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第二話:月乃先生
しおりを挟むその日の放課後、べには八宵を月読学園一階の角にある生徒会室に案内することにした。
「生徒会ってさ、普段どんな事してるの~?」
八宵は隣を歩くべにに問う。
「まぁ、普段は校内のイベント主催したり、新聞作ったり……校内の清掃とか、挨拶運動とかもしてるんだけどな……」
べには他にも何か大事な事を言いたげにしているが、八宵はというと
「イベントの主催とか楽しそうだな~僕も……」
と色々一人で妄想をしている。そうこうしていると二人は生徒会室の前に着く。背伸びして扉のすりガラスの窓を覗くと、どうやら月乃は生徒会室にいるようだ。
「お前のお目当て、もう来てるぞ」
にひひ……とべには八宵に笑いかけると、八宵も気合いを入れて生徒会室に飛び込む事にした。八宵が生徒会室に入ると、月乃は窓際で何か書類を眺めているようであった。長めの銀がかった前髪の下で琥珀色の瞳を覗かせている。黒いスクエア型のフレームにかかる髪の毛はサラサラと春風に揺れ、その瞳はどこか虚空を捉えている。全体的にミステリアスで近寄りがたい雰囲気を放ってはいるが、どこか優しそうなオーラも垣間見える。八宵は、少しの間窓際に佇む月乃に見惚れてしまっていた。生徒会室にやって来た八宵に気がつくと、月乃は開口一番
「誰……?」
と首を傾げている。べには、八宵を紹介しだす。
「書記の子が学校来れなくなって、ここ最近何かと人手不足だろ?暇そうな知り合い連れて来たんだけど、雑用係にどうかな?」
しばらくぼーっと見惚れてしまっていた八宵は、そうだ!と思い出したかのように慌てて自己紹介しだす。
「僕、水城八宵って言います……!二年です!僕も生徒会に入りたくて……雑用でもなんでもお手伝いするんで、どうでしょうか?!」
とやる気を見せている。しかし、月乃はというと、
「いや……いきなりどうでしょうか、とか言われても困るんだけど……」
と急な八宵の押しに引いてしまい、困惑している。べには月乃に近づくと、小声でこいつ、どうかな?等と何かこそこそと耳打ちしている。月乃は八宵の事をじっと見つめて、そうだなぁ……等と何か考えているようだ。月乃は
「生徒会が、今人手不足なのは確かなんだけど……ちょっと……ちゃんと確認しておかなきゃいけない事もあるんだよね。悪いんだけど、明日の夜、生徒会室に来れる?夜の七時頃なんだけど……無理なら無理で構わないから……」
と月乃は何か書類を確認しながら八宵に提案する。八宵は二つ返事で
「明日!!夜大丈夫です!来ます!!」
と声高々に宣言してしまった。
――
生徒会室の帰り、八宵はニヤニヤと笑いながら嬉しそうに、べにに声をかける。
「先生……〝夜に来て……”だってさ~。ちょっとえっちじゃない?夜の学校とか……。大丈夫かなぁ?」
と何か心配するにしては、ひどくにやけた表情を浮かばせている。色々と妄想が止まらない八宵であったが、その横でべには
「まぁ……お前が期待してるような事にはならないと思うけどな……」
と小さな声で呟いている。何か色々と妄想に忙しいのか、その呟きに八宵は気が付いていないようであった。
時刻は通常生徒の下校時間となり、外は薄暗い夕刻になっていた。その日は、八宵はべにと共に下校することにした。べには隣を歩く八宵に
「月乃とか……無愛想でちょっと怖くないか?あいつ生活指導もしてるから普段生徒に結構キツイし……。あんなセンコウのどこが良いの?」
と聞いてみた。八宵はべにの方を向くと、よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに
「月乃ってさ、ちょっと怖いイメージあるけど、僕はそんなことないと思うよ?勿論ミステリアスでクールな所もすっごく格好良いと思ってるけど……。普段の目つきがさ、すごく優しんだもん。僕、月乃の瞳がすごく好きだなぁ……なんか、ずっと見ていたいって思えるんだ」
と清々しく話し始める。それを聞いたべには
「ふーん……そんなもんかなぁ」
と不思議そうにしている。八宵とべにが談笑しながら最寄りの駅に向かう道中、二人の横を勢いよく自転車に乗った一人の男子生徒が通りかかった。茶髪に漆黒の瞳を覗かせているその男子生徒は、八宵の幼馴染である。
「あっ!ルイ!今日の練習終わったんだ!またさ~野球見に行くからね~」
と八宵は通りすがって行くその男子生徒に向かって大きな声をかけている。べにはその男子生徒を見ながら
「ルイじゃん。あいつ、何気に生徒会の副会長なんだよな~お前の幼馴染らしいけど、あいつあれで割と成績も優秀だし、野球もうまいし、ウチは月乃より断然ルイの方が良いと思うんだけどな~」
と通りすがって行くルイを横目で見ている。八宵はというと
「あいつ……あれで副会長とか生意気~!!昔は僕より背低くて泣き虫で頼りない感じだったくせに~」
とブーブー言っている。その後も八宵による月乃についてのプレゼンが行われていたが、べにはハイハイとどこか適当に受け流しているのであった。
八宵は、明日、夜の学校で!と一人心躍らせているのであった。
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