今日も僕らは日常を着飾る 〜契約から始まる他校の王子様系女子とのヒミツなカンケイ〜

柿本紬樹

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11月-4 決着‼︎球技大会

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木暮潤羽は顔も上げようとせずただうつむくだけの親友を見つめていた。
奏汰は決して手を抜いていた訳ではない。
むしろ全力であった。
全力を尽くしてこんなに突き放されたのは初めてだった。
ファンの子も、チームメイトも、潤羽でさえも声をかけられないでいた。


聖麗院綾子はわかっていた。
こちら側が圧倒的有利な勝負を挑んでいることに、そしてそれほどまでして勝ちたかったことに。
それ故に自分の全力をもって、七瀬奏汰を倒しにいった。
だがその反面で、七瀬奏汰にはこの様な醜態で終わらせてほしくないとも思っていた。
気づけば綾子は奏汰の眼前に立っていた。

「この程度なんて言いませんわよね?この状態で勝ったとしてもわたくしは勝ちなんて認めたくありませんわよ。何か思い詰めているのではなくて?」

そう言うと綾子はきびすを返して立ち去っていった。
これは彼女なりの挑発でもあり、激励でもあったのだ。

「……」
時間にしては短かったが奏汰にとっては長い時間の後、久しぶりに彼女の顔が見えた。
奏汰は自分の親友を見つめ、胸の内にあった感情を解きほどいていく。
ほどき終わった奏汰にはもう前半終了時の曇った顔など一片もなく、晴れ晴れとした心地よい顔だった。

後半へのホイッスルが響く。
さっきとは異なり、軽やかながらも一歩を踏みしめるようにコートへと入場した。

そして2人は再び対峙する。
「先ほどよりいい顔ですわ。それでこそわたくしが認めたというもの」

片方は決意に満ちた顔、もう片方は余裕さを崩さずにで見つめあっている。

後半が始まり奏汰にボールが渡った途端、音を置き去りにして敵陣地を掻い潜っていった。
動き出しから既に前半とはまるっきり違った。
速さも、キレも、それに呼応するかのようにチームの動きも自然と良くなってゆく。

ものの10数秒でゴールを奪うとこれから反撃の狼煙のろしを上げると言わんばかりにチームメイトに声をかける。
奏汰の熱に押されたのか重苦しかったチームの雰囲気もやる気に満ちたものになっていくように見えた。

45-23
得点差が少しずつ縮まってきた。

52-34
同じクラスの子の応援が勢いを増してゆく。

58-45
動揺したのか相手チームの守備に乱れが生じ、その隙にかなり点が入り点差が10点ちょっととなった。

62-58
あと4点差。
ここで気を抜くなとチームを引き締めた。

68-59
相手も意地を見せ突き放してゆく。
だが折れない、最後の1秒まで勝ちを狙いにいく。

64-62
「よくここまで追いつきましたわね、七瀬さん。ですがもう諦めなさい。この状態で点数なんて入るわけがありませんから」

そう、奏汰は今スリーポイントが取れる場所からからだいぶ離れており、味方も体力に限界を迎えていたため近くにおらず周囲の人はは相手チームしかいなかった。
その上時間もわずか6秒ほどしか残されていなかった。

普通なら入らない、そう普通なら。
勝つためにはこの位置から直接決める必要があった。
奏汰はスリーを決める姿勢をとった。
この場にいるもの全員が息を呑む。

「ありがとう綾子くん、僕わかったよ。人は大切なもののためなら何だって出来るんだってね」

放たれた球は美しい弧を描き、吸い込まれるようにネットを通った。

電光掲示板に3点が追加された瞬間、試合終了を告げるホイッスルが鳴り響いた。

会場が喜びと驚きの色に包まれ、チームメイトが喜びを露わにする。
奏汰も流石に疲れ果てたのかその場に腰を下ろした。
珍しい姿に他の子が心配をかけるもすぐさま笑顔を見せ黄色い歓声が湧き上がった。

奏汰が囲まれている一方で綾子は息を整えながら立ち尽くしていた。

綾子は持てる力を全て出し切った。
あのまま何も言わなければ勝てたかもしれない。
でも見てられなかった、綾子がずっとライバル視し続けていた七瀬奏汰の姿じゃなかったから。
負けたけど清々しい気分だった、もっとぶつかりたいとも思った。
そう感じていると奏汰が近づいてきた。

「いい勝負だった、改めて言わせてもらうよ。ありがとう」

「わたくしが認めた方ですもの、当然ですわ。……ところで、あの時交わした約束をお忘れでなくって?」

「え、えーと……何でもお願いを聞くみたいなのだったっけ?とはいってもなあ……あ、何で僕に勝負を挑んだの?」

「そ、それは……羨ましかったからですわ。最初はただ目の敵にしているだけでした。ですがあなたが周りの方々と仲良くしているのを見てわたくしはいいなあと思ってしまったのですわ……何か言葉はございますか!!」
綾子が恥ずかしげに、最後の方はヤケクソ気味に声を出す。

「いや、ないけど……それならさ、僕と友達になろうよ。これ約束のお願いね」

「い、いいのですか?」

「構わないよ。君との生活も何だか楽しめそうだしね」

「~~~~~~~っ!」
綾子から声にもならない声が出た。

「ふふ、これからよろしくね」

「よろしくお願いします、ですわ!……ところで、あの時の子を大切な存在だと言っていたように聞こえましたが、いかに?」

「ああ、やっと答えに辿たどり着けたよ。あの子は僕にとって潤羽くらいに、僕が生きる上でいなくてはならない存在なんだよ」

綾子は絶句した。
まさか……まさか……女の子同士の恋愛だなんて!!
胸の鼓動が速まってしまいますわ!

そう聖麗院綾子は箱入り娘であった。
である故に恋愛ごとには興味津々であらぬことに妄想を膨らましていたのであった……!
彼女はしばらく勘違いしてしまう。
ユリの正体について、また2人の関係について。

こうして奏汰の周りがより賑やかになったのであった。











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