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三章 外国にて

続き部屋の利便性

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 歓迎パーティーは夕方になってから行うらしく、それまでは休憩時間らしい。

 しばらく滞在するためトランクの荷物を備え付けのクローゼットにしまう。服を全部ハンガーにかけてベットにボフンっと飛び込む。

 なんだか落ち着かないな。やっぱり、ラインハルトの部屋とつながる扉があるからか。何をしていてもふとした瞬間に目をやってしまう。

 ちょっと覗いてみようか……?続き部屋なんだし、入っても問題はないはず。

 出来心から、ベットから起き上がり扉のノブに手を伸ばしたところで、コンコンとノックの音が聞こえた。

「ベルティアです、ハロイドさんいらっしゃいますか……?」

「べ、ベルティアさん?どうぞ、入ってください。」

 慌てて扉に駆け寄り、カギを開ける。扉を開けるとベルティアさん申し訳なさそうに体を縮こまらせていた。

「どうかしましたか?」

「い、いえなんだか落ち着かなくて……。話せる人といったら、ハロイドさん以外思いつかなかったので。……すいません。」

「謝らないでください。俺もちょうど暇していたので、ベルティアさんが来てくれてよかったです。」

 本当にベルティアさんが来なかったら、変なことをしでかしてしまうところだったし……。

「とりあえず、中に入ってください。ソファは1つしかないんですけど……座っていてもらえますか?」

「え、良いんですか?」

「はい、俺ベットに座るんで。座り心地良いですよ、ベルティアさんも座ります?」

「え、え……。いいんですか?」

「……?別にいいですよ?」

 何をためらうことがあるんだ?男同士だし、近くに座ることは別に問題じゃないだろう。

 ベルティアさんは顔を真っ赤にしながらこちらに歩み寄ってくる。

「そういえば、ベルティアさんって可愛いですよね。男性にこういうのは失礼かもしれないですけど。」

 なんだか小さいし、弟って感じだ。俺にも弟とか甥とかできたらベルティアさんみたいに可愛いんだろうな……。俺、ものすごく構ってしまいそうだ。

「い、いや嬉しいです……。」

 そういってベルティアさんはポスンっとベットに座った。頭しか見えなくなってふわふわとした髪が目についた。

「髪の毛触ってもいいですか?」

「えっ!」

「ダメですか?」

 しょんぼりとした顔をしていると、俺の表情に気づいたらしいベルティアさんが慌てて首を振った。

「いい、いいですよ!好きなだけ、触ってください。」

「ほんとですか!ありがとうございます……。」

 了承を得たので遠慮なく、ベルティアさんの髪に指を通した。

「うわぁ……。」

 本当にふわふわしてる……。友人の家にいた猫と同じふわふわ感!久しぶりに癒される……。

 夢中で触っていると、ベルティアさんの髪がぼさぼさになっていた。

「あ……ベルティアさんごめんなさい。」

 慌てて手櫛でベルティアさんの髪を整える。

「あ、あのハロイドさん、ぼ、僕ハロイドさんのk……」

「ユーファ!」

 バンッと勢いよくラインハルトの部屋に繋がる扉が開いた。

「ラ、ラインハルト……?」

 ラインハルトは無言のまま俺たちのところまで来ると、ベルティアさんの頭に置かれたままだった手をスッと退けた。

「お前は部屋に戻れ。」

「え、あ、はい。」

 ラインハルトはベルティアさんを部屋から追い出すと、呆然としていた俺をベットの上に押し倒した。そして、ラインハルトはそのまま覆いかぶさってくる。

「なあ、ユーファ。なんで俺が怒ってるか、わかるか?」

「わ、わかんない……。」

「あの男をなんで部屋に入れた。あいつの目を見たか?どうみてもユーファに惚れてただろう?」

 なんでと責めるような目でラインハルトは俺を見てきた。その目は怒っているというよりも悲しんでいるような気がして、胸がキュッと締め付けられる。

「そ、それはよくわからないけど……ごめん、俺が不用心だった。」

 そういってラインハルトの首に腕を回して、おでこにキスをする。

 さっきは船上で半分無理やりみたいな状況だったけど、本当はもう少し落ち着いてしたかった。それに……あれがファーストキス、だったわけだし。

 女の子たちとはそこまで行く前に別れてしまったし、俺は娼館に行く勇気も持てなかったし、あんなキス初めてした……。

 いまさらになって照れていると、ラインハルトは俺の唇に自身の唇を押し付けてきた。

 唇を離すと、ラインハルトは困った顔をして口を開いた。

「ユーファは自分がどれだけ魅力的かわかってないだろう?お願いだから他のやつに無防備な姿を見せないでくれ……。」

 無防備な姿……そうは言われてもそんなことをしている気はないからどうすればいいのかよくわからない。

 俺が困った顔をしていると、ラインハルトは苦笑して口を開いた。

「とりあえず、どんな奴でも簡単に部屋に入れないでくれ。あと、不用意に他のやつに触れない、触れさせない。守ってくれるか?」

「ああ、ちゃんと守る。」

 花が当たりそうな距離にラインハルトの顔があって、ちょっとドキドキする。

「ユーファ……。」

 ラインハルトは、俺の名前を呼びながら俺のシャツのボタンを半分だけ開けてきた。

 かすかに擦れる生地がなんだかくすぐったくて、少し、息が漏れた。

「ラインハルト……?」

「なあ、してもいいか……?」

「し、してもいいかってなにを?」

「セックス。」

 その言葉にボッと顔が熱くなるのを感じた。

「お、男同士とか……できるのか?」

 ラインハルトとだったら別に嫌じゃないけど、なんか、怖い。

「ああ、できるぞ?だから俺の部屋に行こう。」

「え、なんで……」

「こっちはあの男の匂いがするから嫌だ。ユーファ以外の匂いなんて嗅ぎたくない。」

「わ、わかった。」

 俺が了承すると、ラインハルトは驚いたような顔をした。

「どうした?」

「いや、まさかいいと言ってくれるとは思ってなかったから……。」

「そんな……好きなやつとそういうことしたくないわけないのに。」

 俺がそういうと、ラインハルトは破顔して俺の膝下に腕を差し入れていわゆるお姫様抱っこを俺にしてきた。俺、結構大きめのはずなのになんで持ちあげられるんだ。

「ラインハルト、重いだろ?俺歩くから降ろしてくれ。」

「いいや?ユーファくらい余裕だ。」

 そういいながら、ラインハルトはさっき勢い良く開けていた扉を閉めた。

 こういう時の為の続き部屋か……。いらないっていったけど、今使っちゃったな。
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