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第四話 親愛なるあなたへ
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空中には、大地を動かし攻撃を加える男と、旗を振りかざし抵抗する少女の画があった。
「貴様は許さん!このジャネット、誠心誠意貴様を成敗する。」
「あらー、怖いなー。でも、俺様も負けないよ。」
フリードマンが空高くに昇っていく。
そこで唱える。
『神を崇めし全ての生物よ。それら支配する大地よ、我その潜在を跋扈せん。時空の摩天楼!』
ジャネットの所に直径十メートル程の魔法陣が描かれ、縦一帯に衝撃が走る。そして、その縦一帯は大地ごと消えてしまった。ジャネットは、すぐさまそこから離れていたが・・・
「ああぁぁぁ!」
悲鳴を上げ、ジャネットは左肩を擦りながら、不気味な笑顔を睨みつける。
「貴様!私の腕をよくも!」
「逃げられちゃったか。結構魔力使っちゃったんだけどな。ならもう少し強めるのみ!」
フリードマンは急加速しジャネットの方へ向かっていく。
街の方では、
「あー!落ちちゃうよお母さん!」
「今助けるからね!」
「もう、、、無理」
少女は手を離してしまい、地の底へと落ちてしまう。しかし、、、そこには、イネ達が待っていた。
「もう大丈夫です。あちらの街へ行ってください!さぁ、走って!」
「は、はい!ありがとうございます!」
「ありがとー!お兄ちゃん!」
それを、笑顔で見届け自分の下の白馬に話し掛ける。
「行けるか?スレイプニル。まだ、助けなければならない人達がいる。」
白馬は咆哮で答える。イネ達が走り出そうとした時、高いロリっ子ボイスが耳に響いてきた。
「イネ!また会うたな!」
顔を上げると、紺の和服に身丈よりも大きな日本刀を携えた、小柄な少女が。
「君は、、アキちゃん!いやー、心強いな!」
「ア、アキちゃん?!ワシは利秋じゃ!そげんな名を使うでない。ないでそげな名で呼ぶのじゃ!」
利秋は、ジタバタと騒ぎながらイネに詰め寄る。
「俺の中でも、あの人斬り半次郎だ。って考えようとしたんだけど、今のフォルムを見るとどうしても、何も怖さを感じないというか。むしろ、可愛さが勝ってるんだよね。だからアキちゃん」
「そげんな名で呼ぶなー!」
利秋は、恥ずかしそうに独りで騒ぎ立てている。少しして、治まったのかイネの方を見て、ある提案を持ち出した。
「イネよ、ワシの斬撃は風も生む。それは、イネも知っちょっと思うが、それに乗って、崖に掴待っちょ者共を助けてくれ。」
「それ、危なくない?」
「大丈夫じゃ、そん風が崖におる者共を上まで運んでくれる。安心せい。」
「いや、俺らの話だよ!」
「スレイプニルもおる。大丈夫じゃ。」
そういうと、利秋は、黒の鞘から銀の刃を差し抜いた。
「行くぞ!っとそん前にこいを渡しちょこう。」
利秋から、橙赤色の龍の紋章の入ったものが渡される。
「なんで、鞘を?」
利秋は、一瞬ニヤリとすると、
「行先はジャネット殿の所じゃ。救うてけや!」
「どうして俺なんだよ。アキちゃんが行ってよ!」
(てか、風が皆を助けてくれるんなら、俺行く必要なくね?)
しかし、そんな事を尋ねる暇もなく。
「お主、ワシが思うにわっぜ歴史に詳しかじゃろう。そして、何が弱点かも分かっちょるんじゃろう。覚悟はええな?ゆくぞ!」
桐野利秋。彼の剣術はとてつもなく速いという所に軍配があった。その速さは拳銃に手を掛けられ、撃たれるまでに間合いを詰め断ち斬ってしまう程だったと言う。
『神速の太刀』
飛ぶ斬撃がイネ達を乗せ、人々のもとへと飛んでいく。崖になっている所に着くと、助けに喜ぶ声が聞こえた。
「誰か来てくれたぞ!」
「やったー!死ななくてすむ!」
しかし、イネからは何もすることが出来なかった。
「おーい、どうして通り過ぎていくんだ?」
「待て!これを見ろ。上昇気流が発生してるぞ。」
利秋の斬撃のおかげで、人々は次々と助けられていく。
大地と空に大きな穴の空いてしまった周辺では、一糸乱れぬ攻防が続いていた。
『光の鉄槌』
ジャネットの放った光の鉄槌は、男に直撃する。
「私は、また歴史から人を消してしまうのか。」
ジャネットは、また複雑な感情を持った。しかし、幸か不幸かそれは、裏切られる。舞っていた砂埃が風で過ぎると影が浮かんでくる。
「勝手に死んだことにしないでよ。俺様はまだ生きてるんだからさ。」
フリードマンは、無傷で現れる。
「なぜ貴様、無傷なんだ。」
「俺様の体は片手の君の攻撃じゃ通じない。」
ジャネットは、再び攻撃を仕掛けようとするも、左腕を失ったせいか、魔力が上手く込められない。
「さようなら、ジャネットちゃん。今度は外さないように直接当てるね。」
『重力の理』
彼の上に挙げた右腕の手の平には、空気を歪ませる球体のようなものがあった。片腕の少女に狙いを澄ます。
(あぁ嫌だ!こんな所で私が死んでは、この世界の人々は、消されてしまう。だが、恐怖で足が動かない。嫌だ!死にたくない!)
