仲間に裏切られ、魔法帝から最弱職の農民にジョブチェンジさせられたけど人類最高の魔力はそのままなので気楽に復讐しようと思う。

佐原さばく

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第7話 お前らちょっとは自重しろぉぉぉ!!

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「ダリさん・・・」

   ダリ達は食料品店や装飾品店、はたまた武器屋まで並ぶ通りに来ていた。周りでは楽しそうな声が溢れている。そんなものとは打って変わって二人の間にはどんよりとした空気が流れる。

「え、なに・・・」

「ガッカリです・・・」

「なにが・・・」

   マリアは鼻から思いっきり空気を吸い込むと大声を上げた。銀の髪がふわりと舞う。

「なにがって、買い物に来たのに買うお金がないじゃないですかぁぁぁぁ!」

   ダリ達はこの都市ベルンホルンに来る際にゴブリン達を倒し魔晶石を手に入れていたがそれでは金にならなかった。そして、クエストも受けていない為、勿論財に余裕は無かった。
   その為、せっかくのデートにもマリアは落ち込んでいた。
   それでは、お金が無いのにどのように宿に泊まったのかと言うと・・・

「あ・・・」
   
「聞いてますか?ダリさん。もう今日は良いです。」

「金がいる。」

「そんなに、私とのデートを大事に思っていてくれたのですか?」

   マリアは、自分に何か買ってあげたいとダリが思っていると考えているが、そんなことでは無い。

「宿代払ってねぇ!!!」

「ええええぇぇぇ!!!」Σ(゚д゚;)

   宿代は後日支払うと言って、彼達は泊まっていた。その為、ダリは返済しなければならなかった。
   彼達は服装をこの都市に来る時のものに変えてギルドへと向かった。
   そこには、宿の店主とダリ達を担当してくれているギルド嬢が腕を組んで待っていた。

「「すみませんでした!!」」

   ギルドへ着くなり額を床に付ける。
   大柄な茶髪の女性が口を開く。

「頭上げな。金返すなら許してあげる。でもね、あのまま払わずに逃げてたら、通報どころじゃ済まなかったよ。」

   指を鳴らしながらギロリと睨みつけてそう言った。ダリ達は思わず身震いした。

「は、はい。その返済の件なんですけど・・・」

   ダリはその場に正座し二人に事のあらましを伝えた。

「「お金がほとんどないだって?!」」

「はい。やはり、捕まっちゃいますかね。」

   マリアは恐る恐るそう尋ねたが、どうやら救済措置はあるらしかった。二人は説明してくれた。
   現在、昼時なので基本夜行性の魔獣は弱いものしか壁外にはいない。その為、この店主の監視付きでなら壁外に出てモンスターを倒して魔晶石を集めてきて良い。それを売って金にして払うのは良いという事だった。
   それを承諾すると、直ぐに壁外へと向かおうとするがダリはギルド嬢のバイスにとある事を聞いてから行くことにした。

「バイスさん、ちょっと良いですか?」

「うん、なに?お金なら貸しませんよ?」

   コクリと首を傾げる。黒の綺麗な髪が揺れる。

(あぁ、可愛いなあ。そうじゃなかった。)

「『ドミネヴィル』というパーティーについて調べて欲しいんですけど。」

   バイスの顔色が変わる。

「それって、あの・・・」

   ダリ達は壁外へと出向いた。そこで、宿主に連れて行かれるところを見て、包帯の取れた傭兵達はダリ達を揶揄った。

「次はおばさんとデートか?ダリ。」

「誰がおばさんだ?」

   怒ったのはダリではなかった。やはり、彼らは睨みつけられる。

「誰がおばさんだって?」

「な、なんにも言ってないです・・・」

   壁外は一本の舗装された道路を挟んで草むらが一面に広がっていた。
   太陽はジリジリと大地を照らしている。

「あ、暑いですぅ。」

「マリーこれからだぞ。」

   そんなこんなで、ベルンホルンから離れていった。そして、マリアが一旦休憩っと、座った時だった。
   マリアの尻にひんやりと硬いものが触れた。

「ダリさーん。ここ、冷たくて気持ちいですよ。」

「マリー、それは違う。地面じゃない。」

   マリアの下は草では無く硬い鱗で覆われていた。右にツーっと視線を流していくと、細長い瞳孔と目が合う。顔が下から青ざめていく。

「きゃぁぁぁ!!!サラマンダーじゃないですか!」

   マリアは直ぐに立って、手を前に突き出しながらすぐさま逃げてしまった。
   しかし、ダリと女性はピクリとも逃げたりはしなかった。

「マリアよ。それはサラマンダーではない。それはただのオオトカゲだよ。サラマンダーがこの時間に彷徨うろついている訳がない。火も吹かないから安心しろ。」

   宿の店主は安心からそんな態度を取っていたが、ダリは違った。

(どうして、この時間帯に・・・)

