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初等部編
幕間 公爵家のとある冬の日_2
しおりを挟む美味しい朝食後に、通学のため制服を着る。外出するとなると、うんざりするほど重装備になる。
モコモコした木綿の外套、モコモコした貂のマフ、お揃いのモコモコのショール。丈夫な編み上げ靴。
馬車の中も寒くて、私は思わず呟いた。
「ババシャツ欲しいなぁ……」
「お姉様、ばばしゃつ?」
「なんでもないの。ただヒートテックってすごい技術なんだなって思っただけ」
吸湿発熱の仕組みを利用したヒートテックを生前の私は重宝していた。寒がりで冬が苦手なのは今も変わらない。この世界にも化学繊維とユニクロと東レがあればいいのにな。レーヨン作れる人が転生してこないかしら……。来ないか。
「ひーとてっく……」
ジュリアンが首を傾げている。そういえばジュリアンは大きくなったら貿易がしたいと言っていた。課外活動でも語学を学んでいる。
「ジュリアン、大きくなったら外国で見つけた良い物をたくさん輸入してね」
「うん、お姉様に一番に売るからね!買ってね!」
「くれないんだ、しっかりしてるな……。わかった。一番に買うから、頑張ってたくさん勉強してね」
もうすぐ学園に着く。西図書館は、書庫の帯出禁止の本も含めてほとんど調べつくした。
分かったのは、いくつかの文献に「魔女狩り」についての記述が散見されることと、おとぎ話の「銀水晶の聖女」には娘が生まれているバージョンがあるということだった。
足りない頭で推測すると、ヒロインはおそらくおとぎ話に出てくる神と人間との間に生まれた「銀水晶の聖女」の子孫。「魔女狩り」が本当にあったとしたら、この国はその凄惨な歴史を文字として残さなかった。ただ、数百年前なら仕方ないかもしれない。もうそれを確かめることは考古学的な分野になるだろう。
父に頼んで近いうちに王宮図書館にも行かせてもらおうと思う。
ただ、王宮へ度々訪問すれば、やはり王太子殿下の事実上の婚約者なのだと世間に知らしめるようなものだから、本当は行きたくない。でも死にたくない。ジュリアンが「ひーとてっく」を開発するか輸入するまでは死にたくないなあと思っていた。
王宮図書館に行ったら、またエリアスに手紙を書こうと思う。
もう会うことは諦めた。もともと高等部入学まで会えないと思っていたし。
舞踏会の日に会えたことが、奇跡みたいなものだったのだから。
でも本当は会いたかった。
私がいつも使う栞には、貰った白百合を押し花にしてある。お兄様に教えてもらったのだが、あの白百合は帝国原産で、とある公爵がグレースという名の夫人に贈るために品種改良をしたから「グレース」と呼ばれていることを。
エリアスはそんな逸話は知らないかもしれない。でも知ってたらうれしいな……と勝手に思っていた。
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