6 / 114
初等部編
教室でラブコメとか恥ずかしすぎるだろ_1
しおりを挟む事故から二週間、お医者様からもう復学されてもいいですよと言われた。
「復学?」
「ええ。お怪我なさったのでお休みしていたのですよ」
侍女のリラが、当然だという表情で答える。
「どこを?」
「どこって……王立アカデミーの初等部に決まってるじゃありませんか……」
だめだわ、まだ記憶が……とリラが遠い目をした。
王立アカデミー!
『銀水晶の聖女』の舞台だ。16歳の高等部入学から物語が始まる。「私は初等部なのね」とフムフムうなずく私を見て、リラが頭を抱えていた。
翌朝、久しぶりに袖を通したアカデミーの制服はグレーが基調で胸元のリボンが可愛い印象だった。身支度が済むころ、ノックの音がする。部屋を訪ねてきたのは、弟のジュリアンだった。
ジュリアン・マエル・ルテール。11歳で初等部二年生。
ふわふわの金髪に青い瞳。兄と違って少し気の強そうな目元は母親そっくりだ。
「おはよう、お姉様。今日から一緒に行ける?」
いつも一緒に通学していたから、アリスが休んでいたこの二週間、寂しかったのだという。「お姉様が元気になってよかった!」と言ってジュリアンが笑った。
とっても可愛い。姉のひいき目じゃない。本当に可愛い。この子は中身も可愛いのだ。
あの事故の直後、意識を失った私の横で、ジュリアンは両親に「僕はお姉様を守れなかった!ごめんなさい!ごめんなさい!」と謝っていたという。目を覚ましたあと、その顛末を聞いて、私は健気で優しい子じゃのう……とババアのように目を細めていたものだ。
「お姉様、足元に気を付けてね」
「ありがとう、ジュリアン」
馬車に乗るため、踏み台に足を掛けたとき、弟がそう言いながら優しく私の背を支えてくれた。紳士だ。こいつ絶対将来モテる。いやすでにモテてるかもしれん。
ジュリアンが乗り込み、ジュリアンの侍女エミリーが乗り、一番最後に、私の侍女カーラも同乗する。定員四人の馬車なのでリラはお留守番となった。
カーラは先日の事故をきっかけに私のお付き侍女になった。療養中はリラだけでは手が足りなかったからだ。それにリラはルテール公爵家の分家筋のお嬢様でもある。良縁があればいずれどこぞの貴族のもとへお嫁にいってしまうだろう。その時の代わりになる人材を探して公爵夫人が引っ張りあげたらしい、と馬番のモハメド爺さん(※事情通)に聞いた。
カーラは下働きの下女の中でも特に真面目で優秀だったらしい。カーラに字を教え、礼儀作法を教え、いつリラに縁談がきてもいいように、と準備していたそうだ。いまのところリラ自身が「お嬢様より先にはいきません」と言ってるので、だいぶ先になりそうなのだが……。
「カーラと話すのは初めてだよね、よろしくね」
ジュリアンが優しく笑っていた。
弟ジュリアンは兄マクシムと違ってゲームには登場しない。『私』はアリスに弟がいるなんて知らなかった。ついでに言うと両親も出てこない。だいたいアリスは脇役だし、恋愛ゲームに親が出てくるとか、想像すると何だかこそばゆい。
ゲームの世界とはいえ、子どもは木の股から生まれるわけじゃない。親がいれば兄弟だっている。
そう、だから、私はひとつ期待していることがあるのだ。
この世界に生きる人に会えるのだということ。
私が会いたいあの人がいるということ。
0
あなたにおすすめの小説
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私は実は“本物の聖女”でした。
さら
恋愛
私――ミリアは、クラスで地味で取り柄もない“都合のいい子”だった。
そんな私が、いじめの張本人だった美少女・沙羅と一緒に異世界へ召喚された。
王城で“聖女”として迎えられたのは彼女だけ。
私は「魔力が測定不能の無能」と言われ、冷たく追い出された。
――でも、それは間違いだった。
辺境の村で出会った青年リオネルに助けられ、私は初めて自分の力を信じようと決意する。
やがて傷ついた人々を癒やすうちに、私の“無”と呼ばれた力が、誰にも真似できない“神の光”だと判明して――。
王都での再召喚、偽りの聖女との再会、かつての嘲笑が驚嘆に変わる瞬間。
無能と呼ばれた少女が、“本物の聖女”として世界を救う――優しさと再生のざまぁストーリー。
裏切りから始まる癒しの恋。
厳しくも温かい騎士リオネルとの出会いが、ミリアの運命を優しく変えていく。
すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした
珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。
色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。
バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。
※全4話。
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。
樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」
大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。
はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!!
私の必死の努力を返してー!!
乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。
気付けば物語が始まる学園への入学式の日。
私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!!
私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ!
所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。
でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!!
攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢!
必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!!
やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!!
必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。
※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。
※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。
小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました〜モブのはずが第一王子に一途に愛されています〜
みかん桜
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。
ここは、乙女ゲームが舞台の小説の世界だった。
悪役令嬢が主役で、破滅を回避して幸せを掴む——そんな物語。
私はその主人公の姉。しかもゲームの妹が、悪役令嬢になった原因の1つが姉である私だったはず。
とはいえ私はただのモブ。
この世界のルールから逸脱せず、無難に生きていこうと決意したのに……なぜか第一王子に執着されている。
……そういえば、元々『姉の婚約者を奪った』って設定だったような……?
※2025年5月に副題を追加しました。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる