19 / 23
エンジェルの騎士
しおりを挟む
『ルシア視点』
「おはようルシア!」
「おう、おはよう」
朝早くから掃除をして、店を綺麗にしていた。
用心棒より雑用の時間の方が長い、モップで床を綺麗に磨く。
俺が綺麗にした店で皆が笑顔になってくれたら俺も嬉しいな。
……用心棒としての感情じゃないような気もするけど…
テーブルを拭いていると、皆が出勤してきて挨拶をする。
可愛いフリルのエプロンに、短パンの姿の可愛い従業員達は目の保養になる。
俺はそんな可愛い従業員達を守る騎士のような存在だ。
本物ではないけど、この店にとっての騎士のようなものだ……そう思わせてくれ。
やっぱりゲーマーとして、騎士ってカッコよくて憧れるよな。
本物は怖くてなれないけど、せめて迷惑客を追い払うくらいの騎士になる。
店が開店して、俺は外に出て不審な客が入らないか確認する。
たまにヤバそうなものを持っている客がいるからお引き取りをしてもらっている。
帰ってくれず、危害を加えるようなら俺が追い払う。
「いてぇ!!何しやがる!!」
「それはこっちのセリフだ、そんなものを持って何する気なんだ」
「こ、これは…護身用で」
「うちの大事なエンジェル達を傷付けられたら困るから、今日のところはお引き取りを…」
男が持っていたナイフを荷物検査で見つけて、手に取ろうとしたら暴れた。
だから地面に倒して押さえつけて、帰るように言った。
ただの護身用なだけならいいけど、危ない事には変わりはない。
手荒な真似をして悪いと思うが、これが俺の仕事だ。
ちなみに従業員の事を「エンジェル」と呼ぶ、俺だけじゃなく皆な。
店名にもなってるし、天使のように可愛いがコンセプトらしい。
「分かった、帰るから離してくれ!」
「今後店に来る時は危険物の持ち込みは…」
分かったならそれでいい、と男から退いて手を差し伸ばした。
ヒュンッと目の前になにかが横切り、男はナイフを手に持っていた。
仕方ない、このまま野放しにしたらエンジェル以外にも危害が及ぶかもしれない。
ほうきを振り、ナイフを持っている手に当てると力が抜けてナイフが落ちた。
ナイフを踏んで、男にほうきを向けると後ろに後ずさった。
まだ向かってくるから、ほうきで肩や腰や足を狙う。
痛みで顔を歪めていて、早く諦めてくれとため息を吐いた。
結局戦意喪失して、やっと諦めてくれたみたいで病院に連れていった。
危ない事はもうするなよ、と男に言ってナイフを返した。
とりあえずはもう大丈夫だ、一応騎士にも報告しとくか。
病院から帰る時にいた騎士の一人に声を掛けた。
話していたみたいで、もう一人は俺の顔を見てすぐに逃げるようにしていなくなった。
腰まで長い髪を一つに結んでいる騎士は男……だよな?
「誰?」
「あ、その…」
危ない奴がいたと報告しようとしたが、こんなところで人見知りが発動してしまった。
仕事中なら俺は用心棒という別人になれるようで大丈夫なんだけどな。
それにこの騎士、なんか瞳が氷のように冷たくて話しづらい。
別に世間話をしようって言っているわけじゃないんだし、また来られたら困るから言わなくては…
うちのエンジェルのために、声を絞り出して伝える事が出来た。
人と話しただけで、疲れがどっと押し寄せてきた。
聞いているのかいないのか、騎士の返事は上の空だった。
大丈夫なのかな、でもずっと店から離れるわけにはいかないからな。
頭を下げて、すぐに店に向かって走っていった。
それを後ろからジッと騎士が見ていた事は知らない。
今日の営業が終わり、無事にエンジェル達を見送った。
俺も帰ろうと思って、倉庫に向かおうとして思い出した。
店の窓、閉め忘れてたかも…ちゃんと確認したけど少しでもそう思うと不安になっていく。
鍵は持ってるから、確認だけしてこようと店の前に戻った。
鍵を開けようとしたら、声を掛けられて後ろを振り返った。
月に照らされたその人を見て、知らない顔で首を傾げた。
何処かで見た事があるような…ないような…誰だっけ。
でも、白い高貴な騎士服を着ているから騎士だろう。
「君…は…」
「えっと、どちら様で…」
綺麗な顔だなぁ、一度会ったら忘れそうにない顔だ。
走ってきたのか、少し息が切れていてゆっくり近付いてくる。
もしかして、不審者を報告した騎士がこの人に頼んでくれたのかもしれない。
心配で来てくれたのかな、騎士と普段会わないからいい騎士がいて良かったと思った。
勝手に騎士って威張ってばかりで、国民の事を考えていない人達だと思ってた。
店にも騎士が来たりするが、自分の自慢、人の悪口ばかり言っていたのを聞いた事があった。
街でも、困っている人がいてもあまり親身になって聞いている姿を見た事がない……俺の事を抜きにしていい印象はなかった。
