妹が最優先という事で婚約破棄なさいましたよね? 復縁なんてお断りよッ!!

百谷シカ

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10 愛のない結婚のほうがまし

「結婚、しようかぁっ!?」


 血が昇った。
 私はわなわなと震えて、息が乱れ、生理的に涙が沸いた。


「冗談じゃないわ! 勘違いも程々して。どんな酷い結婚をする事になったとしても、あなたとするよりはましよ! あなたは女を人間とさえ思ってないじゃない!」

「なにを今更」

「は……?」


 エグバート卿は呆れたように手をヒラヒラさせて首を振る。


「父は女に溺れ、妹たちは私に依存。女なんていうものは手が掛かるだけの家畜だ。家畜より質が悪い。言葉を喋るからね。自分がさも一人前の人間のように意見し、男を操ろうとする。それだけでなく、君のように楯突いて罵倒するような女もいる。君のいい所は、娼婦ではなく、後継ぎを産めそうで、名士のコネがある点だ」

「……あなた」

「私だけがそう思ってると思うのか? これだから女は頭が悪いと言うんだよ。女は後継ぎを産む家畜、それだけだ。君が私の求婚を断って誰かの妻になったとしても、君はもの言う家畜だ」

「頭がおかしいのではなくて? それで復縁を迫っているつもり?」

「迫りはしない。手を差し伸べているのさ」


 眩暈がする。
 

「結婚したいだろう?」

「いいえ」

「強がるんじゃない、アデル。みっともない」

「私はあなたの妻に相応しくないのよね? だったらほっといて?」

「君自身は相応しくないが、君にはメイスフィールド伯爵という後ろ盾ができた。その要素は実に好ましい」

「私は貴殿を好ましく思わないが」


 ロイ。

 いつの間にか、ロイが、立っていた。


「これはこれは、メイスフィールド伯爵。私の婚約者が多大な恩寵を受けました事、心より御礼申し上げます」

「貴殿は既にアデルの婚約者ではない」

「撤回したので、私は正式な婚約者です」


 すごい理屈。

 ロイが私に労わる眼差しで寄ってきて、背中を押す。


「アデル、あとは私が。向こうへ行っておいで」

「でも……」


 ふっ、とエグバート卿が笑いを洩らす。


「君は……メイスフィールド伯爵にまで口答えするのか。救いようがないな」

「あなた失礼よ!?」


 エグバート卿は理解できない尊大な事をしでかしている。
 そもそも、ロイに招かれてはいないはずなのだ。


「アデル、私に任せて」


 ロイは落ち着いていた。
 優しく見おろしてくる眼差しは、いつもと同じ慈愛が溢れている。


「……ごめんなさい」


 やっとそれだけ伝えると、ロイは初めて、私の頭を撫でた。
 そして鋭い眼差しをエグバート卿に向けた。
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