妹が最優先という事で婚約破棄なさいましたよね? 復縁なんてお断りよッ!!

百谷シカ

文字の大きさ
14 / 15

14 溢れるほどの愛を、あなたに

「あなたの事を、誰か他の男性の隣で思い出すより、ひとりで神様に祈りたいの」

「アデル」

「あなたは愛を教えてくれた」

「アデル。君だけを愛する男が、必ず」

「違う。どう愛してくれるかではなく、ただ、私があなたを愛したのよ」

「君に」


 ロイが声を落とした。


「求婚すると、言ったら……?」


 恐れを宿した瞳のままで、彼は私に問いかける。
 私は涙を零しながら、心から微笑んだ。


「幸せになるわ」

「……!」


 ロイが痛みを堪えるように目を閉じた。
 そして、ふいに忌々しそうに首を振った。


「あの男の言った事で、ひとつ、正しい事がある」

「え?」

「君を手放したくない。他の男にも、神にさえも、渡したくないんだ」


 私は椅子を蹴って彼に抱きついた。
 彼は、抱きとめてくれた。


「ロイ……!」

「アデル、ごめんよ。私の妻になってくれ」

「喜んで!!」


 どちらともなく熱いキスを交わす。

 彼は泣きそうな顔で、私の頬を撫でた。


「君が望むなら、クィンシーの肖像画をしまう」

「望まないわ」


 抱きしめる彼の力に逆らって、私は彼の頬を撫でた。
 今にも泣きそうな、愛に溢れる、ひとりの可愛い男性。


「あなたがふたりを愛しているのは、抱えきれない大きな愛を神様が与えてくれたからだわ。あなたが奥様を深く愛しているのは、私がいちばんよく知っているもの。その深い愛で私も愛されているのだから、いいの。毎日、クィンシーの顔を見あげて嫉妬するのだって幸せよ」

「そんな……もっと我儘を言っておくれ」

「それじゃあ、なにがあっても絶対に私を諦めないで」

「わかったよ、アデル」


 彼が強く、縋るように私を抱きしめて震え出した。
 泣いているのだと、思った。


 その後、私たちは1年の婚約期間を設けてから結婚した。
 それは万が一、私に運命の相手が現れたら後戻りできるように、という謎の配慮だったのだけれど、私を深く愛してくれる伯爵がいるという現実は驚くほど私を癒してくれた。
 結局、ロイは私に、素敵な婚約者の気持ちを教えてくれたのだと思う。

 ロイは王位継承を辞退していたけれど、国王陛下には愛されていた。
 エグバート卿は爵位を剥奪され、追放されたようだった。ただ私には知らされていない。それもロイの配慮なのだと思う。耳に届くわずかな噂話も、すぐになくなった。まるで、そんな人物ははじめからいなかったかのように、消えていた。

 だけどもう、私には関係のない事だった。
 愛する人と、愛しあって、生きていくのだ。

 そして──結婚式の、夜。


「アデル。私に残された時間は、あまり長くはない」

「ええ」

「この命ある限り、君を幸せにするよ」

「負けないわ」


 私はロイの頬を両手で挟み、その熱い瞳を覗き込んだ。


「私も命の限り、あなたを幸せにする。たくさん子供を産んで、あなたより長生きするの。あなたは、年下の可愛い妻と、愛する子供たちに囲まれて生きるのよ。思う存分、愛を注いでね」


 そして私たちは、ロイの深く大きな愛に包まれて、永く永く、幸せに暮らした。
 愛する事を教わりながら。


                             (終)
感想 67

あなたにおすすめの小説

幼馴染が最優先な婚約者など、私の人生には不要です。

たると
恋愛
シュタイン伯爵家の長女エルゼは、公爵子息フィリップに恋をしていた。 彼の婚約者として選ばれた時は涙を流して喜んだが、その喜びもいまは遠い。 『君は一人でも大丈夫だろう。この埋め合わせは必ずする。愛している』 「……『愛している』、ですか」 いつも幼馴染を優先するアルベルトに、恋心はすっかり冷めてしまった。

【完結】私の婚約者の、自称健康な幼なじみ。

❄️冬は つとめて
恋愛
「ルミナス、すまない。カノンが…… 」 「大丈夫ですの? カノン様は。」 「本当にすまない。ルミナス。」 ルミナスの婚約者のオスカー伯爵令息は、何時ものようにすまなそうな顔をして彼女に謝った。 「お兄様、ゴホッゴホッ! ルミナス様、ゴホッ! さあ、遊園地に行きましょ、ゴボッ!! 」 カノンは血を吐いた。

可愛い妹を母は溺愛して、私のことを嫌っていたはずなのに王太子と婚約が決まった途端、その溺愛が私に向くとは思いませんでした

珠宮さくら
恋愛
ステファニア・サンマルティーニは、伯爵家に生まれたが、実母が妹の方だけをひたすら可愛いと溺愛していた。 それが当たり前となった伯爵家で、ステファニアは必死になって妹と遊ぼうとしたが、母はそのたび、おかしなことを言うばかりだった。 そんなことがいつまで続くのかと思っていたのだが、王太子と婚約した途端、一変するとは思いもしなかった。

婚約者を友人に奪われて~婚約破棄後の公爵令嬢~

tartan321
恋愛
成績優秀な公爵令嬢ソフィアは、婚約相手である王子のカリエスの面倒を見ていた。 ある日、級友であるリリーがソフィアの元を訪れて……。

私から婚約者を奪うことに成功した姉が、婚約を解消されたと思っていたことに驚かされましたが、厄介なのは姉だけではなかったようです

珠宮さくら
恋愛
ジャクリーン・オールストンは、婚約していた子息がジャクリーンの姉に一目惚れしたからという理由で婚約を解消することになったのだが、そうなった原因の贈られて来たドレスを姉が欲しかったからだと思っていたが、勘違いと誤解とすれ違いがあったからのようです。 でも、それを全く認めない姉の口癖にもうんざりしていたが、それ以上にうんざりしている人がジャクリーンにはいた。

【改稿版】婚約破棄は私から

どくりんご
恋愛
 ある日、婚約者である殿下が妹へ愛を語っている所を目撃したニナ。ここが乙女ゲームの世界であり、自分が悪役令嬢、妹がヒロインだということを知っていたけれど、好きな人が妹に愛を語る所を見ていると流石にショックを受けた。  乙女ゲームである死亡エンドは絶対に嫌だし、殿下から婚約破棄を告げられるのも嫌だ。そんな辛いことは耐えられない!  婚約破棄は私から! ※大幅な修正が入っています。登場人物の立ち位置変更など。 ◆3/20 恋愛ランキング、人気ランキング7位 ◆3/20 HOT6位  短編&拙い私の作品でここまでいけるなんて…!読んでくれた皆さん、感謝感激雨あられです〜!!(´;ω;`)

【完結】大好きな彼が妹と結婚する……と思ったら?

江崎美彩
恋愛
誰にでも愛される可愛い妹としっかり者の姉である私。 大好きな従兄弟と人気のカフェに並んでいたら、いつも通り気ままに振る舞う妹の後ろ姿を見ながら彼が「結婚したいと思ってる」って呟いて…… さっくり読める短編です。 異世界もののつもりで書いてますが、あまり異世界感はありません。

結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です

柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。 そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。 真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。 けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。 「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」 彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。 アンリは実は、亡き国王の婚外子。 皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。