   マリアは逃げ回る。

「だから、言っているだろう。そいつはサラマンダーじゃ・・・」

   その時、その生物はマリアに赤い炎を吹き散らす。

「わあ!熱いですぅ!」

「おいおい、どうしてサラマンダーがいるんだよ!マリー、待ってろ僕が今助けるから。」

   そう言って、ダリはサラマンダーに手をかざそうとするが、その時には横にいたはずの宿主がサラマンダーの頭上に浮いていた。

「くらえ!『キロ・プレス』」

   その身長百八十五センチはある体格から拳が頭に目掛けて繰り出される。それは、大きなサラマンダーを一発で仕留めてしまった。
   サラマンダーは灰となって消え、魔晶石を落とした。
   マリアはペタンとその場に座り込んでしまった。

「大丈夫か、マリア。」

「は、はい。」

   一件落着といった所だと思っていたのが束の間、店主は一人ではこれ以上現れれば守りきれないと思い、撤退の指示を出そうとする。

「今日はもう帰るぞ!金の件はまたで良い。今日は危険だ。何か異常が起こっている。」

「分かりました。」

   ダリ達は疑問を心に留め帰路に着く事にしたが、その時だった。
   背後から妖艶な声が聞こえてくる。

「お前ら、何者だぁ?一匹逃げたトカゲちゃんを捕まえに来たんだけど、殺ったの?」

   その声には威圧があり、振り向く事を許さなかった。宿の店主が答える。

「殺ったと言ったら?」

   その声の主から黒い拳が勢い良く伸びてくる。そして、それは巨体を大きく殴り飛ばした。

「ああああぁぁぁ!!!」

「大丈夫ですか!!」

   大丈夫な訳が無かった。口からは血を吐いていて手足があらぬ方向へと曲がってしまっている。

「やってしまいな。」

   その声と同時に地中からサラマンダーが三匹出てくる。それらを見て顔が絶望に染まっていく。

「いいねぇ。その顔。ゾクゾクしてきちゃう。」

   サラマンダーが近ずいてくる。そして、一匹が口を大きく開き火炎放射を浴びせようとする。

「やめろ!来るな!やめてくれ!」

   覚悟を決め、目を瞑ったその時だった。小さな声が耳元に入ってきた。

『第一拳 貫弾』

   マリアがその一匹に一発を見舞う。そして続けざまに、

「ワン、ツー。」

   マリアは空中へ舞って残りの二匹へも素早く拳を振り抜いた。マリアの倒した三体は灰になって絶命を示した。
   それを見ていた。妖艶な声の主は頭を搔く。

「あああ!ムカつくなぁ。人間如きがよう。私自らやってやるわ!私は魔人族が幹部リグ=ボルテックスだ。貴様等の相手をする事を光栄に思うがいいわ。」

   ニヤリと不気味な笑みを顔に浮かべるが、その体はミシミシと縮んでいく。

「は?どうなっているんだ?」

   それは一瞬の事だった。もうその魔人は灰になってしまった。ダリは握っていた拳を開いた。マリアは回復魔法をかけて、宿の店主の折れてしまった手足を全て治してしまった。ダリとマリアは魔人の落とした魔晶石に近ずいていく。

「魔晶石。これで、宿代払えそうだな。」

「やりましたね。ダリさん!」

    マリアはニッコリとダリに顔を向ける。しかし、女店主にとって、目の前のことは異常だった。

(今の魔人だったよな。アイツ一人で倒しやがった。マリアは重症を完全回復だと?しかも二人とも詠唱なしで?)

「何か、世界を征服してしまう程のものを見た気がするんだが。ちょっと体調が悪いみたいだから寝るわ。」

   ダリとマリアは顔を合わせる。

「私達・・・」

「僕達・・・」

「「やりすぎちゃいましたぁぁぁぁ?!」」

   太陽の光はまだジリジリと大地を照らしていた。
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