俺が見ていたのはごく一部なのは分かっていたけど、やっぱり実際に見た方が信頼出来る。
「来ていただいてありがとうございます!今日は何もなかったから大丈夫です」
「……何もって、なにかあったのか?」
「あれ?不審者の事で来たんじゃ…」
何も知らないみたいで、その事で来たんだと思っていたが違うみたいだ。
じゃあ何の用なんだ?もう店は閉まっているんだけどな。
騎士は「昨日…店の事聞いたから」と言っていた。
口数が少ないが、それだけでなんで来たのか分かった。
昨日酒場の路地で会った騎士だったのか、足が痛くなったのかな。
勘違いしてしまったから謝って、すぐに慰謝料を払おうと財布を開いた。
……所持金0って、詰むにも程があるだろ……食べるものは賄いがあるからしばらく財布を開けていなかった。
所持金は分かってたから見ないようにしていたけど、現実を突きつけられた気分だ。
「…慰謝料…給料日まで待って下さい」
「そんなのいらない」
「え…でも、足痛くてきたんじゃ…」
「そうじゃない……会いたくて…」
美形にそんな見つめられて言われたら勘違いしちゃうよ。
さすがに俺は勘違いするほど自分に魅力があるとは思っていない。
エンジェルに会いにきたんだよな、でも今は営業時間じゃない。
こんなに好かれていると、自分の事のように嬉しい。
俺が店の名前を言ったから興味が少しでも出てきてくれたのなら良かった。
せっかく来てくれたのに、営業時間にまた来て下さいと言った。
騎士はキョトンとした顔をして、悲しい顔をしていた。
そこまで会いたかったのか、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「営業してないと会えない?」
「プライベートは本人に確認しないと何とも言えないけど、基本はお店でお願いします」
別にプライベートで会う事は禁止される事ではない。
エンジェルだって、仕事が終わったら普通の人だ。
ここで俺がどうこう言うのは騎士やエンジェル達に悪い。
ただ、基本はお店で会って仲良くなってもらいたいなぁ…とは思う。
初対面だろうし、彼ならすぐに仲良くなれると思う。
「おはようルシア!」
「おう、おはよう」
朝早くから掃除をして、店を綺麗にしていた。
用心棒より雑用の時間の方が長い、モップで床を綺麗に磨く。
俺が綺麗にした店で皆が笑顔になってくれたら俺も嬉しいな。
……用心棒としての感情じゃないような気もするけど…
テーブルを拭いていると、皆が出勤してきて挨拶をする。
可愛いフリルのエプロンに、短パンの姿の可愛い従業員達は目の保養になる。
俺はそんな可愛い従業員達を守る騎士のような存在だ。
本物ではないけど、この店にとっての騎士のようなものだ……そう思わせてくれ。
やっぱりゲーマーとして、騎士ってカッコよくて憧れるよな。
本物は怖くてなれないけど、せめて迷惑客を追い払うくらいの騎士になる。
店が開店して、俺は外に出て不審な客が入らないか確認する。
たまにヤバそうなものを持っている客がいるからお引き取りをしてもらっている。
帰ってくれず、危害を加えるようなら俺が追い払う。
「いてぇ!!何しやがる!!」
「それはこっちのセリフだ、そんなものを持って何する気なんだ」
「こ、これは…護身用で」
「うちの大事なエンジェル達を傷付けられたら困るから、今日のところはお引き取りを…」
男が持っていたナイフを荷物検査で見つけて、手に取ろうとしたら暴れた。
だから地面に倒して押さえつけて、帰るように言った。
ただの護身用なだけならいいけど、危ない事には変わりはない。
手荒な真似をして悪いと思うが、これが俺の仕事だ。
ちなみに従業員の事を「エンジェル」と呼ぶ、俺だけじゃなく皆な。
店名にもなってるし、天使のように可愛いがコンセプトらしい。
「分かった、帰るから離してくれ!」
「今後店に来る時は危険物の持ち込みは…」
分かったならそれでいい、と男から退いて手を差し伸ばした。
ヒュンッと目の前になにかが横切り、男はナイフを手に持っていた。
仕方ない、このまま野放しにしたらエンジェル以外にも危害が及ぶかもしれない。
ほうきを振り、ナイフを持っている手に当てると力が抜けてナイフが落ちた。
ナイフを踏んで、男にほうきを向けると後ろに後ずさった。
まだ向かってくるから、ほうきで肩や腰や足を狙う。
痛みで顔を歪めていて、早く諦めてくれとため息を吐いた。
結局戦意喪失して、やっと諦めてくれたみたいで病院に連れていった。
危ない事はもうするなよ、と男に言ってナイフを返した。
とりあえずはもう大丈夫だ、一応騎士にも報告しとくか。
病院から帰る時にいた騎士の一人に声を掛けた。
話していたみたいで、もう一人は俺の顔を見てすぐに逃げるようにしていなくなった。
腰まで長い髪を一つに結んでいる騎士は男……だよな?
