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二章 王弟殿下の襲来
完全に予想外。
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人だかりが道一杯に広がっているため、避けて通ることもできない。仕方なく少し後ろでその光景を眺めていると、ふと殿下と目があった。
そして殿下の緑の目が大きく見開かれた。
え…なに。俺そんなに変な格好してたっけな。思わず自分の服装を見直す。いや侍女が用意してくれた服だしそこまで変な格好でもないはずだが。
首を傾げていると、殿下が女性たちの壁を抜けて俺の前まで来た。
「……もしかして君はユニファート・ハロイド?」
「え、ええ。そうですが……。」
ふむ。と殿下は何か考え込んだ様子を見せると、俺に向けて手を出した。
「少し、付いてきてくれるかな。」
王弟殿下の誘いを断るのは心象が悪いだろうし、暇だし、付いて行ってみるか。
「はい。お供させてください。」
素直に了承すると、クスリと笑われてしまった。
「知らない男に簡単に付いてきちゃうんだね。警戒心ないの?」
「いえ、あるにはありますけど……相手は王弟殿下なので。」
「気づいてたんだ。でも、王弟を騙る偽物かもよ?」
「王族を騙るのは重罪ですので、辺境の地ならまだしも王族のお膝元でわざわざそんなことをする人はいませんよ。」
「フーン、ちゃんと考えてるんだ。思ってたより馬鹿じゃないんだね。」
は?ちゃんと話したの初めてなのになんなんだよ。いくら王族でも流石に失礼だろ。
「すいません、予定を思い出しましたので失礼させていただきますね。」
「え、ちょっと……。」
引き止める殿下の声を無視して足を動かす。ほぼ初対面なのにあんなこと言ってくるやつと一緒行動できるかよ!
王族は確かに貴族よりも身分は上だが、だからと言って貴族のことを適当に扱っていいはずがないのだ。
国の収入の半分は貴族の領地からの税金で、貴族が国の経済を支えているといっても過言ではない。
王弟殿下は優秀な人だと耳にしていたが、仕事だけだろ。性格は最低じゃないか!この国の王族にはまともな人がいないのか?
ズンズンと歩いていると、いきなり目の前に人が飛び出してきた。スッとよけて横を通り抜けようとすると、いきなりグッと腕をひかれた。
前に進もうとしていたのに、後ろに引かれてしまったからバランスが取れず上半身が後ろに倒れてしまう。慌てて足を出そうとしたけれど間に合いそうにない。
衝撃に備えてギュッと目をつむったものの、なかなか衝撃がやってこない。おそるおそる目を開けると、腕を掴んでいる手と、赤い髪が目に入った。
……何かすっごい体が傾いてる。王弟殿下が俺の腕を引っ張ったのか?それでそのまま支えてくれてると。
とりあえず、真っすぐと立つ。結構目立ってたからな、早く立ち去りたい。
「あの、なにか。」
「なんで、逃げたの?」
「先ほど申し上げたはずですが。用事がある、と。それに逃げてはいません。家に帰っているだけです。」
遠くからついてきてくれているはずの護衛に目をやるが、フルフルと首を振られた。さすがに王族に手は出せないらしい。
「あの、腕を離してくださいませんか。急いでいるので。」
殿下の手をグイグイと剥がそうとはしているが、なかなか離してくれない。
「じゃあ、ハロイドくんの家に連れて行ってよ。話したいことがあるんだよね。」
「ですから、用事が……。」
「一回家に帰るんでしょ?歩きながらでもいいからさ。」
なかなか諦めないなこの人……。本当、俺の話を聞く気ゼロなんじゃないか?これ以上抵抗するのも無駄な気がして、仕方なくうちに案内することにした。
兄上の言っていっていたことは本当だったな。陛下以上に話を聞かない。
並んで歩き始めると、殿下が話し始めた。
「ハロイドくんは、兄さんに会った?」
「ああ、はい。」
「じゃあ、知ってるんだ。兄さんの気持ち。」
やっぱり王弟殿下も知ってた……。話しかけてきたのもそれがあるからだろうな。
「はい、前に王都についた初日に告白を受けたんですけど……まだよくわからないままなんですよね。」
「ふーん、兄さんのこと好きじゃないんだ。」
「そ、そうと決まったわけでも……。」
「じゃあ、好き?」
俺の顔を覗き込むように聞いてくる。自分で考えるだけならそこまで恥ずかしくなかったけど、他の人に口にされるとなんともいえない気分になる。
「恋愛感情かと言われれば、違う気はしますが、好意は抱いています。」
実際に今の気持ちを口に出すのは初めてで、頰が熱くなる。それを殿下に見られるのが嫌でフイッと顔を背けた。
「じゃあ、少なくとも今は兄さんとどうこうとか考えてないわけだ。」
「ええ、まあ。」
なんで殿下はこんな根掘り葉掘り聞いてくるんだ?別に殿下には関係ないだろ。不快感を顔で示すと「ゴメンゴメン。」と軽い調子で返された。
「俺、ハロイドくんのこと気に入っちゃった。」
「は?」
「じゃあね。また会いに行くよ。」
