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10、三度お持ち帰りしたラズル隊長の挙動不審の原因を解明する
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酔ったキースをどうやって連れ帰ったかに遡ります。
_________________________________________
キースの「合同訓練」案が採用された。
試験的にキース隊とうちのラズル隊での合同訓練が行われ、訓練だというのに確かな成果を上げた。これまでで合同出動のたびに「お疲れ様会」と合同飲み会を数度重ねたことによって培われた一体感によるものだ。
「そら見た事か」と飲み代も補助しろと申請したがやはり却下された。
申請は却下されたがその夜、キースの復帰祝いを兼ねた合同飲み会が開催された。もはや恒例になりつつある。
「やはり共同訓練はすべきでしたね。これで他とも連携が取れるようになれば効率も安全性もあがるでしょう」
キース隊のべランド副隊長が確信に満ちた口調で言う。
「ですよねぇ。だったら飲み代くらい安いモンだろうと思うんですけどケチ臭い」
「よく合同飲み会なんて会議で言えますよね、ラズル隊長はそこがすごいです」
べランド副隊長と話しているとうちのロイが困ったような顔で寄って来た。
「あーお話中すみません。ちょっといいですか」
言葉を濁し、他へと向けられたロイの視線を辿ればキースが瞑想に入っていた。
「あ? キース? どしたお前」
怪我明けの慣れない訓練で疲れたか?
意外な事もあるもんだと寄って行って尋ねれば、目を閉じたまま会話には応じる。
変わった酔い方をするもんだ。
「今日はお開きだな」
べランド副隊長と意見は一致し、官舎に戻る隊員がキースを一緒に連れ帰ると言ったが。
「帰りますよ」とキースに肩を抱かれた。
誰か一人酔いつぶれると他は割と冷静になるもんで、今夜の俺は正気だ。
それなのに酩酊状態でも俺を家まで連れ帰るという使命を感じているとか、俺はどれだけこいつに手がかかると思われているのか。
顔を上げればうちの逞しく頼りになる女性陣が「あわよくばお持ち帰りアリですか?」という顔で待ち構えている。うちの女性隊員が持ち帰るとなると今すぐキース隊長をかけた女性隊員によるデスマッチが開催されるだろう。魔術部隊の女の子達も黙っているはずがない。せっかくみんな仲良くなったというのに後で女性隊員同士険悪になる可能性があるし、女性には警戒しているキースもキレるかもしれない。
「あー、連れて帰っていいですかね」
べランド副隊長を振り返り、許可を求めれば困ったように笑ってお願いされたので家に連れ帰った。
人の肩を抱きしっかりとした足取りだったが道中キースは一度も目を開けなかった。そういう魔術の使い方があるんだろうか。
「お前、飲み過ぎるといつもこうなのか?」
居間のソファに座らせながら問う。
「ラズル隊長、独身主義というのは本当ですか?」
完璧な酔っ払いだ。人の話を聞いちゃいない。
ハイハイと適当に流して水を取りに台所へ向かう。
「恋人も作らないと聞きましたが」
まだ店の、飲みの席という感覚なのか?
