テラへ愛を捧ぐ

大江山 悠真

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私はダイオウイカの類《タグイ》
先ほど、水龍様から連絡があって海溝で潜水艦を沈めよって。
沈めた潜水艦はどうするんですか?
原子力でなくても、こんなものは我々にとって邪魔なものにしかならないですよ。
大概人族ってやつは海に碌なことしてないんですよ。
深海の最たる海溝の底にも訳の分からないカップラーメンとやらのカップが転がってるんですよ。
勘弁してくださいよ。
え!陸にあげていいんですか?
わかりました。潜水艦だけでなく沈めた船全部沖に漂着させていいんですね。

海の仲間たちもそれなら頑張りますよ、そういう事ならばね。
動力部分に穴開けずにほかで穴開けて沈めてやりますよ。
先だって実は、大タコの奴がスクリュー部分に足の一本ひっかけてしまいましてね。
引っ張ることも出来ず回っちまったんですわ。
ええ、足を引きちぎられるの痛いのでやむ負えず回転にあわして回わっちまってついでに目もまわしたわけです。
大タコのやつ、皆に笑われて泣いてましたよ。

私はチリ海溝を担当します。
マリアナ海溝は水龍様が担当されるんで、眷属方がトンガ海溝とフィリピン海溝、ケルマディック海溝を担当ですね。
伊豆小笠原海溝と千島カムチャッカ海溝、日本海溝、琉球海溝は獲物が多いと思いますからどうしましょう。
そうだ最近進化し変化《ヘンゲ》した大海蛇族を動かしますか?
あいつら上半身が人族のように変化しましたから、凄いですよ。
蟹族や甲羅で被われたうろこでも裂きますからね。
海流漁に紛れ込んで沈めるのも出来ますし、自身が砂の中に上半身かくして尻尾で巻き付けても沈めることが出来ますから大丈夫でしょう。
後の7つのい海溝もお任せください、分担して沈めてやります。



     ◇◇◇◇◇


現在ヤップ海溝付近を航行中。
この潜水艦は、ある先進国から買取されたものと聞いている。旧式の原子力潜水艦だが一応現役で活動している。
乗員は女性ばかりの25名。
本来ならば、潜水艦の乗員は男性で構成されているがわが国の状況がそれを許さない。
第二次世界大戦後の中東情勢の悪化で200年以上内紛や戦争が続いた。勿論テロもあった。
壮年から若年の男性の死亡率は比較にならないほど高かった・
宗教が現実に合わせた状態がわが国である。
他国も同様かもしれないが、あくまで憶測である。
海の中の情報収集で武力抗争するわけではない。
地上よりはるかに安全と女性ばかりの乗員となったわけだが最近不穏なうわさが広がっている。
各国の潜水艦が行方不明になっていると言われている。
どの国も潜水艦の保有数を明確にはしていない。
だから行方不明になった潜水艦がいる噂が私の耳に入ってくるののも普通ではありえない訳だ。
前回寄港し下船したおりに、そのうわさ話に留意するように言われたのだ。
副長も噂を小耳にはさんだようだな。
そうか副長は、あの技官長と仲が良かったか。
私は大佐から寝物語で聞いた。
身体を使っての情報収集は上の役目だからとはいえ、大佐とは合う。
話しても寝ても楽しいしリラックスできる。
乗員は陸に上がったときは出来るだけリラックスしないと精神的に参るからな。
24時間狭い空間内で汚れた空気の中での生活だ。
窓から外を見たいと思っても窓などありゃしない。息抜きが出来ないんだ。

「か、かん、艦長!」

「どうした?副長。」

ズ・ズーン
なにが起こった。
ブリッジを含め、乗員たちの動きが慌ただしくなる。

「見てください?」

「なんだ?」潜望鏡をのぞいてみると?

「これはなに?」

「艦長、浸水してます!!」
後方から緊迫した声が聞こえる。

「応急処置は可能か?」

副長の問いかけに浸水区域Dブロック。浸水箇所4か所。対応してますが浮上可能ですか?」

「目のような口か?わからん。副長、とにかく浮上可能か?」

「海上は荒れ気味ですが浮上可能です。浮上しますか?」

「浮上用意。E・Dブロック閉鎖用意、EDブロック要員Cブロックまで退避。」

艦内無言で移動開始している。この状態でも落ち着いてる乗員に安堵する。
が一転、ガッコン!ガン・ガン・ズル!
と音がすると同時に下に引っ張られる。
浮上しようとする艦に反するように海水が渦巻いているのが感じられる。
なにかが叩きつけられている、尻尾のようなものでドラム缶をたたいているそんな感じだ。
中では何かに摑まらないと立って居れないぞ。
乗員、衝撃に備えるような体制を取っているが急激に下降する艦に摑まるところがない。床を滑り落ちていく。
直下降で降りていく先は閉鎖した鉄の扉。衝撃で首が異常な方向に向いた乗員の上に乗員が降っていく。腹で落ちてきた乗員を受け止めたのは内臓破裂をおこしているだろう。急激な水圧が艦にかかっているようだ。
この艦がいつまでもつか、艦がミシミシ音をさせているようだ。
艦内部は真っ暗だ。
艦長として私が最後に目にしたものは艦を突き破った爪のようなものだった。




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