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10月-3 クレープ大作戦
しおりを挟む拝啓お父さんお母さん、お元気ですか。
あなた達の息子は立派に成長しました。
ですがーー
私の女装姿を見たら何を思うんでしょうね。
あの日から数日後、俺は再びウィッグをかぶっていた。
昨日メールで『クレープを食べてみたい‼︎』などというご要望があったからだ。
流石にお店は早くね?と思って聞いてみたらなんと作るとか言い出した。
なんか……あいつすっごいわがままじゃない?
まさか本性がそれなのか?
断るという選択肢も残されてはいたが断ったらあの限界を迎えてた辛そうな顔が頭に浮かび断ろうにも俺の良心が断るのを拒絶していた。
仕方なく約束した場所へ行くと…
なんということでしょう輝かしいオーラを放つ人物の隣に場違いなクーラーボックスが鎮座しているではございませんか。
「やぁ、ユリ。待ってたよ」
クーラーボックスの主がそう話しかけてくる。
「数日ぶりだな、七瀬。もしかしてあのクーラーボックスが?」
「ふっふっふ~よくぞ聞いてくれたね。見てよこのセットを!」
七瀬が自慢げにクーラーボックスを開けるとクレープ生地とクリームに加え、チョコ、色とりどりのフルーツが用意されていた。
「うっわすっごよく集めたねこんな量…ところで作り方はわかるの?」
「………!」
うわ~持ってきただけだよこの人…。
ドヤ顔で材料をアピールするだけで何も言わないので多分そういうことだろう。
「はぁ…そんなことだろうと思ったよ。一応俺は作れるから…」
「私」
「あ、私」
「俺」と言ったことを瞬時に訂正してきた。
今まで俺で慣れていた分ボロが出やすいから注意しないとな~(遠い目)
「とりあえず…クレープ、作りましょうか」
「わーい」
七瀬今日一の笑顔。
王子様っぽくないのは明らかだがそのための契約だし七瀬が嬉しいなら……いいとしよう。
早速俺たちはクレープ生地を敷けるよう机の上を綺麗にして紙の皿を置いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
《クレープの作り方‼︎》
まずは生地全体の8分の1をホイップクリームで中心が尖るよう絞ります。
その上にフルーツをホイップクリームの形に合わせ、縦に刺すようのせます。
この時お好みでチョコソースやアーモンドスライスをのせるのもおすすめです。
そしてクレープを半分におり、フルーツをのせたところを軸に巻けば完成です。
ちなみにこの状態からアイスや追いクリーム、追いチョコレートなどをすればより見栄えが良くなります。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そんなこんなで俺たちは気の向くままにクレープを作り続けた。
材料が尽きるまで、満足するまで作り続けた。
こうして作り終わった後、重大なことに気づいた。
ー流石に作りすぎた、と。
もしかしたら作る量を3個とかで止めておけばまだ食べ切れたかもしれない。
しかし今机の上には10数個の出来上がったクレープが……!
自分たちで作ったくせに残すのはかなり勿体無いので俺と七瀬は覚悟を決めて席に着き、バナナとチョコのクレープにかぶりついた。
ん!クレープの生地もっちりしてるやつだ。
食材がちょうど良い感じに調和しててお互いがお互いを邪魔してない。
巻いただけだとはいえ結構味のバランスがいい。
これなら何個か食べれそう!
2個目ーー
時期的にいちごは売ってなかったけどいちごソース甘酸っぱくて美味しいね
3個目ーー
あっ、パリパリチョコおいしい~
4個目ーー
うん…うん…
5個目ーー
…………….
6個m…
待て待て待て待て4個目で限界だよこれ!
重すぎるんだよ!クリームが!チョコが!
お腹とくどさに限界を感じ七瀬に目をやれば、笑顔ではいるもののずっと手が動いていない。
「なあ七瀬、残ったクレープどうする?」
俺が尋ねるが返事は返ってこない。
まだ机にはクレープが5個ほど転がっている。
「お、おーい 七瀬さーん…」
「ごめんユリ、お水をひとつもらえないかな。なんというか……少々まずい状況なんだ……」
おっと~七瀬さん大ピンチです。
これは急がないと本当に駄目なやつだ。
というわけで自販機に走って冷えたお水を買って持ってきた。
そして現在進行形で危ない七瀬にそれを渡す。
「んっ、んっ、んっ…ふぅ…危なかった~。ありがとうユリ」
「……」
「ゆ、ユリ?」
「ひょっとして甘いの苦手で無理してたりする?」
当然の疑問だ。
なにせ彼女は2個目の最初であの状態だったのだから。
「い、いや、そういうわけじゃないんだ。むしろ甘いのは好きだよ。 ただ…慣れてないだけかな」
俺は腕組みをしてしばらく悩んだ末に1つの答えにたどり着いた。
「もしかして今までと違うことをやろうと焦りすぎてない?」
俺がこう聞くと七瀬の体が固まった。
どうやら図星のようだ。
「やっぱりね。 こういうのはのんびりでいいんだよのんびりで。だってどう動いたとしても、毎日は続いてくんだから」
「い、いいのかな…そんな贅沢なことして…
で、でもさ、その日やろうとしたことが出来ないとせっかくの時間なのにもったいない気がするんだ…」
「いや、違うよ。出来なくたっていいんだ。自分がやりたいことをやりたい時にやりたいだけなんて出来るわけないんだ。ならさ、私たちは私たちなりのぺースで進んで行けばいいんだよ。詰め込んだら余計嫌」になっちゃうからね」
俺がそう言うと七瀬は少しだんまりし出した。
「…そうか、そうだね。ありがとう、ユリ。君がいてくれてよかったよ」
七瀬が微笑む。
「お、おう…そ、そんなことよりクレープ!余ったクレープを早くなんとかしようよ‼︎」
七瀬に内心ドキっとしつつもバレないように話題の転換を試みる。
「あ、あぁそうだったね。どうする?半分ずつで持ち帰る?」
「いや、君のところあんま食べないでしょ。いいよ。大半は私が持って帰るから無理しないで」
結局勢いで持ち帰った大量クレープを家族と片付けることとなり、妹から叱責を食らうのだった。
作りすぎ、ダメ。ゼッタイ。
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