【完結】四ばあちゃん、二度目の人生

大江山 悠真

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ヤエ 2

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ヤエ殿の家は人族、ハーフ族、エルフ族の3つの境界近くにあることに気づいたのはようやく杖がなくても歩けるようになってからだった。
今日はポーションに必要な薬草を集めに行きましょうと言われ、現在エルフ国の森の中にいる。
回復魔力や支援魔力が得意なヤエ様にポーション作る必要があるのかと思うが、自分で治癒できない者や遠くの者に必要だからと言われてしまった。
確かに治癒魔法や回復魔法が使える者は少ないし使えても軽微な怪我を直す程度だ。
ヤエ殿は魔力量も多いし、魔力制御を毎日鍛錬して治癒も回復も古代魔法並みに使える方であった。
魔力量の違いが治癒や回復の違いとなるのか聞いたところ、身体の仕組みを理解してるかどうかで回復や治癒効果の違いになると説明されたが、僕には理解できなかった。
とにかく今はポーションの材料である薬草を採取しないと。
エルフの森に入っても良かったのかな。国境で止められなかったが。

「えーと、ヤエ殿。エルフの国境を越えたと思うのですが、大丈夫ですか。」

「なにが?」

「国境を勝手に超えてよろしいのですか。」

「あ、大丈夫。ここの領主のエルドリアには了承してもらってるから。」

「そんな簡単に了承してくれるのですか。」

「できたポーションを1割渡しているわよ。だから大丈夫。ドローナックは足がまだ完全に治ってないからあまり森の奥に行かないでよ。回復草ならそこらへんに群生してるはずよ。毒消し草はあちらの木のあたりね。全部は取らないでよ、残しとかないと生えてこないから。」

話していると上から、
「薬草泥棒かと思ったぞ、ヤエ殿。」

「やーね、誰が薬草泥棒よ。こちら獣人族のドローナックよ。ドローナック、こちらはエルフのミルスガルデよ。」

「「よろしくお願いします。」」

回復草と毒消し草、マヒ草採取できたので錬金する前に綺麗に洗浄。洗浄し終わったら乾燥、これは自然乾燥しなければ効果が薄れるので並べて2,3日自然乾燥させる。

その夜、ヤエ殿と話しているときに”エルフと守り人”について聞かれる。概ねは獣人族も把握していたようだが細かい事実は藪の中だ。

「事実かどうか、正確なことは知りませんよ。我らも当事者ではなかったのでね。それでも構いませんか?」

「構わないわ。昔話として聞くから。酒のつまみと思ってもらって結構よ。」

わかりました。こうして僕は話し出した。
今から千年以上昔になると伝え聞く。但しエルフの民には最近のことになるだろうと言われている。
エルフの民は長命種で500年以上生きる民なのだから。
ハーフ国が作られ、ようやく国としてまとまった頃エルフの国では大災害が近づいていた。
エルフの国に伝わる話では海から災いが起こるそうだ。
エルフの国が大陸の一部となったその頃でも、この大災害は変わらず起こったそうだ。
大災害は必ず500年ごとに起きる。
災いは必ず海からおこる。
災いからエルフの民を守ってくれるのは守り人と言われる方。
守り人は500年毎に大森林の奥から現れ、災いを退けてくれる。
災いはエルフの森にしか生えていない”金銀の樹”と言われる樹を倒して樹も実も食い尽くしてから海に戻ると言われている。

”金銀の樹”は守り人が自ら、エルフの民を護るために大森林から植樹したと言われている。
その災害の1年前にハーフ国王太子がエルフの国に赴き災いに対抗すべく助力を申し出たのだった。
ハーフ国王太子は国王や国の重鎮からも民からも慕われる人物であったと言われている。
情け深く、奢らず、国や民を思い武術も国一番と言われていたらしい。
災いを受けるエルフの民を想い、ハーフ国の王太子は一人の供を従えエルフ国に赴いた。
ただ、王太子はエルフ国王に会うことはできなかった。
”金銀の樹”の守り手の領主に拘束されたらしい。
”金銀の樹”の守りての領主は、ハーフ国の王太子と従者に対し衣服を剥ぎ、1日3回ムチ打ったとされる。
広場に刑罰の木を打ち付け、両手両足を拘束してのムチ打ちであったらしい。
それは罪人に刑罰であったとされる。
7日拘束してムチ打ったのち、騾馬に手を括りハーフ国に歩いて戻らしたそうだ。
このことにハーフ国は怒った。
国王はじめ国の重鎮、貴族、民たちすべてがエルフ国に怒りを表した。
エルフ国の言い分は、卑しい奴隷が超えてはならぬ国境を侵した。
本来なれば死罪にするものを刑罰で済ましたのだからありがたいと思えと。
ハーフ国王は国境警備に対しすぐさま、すべてのエルフの通過を認めぬ支持を出した。
どのような理由があっても今後一切、エルフの国境通過は認めず、通過しようとしたエルフそれを補助した者全員に死を申し渡すと宣言したのだ。
獣人国はハーフ国を支援した。
人族はエルフ国をかばった。
ハーフ国王太子者はエル国との国境沿いに高い壁を築いた、たった1年で。

1年後、王太子と従者は国境沿いの壁に立ち海を見たそうだ。
陽が落ちたころ、海から災いが出てきたそうだ。
災いは壁伝いにエルフ国に入り、木を倒し魔物を殺しエルフを突き刺し”金銀の樹”の守り領まで進んだそうだ。
守り人が植えた”金銀の樹”は500年の時間をかけ大きく育っているはずが領主がエルフの住居にしたため災いの腹を満たすほどに生い茂っていなかった。
満たされない災いはエルフ国の木々を民を倒して大森林にたどり着いたと言い伝えられている。
本来なれば生い茂った”金銀の樹”で腹を満たし海に帰る災いが大森林まで進んだ。
このことを知った守り人はエルフの国が守り人との約定を守らなかったことと、国として支援を申し出に来たハーフ国王太子に対する領主の対応にエルフの民を護る価値のないものとし大森林から出なかった。
ハーフ国王太子と従者は眺めていたそうだ。
エルフたちが戦い疲れ逃げまどいながら災いに殺されていくのを。
子供だけでも助けて叫ぶエルフたちをかべの上から黙って眺めていたそうだ。

災いは大森林の奥で満足したのか、海に戻っていった。
残ったのは、なぎ倒されたエルフの住みかと荒れた山々、木々とエルフたちの死体。
この災いによって失ったものはエルフの命、数千人と守り人。

1年後エルフの国から次代の女王となるべき姫君がハーフ国を訪れたそうだ、やはり従者1名を伴って。
ハーフ国は国境の町で、エルフの民が見ている場所で王女と従者の衣服をはぎ取り、刑罰の木々に拘束して1週間1日3回のむち打ちを行ったそうだ。
ハーフ国王太子がされたとおりにやり返し、騾馬に手を括り歩いてエルフ国に返したそうだ。
エルフ国世継ぎの王女は父親の国王に
私が世継ぎの間に、この原因となった”金銀の樹”の守り手の領主一族の生き残りと住民すべてを犯罪奴隷にすること。
今の犯罪奴隷以外の奴隷は全員解放するように、今後イフノコス国については奴隷を禁止するようにと言ったそうだ。これはハーフたちが多く奴隷にされている状況の改善を申し出たものであったようだ。
王は世継ぎの王女の望みを叶えた。
自身の望みが叶えられた王女は世継ぎを返上したのち大森林に消えたそうです。
エルフ国王は、ハーフ国王と王太子に手紙を書き、エルフ国の対応を謝罪し自身が退位する事で王太子に対する罪を償うこととした。
ハーフ国も同様に、国王自ら退位することで謝罪を受け、王太子に位を譲り国境を開放したと伝わっている。
大森林に消えた王女と従者、守り人のその後は誰も知らないそうです。
これが、我が国に伝わった”エルフと守り人”の話ですが、詳しくはエルフのミルスガルデ殿に聞かれればよいものを。




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