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4 悠真視点2

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どんな話かと思い僕は待ち合わせ場所へ急いだ。
待ち合わせ場所で璃子は少し緊張した面持ちで待っていた。

「…ごめん。待った?」

「ううん大丈夫。」

「それで話ってなんですか?」

「えっと…別れてもらえますか? 一年以内に結婚したいんです。」
 僕の体の中に衝撃が走った。

「…それなら僕じゃダメ?」
まだ少し早いと思っていたけど、思わずそんなことを言ってしまった。

「あと結婚指輪はエルメスとかじゃなきゃ嫌だし、新婚旅行は世界一周とかじゃないと嫌だし…」
君は少しずつ条件を釣り上げて行った。
少し前に男との別れ方特集みたいなのをやっていて僕もそれを見ていた。
彼女の別れようとする言葉はその特集の通りだった。
たぶん彼女もあの番組を見て参考にしたんだろう。
でもそのくらいの我儘で君を手放すほど僕の想いは軽くない。

「それくらいなら何とかなります…」

「ほらやっぱり無理でしょ…って、ええ!」
璃子は僕がそれくらいといったことに驚いた様子だった。でもそれは当然の反応だろう。
彼女に璃子のために貯金してると言った事は無い。 でもそんなに意外だろうか?

「…そんなに意外ですか?」

「意外に決まってるでしょ!今までそんな素振り全く見せなかったし、いつもあんま喋ってくれなかったり、構ってくれなかったりして…別に悠君の個性を否定したくはないけど、でも寂しかったから別れようって思ったのに条件軽々と超えて…ぐすっくるんだよ!」
璃子の僕と別れようとした理由は正直言って驚いた。
僕としてはそんなつもりもなかったし、ただ璃子を幸せにしたいと思っていただけだ。
でも璃子に寂しさを感じさせるというのは、何よりも許し難い罪である。だから自分の事が何より憎い。

「それは…今はあんまり何か買ってあげたりできてないけど、将来璃子の好きなものなんでも買ってあげたり、叶えてあげたりできるように株でお金貯めててそれがあるから…」

「そんなの…言ってくれなきゃわかんないじゃん…そんなサプライズ嬉しくない。」
僕は璃子が楽しく過ごせるようにと考えていた筈なのに、こんなに苦しめていたなんて…
もう二度とこんな思いをさせたく無いけど、また繰り返してしまうかも知れない。
でも他の男になんて渡したく無い。

「うん。ごめん。これからはもっと大事にするから…だから僕にもう一度チャンスをくれませんか?」
こんな事を言っておきながら僕は全く自信が無かった。
だって一度は別れようと思った男とまた付き合うなんて中々出来ないだろう。

「…許す」
そう璃子は言った。
本当に良かった…嬉しいと言う気持ちと捨てられなくてよかったという安堵が同時に訪れる。

「よかった…捨てられたらどうしようかと…」

「?なんか言った?」
っと口に出ていたようだ。僕は慌てて否定した。
「ううん」
本当に璃子に捨てられてたら、何をしてたか分からないから璃子が許してくれて良かったと心底思う。

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璃子視点の付き合うまでも作ろうと思ってます。
ちょっと順番がおかしくなるかも知れません(>人<;)
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