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11 美しい愛のために
「事を荒立てるのは本意ではない。結論から申し上げよう。私はアデルの後見人であり、貴殿と結婚させる気は微塵もない。お引き取り願おう」
ロイの口からとは思えないほど、冷たい口調。
でも、頼もしかった。嬉しかった。
「どうかお考え直しください。私は妹たちの結婚で有力貴族たちとの繋がりができました。私たちが団結すれば、あなたを王位継承者として次期王太子に押し上げる事も可能かと」
「王位継承については辞退している」
「それは平民と結婚したからでしょう? もう奥方はいない」
「──」
凍り付いたような沈黙が落ちた。
私は、怒りも頂点を越えると冷えるのだと知った。
「私は、国王の座より家長の椅子に座りたい男なのだよ」
「失敗に終わりましたね。平民でありながら後継ぎも産まずに亡くなってしまった奥方ですが、王位継承者に戻れば花嫁は選びたい放題です。産まれてから選んでもいいでしょう」
「王位継承者を擁立できるほどの力がない事を認識したほうがいいだろう」
「諦める事はありません」
「ありがとう。貴殿は諦めるべきだ」
エグバート卿はきょとんとしている。
「まさか、アデルを手放したくないとか?」
「……」
「まあ、気持ちはわからなくもないですが……なんといっても多産な家系ですからね。ですが見た限り、手はつけていらっしゃいませんよね? 結婚相手を探しているわけですし」
「アデルに幸せな結婚をしてもらうために、吟味している」
「私には財産もコネもあります」
「貴殿は誰よりもアデルの心を傷つける」
「心!」
エグバート卿が、笑いだした。
「心ですか、これは傑作だ!」
「なにが言いたい?」
「アデルを完璧な花嫁にと教育しながら、奥方の肖像画を飾り続けているではありませんか! 平民にすら及ばないという事を見せつけて、傲慢な心を砕こうと尽力されている!!」
「……侮辱するな」
「奥方ですか? アデルですか? 奥方は侮辱していませんよ。なんといってもあの美貌ですからね。まあ飾っておく価値はありますよ。本人も喜んでいるでしょう。さしずめ自身が壮麗な織物というところですな!」
私は大股でエグバート卿に近寄り、その頬をひっぱたいた。
頭が、目が、体が。
燃えるように熱い。
静かに涙が零れ落ちる。
「謝って」
「……この無礼も──」
「ロイに謝りなさいよ!! このくそったれクズ野郎ッ!!」
ロイの口からとは思えないほど、冷たい口調。
でも、頼もしかった。嬉しかった。
「どうかお考え直しください。私は妹たちの結婚で有力貴族たちとの繋がりができました。私たちが団結すれば、あなたを王位継承者として次期王太子に押し上げる事も可能かと」
「王位継承については辞退している」
「それは平民と結婚したからでしょう? もう奥方はいない」
「──」
凍り付いたような沈黙が落ちた。
私は、怒りも頂点を越えると冷えるのだと知った。
「私は、国王の座より家長の椅子に座りたい男なのだよ」
「失敗に終わりましたね。平民でありながら後継ぎも産まずに亡くなってしまった奥方ですが、王位継承者に戻れば花嫁は選びたい放題です。産まれてから選んでもいいでしょう」
「王位継承者を擁立できるほどの力がない事を認識したほうがいいだろう」
「諦める事はありません」
「ありがとう。貴殿は諦めるべきだ」
エグバート卿はきょとんとしている。
「まさか、アデルを手放したくないとか?」
「……」
「まあ、気持ちはわからなくもないですが……なんといっても多産な家系ですからね。ですが見た限り、手はつけていらっしゃいませんよね? 結婚相手を探しているわけですし」
「アデルに幸せな結婚をしてもらうために、吟味している」
「私には財産もコネもあります」
「貴殿は誰よりもアデルの心を傷つける」
「心!」
エグバート卿が、笑いだした。
「心ですか、これは傑作だ!」
「なにが言いたい?」
「アデルを完璧な花嫁にと教育しながら、奥方の肖像画を飾り続けているではありませんか! 平民にすら及ばないという事を見せつけて、傲慢な心を砕こうと尽力されている!!」
「……侮辱するな」
「奥方ですか? アデルですか? 奥方は侮辱していませんよ。なんといってもあの美貌ですからね。まあ飾っておく価値はありますよ。本人も喜んでいるでしょう。さしずめ自身が壮麗な織物というところですな!」
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頭が、目が、体が。
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