手を添えてグラスの水を飲ませ、テーブルにグラスを置いてダイニングの椅子に座るとようやく目が合った。
思いのほかしっかりした目で見て来る。真剣に聞きたいらしい。あとで覚えているかどうかは別だが。
「まぁなぁ。昔怪我した時にしこたま泣かれたんだよ。んで女房子供を泣かせたりつらい思いをさせるのは嫌だなーと」
「情が深くて寂しがりなのに?」
キースの言葉に思わず笑ってしまった。知った風な口を利く。
「ちゃんと理解してくれる女性もいるでしょう。それこそ軍人とか」
「まぁ、そうなんだがなぁ」
そうなんだけど、そういう気にはなれないんだよなぁ。自分に何かあった時『軍人なんかしてたから』とあとあとまでやりきれない思いをさせちまいそうで寄る辺を求めることはやめた。
その辺を説明するのも理解してもらう気にもなれず、誤魔化すように聞き返した。
「お前は? 女の子苦手なのか? 結婚するならこんな子がいいとかないワケ?」
「……いい母親、でしょうか」
お、おおう。マジでか。しばらく黙り込んだ後に語られたその答えに思わず唖然となった。
こりゃ予想外だ。
「おま、そりゃなかなか……人の趣味にどうこう言うつもりはねぇが、さすがに不倫はやめとけ」
余計なことかと思いつつも人生の先輩として言わずにはいられなかった。キースはひどく嫌そうな、馬鹿にしたような何とも言えない表情を浮かべる。
「なんで不倫なんですか。そんな事するわけないじゃないですか。なんでそうなるんですか」
「ママさんがいいんだろ?」
「違いますよ。子供に温かい食事を食べさせて、子供を褒めて抱きしめるような人なら幸せな家庭が築けるんじゃないかって」
「へぇ……家庭的な子がいいのか。ちょっと意外だな」
言ってしまってから気付いた。
そういやこいつは養子で、引き取られた家には馴染んでないんだったか。
それなら「あたたかい家庭」に憧れる気持ちもあるだろう。
「なんか要らんこと言ったな」
俺の考えは完全に水を差すもんだった。
「わりぃ。俺が気にし過ぎるだけだ。お前の言うように仕事に理解のある子や軍関係の女の子と一緒になればいいんだよな」
あたたかい家庭に憧れるキースに聞かせる話じゃなかったと詫び、取り繕ったけれども。
あ~~~~
恐ろしく己の過去を悔いた。
「朝勃ちのチンコちょっと挿れてみ?」とか言っていい相手じゃなかったぁぁぁぁ。
顔がいいから女性経験豊富と決めつけて、その中に一人ぐらい男が混じっててもいいだろ?って軽く聞いちまったんだよぉ。
うわ、めっちゃ後悔してきた。
コイツが真面目なのは分かってたけど、そっち方面までそんなに真面目だとは。
純情青年を誑かしたらいかんわな。
なんか悪い事した感がハンパねぇ。
そこからは「目が覚めてるうちに着替えて寝ようぜ」と寝る支度をさせてベッドに押し込んだ。途中からキースはまた瞑想モードだったが、こうなりゃ都合がいい。
ベッドに一緒に入るのは申し訳なさに気が進まなかったが、なぜかキースがつかんだ俺の襟元を放さなかったので限界まで端に寄って寝た。
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キースの「合同訓練」案が採用された。
試験的にキース隊とうちのラズル隊での合同訓練が行われ、訓練だというのに確かな成果を上げた。これまでで合同出動のたびに「お疲れ様会」と合同飲み会を数度重ねたことによって培われた一体感によるものだ。
「そら見た事か」と飲み代も補助しろと申請したがやはり却下された。
申請は却下されたがその夜、キースの復帰祝いを兼ねた合同飲み会が開催された。もはや恒例になりつつある。
「やはり共同訓練はすべきでしたね。これで他とも連携が取れるようになれば効率も安全性もあがるでしょう」
キース隊のべランド副隊長が確信に満ちた口調で言う。
「ですよねぇ。だったら飲み代くらい安いモンだろうと思うんですけどケチ臭い」
「よく合同飲み会なんて会議で言えますよね、ラズル隊長はそこがすごいです」
べランド副隊長と話しているとうちのロイが困ったような顔で寄って来た。
「あーお話中すみません。ちょっといいですか」
言葉を濁し、他へと向けられたロイの視線を辿ればキースが瞑想に入っていた。
「あ? キース? どしたお前」
怪我明けの慣れない訓練で疲れたか?
意外な事もあるもんだと寄って行って尋ねれば、目を閉じたまま会話には応じる。
変わった酔い方をするもんだ。
「今日はお開きだな」
べランド副隊長と意見は一致し、官舎に戻る隊員がキースを一緒に連れ帰ると言ったが。
「帰りますよ」とキースに肩を抱かれた。
誰か一人酔いつぶれると他は割と冷静になるもんで、今夜の俺は正気だ。
それなのに酩酊状態でも俺を家まで連れ帰るという使命を感じているとか、俺はどれだけこいつに手がかかると思われているのか。
顔を上げればうちの逞しく頼りになる女性陣が「あわよくばお持ち帰りアリですか?」という顔で待ち構えている。うちの女性隊員が持ち帰るとなると今すぐキース隊長をかけた女性隊員によるデスマッチが開催されるだろう。魔術部隊の女の子達も黙っているはずがない。せっかくみんな仲良くなったというのに後で女性隊員同士険悪になる可能性があるし、女性には警戒しているキースもキレるかもしれない。
「あー、連れて帰っていいですかね」
べランド副隊長を振り返り、許可を求めれば困ったように笑ってお願いされたので家に連れ帰った。
人の肩を抱きしっかりとした足取りだったが道中キースは一度も目を開けなかった。そういう魔術の使い方があるんだろうか。
「お前、飲み過ぎるといつもこうなのか?」
居間のソファに座らせながら問う。
「ラズル隊長、独身主義というのは本当ですか?」
完璧な酔っ払いだ。人の話を聞いちゃいない。
ハイハイと適当に流して水を取りに台所へ向かう。
「恋人も作らないと聞きましたが」
まだ店の、飲みの席という感覚なのか?
手を添えてグラスの水を飲ませ、テーブルにグラスを置いてダイニングの椅子に座るとようやく目が合った。
思いのほかしっかりした目で見て来る。真剣に聞きたいらしい。あとで覚えているかどうかは別だが。
「まぁなぁ。昔怪我した時にしこたま泣かれたんだよ。んで女房子供を泣かせたりつらい思いをさせるのは嫌だなーと」
「情が深くて寂しがりなのに?」
キースの言葉に思わず笑ってしまった。知った風な口を利く。
「ちゃんと理解してくれる女性もいるでしょう。それこそ軍人とか」
「まぁ、そうなんだがなぁ」
そうなんだけど、そういう気にはなれないんだよなぁ。自分に何かあった時『軍人なんかしてたから』とあとあとまでやりきれない思いをさせちまいそうで寄る辺を求めることはやめた。
その辺を説明するのも理解してもらう気にもなれず、誤魔化すように聞き返した。
「お前は? 女の子苦手なのか? 結婚するならこんな子がいいとかないワケ?」
「……いい母親、でしょうか」
お、おおう。マジでか。しばらく黙り込んだ後に語られたその答えに思わず唖然となった。
こりゃ予想外だ。
「おま、そりゃなかなか……人の趣味にどうこう言うつもりはねぇが、さすがに不倫はやめとけ」
余計なことかと思いつつも人生の先輩として言わずにはいられなかった。キースはひどく嫌そうな、馬鹿にしたような何とも言えない表情を浮かべる。
「なんで不倫なんですか。そんな事するわけないじゃないですか。なんでそうなるんですか」
「ママさんがいいんだろ?」
「違いますよ。子供に温かい食事を食べさせて、子供を褒めて抱きしめるような人なら幸せな家庭が築けるんじゃないかって」
「へぇ……家庭的な子がいいのか。ちょっと意外だな」
言ってしまってから気付いた。
そういやこいつは養子で、引き取られた家には馴染んでないんだったか。
それなら「あたたかい家庭」に憧れる気持ちもあるだろう。
「なんか要らんこと言ったな」
俺の考えは完全に水を差すもんだった。
「わりぃ。俺が気にし過ぎるだけだ。お前の言うように仕事に理解のある子や軍関係の女の子と一緒になればいいんだよな」
あたたかい家庭に憧れるキースに聞かせる話じゃなかったと詫び、取り繕ったけれども。
あ~~~~
恐ろしく己の過去を悔いた。
「朝勃ちのチンコちょっと挿れてみ?」とか言っていい相手じゃなかったぁぁぁぁ。
顔がいいから女性経験豊富と決めつけて、その中に一人ぐらい男が混じっててもいいだろ?って軽く聞いちまったんだよぉ。
うわ、めっちゃ後悔してきた。
コイツが真面目なのは分かってたけど、そっち方面までそんなに真面目だとは。
純情青年を誑かしたらいかんわな。
なんか悪い事した感がハンパねぇ。
そこからは「目が覚めてるうちに着替えて寝ようぜ」と寝る支度をさせてベッドに押し込んだ。途中からキースはまた瞑想モードだったが、こうなりゃ都合がいい。
ベッドに一緒に入るのは申し訳なさに気が進まなかったが、なぜかキースがつかんだ俺の襟元を放さなかったので限界まで端に寄って寝た。
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