妹が最優先という事で婚約破棄なさいましたよね? 復縁なんてお断りよッ!!

百谷シカ

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1 婚約者は妹より下なのね

「あ? 今なんつった?」

「だから、君が妹たちより自分を優先してほしいと言うのであれば、それは私には無理なんだ」

「なんで? 私は妻になるのよ?」

「だからねアデル。私は自分の妻に、私と同じように妹たちを愛してほしいんだよ」

「末っ子の私に兄の気持ちになれって?」

「いや、私の気持ちではなく、自分から義理の妹たちを愛してほしいんだ」

「いちばん下の妹だって私より3つも上じゃない!」

「だから早く結婚を片付けないといけないんだ。わかるだろう?」

「私の結婚はどうなるの?」

「何度同じ話をすれば気が済むんだい? 妹たちを全員、あるべき形に納めるまでは、自分の結婚どころではないんだよ」

「じゃあなんで私と婚約したのよ!?」

「君が14才ですこぶる健康だったから」

「もう4年も婚約してるけど?」

「でもまだ18だ、時間はある。いちばん下のフィリスは21になってしまったし、上のふたりもまだ片付いていない」

「それは一昨年のお義父様の遺言で婚外子が3人いるってわかったからじゃない!」

「ああ、手遅れにならずに済んでよかった」

「こっちが手遅れになりそう!」

「ああ、そうだね。こう会う度に不満をぶつけられてはいくら私でも参ってしまうよ。アデル、終わりにさせてくれ」

「妹を優先しないなら婚約破棄って話?」

「そうだ」


 私は紅茶を婚約者であるクライトン伯爵エグバート・トーマス卿の顔にひっかけた。あまりにも口論を続けていたから、充分ぬるくなっている。


「……ふぅ」


 エグバート卿は溜息をひとつ吐くと、静かに顔と濡れた胸元を拭いている。

 末っ子で甘えん坊の私をいつも受け止めてくれた、年上の婚約者。
 でも、彼にとって私という存在の優先順位はあまりにも低かった。


「私が君を理解するように、君も私を理解してくれたらと思っていたが。未熟な精神にそれを期待した私が愚かだった」

「侮辱してる?」

「いいや、困惑している。ここまで話しても君は婚約を破棄されるはずがないと思っていそうだからね。君は甘やかされ過ぎていて、それに意義を唱えはしないが、私の妻には相応しくない」

「私に求婚したわよね?」

「ああ、私の過ちだ。これで終わりだよ、アデル」

「はあ?」

「今ここで理解しなくていい。君の御父上が時間をかけて説明してくれるだろう」


 エグバート卿は席を立った。
 取り残された私が、愛を失って泣いていても、もう振り返りはしなかった。
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