ヒロインの息子×悪役令嬢の息子(転生者)

ー結月ー

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それは誰?

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『アルフレート視点』

目の前に見える酒が入ったコップが揺れて見える。
酒場のオヤジに「もう飲み過ぎですよ、やめた方が…」と言われた。
別に酒が弱いわけじゃない、このくらい平気だ。

普段はうるさい場所は嫌いで酒場に行かないが、今部屋には鬱陶しい奴が寝ているから部屋に戻りたくない。
仕事をサボろうとすると必ずと言っていいほど、レオナードがやって来る。
鬱陶しくて、レオナードが来ないように真面目に仕事をしている。

でも他の守護精霊と違い、騎士団長だけど仕事量が多すぎる。
それプラス、守護精霊の仕事もあるから疲れる。

今日は誰とも会いたくないから、さっさと寝ようと思っていた。

なのに、仕事が終わってもレオナードがやって来た。
酒瓶を持って、勝手に人の部屋で飲み始めた。

さっさと帰れと言っているのに、レオナードは全く聞かない。
そして、そのまま人のベッドで横になって寝ている。

本当に常識はないのか、この男は…ベッドを処分しなきゃいけないだろ。

レオナードを部屋から追い出そうとするが、がっちりベッドを掴んでいて引き剥がせない。
こんなところで体力を使うのは馬鹿らしくなって、俺が部屋を出た。

朝まで開いてる店は酒場くらいだ、そこで時間を潰そう。
あまり酒を飲む気分じゃないが、レオナードの事を忘れるためにも酒場に向かった。

たまにしか来ないから、俺が入ると酒を飲んでいた奴らはこちらに視線を向ける。

「いらっしゃいアルフレート様ぁ」

「……あぁ」

酒場で酒を運んでいる布生地が少ない女が腕に絡み付いてくる。
相手した事があった気がするが、いちいち覚えていない。
豊満な胸を押し付けられても何とも思わない…言うなら歩きづらい。

カウンターに座ると、逆方向に別の奴が座ってきた。
顔が女みたいだから女かと思ったが、腕に体を押し付けられて男だと気付いた。

どんなに女みたいな顔でも、男とは一度も寝た事ないし寝ない。

興味のなさは同じだが、女なら勝手にすればいいと思うが、男は暑苦しいし吐き気がする。
レオナードのせいが大きいんだろうな、すっかり男が嫌いになってしまった。

レオナードと出会う前も彼以外の男に一切興味なかった。

彼ならこうはならないんだろうけど、幻のような存在だから試す事も出来ない。
もう、あれは幻なんだって思うようになったけど…

両サイドにいる人達を退かして、一人で酒を飲む。
普通に飲んでいた筈だけどペースが早くて、酒が回るのも早い。

しばらくすると、何にもする気力がなくなって眠くなる。

「大丈夫ですかぁ?お家までお送りしますよ?」

さっきの女が寄ってきて、俺の体にピッタリとくっついてきた。
寝ている間に好き勝手されるのは嫌だ、振り払ってテーブルに金を置いてから店を出た。

でも、まだ部屋にレオナードがいると思うから戻りたくない。
ちょっと頭を冷やして、また酒場に戻るかと思って誰もいない路地に入った。
ここなら店の奴らも滅多に来ない、ゆっくりと休める。

座ると、睡魔が襲ってきてゆっくりと目蓋が閉じる。

夢を見る事なく、休んでいたら足になにかが当たった。

ゆっくり目を開けると、誰かが動くのが見えた。
誰だ?あの女か?まぁいい…誰だって変わらない。

俺に顔を近付けている、普段は絶対にキスをしないのに…何だろう、泣きそうになるほど懐かしいにおいがする。
だからか、ふとキスがしたくなって唇を塞いだ。

ビクッと体が震えていて、キスが慣れていないのか全然積極的ではない。
いつも俺を誘う女は慣れているから、こういうのは初めてだ。
何も知らないフリをする女はいる、コイツもそういう女か。

一気に興味がなくなり、退かして…やりたいなら自分で勝手にやれと言った。
一瞬、感情的になってキスをしてしまった…そんなわけないのに彼だと思った。
唇を拭いて、少し待っても何もしないからもういいと思って立ち上がった。
一人にそんなに時間を作りたくない、そう思っていたら変な事を言っていた。

足の怪我がどうたら…なにか引っ掛かった気はしたが、そんな事いちいち気にしない。
何を気にしているのかと思ったが、そんな事より気になった事がある。

……コイツ、声からして男かよ…最悪だ、男とやろうとした事よりもキスをしてしまった事が精神的にダメージだった。

怪我が痛くなったら連絡してとは言うが、二度と会う事はないから適当に聞き流した。
気分が下がって、酒を飲んで綺麗さっぱり忘れようと思った。

先に男が路地から出て行って、最後に振り返った。

酒場の光に照らされたその姿を見て、息をするのも忘れた。
過去の記憶が、目の前の光景とピッタリ嵌まっていく。

去り際に見た彼の姿と、成長はしているが面影はしっかりと残っている。
それにあのにおい…俺がずっと探し求めていた。

姿が見えなくなってから、魔法が解けたように動けるようになって慌てて追いかけようとした。
でも、まだ酒が残っているのか…足に力が入らず転けた。
それでも手を壁に付いて路地を出たが、そこには誰もいなかった。

また、幻のように何処にも姿がなく…眠った街並みが見える。
でも、拭った筈の唇にはまだ感触が残っている。
それが、幻ではなく現実なんだと俺に教えてくれている。

数秒前の自分をぶん殴りたい気持ちでいっぱいになった。

あんなに近くにいたのに、いつもの癖で引き離してしまった。
逃さないように抱きしめていたら、良かったのに…

「……連絡先、何処だっけ」

なにかの店という事しか覚えていない、ほとんど聞いていなかったからだ。
彼を待ち続けないで、廃れてしまった自分への天罰なのかもしれないと大きなため息を吐いた。
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