俺の弟が一番かわいい

ー結月ー

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友人じゃない

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「……お、俺…ナイトのなんなんだ?」

「梓馬は俺の家族じゃないのか?」

「…家族?」

「俺の心に土足で踏み込んできたんだ、責任取ってもらうから」

土足で踏み込んだのは、申し訳ないと思っているが…さすがに素足で氷の床は勇気がいる。

俺の事家族にしてくれるのに弟として見るのはダメ?

責任取れとも言ってるし、見た目無表情だけど本当は凄いキレてるとか?

どういう意味か聞こうとしたら、バス停とは別の方向にナイトが歩いていっていた。

俺と白猫は呆然として、ナイトの腕を掴んで引き止めた。

あそこの方角は森だ、また森の中で寝る気なのだろう。

「待て待て、また寝る気なのか!?寮に戻った方が学校に通うの楽だぞ?」

「今日は魔力使いすぎて眠いんだよ…ふぁ」

「家族って言うなら、ちゃんと寮に連れて帰るのも家族だからな!」

「……夫に優しくするのも妻だろ」

「それとこれとは!……へ?」

今、ナイトはなんて言ったんだ?妻?夫?誰が誰のだ?

目を丸くしてナイトを見ると、ナイトも首を傾げていた。

「誰と誰が?」と聞いてみたら「梓馬は俺の家族だろ?」と聞いてきた。

え…確かにそうだけど、まさか俺のポジションがそうだとは思わなかった。

…って、ナイト…お前長男だろ?両親にも期待されてるし、跡継ぎとか必要だろ!?

いや、そういう事じゃないが…どう説明したらいいんだ?

そもそも告白と恋人をすっ飛ばして夫婦の考えが俺には理解できない!

歩夢ならまだしも……いや、歩夢でも微妙だけどなんで俺?

家族以外入れなかった場所に入ったからと言うなら白猫だってそうだろ。

白猫は正妻で俺は愛人か!?だんだん意味が分からなくなって頭がパンクしそうになる。

俺はナイトに考え直すように思いついた事を言ってみた。

「男じゃ跡継ぎは埋めないからな!いいのかよ」

「大丈夫だ、梓馬なら産める」

「産めるかー!!俺は男だ!!」

『賑やかな家族になったなナイト』

「そうだな」

ナイトが寮の部屋に戻るのが嫌なのは歩夢のせいらしい。

歩夢がいつもいろんな人を呼んで、うるさい声で安眠妨害らしい。

そんなに歩夢って夜に騒ぐ性格ではないんだけどな…でもナイトが言ってるならそうなのか?

とりあえず野宿は風邪をひくから、俺の寮に案内した。

レオンハルトはもう帰ってきてるだろうか、もしかしたら他の寮生を泊まらせたらいけないというルールがあるかもしれない。

寮前に到着して、スマホを取り出してレオンハルトに電話を掛けた。

すると、呼び出し音が二重に聞こえてナイトに肩を叩かれた。

ナイトの方を見ると、上を指差していて見上げるとスマホを持った手を振っているレオンハルトがいた。

「レオンハルト」

「珍しい組み合わせだな、仲良くなったのか?」

「まぁ…いろいろあって」

「梓馬、あまり目立つ行動はするなと言ったが?」

レオンハルト…顔は笑っているのに、言葉にトゲがあるんだが…

大丈夫…とは言えないな、なんせ生徒会の奴らと戦ってしまった。

反応しない俺を見て、レオンハルトはベランダから飛び降りて綺麗に着地した。

レオンハルトはナイトを見ていた、ナイトも黙ってレオンハルトを見つめていた。

レオンハルトはあの場にいたわけではないから、俺が生徒会と関わった事は知らない筈だ。

じゃあ目立つ行動とはナイトの事か?でもナイトと仲良くしても目立つわけではないと思う。

「レオンハルト、ナイトは友人で…」

「違う」

「ナイト、今はちょっとややこしくしないでくれ」

「梓馬、ナイトは中立の立場だ…生徒会とも繋がってる、友人を作るなと言わないが僕達の目的のためにナイトと関わるのはよくない」

「レオンハルト、ナイトは歩夢の一番近くにいる…協力してもらおう」

「よく分からないが、レオンハルトさんが俺と生徒会の事を疑うなら俺は生徒会と手を切る」

「それを信用しろと?」

「一度生徒会に歯向かったからどっちにしても戻れない」

レオンハルトが俺の方を見て「どういう事か説明しろ」と目で訴えていた。

俺と一緒にいたから俺にも関係しているとレオンハルトは分かってる。

怒られる事を覚悟で生徒会との事を話した。

やはりレオンハルトは眉を寄せていたが、俺の服に触れた。

白猫のおかげで傷は塞がったが、なにが起きたのか何となく分かるだろう。

とりあえず風呂に入ってこいと言われて、俺達は寮に入った。

レオンハルトはナイトの白猫を見つめながらナイトと会話をしていた。

「契約したのか?」

「……まぁ」

「王位継承者になったら一般寮には戻れない、分かっているのか?」

「…俺はリーシャと契約しただけで王位に興味ない」

「周りがそれで納得すると思っているのか?」

二人の空気が不穏なものに変わっていき、風呂に行きたいが二人を置いていくのも不安だ。

俺もナイトと白猫の契約を手伝ったから、俺にも責任がある。

ナイトは面倒そうにしているが、レオンハルトは王位継承者の話を説明していた。

王位継承者は何もしていなくても狙われる事になる。

それは王位に興味なくても、周りの魔導士が王位継承を狙ってナイトに攻撃を仕掛けるだろう。

生徒会にも知られてナイトは今まで通りの平穏は戻らない。

まだ自覚が足りないナイトに言っていた。

「どういう理由で契約しても、王位継承者なら寮に入れ…君はもう一般魔導士ではないんだから」

「歩夢が生徒会の寮に行くまで同室でいる約束だから今は行けない」

その約束は生徒会長との約束で、お金をもらっているからちゃんと約束は守りたいそうだ。

とはいえナイトはほとんど寮に帰ってないみたいだけど…

それでも寮から離れるわけにはいかないのだろう、俺はレオンハルトにお願いして頭を下げた。

少しの間だけナイトを一般寮のままにしてほしい。

ナイトだっていろいろ準備があるだろうし、俺も協力する。

すぐにナイトが王位継承者だってバレるだろう、だったら俺は…

「俺がナイトを守る、それでいいか?」

「いいわけないだろ………ナイトだって王位継承者になったんだ、自分の身くらい自分でどうにかするだろう」

そう言いつつ、レオンハルトは呆れたため息を吐いていた。
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