「誰?」
「あ、その…」
危ない奴がいたと報告しようとしたが、こんなところで人見知りが発動してしまった。
仕事中なら俺は用心棒という別人になれるようで大丈夫なんだけどな。
それにこの騎士、なんか瞳が氷のように冷たくて話しづらい。
別に世間話をしようって言っているわけじゃないんだし、また来られたら困るから言わなくては…
うちのエンジェルのために、声を絞り出して伝える事が出来た。
人と話しただけで、疲れがどっと押し寄せてきた。
聞いているのかいないのか、騎士の返事は上の空だった。
大丈夫なのかな、でもずっと店から離れるわけにはいかないからな。
頭を下げて、すぐに店に向かって走っていった。
それを後ろからジッと騎士が見ていた事は知らない。
今日の営業が終わり、無事にエンジェル達を見送った。
俺も帰ろうと思って、倉庫に向かおうとして思い出した。
店の窓、閉め忘れてたかも…ちゃんと確認したけど少しでもそう思うと不安になっていく。
鍵は持ってるから、確認だけしてこようと店の前に戻った。
鍵を開けようとしたら、声を掛けられて後ろを振り返った。
月に照らされたその人を見て、知らない顔で首を傾げた。
何処かで見た事があるような…ないような…誰だっけ。
でも、白い高貴な騎士服を着ているから騎士だろう。
「君…は…」
「えっと、どちら様で…」
綺麗な顔だなぁ、一度会ったら忘れそうにない顔だ。
走ってきたのか、少し息が切れていてゆっくり近付いてくる。
もしかして、不審者を報告した騎士がこの人に頼んでくれたのかもしれない。
心配で来てくれたのかな、騎士と普段会わないからいい騎士がいて良かったと思った。
勝手に騎士って威張ってばかりで、国民の事を考えていない人達だと思ってた。
店にも騎士が来たりするが、自分の自慢、人の悪口ばかり言っていたのを聞いた事があった。
街でも、困っている人がいてもあまり親身になって聞いている姿を見た事がない……俺の事を抜きにしていい印象はなかった。
俺が見ていたのはごく一部なのは分かっていたけど、やっぱり実際に見た方が信頼出来る。
「来ていただいてありがとうございます!今日は何もなかったから大丈夫です」
「……何もって、なにかあったのか?」
「あれ?不審者の事で来たんじゃ…」
何も知らないみたいで、その事で来たんだと思っていたが違うみたいだ。
じゃあ何の用なんだ?もう店は閉まっているんだけどな。
騎士は「昨日…店の事聞いたから」と言っていた。
口数が少ないが、それだけでなんで来たのか分かった。
昨日酒場の路地で会った騎士だったのか、足が痛くなったのかな。
勘違いしてしまったから謝って、すぐに慰謝料を払おうと財布を開いた。
……所持金0って、詰むにも程があるだろ……食べるものは賄いがあるからしばらく財布を開けていなかった。
所持金は分かってたから見ないようにしていたけど、現実を突きつけられた気分だ。
「…慰謝料…給料日まで待って下さい」
「そんなのいらない」
「え…でも、足痛くてきたんじゃ…」
「そうじゃない……会いたくて…」
美形にそんな見つめられて言われたら勘違いしちゃうよ。
さすがに俺は勘違いするほど自分に魅力があるとは思っていない。
エンジェルに会いにきたんだよな、でも今は営業時間じゃない。
こんなに好かれていると、自分の事のように嬉しい。
俺が店の名前を言ったから興味が少しでも出てきてくれたのなら良かった。
せっかく来てくれたのに、営業時間にまた来て下さいと言った。
騎士はキョトンとした顔をして、悲しい顔をしていた。
そこまで会いたかったのか、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「営業してないと会えない?」
「プライベートは本人に確認しないと何とも言えないけど、基本はお店でお願いします」
別にプライベートで会う事は禁止される事ではない。
エンジェルだって、仕事が終わったら普通の人だ。
ここで俺がどうこう言うのは騎士やエンジェル達に悪い。
ただ、基本はお店で会って仲良くなってもらいたいなぁ…とは思う。
初対面だろうし、彼ならすぐに仲良くなれると思う。
0
あなたにおすすめの小説
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる