困る。おまけに両サイドハーフの先輩は守備の意識も高く中央で守備をするDMFを上手くサイドに引っ張ることができない。
中学の時はよくサイドハーフがディフェンスをサボって戻るのが遅れてできた穴を攻めたり攻められたりしたのだが高校ではそうもいかないようだ。
攻撃を組み立てるとき、俺はボールを持つ前にピッチの状況を完全に把握することを徹底していたのだが今はその余裕すらもない。
攻守の切り替えや展開の早さが中学の時とは1段階上のレベルで行われていた。
こちらは4-5-1のダブルボランチで中盤の枚数は多いのだが中央にスペースが上手く作れず攻めあぐねている。
サイドハーフの戻りが遅れれば、そのままそのサイドをせめたり、カバーするつめにDMFが流れれば空いた中央スペースを上手く使えるのだが…
さらに言うと、こちらがボールをロストして、高い位置で奪い返そうと全員でプレッシャーをかけてもDMFにボールが渡るとロングパス一本でこちらの最終ライン付近までボールが運ばれてしまう。相手のDMFはロングパスにかなり自信があるのだろう。徹底したロングカウンターを主軸にしており自陣の深い位置でボールをロストするリスクを抑えているようだ。即席で連度の低いままショートパスを繋ぐよりは理にかなっている戦術に思えた。溜めが無い分サイドハーフの選手にはきついだろうが守るこちらも同じことだ。
ポゼッションは高いがボールを持たされている嫌な感じだ。確かに先輩達は上手いしいいチームだな。狙うならあそこしかねえな。分析は終わりそろそろこちらも仕掛ける頃合だ。展開の早さにも慣れつつある。
相手のOMFは球際の駆け引きが苦手なようでいつもワンタッチや少ないタッチ数でボールを捌いていた。あまりボールを持ちたがらないタイプだ。ドリブルに自信が無いのだろうか。狙うならここしかない。ボールが入る前に首を振り仲間の位置を確認する際にコースをわざとあけボールが入ったら全力でパスコースに走り込み目的のコースを切り相手があわててパスの受け手を探しているところを奪う。あっさりと篠原がボールを奪いカウンターのチャンスとなる。
偶然にもこちらのOMFは篠原と一緒で同じ中学出身の中本輝だ。合図なんて今更要らなかった。篠原は相手のサイドハーフの戻りきれていない右サイドを駆け上がっていく。たまらず相手のDMFはサイドへ引きずられ篠原に寄せたことで中央に空いた大きなスペースに輝君は降りていきそれにCBが引きづられ中途半端なポジショニングになっている。逆サイドはこちらのサイドハーフを警戒しSBが外に流れゴール正面に大きなスペースが空いている。
鼓動が高鳴る。
考えるよりも先に身体は動いていた。
輝君とのワンツーで更にサイドをえぐった篠原はニアに走り込むCFではなくスペースに走り込む俺を視界の端に捕らえる。篠原がニヤリと笑ったように感じた。俺はいつの間にかかつて同じピッチでプレーしていたときのように篠原にボールを要求していた。
「レンッ」
どこにボールが蹴りこまれるかはわかっていた。あいつはいつも俺の欲しいところにクロスを上げてくれる。「はいはい。」と相槌を打つように蹴り込まれたクロス。
笑ってサッカーしてたか・・・なるほどね。ニヤケそうになるのを必死でこらえ、ドンピシャで足元に届けられたボールをダイレクトでサイドネットに流し込む。
蹴る瞬間のインパクト音。そして足に伝うボールの芯を捉えた瞬間の心地よい感覚。ボールがネットを揺らす音。そしてゴールを知らせるホイッスルが甲高く響く。
その全てが俺の脳を、心臓を、魂を掴み、俺を放さない。
血が滾り、興奮は収まらない。俺はかつて無いほどの高揚感を噛み締めていた。
たかが練習試合の1点。それなのになぜこんなにも高ぶっているのか自分でも理解できなかった。ただ、そこには小さくも煌々と燃える情熱が灯っていた。
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