ジャネットに、フリードマンの攻撃が当たる瞬間、彼と彼女の隙間に閃光が走る。
【使用主の防御力を大幅に超える攻撃を感知しました。よって、発動します。『完全反射』】
そこから、無機質な音声が響き、黒の鞘と共に白馬と一人の少年が現れた。
「この距離だったら避けられないだろう。くらえ!」
フリードマンの持っていた球体が彼を飲み込んでいく。
「やった・・・のか?」
「ジャネットさん、それ、俺らの世界だったら・・・」
効果を放っていたその球体は消えていく。そして、不気味な笑顔が浮び上がる。
「自分の得意分野なんだから、止められない訳ないでしょ。君達も甘いよね、これで倒せると思っちゃうんだからさ。」
「どうするのだ!イネ、私の片腕では、もう攻撃は・・・」
イネは、利秋に言われたよう無策で来た訳ではなかった。イネはジャネットにその策を伝える。
「本当に大丈夫なのか?」
「えぇ、あれはフリードマンさんじゃない。」
少し言葉を交わすと金髪の少女はフリードマン目掛け、旗を持ち走り出した。
「だから、無駄だってわかんないかな?」
フリードマンがトドメを刺そうとした時。イネの声が彼に届く。
「あなたの発明したその物質はこんな為に作られたんじゃないはずだ。目を覚ましてください!その物質の名前を答えて!」
それを聞いた時、フリードマンの内側がざわついた。
・
・
・
それは戦時中、どこにでもある少し貧しい平凡な家庭にてその物質は誕生していた。
「できたよ!エリス!重力に向かって反対に動く物質だ!」
深夜であるにも関わらず、彼は大声を上げて伝えに行った。
「何を作っているんですか?そんな物は必要ありません。」
フリードマンは、幼い頃からものづくりが大好きで大人になっても続けていた。
そんな彼を見て妻は少し呆れていた。
「今の私達に必要なのは、そんな物ではなくて、今日を生きる食べ物です。でもそれよりも大切な物を見つけました。」
「僕かい?」
「何を言っているんですか。見てください。この子達の幸せそうな顔。夢みたいではありませんか。」
そこには、幸せそうに眠る彼らの子供がすやすやと寝ていた。フリードマンは笑顔になる。
「あぁ、夢みたいだ。だが、このような幸せが僕の発明で、世に当たり前になる日がくる。」
彼の妻は揶揄うように、笑いながら言った。
「それはどうでしょう。あなたは無駄な物ばかり作っているんですから。」
「ははは、君までそう言わないでくれよ。でも、そんな日が必ずくるんだ。」
エリスはフリードマンに寄りかかって微笑む。
「私もバカねぇ。こんな人を好きになってしまうなんて。」
「へへへ。この物質は、やがて世界の何万人もの人を救うだろう。そして、笑顔にするだろう。今、名付けよう、この物質の名前は・・・」
・
・
・
『dear you 親愛なるあなたへ』
フリードマンの口からそれまでと違う口調の声が出てくる。
「な、なんでだ。体の自由が効かない。」
フリードマンは動揺し始める。しかし、もう既に彼らは来ていた。
「フリードマンよ!貴様は私にその片方の腕では、攻撃を与えられないと言ったな。しかし、これならどうだ!」
ジャネットが右手で旗を持ち、イネが左手でそれを持つ。特訓の成果がここで活きる。
「行くぞ!イネ!」
「はい!」
二人でその一本に力を込める。
「「泥を舐め足掻いてもこの希望の糸は途切れない!」」
『『勝利への一筋』』
その一撃はフリードマンの体を斜めに斬り裂いた。
フリードマンの苦しむ声が響いていたものの、次第に消えていき、彼の顔が笑顔になっていった。
「君達、僕を殺してくれて、ありがとう。」
「貴様、暴走する魔力が止まっているではないか。なぜだ、やはり、あれは何者かに操られていたのか。」
「そうなんだ。でも、いつこうなったか誰にやられたかは覚えていないんだ。」
フリードマンの体が先の方から光となっていく。
「私からそれについて話せる事はそれだけしかない。だから、最後に言わせてくれ。このままでは、私は何人もの者たちを殺してしまっていただろう。私を止めてくれてありがとう。」
ジャネットは、声を震わせながら言葉を繋いだ。
「いいや、すまなかった。今の私達には君を殺す事しか出来なかった。本当にすまない。」
フリードマンは、笑顔で答える。
「いいんだ。僕は感謝しかないんだ。僕は助けた人より殺した人の方が多くなるのが怖かった。皆の幸せを奪いたくなかったんだ。でも、申し訳ないと思うのなら一つ願い事を聞いて貰ってもいいかい?」
