テラへ愛を捧ぐ

大江山 悠真

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お祖父ちゃんの話は荒唐無稽のようなものだけど、私は納得できたのね。
ただ、アラクネさんが人間として生まれずになぜ蜘蛛として生まれたかがわからなかった。
同じ人間として輪廻にはいり転生も出来たんじゃないかと考えたのよ。
アラクネさんが祖父ちゃんと住む部屋の建て増しをしに来た時に聞いてみた。
土魔法で私たちが部屋の建て増ししようとしたら2,3か月かかりそうなのにアラクネさん2日で完成させた。
なに、この差。
魔力量が全然違う。博と幸田君マジで凹んでた。
私はアラクネさんに人間として転生しなかった理由を聞くと笑いながら、

「人間で転生したら純ちゃんを助けられなかったからね。人間として転生したら多分津波で死んでいたと思うわよ。森で純ちゃんと対峙してたのはグランドベアで凶暴で出会ったものを喰うためでなく楽しみで殺していくような魔物だったのよ。アラクネでないと助けられなかったわ。だから蜘蛛として転生してアラクネにまでなったのよ。すごくない?すごい純愛でしょう、健気と思わない?」

思いますけど自分で言うか。こんな話をしながら増築してしまうアラクネさんを尊敬します。
そんなこんなでアラクネさんとの同居が始まった。
アラクネさんは、毛皮のなめしも出来るし服も作ってくれる。
まず一番に作ったのは自分の上着ね。博や幸田君には目の毒だったし。
冬が来る前に毛皮のコートや敷布を作ってくれたおかげで寒い思いはせずに済みました、良かったよ~。

アラクネさんと住みだしたから変化は速かった。
ガーゴイルさんがまずアラクネさんを訪ねてきたり、神社に龍神の神主さんがいたり暮らしに人間でない人が出現してきた。
水を貰いにアラクネさんと一緒に神社に行った時に
神主の格好をした龍が
「こんにちは、お参りもしてくださいね。」なんて笑顔で言われたのでしょうが、

「はい~。」って返事しながら振り向いた私は・・・で水を入れてたペットボトルおとしたまま固まっていたのにね、アラクネさんは
「大堂さんはこちらに来てたのか?」って平常運転。
紹介してくれましたよ、一緒に暮らしてる相方の孫だから良しなにねって。


「人間と住んでいるならアラクネさんにお願いしてもいいですか?」と頼まれたのが4人の人間の保護。
一人は成人した男性、一人は30代半ばの女性、二人が10才前後の女の子と男の子。
どうしたのか聞くと避難した人間の集落から逃げ出したらしい。

男性が話してくれた。
俺は倉橋誠だ、よろしくな。そちらの女性がアンナ、男の子が剛(ゴウ)で11歳、妹の唯(ユイ)9歳だ。
京都市付近は津波の被害も少なく生き残った人たちが多くおり当初は生活していけたのが、時間が経つに従い物資がなくなり争いが出始めた。
避難してきた人たちは公園や公共施設で生活していたけど、お金もなく銀行からお金を引き出せるわけでもない。
お金で物が買える状況ではなくなっていき物々交換のようになっていたそうだ。
海岸沿いや道路が分断してエネルギーの供給が途絶えた後は食料を持っている人たちから強引に譲らすようなことが頻発した。
その後、夜間照明がなくなった京都市内でも魔物が出現し、人間が追われるようになったんだ。
俺たちが魔物に対抗するすべはなく、襲われた人達を犠牲にして逃げる生活をしてたんだ。
魔物に襲われビルに逃げた俺は先に避難していた15人ほどの集団と一緒になった。
ビルの下には魔物がうろつき水も満足にとれない日が出だしたとき、こいつら二人が柱の陰で水を飲んでいるのに気付いた大人がいたんだ。
二人だけが水を飲める理由を問い詰められた子達は、水が飲みたいと思うと手から水が出ることに気づいたと説明した。
それからは二人の子供たちは水の供給のためにこき使われだしたんだ。
水を出さなければ暴力を振るわれるそんな環境だぜ、死にそうになるまで水を出さされている子供たちを助けようとビルから子供たちを背負って逃げ出したんだ。
子供たちの親か?死んじまったらしい、津波におそわれたか魔物に喰われたか知らないがな。
ただ、子供たちを庇って死んだ親にしてみたら人間に殺される自分の子供たちは見たくないと思ったんだ。
以前、亀岡方面で仕事していたのでこちらなら、何とか暮らせるかと考えて子供たちを助けるのを手伝ってくれたアンナと一緒にここまで来た。
魔物に襲われたけど俺も火魔法を少し使えたしアンナも風と火魔法をつかえたので何とか凌いで来れたんだ。
まあ運も良かったんだろうな。
危ない時に熊のようなのが助けてくれたんだ。熊みたいだけど話せるし二本足で歩いてたけど人間じゃないと思う。
人間じゃないけど、ビルにいたようなひどい人間もいるからな。
外見はどうでもいいんだ、俺たちが殺される時に助けてくれたんだ感謝してる。
その熊のような奴が教えてくれたんだ、こちらに行ってみろってな。
あんたら近くに住んでいるのか?
あんたら住んでるんなら俺たちも住めるかな?
ここら周辺に住めるような場所があるか?。
それと出来るだけでいいのだが、俺たちが当分の食べる分を分けてくれないか?
角があるウサギが狩れた時は火魔法で焼いて食べてたんだが量が少なくてな。子供たちが腹減らしてるんだわ。

家に帰ってから相談してくる。返事は明日来た時にするねと言って帰った。
次の日、アラクネさんに引き続き私たちに新しい仲間が4人増えた。
アラクネさんにまた頑張って増築してもらわないとね。


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