児童絵本館のオオカミ

火隆丸

文字の大きさ
上 下
6 / 14

絵本

しおりを挟む
「好きなこと?」

「そう。ツチヤさんは絵を描くこと、ムライさんは、お話をつくること、そしてクロダさんはもちろん私を着て子供たちの前に立つこと、この三つをうまく合わせるんだって」

「うん、うん」
 影が興味深そうにうなずきます。

「まず、ツチヤさんとムライさんで絵本をつくったんだ。私、オオカミが出てくる絵本をね。
 ツチヤさんは色とりどりの絵の具を使って、私を描いてくれた。
 ムライさんは私がいきいきと活躍する楽しいお話をつくってくれた。
 物語の主役は山に住むオオカミ。ある時、みんなと仲良くなりたいと思って町に出たんだけど、怖がって誰も近づいてくれない。そこで、歌ったり踊ったりすることで、みんなと仲良くしようとするお話なんだ。
 絵本ができたら、今度はクロダさんの出番だ。クロダさんは私を着て、いつものように子供たちの前に立った。子供たちはいつものように怖がった。
 そこで、ツチヤさんとムライさんが絵本を読み始めたんだ。
『オオカミさんはみんなと仲良くなりたくて、山からおりてきました。でも、怖がってだれもきてくれません。そこでオオカミさんはみんなの前で踊ることにしました……』
 ってね。
 クロダさんは二人が絵本を読む声に合わせて、いろいろな動きをした。絵本の中でオオカミさんが踊るとくるくる回ったり、オオカミさんが笑うと両手を広げてスキップしたり。しゃべることができなくても、全身を使って私の気持ちを伝えてくれたんだ。
 子供たちは私と絵本を夢中になって見ていた。最初は怖がっている子もいたな。だけど、お話が進むにつれて、子供たちに笑顔が見えるようになった。
 絵本を読み終えると、子供たちは私のそばに集まってきた。
『オオカミさんって、やさしいんだね』
『かわいい~』
 子供たちは私と仲良くしてくれるようになった。
 これも、クロダさんとツチヤさん、ムライさんのおかげだ。着ぐるみの私は話すことができない。でも、三人がそれぞれの得意なことを活かして、私の思いを子供たちに伝えてくれた。とてもうれしかったよ」
しおりを挟む

処理中です...