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8 狂気の沙汰ですね
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あら。まあ。ほんとに。
──と、母が目を丸くして、口を動かしている。もうそこまでいったら声を出したらいいのに、と思うけれど、母はどこまでも無口だった。
次兄フレデリックは違った。
「殺そう」
あら、まあ。本気?
と、母がまたしても口の動きだけで問いかける。
「やめてくださいよ。せめて結婚するまで。彼女の花嫁衣裳にシミひとつつけたくないですよ、俺は。赤でも黒でも」
フェドー伯爵令息……私の愛するロイクが、穏便に次兄へ物申しながら抉るような目つきで牽制している。
「私の義弟はいくじなしか」
「女のためにケチのつかない結婚式やってなにが悪い?」
「喧嘩しないで」
私は眉をさげ困ったふりでふたりの間に割って入った。
「喧嘩じゃないさ、フランシーヌ。お前の夫になる男となぜ喧嘩するんだ」
「ああ、そうそう! 建設的な議論ってやつ!」
ロイクと次兄がこちらに笑顔を向けたままがっしりと握手を交わして、空いたほうの手で互いの腕を力いっぱい叩いている。激励のようでも、牽制のようでもある。八つ当たりのようでも。
「お兄様が留守の間も、彼は私を守って下さいました」
「!」
次兄がシュンとする。
ロイクが勝ち誇った笑みで次兄をもう一叩きしてから離れ、私の肩に腕を回した。
「じゃあ、そういうわけで。街へ行ってきます」
「ええ。行って参ります」
「……わかった」
「植物園で異国風の庭園で語らうだけですから。マダム・シャサーヌにはお土産は不要ですね。久しぶりに地元の味をご堪能ください。メリザンド! 行こう!!」
「はぁい! ロイク様!! では奥様またぁ~♪」
3人でうきうきと出て行く私たちを、次兄はしょんぼり見送っている。母はそんな次兄を慰めながら、笑顔で手を振ってくれた。
こうして私たちは街へ繰り出し、まずティータイムを堪能して、それから巨大な植物園へと足を運んだ。
植物園は強固な硝子の塔で、日の光をふんだんに取り入れて異国の植物たちを活き活きと茂らせており、広々としたやや幻想的な庭園のようになっている。日中は貴族や学者や豪商に開放され、夕方から夜にかけて平民に開放されているとの事だった。
「まるで楽園ね」
馴染みのない甘い花の香りに、艶めかしくさえ見える果実、人工的な潺に続く小さな噴水……どれもこれも美しい。
「そのうちひょっこり動物が現れそうですね!」
「リスとか?」
メリザンドと腕を組んではしゃいでいると、ロイクが指先で肩を叩いてきて、見ると無言で焼き菓子の売り子を指差していた。そして私の返事を待たずに歩いて行ってしまう。
「お優しい方ですねぇ♪」
「ね。あなたも仲良くしてくれてありがとう」
「そぉんな! とぉんでもないっ!」
そもそもロイクは、人に好かれるのだと思う。
優しく頼もしいロイクが抜群のセンスで私たちの喜ぶ焼き菓子を選んでくるという確信に胸を躍らせつつ、私とメリザンドは立札を音読していた。太い幹と分厚く大きな葉を持つ巨大な樹木は、硝子の塔の中でひっそりとした木陰を作り出していて、その周りに光の粒が舞い、植物園は本当に美し──
「いい加減にしてくれ!」
「ひえっ!?」
「!?」
その声に、私とメリザンドは互いを抱きしめ飛び跳ねた。
振り向くと、そこには案の定、ディディエ伯爵令息アンリ・ヴァイヤンが息巻いていた。青筋を浮かべた額は汗で光り、走ったように息が上がっている。
私たちが後ずさった分、彼も距離を詰めて来た。
「そうやって僕につきまとえば、僕が思い直すとでも思っているのか? 僕たちは終わったんだ! つけ回すのはやめてくれ!!」
「お……っ」
メリザンドが一早く恐怖を克服し、身を挺して私を庇ってくれる。
「お言葉ですが、つけ回していらっしゃるのはそちらではッ!?」
「使用人は黙ってろ!!」
元婚約者が唾を飛ばして怒鳴る。
私はメリザンドに並んで初めて怒りをぶちまけた。
「メリザンドに怒鳴らないで!!」
「そうやって自分を正当化するのか!? 君は、善人のふりをして僕につきまとって被害者ぶるのか!? そういう汚い人間だとわかっていたから僕は──」
「!」
私は見た。
元婚約者の後ろで、掌にキイチゴのパイを構えた、無慈悲な憤怒の表情を浮かべたロイクの姿を。
「ダメ!」
パイが!!
「うっ!」
私は力いっぱい元婚約者を突き飛ばした。
美しく可憐なキイチゴのパイを、忌々しい元婚約者の汚い頭部にぶつけてしまうなんて、あってはならない事だ。
「えっ!? お嬢様ッ!?」
「はっ!? なんでッ!?」
元婚約者ディディエ伯爵令息アンリ・ヴァイヤンが草場に倒れ、メリザンドとロイクが驚愕に目を剥く中、寸でのところで手を止めたロイクの掌から重力と遠心力に従って飛ぶように落ちたキイチゴのパイが私の顔面に命中した。
「んっ」
「はああぁぁぁぁぁぁっ! フランシーヌ……ッ!!」
「お嬢様……っ!!」
べっちょりしている。甘い香り。
あと、前が見えない。
すぐさまメリザンドが私の顔を拭き始めた。見えなくてもそれくらいわかる。
「ごっ、ごめん……っ」
ロイクの掠れた声に、
「いいの」
と答えた瞬間、口の中に甘いクリームと甘酸っぱいジャムが滑り込み、それがあまりに美味しくて笑みが零れてしまった。
「く……っ、僕を守ってご満悦じゃないか! 気持ち悪いんだよ!! やめてくれ!!」
頭のおかしい元婚約者がそう叫んだ直後、メリザンドが私から離れた。
それから私の耳に届いたのはロイクの舌打ちとメリザンドの金切り声、それに続く元婚約者の痛がる声だった。
私は目を閉じたまま口の周りをはしたなく舐めて、ひとり、幸せを噛み締めていた。不謹慎だけど、とっても幸せだった。
──と、母が目を丸くして、口を動かしている。もうそこまでいったら声を出したらいいのに、と思うけれど、母はどこまでも無口だった。
次兄フレデリックは違った。
「殺そう」
あら、まあ。本気?
と、母がまたしても口の動きだけで問いかける。
「やめてくださいよ。せめて結婚するまで。彼女の花嫁衣裳にシミひとつつけたくないですよ、俺は。赤でも黒でも」
フェドー伯爵令息……私の愛するロイクが、穏便に次兄へ物申しながら抉るような目つきで牽制している。
「私の義弟はいくじなしか」
「女のためにケチのつかない結婚式やってなにが悪い?」
「喧嘩しないで」
私は眉をさげ困ったふりでふたりの間に割って入った。
「喧嘩じゃないさ、フランシーヌ。お前の夫になる男となぜ喧嘩するんだ」
「ああ、そうそう! 建設的な議論ってやつ!」
ロイクと次兄がこちらに笑顔を向けたままがっしりと握手を交わして、空いたほうの手で互いの腕を力いっぱい叩いている。激励のようでも、牽制のようでもある。八つ当たりのようでも。
「お兄様が留守の間も、彼は私を守って下さいました」
「!」
次兄がシュンとする。
ロイクが勝ち誇った笑みで次兄をもう一叩きしてから離れ、私の肩に腕を回した。
「じゃあ、そういうわけで。街へ行ってきます」
「ええ。行って参ります」
「……わかった」
「植物園で異国風の庭園で語らうだけですから。マダム・シャサーヌにはお土産は不要ですね。久しぶりに地元の味をご堪能ください。メリザンド! 行こう!!」
「はぁい! ロイク様!! では奥様またぁ~♪」
3人でうきうきと出て行く私たちを、次兄はしょんぼり見送っている。母はそんな次兄を慰めながら、笑顔で手を振ってくれた。
こうして私たちは街へ繰り出し、まずティータイムを堪能して、それから巨大な植物園へと足を運んだ。
植物園は強固な硝子の塔で、日の光をふんだんに取り入れて異国の植物たちを活き活きと茂らせており、広々としたやや幻想的な庭園のようになっている。日中は貴族や学者や豪商に開放され、夕方から夜にかけて平民に開放されているとの事だった。
「まるで楽園ね」
馴染みのない甘い花の香りに、艶めかしくさえ見える果実、人工的な潺に続く小さな噴水……どれもこれも美しい。
「そのうちひょっこり動物が現れそうですね!」
「リスとか?」
メリザンドと腕を組んではしゃいでいると、ロイクが指先で肩を叩いてきて、見ると無言で焼き菓子の売り子を指差していた。そして私の返事を待たずに歩いて行ってしまう。
「お優しい方ですねぇ♪」
「ね。あなたも仲良くしてくれてありがとう」
「そぉんな! とぉんでもないっ!」
そもそもロイクは、人に好かれるのだと思う。
優しく頼もしいロイクが抜群のセンスで私たちの喜ぶ焼き菓子を選んでくるという確信に胸を躍らせつつ、私とメリザンドは立札を音読していた。太い幹と分厚く大きな葉を持つ巨大な樹木は、硝子の塔の中でひっそりとした木陰を作り出していて、その周りに光の粒が舞い、植物園は本当に美し──
「いい加減にしてくれ!」
「ひえっ!?」
「!?」
その声に、私とメリザンドは互いを抱きしめ飛び跳ねた。
振り向くと、そこには案の定、ディディエ伯爵令息アンリ・ヴァイヤンが息巻いていた。青筋を浮かべた額は汗で光り、走ったように息が上がっている。
私たちが後ずさった分、彼も距離を詰めて来た。
「そうやって僕につきまとえば、僕が思い直すとでも思っているのか? 僕たちは終わったんだ! つけ回すのはやめてくれ!!」
「お……っ」
メリザンドが一早く恐怖を克服し、身を挺して私を庇ってくれる。
「お言葉ですが、つけ回していらっしゃるのはそちらではッ!?」
「使用人は黙ってろ!!」
元婚約者が唾を飛ばして怒鳴る。
私はメリザンドに並んで初めて怒りをぶちまけた。
「メリザンドに怒鳴らないで!!」
「そうやって自分を正当化するのか!? 君は、善人のふりをして僕につきまとって被害者ぶるのか!? そういう汚い人間だとわかっていたから僕は──」
「!」
私は見た。
元婚約者の後ろで、掌にキイチゴのパイを構えた、無慈悲な憤怒の表情を浮かべたロイクの姿を。
「ダメ!」
パイが!!
「うっ!」
私は力いっぱい元婚約者を突き飛ばした。
美しく可憐なキイチゴのパイを、忌々しい元婚約者の汚い頭部にぶつけてしまうなんて、あってはならない事だ。
「えっ!? お嬢様ッ!?」
「はっ!? なんでッ!?」
元婚約者ディディエ伯爵令息アンリ・ヴァイヤンが草場に倒れ、メリザンドとロイクが驚愕に目を剥く中、寸でのところで手を止めたロイクの掌から重力と遠心力に従って飛ぶように落ちたキイチゴのパイが私の顔面に命中した。
「んっ」
「はああぁぁぁぁぁぁっ! フランシーヌ……ッ!!」
「お嬢様……っ!!」
べっちょりしている。甘い香り。
あと、前が見えない。
すぐさまメリザンドが私の顔を拭き始めた。見えなくてもそれくらいわかる。
「ごっ、ごめん……っ」
ロイクの掠れた声に、
「いいの」
と答えた瞬間、口の中に甘いクリームと甘酸っぱいジャムが滑り込み、それがあまりに美味しくて笑みが零れてしまった。
「く……っ、僕を守ってご満悦じゃないか! 気持ち悪いんだよ!! やめてくれ!!」
頭のおかしい元婚約者がそう叫んだ直後、メリザンドが私から離れた。
それから私の耳に届いたのはロイクの舌打ちとメリザンドの金切り声、それに続く元婚約者の痛がる声だった。
私は目を閉じたまま口の周りをはしたなく舐めて、ひとり、幸せを噛み締めていた。不謹慎だけど、とっても幸せだった。
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