来なくていいんだけど……。家に案内しろと言ったと思ったら、訳のわからないことをいって殿下は何処かへ行ってしまった。
気にいったとか……あいつに気に入られても全然嬉しくないんですけど。
そして殿下の緑の目が大きく見開かれた。
え…なに。俺そんなに変な格好してたっけな。思わず自分の服装を見直す。いや侍女が用意してくれた服だしそこまで変な格好でもないはずだが。
首を傾げていると、殿下が女性たちの壁を抜けて俺の前まで来た。
「……もしかして君はユニファート・ハロイド?」
「え、ええ。そうですが……。」
ふむ。と殿下は何か考え込んだ様子を見せると、俺に向けて手を出した。
「少し、付いてきてくれるかな。」
王弟殿下の誘いを断るのは心象が悪いだろうし、暇だし、付いて行ってみるか。
「はい。お供させてください。」
素直に了承すると、クスリと笑われてしまった。
「知らない男に簡単に付いてきちゃうんだね。警戒心ないの?」
「いえ、あるにはありますけど……相手は王弟殿下なので。」
「気づいてたんだ。でも、王弟を騙る偽物かもよ?」
「王族を騙るのは重罪ですので、辺境の地ならまだしも王族のお膝元でわざわざそんなことをする人はいませんよ。」
「フーン、ちゃんと考えてるんだ。思ってたより馬鹿じゃないんだね。」
は?ちゃんと話したの初めてなのになんなんだよ。いくら王族でも流石に失礼だろ。
「すいません、予定を思い出しましたので失礼させていただきますね。」
「え、ちょっと……。」
引き止める殿下の声を無視して足を動かす。ほぼ初対面なのにあんなこと言ってくるやつと一緒行動できるかよ!
王族は確かに貴族よりも身分は上だが、だからと言って貴族のことを適当に扱っていいはずがないのだ。
国の収入の半分は貴族の領地からの税金で、貴族が国の経済を支えているといっても過言ではない。
王弟殿下は優秀な人だと耳にしていたが、仕事だけだろ。性格は最低じゃないか!この国の王族にはまともな人がいないのか?
ズンズンと歩いていると、いきなり目の前に人が飛び出してきた。スッとよけて横を通り抜けようとすると、いきなりグッと腕をひかれた。
前に進もうとしていたのに、後ろに引かれてしまったからバランスが取れず上半身が後ろに倒れてしまう。慌てて足を出そうとしたけれど間に合いそうにない。
衝撃に備えてギュッと目をつむったものの、なかなか衝撃がやってこない。おそるおそる目を開けると、腕を掴んでいる手と、赤い髪が目に入った。
……何かすっごい体が傾いてる。王弟殿下が俺の腕を引っ張ったのか?それでそのまま支えてくれてると。
とりあえず、真っすぐと立つ。結構目立ってたからな、早く立ち去りたい。
「あの、なにか。」
「なんで、逃げたの?」
「先ほど申し上げたはずですが。用事がある、と。それに逃げてはいません。家に帰っているだけです。」
遠くからついてきてくれているはずの護衛に目をやるが、フルフルと首を振られた。さすがに王族に手は出せないらしい。
「あの、腕を離してくださいませんか。急いでいるので。」
殿下の手をグイグイと剥がそうとはしているが、なかなか離してくれない。
「じゃあ、ハロイドくんの家に連れて行ってよ。話したいことがあるんだよね。」
「ですから、用事が……。」
「一回家に帰るんでしょ?歩きながらでもいいからさ。」
なかなか諦めないなこの人……。本当、俺の話を聞く気ゼロなんじゃないか?これ以上抵抗するのも無駄な気がして、仕方なくうちに案内することにした。
兄上の言っていっていたことは本当だったな。陛下以上に話を聞かない。
並んで歩き始めると、殿下が話し始めた。
「ハロイドくんは、兄さんに会った?」
「ああ、はい。」
「じゃあ、知ってるんだ。兄さんの気持ち。」
やっぱり王弟殿下も知ってた……。話しかけてきたのもそれがあるからだろうな。
「はい、前に王都についた初日に告白を受けたんですけど……まだよくわからないままなんですよね。」
「ふーん、兄さんのこと好きじゃないんだ。」
「そ、そうと決まったわけでも……。」
「じゃあ、好き?」
俺の顔を覗き込むように聞いてくる。自分で考えるだけならそこまで恥ずかしくなかったけど、他の人に口にされるとなんともいえない気分になる。
「恋愛感情かと言われれば、違う気はしますが、好意は抱いています。」
実際に今の気持ちを口に出すのは初めてで、頰が熱くなる。それを殿下に見られるのが嫌でフイッと顔を背けた。
「じゃあ、少なくとも今は兄さんとどうこうとか考えてないわけだ。」
「ええ、まあ。」
なんで殿下はこんな根掘り葉掘り聞いてくるんだ?別に殿下には関係ないだろ。不快感を顔で示すと「ゴメンゴメン。」と軽い調子で返された。
「俺、ハロイドくんのこと気に入っちゃった。」
「は?」
「じゃあね。また会いに行くよ。」
来なくていいんだけど……。家に案内しろと言ったと思ったら、訳のわからないことをいって殿下は何処かへ行ってしまった。
気にいったとか……あいつに気に入られても全然嬉しくないんですけど。
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