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1. 髪を切ってもらえますか?
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アーロンが初めて父親の寝顔を見たのは、棺に入った状態が初めてだった。 今まで一度も見たことのなかった父の目を閉じた表情は苦しそうで、寝顔はどんな顔だったのかと幾度となく考えた。
この世界には魔法があるが、人を救えるほど強いものは使えない。争いの火種となり得るからだ。攻撃魔法なども使えず、魔法は免許制。そして魔法大学で学んだ者だけが、城から承認を受けた魔法のみを使うことができる。
そんな世界で、アーロンは魔法研究で人を救う道を選んだ。とくにやりたいことは無かったが、魔法を学ぶことはアーロンにとっては没頭できることのひとつだった。アーロンは国立魔法大学院で魔法を学び、今日城の魔法研究課ラボへと配属され、小太りな室長からの紹介される。
「国立魔法大学院から来た、アーロン・エアハートくんだ」
「よろしくお願いします」
「では今日からアーロンくんにランツくんの研究を手伝ってもらおう」
すると、ランツと室長に呼ばれた小柄でツリ目な男性が一歩前に出て、えっへんと言わんばかりに胸を張ってアーロンを見てくる。
「俺はランツ。お前の方が院卒で年上だけど俺はココの先輩だから、ちゃんと言う事守れよ」
「……。はい」
「そこ! ちゃんと即答しろ!」
「あっ、はい」
「『あっ、』はいらないの!」
(くそ、背が高くてイケメンでなんか余裕綽々で調子狂うな……)
アーロンは一瞬で気づいた。ランツは上下関係に厳しく、自分より後輩のアーロンが上に立たれるのが気に食わない人だと。こういうタイプは、頼りにすると親身になってくれる。早速書類集めとデータ整理を言い渡され、作業に没頭することにした。
そして魔法研究課へと配属された初日の仕事が終わろうとした頃、アーロンがランツへ声を掛ける。
「あの、このへんで髪を切ってくれるところありますか?」
「髪? そんなの適当に自分で切ればいいだろ」
「髪伸びるのが早くて邪魔なので人に切って欲しいんです」
「じゃあ修道院のそばにあるところ。あそこが一番近いからそこ行けよ」
「ありがとうございます。ランツさん、頼りにしてます」
「はっ!?」
ランツは驚きつつも、頼りにしてると言われてまんざらでもない様子だ。
「あ、この参考書借ります」
「え、ちょっ、おい!」
さらにアーロンはランツの参考書を拝借し、修道院の側の理髪店へと向かった。
その理髪店は、城の目と鼻の先にある。内部構造は修道院と繋がっているようだが、外からも入れる扉があった。アーロンはドアを開け、中へと入って理髪店を経営しているであろう女性に話かかける。
「髪を切ってもらえますか?」
「は、はい、どうぞ……」
(いつも子供とかばっかりだから男の人珍しい……)
理髪店の経営をしている女性、名をエイミーと言う。
普段は修道院へ通う子どもの髪を切っている。昼間しか店を開けていないため大人の男性が髪を切りに来ることは珍しい。しかもアーロンの整った顔立ちと軽く見上げるほどの高い身長、思わず見つめてしまっていた。
「ケープかけますね」
散髪用のケープをアーロンの首に掛けると、アーロンは本を取り出す。
「本を読んでいてもいいですか?」
「はい、大丈夫です」
こうして散髪中、アーロンはずっと本を読み耽る。
「あの、このへんに引っ越してきたんですか?」
アーロンはエイミーの声に耳を傾けることなく、すぐにまた本の世界に没頭してしまった。エイミーは肩を落としつつも、ハサミを入れる手に力を込めた。
「胸元に紋章つけてるってことは、城で働いてるんですよね?」
(話しかけても無視かぁ。 失礼な人……)
散髪している間にでも会話を交わそうとしたが、アーロンは本から目を離さない。しかし散髪が終わってエイミーが声を掛けると、アーロンは本から目を離し、鏡を見て頷いていた。
「上手ですね」
「あ、ありがとうございます……」
エイミーは普段修道院へ通う子どもの髪を切ることが多いためか、ヘアカットのことで褒められることは無い。初めて言われた言葉に顔を赤らめた。
「お釣りはいりません」
「え、ちょ、ちょっと!」
その後アーロンは多めの金貨を渡し、困惑するエイミーをよそに店を足早に後にした。若い男性が訪れることすら滅多にないのに、来て早々本を読み始め、さらにお釣りを貰う手間すら惜しむかのように去っていくアーロン。エイミーは嵐のようだと感じ、唖然とするしかなかった。
しかもその二週間後、再びアーロンはエイミーの経営する理髪店へやってきたのだ。
「髪、切ってもらえますか?」
「どうぞ……」
アーロンはその後、きっちり二週間に一度のタイミングでエイミーの理髪店へ通うようになった。そのたびに本を読み、切り終わったらお釣りを貰う手間を惜しんで足早に理髪店を出ていく。
(不思議な人……)
普通とは言い難い言動をするアーロンが、エイミーは気になり始めていた。しかし、上手と言われたからには腕を上げたいと意気込むエイミーは、アーロンが来店しない間の日々も毎日ハサミの手入れをしてヘアカットの勉強に励んでいた。
この世界には魔法があるが、人を救えるほど強いものは使えない。争いの火種となり得るからだ。攻撃魔法なども使えず、魔法は免許制。そして魔法大学で学んだ者だけが、城から承認を受けた魔法のみを使うことができる。
そんな世界で、アーロンは魔法研究で人を救う道を選んだ。とくにやりたいことは無かったが、魔法を学ぶことはアーロンにとっては没頭できることのひとつだった。アーロンは国立魔法大学院で魔法を学び、今日城の魔法研究課ラボへと配属され、小太りな室長からの紹介される。
「国立魔法大学院から来た、アーロン・エアハートくんだ」
「よろしくお願いします」
「では今日からアーロンくんにランツくんの研究を手伝ってもらおう」
すると、ランツと室長に呼ばれた小柄でツリ目な男性が一歩前に出て、えっへんと言わんばかりに胸を張ってアーロンを見てくる。
「俺はランツ。お前の方が院卒で年上だけど俺はココの先輩だから、ちゃんと言う事守れよ」
「……。はい」
「そこ! ちゃんと即答しろ!」
「あっ、はい」
「『あっ、』はいらないの!」
(くそ、背が高くてイケメンでなんか余裕綽々で調子狂うな……)
アーロンは一瞬で気づいた。ランツは上下関係に厳しく、自分より後輩のアーロンが上に立たれるのが気に食わない人だと。こういうタイプは、頼りにすると親身になってくれる。早速書類集めとデータ整理を言い渡され、作業に没頭することにした。
そして魔法研究課へと配属された初日の仕事が終わろうとした頃、アーロンがランツへ声を掛ける。
「あの、このへんで髪を切ってくれるところありますか?」
「髪? そんなの適当に自分で切ればいいだろ」
「髪伸びるのが早くて邪魔なので人に切って欲しいんです」
「じゃあ修道院のそばにあるところ。あそこが一番近いからそこ行けよ」
「ありがとうございます。ランツさん、頼りにしてます」
「はっ!?」
ランツは驚きつつも、頼りにしてると言われてまんざらでもない様子だ。
「あ、この参考書借ります」
「え、ちょっ、おい!」
さらにアーロンはランツの参考書を拝借し、修道院の側の理髪店へと向かった。
その理髪店は、城の目と鼻の先にある。内部構造は修道院と繋がっているようだが、外からも入れる扉があった。アーロンはドアを開け、中へと入って理髪店を経営しているであろう女性に話かかける。
「髪を切ってもらえますか?」
「は、はい、どうぞ……」
(いつも子供とかばっかりだから男の人珍しい……)
理髪店の経営をしている女性、名をエイミーと言う。
普段は修道院へ通う子どもの髪を切っている。昼間しか店を開けていないため大人の男性が髪を切りに来ることは珍しい。しかもアーロンの整った顔立ちと軽く見上げるほどの高い身長、思わず見つめてしまっていた。
「ケープかけますね」
散髪用のケープをアーロンの首に掛けると、アーロンは本を取り出す。
「本を読んでいてもいいですか?」
「はい、大丈夫です」
こうして散髪中、アーロンはずっと本を読み耽る。
「あの、このへんに引っ越してきたんですか?」
アーロンはエイミーの声に耳を傾けることなく、すぐにまた本の世界に没頭してしまった。エイミーは肩を落としつつも、ハサミを入れる手に力を込めた。
「胸元に紋章つけてるってことは、城で働いてるんですよね?」
(話しかけても無視かぁ。 失礼な人……)
散髪している間にでも会話を交わそうとしたが、アーロンは本から目を離さない。しかし散髪が終わってエイミーが声を掛けると、アーロンは本から目を離し、鏡を見て頷いていた。
「上手ですね」
「あ、ありがとうございます……」
エイミーは普段修道院へ通う子どもの髪を切ることが多いためか、ヘアカットのことで褒められることは無い。初めて言われた言葉に顔を赤らめた。
「お釣りはいりません」
「え、ちょ、ちょっと!」
その後アーロンは多めの金貨を渡し、困惑するエイミーをよそに店を足早に後にした。若い男性が訪れることすら滅多にないのに、来て早々本を読み始め、さらにお釣りを貰う手間すら惜しむかのように去っていくアーロン。エイミーは嵐のようだと感じ、唖然とするしかなかった。
しかもその二週間後、再びアーロンはエイミーの経営する理髪店へやってきたのだ。
「髪、切ってもらえますか?」
「どうぞ……」
アーロンはその後、きっちり二週間に一度のタイミングでエイミーの理髪店へ通うようになった。そのたびに本を読み、切り終わったらお釣りを貰う手間を惜しんで足早に理髪店を出ていく。
(不思議な人……)
普通とは言い難い言動をするアーロンが、エイミーは気になり始めていた。しかし、上手と言われたからには腕を上げたいと意気込むエイミーは、アーロンが来店しない間の日々も毎日ハサミの手入れをしてヘアカットの勉強に励んでいた。
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