「ああ、」
フリードマンは、もう顔の半分しか残っていない。
「皆の幸せを君達で作ってくれ。」
そう言って、フリードマンは光の粒となってしまった。ジャネットは、その光に向かって泣きながら答える。
「ああ、約束だ。君の願いは私達が叶える。」
ただただ、圧倒されていたイネは今の言葉を泣いているジャネットを見て心に強く誓うのであった。
「イネよ、私はまた、偉大な人物を消してしまったのだな。イネこれからはどうしたらいい?また、私は殺さなければならないのか?」
少し間を置きイネは口を開く。
「もう、そんな事はさせない。君も泣かせない。俺がジャネットも皆も守る。」
「お前は、まだ魔法も使えないじゃないか。」
「これから、使えるようになるよ。この身が朽ちたとしても」
「急にどうして・・・」
「君が好きだから。今、その事に気が付いたんだ。それじゃ理由にならないか?君を守らせてくれ。」
ジャネットは、そっぽを向いてしまった。
「約束だぞ?絶対にだぞ?」
ジャネットはその後も夕日に向かって泣いていた。彼女の頬は夕日のせいか少し紅くなっていた。
第1章は、これにて完です!
読んで下さった方には、感謝しかないです!
ジャネットを守るため、覚悟を決めたイネ。果たして、魔法で偉人達を救う事ができるのか?!
フォロー、ハート、レビュー、よろしくお願いします!
「こんな偉人、武器が見たい!」等は、コメントにて募集しております!
「貴様は許さん!このジャネット、誠心誠意貴様を成敗する。」
「あらー、怖いなー。でも、俺様も負けないよ。」
フリードマンが空高くに昇っていく。
そこで唱える。
『神を崇めし全ての生物よ。それら支配する大地よ、我その潜在を跋扈せん。時空の摩天楼!』
ジャネットの所に直径十メートル程の魔法陣が描かれ、縦一帯に衝撃が走る。そして、その縦一帯は大地ごと消えてしまった。ジャネットは、すぐさまそこから離れていたが・・・
「ああぁぁぁ!」
悲鳴を上げ、ジャネットは左肩を擦りながら、不気味な笑顔を睨みつける。
「貴様!私の腕をよくも!」
「逃げられちゃったか。結構魔力使っちゃったんだけどな。ならもう少し強めるのみ!」
フリードマンは急加速しジャネットの方へ向かっていく。
街の方では、
「あー!落ちちゃうよお母さん!」
「今助けるからね!」
「もう、、、無理」
少女は手を離してしまい、地の底へと落ちてしまう。しかし、、、そこには、イネ達が待っていた。
「もう大丈夫です。あちらの街へ行ってください!さぁ、走って!」
「は、はい!ありがとうございます!」
「ありがとー!お兄ちゃん!」
それを、笑顔で見届け自分の下の白馬に話し掛ける。
「行けるか?スレイプニル。まだ、助けなければならない人達がいる。」
白馬は咆哮で答える。イネ達が走り出そうとした時、高いロリっ子ボイスが耳に響いてきた。
「イネ!また会うたな!」
顔を上げると、紺の和服に身丈よりも大きな日本刀を携えた、小柄な少女が。
「君は、、アキちゃん!いやー、心強いな!」
「ア、アキちゃん?!ワシは利秋じゃ!そげんな名を使うでない。ないでそげな名で呼ぶのじゃ!」
利秋は、ジタバタと騒ぎながらイネに詰め寄る。
「俺の中でも、あの人斬り半次郎だ。って考えようとしたんだけど、今のフォルムを見るとどうしても、何も怖さを感じないというか。むしろ、可愛さが勝ってるんだよね。だからアキちゃん」
「そげんな名で呼ぶなー!」
利秋は、恥ずかしそうに独りで騒ぎ立てている。少しして、治まったのかイネの方を見て、ある提案を持ち出した。
「イネよ、ワシの斬撃は風も生む。それは、イネも知っちょっと思うが、それに乗って、崖に掴待っちょ者共を助けてくれ。」
「それ、危なくない?」
「大丈夫じゃ、そん風が崖におる者共を上まで運んでくれる。安心せい。」
「いや、俺らの話だよ!」
「スレイプニルもおる。大丈夫じゃ。」
そういうと、利秋は、黒の鞘から銀の刃を差し抜いた。
「行くぞ!っとそん前にこいを渡しちょこう。」
利秋から、橙赤色の龍の紋章の入ったものが渡される。
「なんで、鞘を?」
利秋は、一瞬ニヤリとすると、
「行先はジャネット殿の所じゃ。救うてけや!」
「どうして俺なんだよ。アキちゃんが行ってよ!」
(てか、風が皆を助けてくれるんなら、俺行く必要なくね?)
