私に悪役令嬢は無理でした!でも好きな人がいるから頑張ります!

ゆきづき花

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高等部編

ヒロインちゃんと王子様

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「王子様とお姫様と騎士。物語の登場人物としてこの三人がいた場合、恋をするのはお姫様と騎士なのよねぇ」

 そう言ったのは、いつの間にかいたサシャだった。

 サシャは「エリアス、うっかりなんだろうけど、学園内でそれはダメよ。アレックスだってしてないわ。それにならって」と言って跪いていたエリアスを立たせていた。

「サシャ。笑えない冗談はやめてくれないか。それは巷に溢れた物語だろう?王子と姫の間に愛情があれば問題ない」
「……まあね。物語の話よ」

 そう言ったサシャは、珍しく笑っていない。
 物凄く気まずい。

 遠くから音楽隊の演奏が聞こえてくる。ダンスが始まったんだろう。
 このダンスでラファエル様は主人公ソフィアと踊る。ダンスに慣れなくて躓いてしまった彼女を抱きとめて、ふたりで庭園の東屋で休むのが序盤のストーリー。そこはポンコツ頭の私でもさすがに覚えていた。
 なぜなら飛ばせないイベントだったから……。

「私はいいので、ラファエル様は是非、歓迎会にお戻りください。皆、ラファエル様と踊る機会を頂けることを楽しみにしておりますのよ。是非、身分問わず、お誘いくださいませ」
「わかったよ。でも最初は君とだ」

「…………仰せのままに、殿下」

 私はあえて殿下と呼んだ。いつも笑顔のサシャは何だか不機嫌そうで、私の意図にも気づいてると思う。でもラファエル様は気にしてないようだった。


 今年の社交シーズンの舞踏会で、ラファエル様とは何度も踊っている。ラファエル様は元々ダンスもとても上手だし、私もたくさん練習させられた。だから自然と息も合っていると思う。一曲踊り終えて下がると、カミーユが「素敵でした」と言い、ジュリエットが「やっぱりお似合いですわ」と笑っていた。
 普通に受け取れば友人の誉め言葉なんだけど、コラリィからすれば嫌味だったんだろう。

「ダンスなんて覚える機会なかったもの。いいわねえ、お貴族様は。パーティして遊んで暮らしてさあ。食べる物に困ってひからびたニンジンかじった経験なんか無いんでしょうね」
「ココ、やめて」

 ソフィアがコラリィの暴言をとめようとしたのか、前に出た時に、後ろの人に押されてしまったようで、私のそばでよろけて転んでしまった。とっさにソフィアを助けようと手を伸ばしたら、コラリィがその手をはねのけた。

「付き飛ばすなんて酷いわ!」

 コラリィが発したそのセリフの意味が分からずに呆然としていると、私の隣にいたラファエル様がソフィアを抱き起こす。ソフィアは少し頬を染めていてとても可愛らしい。

「大丈夫かな?」
「はい……殿下……。あっ!」

 立とうとしていたが、足を痛めたようで、ソフィアが顔をしかめている。

「少し休んだ方がいい」

 二人の間に漂う甘い空気を隣で吸い込んで、私は思っていた。


 ……飛ばせないイベントはやはり飛ばせなかった……。


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