生きづらいと思ったら発達障害でした。

黄昏の空

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第3章

仕事とは、いざ働いてみたら。

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結局あっさり決まってしまったホテルの仕事。
あまりにも急で、頭が追いつかなかったけれど、とりあえずちゃんとした仕事に就けた安心感を持って、アルバイトを辞めた。

ホテルでの仕事は最初の半年はアルバイト、それ以降は契約社員で働けると言われた。
何にせよ、いずれ契約社員になれるならある意味立派な社員だと自分なりに納得。

最初はトレーの持ち方から練習が始まった。
一度も経験したことはないけれど、これは意外にも難なくクリア。
職場の人達もみんな優しくていい人ばかりだった。
新人ということもあってか、他の部署のお偉いさん達が次々と私の様子を見に来ていた。
見られるたびに恥ずかしさと、失敗は出来ない緊張感が生まれた。

次に教わったのは接客の仕方。
これは1番重要なんじゃないかと思うジャンルだ。
でも、これも難なくクリアできた。
むしろ、対応が良いとお客様から褒められるくらいだった。

おかしいな、私コミュニケーション苦手だし、人付き合いも苦手なはずなのに接客は上手にできるんだ。

ちょっと自信が持てた。

次に教わったのはお客様から注文を受けてくること。
オーダーってやつだった。
伝票はなぜか筆記体の英字でメニューを書いて持って来なきゃいけないシステムらしく、これも少し時間はかかったが、作る側に読んで貰えるレベルまでには上達した。

一連の流れは、お客様が来たら席へご案内→お水を出す→オーダーを承る→作り手に作ってもらい、出来上がった物をお客様へ運ぶ。
これが出来ればアルバイトとしてはオッケーだった。

あとは灰皿の交換の仕方が独特だったり、よっぽど暇な時はちょこちょこお掃除をするなど軽作業。

ここまでは、ほぼ問題なくクリアできた。

が、しかし次のステップで私は初めてつまづいた。

アルバイトが終わり、契約社員となった私に次に任されたのはお会計、つまりレジの管理と自分の後輩にあたるアルバイトの子達に的確な指示を出すことだった。

最初は手取り足取り詳しく、細かく上司に教えてもらった。
暇な日はお会計も後輩への指示もゆっくりできるからいいのだが、ここのホテルは敷地内にコンサートホールが付いていて、コンサートがある日には社員でさえテンパるくらい混んでしまう。
そうなった時にお会計はぐちゃぐちゃ、後輩への支持も上手く出来ない、普段後輩がやっている仕事までこちらに回ってくる。

その時初めて自分の中でパニックになってしまい、何もできなくなってしまった。

動けなくなった私をみて、上司はガツガツ私に指示してくる。

待って、今の私には上司の言っている意味がわからない。
理解できない。
言われるがままに動くも、お客様のオーダーを間違えるし、持っていくものも間違える、挙げ句の果てにはお客様の目の前でコーヒーやらビールをひっくり返す始末だった。

忙しい時間帯が終わった後、上司にこっぴどく叱られた。
「あなたは上の立場にいるんだから、もっとちゃんと後輩に指示しないとダメじゃない!」
「どうして毎回同じことが起こるのに、いつまでも出来ないの!」
「一連の流れは教えたでしょう?まだ覚えられないの!?」

そんなこと言われたって、私だって頭ではわかってるのに、頭の中で整理が出来ないのに…。

悔しくてホールの裏に行って思いっきり仕事中に泣いた。
初めて悔しくて泣いた。

上司が言うように、確かにそうだ。
私はいつまでも一連の流れが覚えられない。
「臨機応変」ってことが出来ない。
上の立場になっても、逆に後輩に教えられる事も多々あった。

私よりも先に入っていたアルバイトの子にでさえ、「ちゃんと指示してよ!」と怒られたことがある。

私って何なんだろう。
どうしてこんなに物覚えが悪いの?

気付いたら、毎朝出勤したら上司から「ダメ出しノート」と書かれた、私専用のノートが作られていた。

その中には、決まって必ず前日に出来ていなかったことがビッシリ書いてあった。

毎朝そのノートを読む。
おかしいな、読んでいるのに頭に入ってこない。
上司が出勤してくると、「ノートに書いた内容わかった?」と決まって聞かれた。
わかっていないのに、「はい…。」と答えることしか出来なかった。

こんなことが約3年間続いた。

この時は、私は単純に仕事が出来ない子なんだと、それくらいにしか思わなかった。
ただ、鈍臭いんだと、仕事が出来ないのは自分でも理解していたから。

気付いたら私は22歳になっていた。

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