しかし、そんな事を尋ねる暇もなく。
「お主、ワシが思うにわっぜ歴史に詳しかじゃろう。そして、何が弱点かも分かっちょるんじゃろう。覚悟はええな?ゆくぞ!」
桐野利秋。彼の剣術はとてつもなく速いという所に軍配があった。その速さは拳銃に手を掛けられ、撃たれるまでに間合いを詰め断ち斬ってしまう程だったと言う。
『神速の太刀』
飛ぶ斬撃がイネ達を乗せ、人々のもとへと飛んでいく。崖になっている所に着くと、助けに喜ぶ声が聞こえた。
「誰か来てくれたぞ!」
「やったー!死ななくてすむ!」
しかし、イネからは何もすることが出来なかった。
「おーい、どうして通り過ぎていくんだ?」
「待て!これを見ろ。上昇気流が発生してるぞ。」
利秋の斬撃のおかげで、人々は次々と助けられていく。
大地と空に大きな穴の空いてしまった周辺では、一糸乱れぬ攻防が続いていた。
『光の鉄槌』
ジャネットの放った光の鉄槌は、男に直撃する。
「私は、また歴史から人を消してしまうのか。」
ジャネットは、また複雑な感情を持った。しかし、幸か不幸かそれは、裏切られる。舞っていた砂埃が風で過ぎると影が浮かんでくる。
「勝手に死んだことにしないでよ。俺様はまだ生きてるんだからさ。」
フリードマンは、無傷で現れる。
「なぜ貴様、無傷なんだ。」
「俺様の体は片手の君の攻撃じゃ通じない。」
ジャネットは、再び攻撃を仕掛けようとするも、左腕を失ったせいか、魔力が上手く込められない。
「さようなら、ジャネットちゃん。今度は外さないように直接当てるね。」
『重力の理』
彼の上に挙げた右腕の手の平には、空気を歪ませる球体のようなものがあった。片腕の少女に狙いを澄ます。
(あぁ嫌だ!こんな所で私が死んでは、この世界の人々は、消されてしまう。だが、恐怖で足が動かない。嫌だ!死にたくない!)
ジャネットに、フリードマンの攻撃が当たる瞬間、彼と彼女の隙間に閃光が走る。
【使用主の防御力を大幅に超える攻撃を感知しました。よって、発動します。『完全反射』】
そこから、無機質な音声が響き、黒の鞘と共に白馬と一人の少年が現れた。
「この距離だったら避けられないだろう。くらえ!」
フリードマンの持っていた球体が彼を飲み込んでいく。
「やった・・・のか?」
「ジャネットさん、それ、俺らの世界だったら・・・」
効果を放っていたその球体は消えていく。そして、不気味な笑顔が浮び上がる。
「自分の得意分野なんだから、止められない訳ないでしょ。君達も甘いよね、これで倒せると思っちゃうんだからさ。」
「どうするのだ!イネ、私の片腕では、もう攻撃は・・・」
イネは、利秋に言われたよう無策で来た訳ではなかった。イネはジャネットにその策を伝える。
「本当に大丈夫なのか?」
「えぇ、あれはフリードマンさんじゃない。」
少し言葉を交わすと金髪の少女はフリードマン目掛け、旗を持ち走り出した。
「だから、無駄だってわかんないかな?」
フリードマンがトドメを刺そうとした時。イネの声が彼に届く。
「あなたの発明したその物質はこんな為に作られたんじゃないはずだ。目を覚ましてください!その物質の名前を答えて!」
それを聞いた時、フリードマンの内側がざわついた。
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それは戦時中、どこにでもある少し貧しい平凡な家庭にてその物質は誕生していた。
「できたよ!エリス!重力に向かって反対に動く物質だ!」
深夜であるにも関わらず、彼は大声を上げて伝えに行った。
「何を作っているんですか?そんな物は必要ありません。」
フリードマンは、幼い頃からものづくりが大好きで大人になっても続けていた。
そんな彼を見て妻は少し呆れていた。
「今の私達に必要なのは、そんな物ではなくて、今日を生きる食べ物です。でもそれよりも大切な物を見つけました。」
「僕かい?」
「何を言っているんですか。見てください。この子達の幸せそうな顔。夢みたいではありませんか。」
そこには、幸せそうに眠る彼らの子供がすやすやと寝ていた。フリードマンは笑顔になる。
「あぁ、夢みたいだ。だが、このような幸せが僕の発明で、世に当たり前になる日がくる。」
彼の妻は揶揄うように、笑いながら言った。
「それはどうでしょう。あなたは無駄な物ばかり作っているんですから。」
「ははは、君までそう言わないでくれよ。でも、そんな日が必ずくるんだ。」
エリスはフリードマンに寄りかかって微笑む。
「私もバカねぇ。こんな人を好きになってしまうなんて。」
「へへへ。この物質は、やがて世界の何万人もの人を救うだろう。そして、笑顔にするだろう。今、名付けよう、この物質の名前は・・・」
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『dear you 親愛なるあなたへ』
フリードマンの口からそれまでと違う口調の声が出てくる。
「な、なんでだ。体の自由が効かない。」
フリードマンは動揺し始める。しかし、もう既に彼らは来ていた。
「フリードマンよ!貴様は私にその片方の腕では、攻撃を与えられないと言ったな。しかし、これならどうだ!」
ジャネットが右手で旗を持ち、イネが左手でそれを持つ。特訓の成果がここで活きる。
「行くぞ!イネ!」
「はい!」
二人でその一本に力を込める。
「「泥を舐め足掻いてもこの希望の糸は途切れない!」」
『『勝利への一筋』』
その一撃はフリードマンの体を斜めに斬り裂いた。
フリードマンの苦しむ声が響いていたものの、次第に消えていき、彼の顔が笑顔になっていった。
「君達、僕を殺してくれて、ありがとう。」
「貴様、暴走する魔力が止まっているではないか。なぜだ、やはり、あれは何者かに操られていたのか。」
「そうなんだ。でも、いつこうなったか誰にやられたかは覚えていないんだ。」
フリードマンの体が先の方から光となっていく。
「私からそれについて話せる事はそれだけしかない。だから、最後に言わせてくれ。このままでは、私は何人もの者たちを殺してしまっていただろう。私を止めてくれてありがとう。」
ジャネットは、声を震わせながら言葉を繋いだ。
「いいや、すまなかった。今の私達には君を殺す事しか出来なかった。本当にすまない。」
フリードマンは、笑顔で答える。
「いいんだ。僕は感謝しかないんだ。僕は助けた人より殺した人の方が多くなるのが怖かった。皆の幸せを奪いたくなかったんだ。でも、申し訳ないと思うのなら一つ願い事を聞いて貰ってもいいかい?」
「ああ、」
フリードマンは、もう顔の半分しか残っていない。
「皆の幸せを君達で作ってくれ。」
そう言って、フリードマンは光の粒となってしまった。ジャネットは、その光に向かって泣きながら答える。
「ああ、約束だ。君の願いは私達が叶える。」
ただただ、圧倒されていたイネは今の言葉を泣いているジャネットを見て心に強く誓うのであった。
「イネよ、私はまた、偉大な人物を消してしまったのだな。イネこれからはどうしたらいい?また、私は殺さなければならないのか?」
少し間を置きイネは口を開く。
「もう、そんな事はさせない。君も泣かせない。俺がジャネットも皆も守る。」
「お前は、まだ魔法も使えないじゃないか。」
「これから、使えるようになるよ。この身が朽ちたとしても」
「急にどうして・・・」
「君が好きだから。今、その事に気が付いたんだ。それじゃ理由にならないか?君を守らせてくれ。」
ジャネットは、そっぽを向いてしまった。
「約束だぞ?絶対にだぞ?」
ジャネットはその後も夕日に向かって泣いていた。彼女の頬は夕日のせいか少し紅くなっていた。
第1章は、これにて完です!
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