1 / 15
1 婚約者は妹より下なのね
「あ? 今なんつった?」
「だから、君が妹たちより自分を優先してほしいと言うのであれば、それは私には無理なんだ」
「なんで? 私は妻になるのよ?」
「だからねアデル。私は自分の妻に、私と同じように妹たちを愛してほしいんだよ」
「末っ子の私に兄の気持ちになれって?」
「いや、私の気持ちではなく、自分から義理の妹たちを愛してほしいんだ」
「いちばん下の妹だって私より3つも上じゃない!」
「だから早く結婚を片付けないといけないんだ。わかるだろう?」
「私の結婚はどうなるの?」
「何度同じ話をすれば気が済むんだい? 妹たちを全員、あるべき形に納めるまでは、自分の結婚どころではないんだよ」
「じゃあなんで私と婚約したのよ!?」
「君が14才ですこぶる健康だったから」
「もう4年も婚約してるけど?」
「でもまだ18だ、時間はある。いちばん下のフィリスは21になってしまったし、上のふたりもまだ片付いていない」
「それは一昨年のお義父様の遺言で婚外子が3人いるってわかったからじゃない!」
「ああ、手遅れにならずに済んでよかった」
「こっちが手遅れになりそう!」
「ああ、そうだね。こう会う度に不満をぶつけられてはいくら私でも参ってしまうよ。アデル、終わりにさせてくれ」
「妹を優先しないなら婚約破棄って話?」
「そうだ」
私は紅茶を婚約者であるクライトン伯爵エグバート・トーマス卿の顔にひっかけた。あまりにも口論を続けていたから、充分ぬるくなっている。
「……ふぅ」
エグバート卿は溜息をひとつ吐くと、静かに顔と濡れた胸元を拭いている。
末っ子で甘えん坊の私をいつも受け止めてくれた、年上の婚約者。
でも、彼にとって私という存在の優先順位はあまりにも低かった。
「私が君を理解するように、君も私を理解してくれたらと思っていたが。未熟な精神にそれを期待した私が愚かだった」
「侮辱してる?」
「いいや、困惑している。ここまで話しても君は婚約を破棄されるはずがないと思っていそうだからね。君は甘やかされ過ぎていて、それに意義を唱えはしないが、私の妻には相応しくない」
「私に求婚したわよね?」
「ああ、私の過ちだ。これで終わりだよ、アデル」
「はあ?」
「今ここで理解しなくていい。君の御父上が時間をかけて説明してくれるだろう」
エグバート卿は席を立った。
取り残された私が、愛を失って泣いていても、もう振り返りはしなかった。
「だから、君が妹たちより自分を優先してほしいと言うのであれば、それは私には無理なんだ」
「なんで? 私は妻になるのよ?」
「だからねアデル。私は自分の妻に、私と同じように妹たちを愛してほしいんだよ」
「末っ子の私に兄の気持ちになれって?」
「いや、私の気持ちではなく、自分から義理の妹たちを愛してほしいんだ」
「いちばん下の妹だって私より3つも上じゃない!」
「だから早く結婚を片付けないといけないんだ。わかるだろう?」
「私の結婚はどうなるの?」
「何度同じ話をすれば気が済むんだい? 妹たちを全員、あるべき形に納めるまでは、自分の結婚どころではないんだよ」
「じゃあなんで私と婚約したのよ!?」
「君が14才ですこぶる健康だったから」
「もう4年も婚約してるけど?」
「でもまだ18だ、時間はある。いちばん下のフィリスは21になってしまったし、上のふたりもまだ片付いていない」
「それは一昨年のお義父様の遺言で婚外子が3人いるってわかったからじゃない!」
「ああ、手遅れにならずに済んでよかった」
「こっちが手遅れになりそう!」
「ああ、そうだね。こう会う度に不満をぶつけられてはいくら私でも参ってしまうよ。アデル、終わりにさせてくれ」
「妹を優先しないなら婚約破棄って話?」
「そうだ」
私は紅茶を婚約者であるクライトン伯爵エグバート・トーマス卿の顔にひっかけた。あまりにも口論を続けていたから、充分ぬるくなっている。
「……ふぅ」
エグバート卿は溜息をひとつ吐くと、静かに顔と濡れた胸元を拭いている。
末っ子で甘えん坊の私をいつも受け止めてくれた、年上の婚約者。
でも、彼にとって私という存在の優先順位はあまりにも低かった。
「私が君を理解するように、君も私を理解してくれたらと思っていたが。未熟な精神にそれを期待した私が愚かだった」
「侮辱してる?」
「いいや、困惑している。ここまで話しても君は婚約を破棄されるはずがないと思っていそうだからね。君は甘やかされ過ぎていて、それに意義を唱えはしないが、私の妻には相応しくない」
「私に求婚したわよね?」
「ああ、私の過ちだ。これで終わりだよ、アデル」
「はあ?」
「今ここで理解しなくていい。君の御父上が時間をかけて説明してくれるだろう」
