105 / 114
高等部編
フランドル伯の質問
しおりを挟むガブリエルが紋章院に戻った後、私とエリアスは資料を集めてメモをとったり、話し合ったりしていた。フランドル伯も加わってくれて、これまで孤独に作業していた私はとても楽しかった。
成果は三つ。
魔法はない!
悪魔はいる!
聖女は悪魔を封じることができる!
以上。
「はあ……。結局、悪魔封じって自力では何とか出来ないのかあ」
「どうしてアリスは、悪魔の存在を信じてるの?」
エリアスの素朴な疑問に、私は答えることが出来なかった。
とてもじゃないけど「ここが前世の『私』が知ってる世界で、シナリオ上、私が悪魔を呼ぶらしいんです」とは言えない。
日も暮れて閉館時間が迫ってきたし、フランドル伯も疲れたご様子だったので、私達は帰り支度を始めた。ラファエル様が待ってて欲しいと言ってたけど帰っちゃっていいよね。
さっさと車寄せに行こうとするとまたフランドル伯に話しかけられた。
「今日一日、あなたを観察させてもらった」
うん、やっぱりね。何を言われるんだろう。
「アリス嬢、あなたは何を知っていて、何を隠している?」
質問が直球。でもこればっかりは、答えるわけにはいかない。
「いずれ来る、国難について心当たりがあるのです。でもそれは言えません。でも、隠し事があるのは、フランドル伯も同じでは?」
私がそう言うと、フランドル伯は一瞬だけ視線を鋭くして、相好を崩した。「ご存知でしたか。お互い様でしたな」と言って、顔をくしゃくしゃにして笑っていた。
「時に、エリアスは学園ではどんな様子かな?」
急に話題が変わってびっくりしたけど、私は笑って答えた。
「とても勉強熱心で真面目で素敵です」
「友達はいるのだろうか?」
「たくさんいますよ。エリアスは誰にでも優しいですから」
「そうか……。儂は長年、亡くなったエリアスの祖父と懇意にしておった。だから、それこそ本当の孫のように可愛いのだ。これまで色々と我慢させてきたから、ほんのわずかな期間かもしれないが、年相応に学園生活を楽しんでいるとうれしいのだよ」
笑ってるフランドル伯を見ていると、心からそう言ってるのだろうなと思った。
ラファエル様は「エリアスの祖父と両親の事について」知っていると言った。フランドル伯は悪い人じゃない。きっとフランドル伯と仲が良かったというエリアスのお祖父様も、きっと悪い人じゃない。そう思った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,738
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる