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極めし力
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草を踏みながら歩く音が聞こえて、後ろを振り返る。
母親は俺がサボっていないか見にきたのだろう。
最初の頃は筋肉痛だし、嫌だったから何度もやめたいと思っていた。
でも今はそんな事はない、こうしてちゃんと毎日言いつけを守って修行している。
今では言われなくてもやったりするから、ほめてもらいたいな。
実際は滅多に人を褒める人達ではないから褒めて伸ばしてくれるのは諦めているけど…
「お母さん!今日はいっぱいだよ!」
「……」
「このくらいあれば一週間は持つかな」
「ルシア」
「俺、ちゃんと修行して武器の扱いになれたよ!だから街に行っても役に立つから」
「…思っていたのと違う」
母親は不満な顔も隠そうとせず、俺に言っていた。
言う事ちゃんと聞いて、こうして修行をしてきたのに違うって酷い話だな。
割った薪を抱えて、俺は家に帰ろうと歩いていた。
さっきの斧は薪割り専用のものだ、山暮らしだと焚き火は大切だからね。
これさえあれば、街でも薪割り職人としてやっていけるぞ!
母親の違うって意味も分かっている、悪役として悪役らしく武器を使って…とかだろうな。
俺の武器は薪を使うために、俺の手は草むしりするためのものなんだ。
小屋の横に薪を重ねて、今日もいい汗掻いたなぁ…と満足する。
ちょっと筋肉付いてきたし、薪割りとランニングくらいじゃ筋肉はそんなに付かないのかな。
「ルシア、お前に薪割りさせるために斧を与えたわけではない」
「えー、でも俺かなり上達したよ」
「それはそうだろうが」
「あっ!あっちにいい木がある!行ってくる!」
俺は母親の話を遮るように、木に向かって走った。
俺の斧は薪割り専用なんだから、別にいいんだ。
こうやっていつもかわしている、誰が悪役なんかになるか!
追加の薪を持って、家に帰ると焚き火の準備をした。
ライターやマッチがないから、原始的に石を擦り合わせて火種を作る。
今日の薪はよく燃える、いつもよりちょっと遠いところに行ったからかな。
「ルシア」
「あっ、火が出来たよ!」
「…お前は引きこもりが過ぎるな」
「………へ?」
「一度、街を見てみた方がいいのかもな」
母親の言葉に、俺は火の火力を上げようと息を吹いていたが止めた。
母親を見ると、呆れた顔をしていて俺は対照的に目を輝かしていた。
「街に行っていいの!?」と食い気味に母親の方に近付いた。
一度しか街に行ってなかったし、あの時は両親に内緒だったからいろいろと出来ない事も多かった。
でも、許可があれば時間も気にしなくていいし…夜しか見れなかった景色も変わる。
今日のご飯は川魚だった、俺が取ってきたものだ。
前は父親頼りだったけど、俺も取れるようになったから近くで取れるものばかりだけど自給自足はこういうものだ。
もう十九年も生きていれば、この暮らしも快適になる。
でも、やっぱり街も憧れるよな…両親だっていい事を積み重ねれば国に戻れるかもしれないのに…
「俺、薪割り職人としてやっていけるかな」
「やはり、国に復讐するには実物を見た方がいい、お前も倒すべき敵を知った方がいいだろう」
「……」
ダメだ…何言っても復讐しか頭にないようだ、俺は薪割り職人になりたいのに…
あ、魚が焼き上がったかな…もぐもぐ口を動かして食べる。
母親がなにかぶつぶつ言っていて、俺は薪職人としての人生にワクワクしていた。
なんで十九歳まで、俺はここにいたのか…それには理由があった。
国では、新しい守護精霊の力を持つ人達が騎士になった。
そして今、新しい聖女の力を持つ女性を探しているみたいだ。
国の力はだんだん強まっていき、母親も焦りを見せていた。
街に出入りしている父親の情報だから確かだろう。
ゲームで知っていたが、守護精霊の力を持つ人達は味方なら心強いが敵にはなりたくない。
薪割りと草むしりが特技の俺にどう戦えと言うんだ?
自分の子供だからって期待しすぎないでほしいな、自分で言うのもなんだけど…
今もまだ聖女が見つかっていないが、守護精霊の人達が現れてしばらくは騎士の鉄壁で国が守られていた。
通行手形も新規発行止めをしていたほどに外に警戒していた。
両親は復讐がバレたのではないかと焦っていたが、数年したら落ち着いて通行手形も再開された。
その間、両親は守護精霊達がこちらにくる事をビクビクしていて俺は高速薪割りマシンとして汗を輝かしていた。
でも聖女が見つかる前に俺を国に送りたいと父親が帰ってきた時に両親だけで話していた。
俺は薪割りの朝は早いから、すぐに毛布にくるまった。
すぐに寝れるわけもなく、両親の会話が自然と耳に入ってきた。
「国の様子はどうだ?」
「まだ聖女は見つかっていない、ただ尋常じゃないほどの守護精霊の力を持つ男がいた…俺達が戦ったクリストファーよりも強いかもしれない」
「それは、クリストファーとリリアの子か?……ルシアの敵となる男か」
おいおい、勝手に敵にするなよ…戦わないからな。
寝ながらそうツッコミを入れるが、実際は誰もツッコまないから話のスケールがどんどん上がっていく。
俺が何故か薪で戦う男にされて、狂人さながらの戦い方をする事になっている。
……サーカス団か、薪割りって見せ物としてはつまんないかな。
俺と両親の感覚にズレがあるが、今に始まった事ではない。
俺はこのゲームをRPGではなく、ほのぼのスローライフゲームに変えると決めたんだ。
殺伐としたRPGは守護精霊達に任せよう、俺は放置農業ゲームがいい。
早速父親が通行手形の手続きをしてくれて、手に入れた。
名前でバレるから父親は偽名を使い、長年国に売りにきている商人だと認識されているから手続きは出来たが通行手形が再開されて人が殺到していたから一年くらい経ってしまった。
まさか彼が国を追放された商人だとは思わないだろう。
そして、これから俺の人生が大きくスタートしていくのだった。
「これで自由だー!!」
母親は俺がサボっていないか見にきたのだろう。
最初の頃は筋肉痛だし、嫌だったから何度もやめたいと思っていた。
でも今はそんな事はない、こうしてちゃんと毎日言いつけを守って修行している。
今では言われなくてもやったりするから、ほめてもらいたいな。
実際は滅多に人を褒める人達ではないから褒めて伸ばしてくれるのは諦めているけど…
「お母さん!今日はいっぱいだよ!」
「……」
「このくらいあれば一週間は持つかな」
「ルシア」
「俺、ちゃんと修行して武器の扱いになれたよ!だから街に行っても役に立つから」
「…思っていたのと違う」
母親は不満な顔も隠そうとせず、俺に言っていた。
言う事ちゃんと聞いて、こうして修行をしてきたのに違うって酷い話だな。
割った薪を抱えて、俺は家に帰ろうと歩いていた。
さっきの斧は薪割り専用のものだ、山暮らしだと焚き火は大切だからね。
これさえあれば、街でも薪割り職人としてやっていけるぞ!
母親の違うって意味も分かっている、悪役として悪役らしく武器を使って…とかだろうな。
俺の武器は薪を使うために、俺の手は草むしりするためのものなんだ。
小屋の横に薪を重ねて、今日もいい汗掻いたなぁ…と満足する。
ちょっと筋肉付いてきたし、薪割りとランニングくらいじゃ筋肉はそんなに付かないのかな。
「ルシア、お前に薪割りさせるために斧を与えたわけではない」
「えー、でも俺かなり上達したよ」
「それはそうだろうが」
「あっ!あっちにいい木がある!行ってくる!」
俺は母親の話を遮るように、木に向かって走った。
俺の斧は薪割り専用なんだから、別にいいんだ。
こうやっていつもかわしている、誰が悪役なんかになるか!
追加の薪を持って、家に帰ると焚き火の準備をした。
ライターやマッチがないから、原始的に石を擦り合わせて火種を作る。
今日の薪はよく燃える、いつもよりちょっと遠いところに行ったからかな。
「ルシア」
「あっ、火が出来たよ!」
「…お前は引きこもりが過ぎるな」
「………へ?」
「一度、街を見てみた方がいいのかもな」
母親の言葉に、俺は火の火力を上げようと息を吹いていたが止めた。
母親を見ると、呆れた顔をしていて俺は対照的に目を輝かしていた。
「街に行っていいの!?」と食い気味に母親の方に近付いた。
一度しか街に行ってなかったし、あの時は両親に内緒だったからいろいろと出来ない事も多かった。
でも、許可があれば時間も気にしなくていいし…夜しか見れなかった景色も変わる。
今日のご飯は川魚だった、俺が取ってきたものだ。
前は父親頼りだったけど、俺も取れるようになったから近くで取れるものばかりだけど自給自足はこういうものだ。
もう十九年も生きていれば、この暮らしも快適になる。
でも、やっぱり街も憧れるよな…両親だっていい事を積み重ねれば国に戻れるかもしれないのに…
「俺、薪割り職人としてやっていけるかな」
「やはり、国に復讐するには実物を見た方がいい、お前も倒すべき敵を知った方がいいだろう」
「……」
ダメだ…何言っても復讐しか頭にないようだ、俺は薪割り職人になりたいのに…
あ、魚が焼き上がったかな…もぐもぐ口を動かして食べる。
母親がなにかぶつぶつ言っていて、俺は薪職人としての人生にワクワクしていた。
なんで十九歳まで、俺はここにいたのか…それには理由があった。
国では、新しい守護精霊の力を持つ人達が騎士になった。
そして今、新しい聖女の力を持つ女性を探しているみたいだ。
国の力はだんだん強まっていき、母親も焦りを見せていた。
街に出入りしている父親の情報だから確かだろう。
ゲームで知っていたが、守護精霊の力を持つ人達は味方なら心強いが敵にはなりたくない。
薪割りと草むしりが特技の俺にどう戦えと言うんだ?
自分の子供だからって期待しすぎないでほしいな、自分で言うのもなんだけど…
今もまだ聖女が見つかっていないが、守護精霊の人達が現れてしばらくは騎士の鉄壁で国が守られていた。
通行手形も新規発行止めをしていたほどに外に警戒していた。
両親は復讐がバレたのではないかと焦っていたが、数年したら落ち着いて通行手形も再開された。
その間、両親は守護精霊達がこちらにくる事をビクビクしていて俺は高速薪割りマシンとして汗を輝かしていた。
でも聖女が見つかる前に俺を国に送りたいと父親が帰ってきた時に両親だけで話していた。
俺は薪割りの朝は早いから、すぐに毛布にくるまった。
すぐに寝れるわけもなく、両親の会話が自然と耳に入ってきた。
「国の様子はどうだ?」
「まだ聖女は見つかっていない、ただ尋常じゃないほどの守護精霊の力を持つ男がいた…俺達が戦ったクリストファーよりも強いかもしれない」
「それは、クリストファーとリリアの子か?……ルシアの敵となる男か」
おいおい、勝手に敵にするなよ…戦わないからな。
寝ながらそうツッコミを入れるが、実際は誰もツッコまないから話のスケールがどんどん上がっていく。
俺が何故か薪で戦う男にされて、狂人さながらの戦い方をする事になっている。
……サーカス団か、薪割りって見せ物としてはつまんないかな。
俺と両親の感覚にズレがあるが、今に始まった事ではない。
俺はこのゲームをRPGではなく、ほのぼのスローライフゲームに変えると決めたんだ。
殺伐としたRPGは守護精霊達に任せよう、俺は放置農業ゲームがいい。
早速父親が通行手形の手続きをしてくれて、手に入れた。
名前でバレるから父親は偽名を使い、長年国に売りにきている商人だと認識されているから手続きは出来たが通行手形が再開されて人が殺到していたから一年くらい経ってしまった。
まさか彼が国を追放された商人だとは思わないだろう。
そして、これから俺の人生が大きくスタートしていくのだった。
「これで自由だー!!」
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