エグバート卿は席を立った。
取り残された私が、愛を失って泣いていても、もう振り返りはしなかった。
あなたにおすすめの小説
幼馴染が最優先な婚約者など、私の人生には不要です。
たると
恋愛
シュタイン伯爵家の長女エルゼは、公爵子息フィリップに恋をしていた。
彼の婚約者として選ばれた時は涙を流して喜んだが、その喜びもいまは遠い。
『君は一人でも大丈夫だろう。この埋め合わせは必ずする。愛している』
「……『愛している』、ですか」
いつも幼馴染を優先するアルベルトに、恋心はすっかり冷めてしまった。
【完結】私の婚約者の、自称健康な幼なじみ。
❄️冬は つとめて
恋愛
「ルミナス、すまない。カノンが…… 」
「大丈夫ですの? カノン様は。」
「本当にすまない。ルミナス。」
ルミナスの婚約者のオスカー伯爵令息は、何時ものようにすまなそうな顔をして彼女に謝った。
「お兄様、ゴホッゴホッ! ルミナス様、ゴホッ! さあ、遊園地に行きましょ、ゴボッ!! 」
カノンは血を吐いた。
可愛い妹を母は溺愛して、私のことを嫌っていたはずなのに王太子と婚約が決まった途端、その溺愛が私に向くとは思いませんでした
珠宮さくら
恋愛
ステファニア・サンマルティーニは、伯爵家に生まれたが、実母が妹の方だけをひたすら可愛いと溺愛していた。
それが当たり前となった伯爵家で、ステファニアは必死になって妹と遊ぼうとしたが、母はそのたび、おかしなことを言うばかりだった。
そんなことがいつまで続くのかと思っていたのだが、王太子と婚約した途端、一変するとは思いもしなかった。
婚約者を友人に奪われて~婚約破棄後の公爵令嬢~
tartan321
恋愛
成績優秀な公爵令嬢ソフィアは、婚約相手である王子のカリエスの面倒を見ていた。
ある日、級友であるリリーがソフィアの元を訪れて……。
私から婚約者を奪うことに成功した姉が、婚約を解消されたと思っていたことに驚かされましたが、厄介なのは姉だけではなかったようです
珠宮さくら
恋愛
ジャクリーン・オールストンは、婚約していた子息がジャクリーンの姉に一目惚れしたからという理由で婚約を解消することになったのだが、そうなった原因の贈られて来たドレスを姉が欲しかったからだと思っていたが、勘違いと誤解とすれ違いがあったからのようです。
でも、それを全く認めない姉の口癖にもうんざりしていたが、それ以上にうんざりしている人がジャクリーンにはいた。
【改稿版】婚約破棄は私から
どくりんご
恋愛
ある日、婚約者である殿下が妹へ愛を語っている所を目撃したニナ。ここが乙女ゲームの世界であり、自分が悪役令嬢、妹がヒロインだということを知っていたけれど、好きな人が妹に愛を語る所を見ていると流石にショックを受けた。
乙女ゲームである死亡エンドは絶対に嫌だし、殿下から婚約破棄を告げられるのも嫌だ。そんな辛いことは耐えられない!
婚約破棄は私から!
※大幅な修正が入っています。登場人物の立ち位置変更など。
◆3/20 恋愛ランキング、人気ランキング7位
◆3/20 HOT6位
短編&拙い私の作品でここまでいけるなんて…!読んでくれた皆さん、感謝感激雨あられです〜!!(´;ω;`)
【完結】大好きな彼が妹と結婚する……と思ったら?
江崎美彩
恋愛
誰にでも愛される可愛い妹としっかり者の姉である私。
大好きな従兄弟と人気のカフェに並んでいたら、いつも通り気ままに振る舞う妹の後ろ姿を見ながら彼が「結婚したいと思ってる」って呟いて……
さっくり読める短編です。
異世界もののつもりで書いてますが、あまり異世界感はありません。
結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です
柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。
そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。
真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。
けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。
「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」
彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。
アンリは実は、亡き国王の婚外子。
皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。