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第7章 富士山麓の魔王城
幕間7 夢想する我が紫庭
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「陣地作成系スキル……!」
「うむ。今やこの空間は我がチートスキル【夢想する我が紫庭】の領域と化した。ゲームにはミニゲームというものがよくあるだろう。我がチートスキルはそれを再現する能力である」
例えば、RPGの最中に出てくるパズル。例えば、アクションゲームに突然出てくるシューティングゲーム。そういったプレイ中の寄り道や息抜き、違う角度からの刺激等の目的で出てくるゲーム内ゲームの事をクラネスは言っているのだ。
「全く、この小生にこんなスキルを押し付けるとは転生の女神めも趣味が悪い。だからこそ小生はこういう使い方する」
「やあーっ!」
クラネスがそう言うが早いか、ネロが飛び掛かった。先んじて攻撃してチートスキルの使用を喰い止めようという魂胆だ。だが、
「ルールを説明しよう。一つ、非殺傷設定。この空間内にいる者は互いに互いを攻撃する事ができない」
ネロの拳はクラネスには届かなかった。クラネスから三十センチメートル程のところでネロの身体が拳を突き出した状態で停止させられていたからだ。当然、クラネスには傷一つ付いていない。
「なん……だと……!」
「どうだ。これが非殺傷設定である。平和的であろう? 小生は他の異世界転生者のように野蛮人ではないのだ。くくく」
「くっ……!」
月面にいるかのようにゆっくりとネロの身体が着地する。着地と同時に地を蹴り、クラネスと距離を取るネロ。その顔は悔しげに歪んでいた。自慢のパワーがまるで通じなかったのだからそれも当然だろう。
「まだまだルールはあるぞ。
一つ、勝敗は小生が提示したゲームによって決定し、敗北した者はその瞬間に昏睡する。
一つ、この空間内では新妖精秘語以外の言語の使用を禁ずる」
「新妖精秘語?」
「小生が創作した言語である」
異世界とは創世期から地球とは別の世界だ。地球と異なる歴史を辿り、地球と異なる文明を築いてきた。であれば、言語もまた地球とは異なるものを使っていて然りである。それがクラネスのハイ・ファンタジーに対する思想だ。
スキルのルールはそんなクラネスの思想が反映されたものだ。わざわざ自分で創作した言語をこの場にいる者全員に使用を強いるのである。
≪我が新妖精秘語以外で会話する事は許されない。今や英語も日本語も口に出す事すら叶わないのだ。そして貴公らには小生の創作言語は理解できない。理解できる筈もないな、今日初めて聞いたのだから。貴公らは小生が喋っているのを聞いている事しかできない≫
「――――!」
「――――!? …………ッ!」
ネロとカルルが顔を見合わせて何かを言おうとするが、言葉どころか音にすらならなかった。口がパクパクするばかりで何も伝える事ができない。会話による意思疎通が完全に不可能になっていた。クラネスの言葉だけが何語か分からないままなのに、言っている内容が頭の中に入ってくる。
≪くくく、いつ見てもこの光景は滑稽であるな。地球各国の軍隊と戦っていたのを思い出す。屈強な歴戦の軍人共が小生のチートスキルで全く連携が取れなくなり、自滅にすら至る様は本当に面白かった≫
慌てふためく二人の様子を見て、クラネスがいやらしく嗤う。
≪では、ゲーム自体の内容を決めるとするか。そうだな、『魔法比べ』にするか。初級、中級、上級と互いに魔法を順に繰り出して、その完成度を競う魔法使いのゲームだ。先に二本先取した方の勝ちとなる。くくく、当然、新妖精秘語でなければ魔法は使えんがな≫
魔法の発動にはその魔法名を唱える事が必須だ。言葉を発せない今のカルルでは魔法を使えない事になる。そもそも魔法世界の住人ではないネロは更に不可能だ。つまりこれはクラネスが一方的に勝利するルールのゲームなのだ。
≪審判妖精、召喚≫
蔓の一本が蕾を膨らませ、蕾が艶やかな色合いで花開く。花の中から現れたのは女性の小人だ。身長はカルルの前腕よりも小さい程度。緑色のワンピースに身を包み、花冠を被り、背中には翅が生えている。両手には紅白旗を持っていた。
≪これは審判妖精。魔法の完成度を判定する疑似生命体である。審判は自立していて、判定は公正なのでそこは安心して欲しい。……と言っても信用などしないだろうがな≫
クラネスはにやにやした笑みを隠そうとしない。圧倒的有利な立場にある自分、相手を蹂躙する愉悦に満ち溢れていた。
≪では、行くぞ。――【初級疾風魔法】≫
「――――ッ!」
圧縮大気の刃がカルルを襲う。ルールに則りカルルが傷付く事はなかったが、思わず身を竦ませてしまう。
審判妖精が白旗を上げる。魔法で相手を攻撃したクラネスに勝利判定を、魔法を発動する事すらできなかったカルルに敗北判定が下ったのだ。審判の背後に白い大きな花が咲いて浮遊する。
≪くははははは! さあ次に中級を使うぞ。ついてこられまいがな!≫
調子に乗ったクラネスが魔法を発動する準備に入る。
魔法は詠唱を入れる事でその威力を格段に増す。というよりも、詠唱を入れないと威力が段階的に弱まると言った方が正しい。中級では五節もの詠唱が必要になる。
目まぐるしく状況が変わる戦闘中において長い詠唱は使い勝手が悪い為、通常、高位の使い手は詠唱を破棄するが、彼らとて詠唱入りの方がより強力な魔法が使える。
≪名状し難きものよ。黄衣の王よ。我は天津風を束ねる蒼穹、汝は見えざる鉄鎚。跪け――【中級疾風魔法】!≫
五節の語句を唱えたクラネスが風魔法を放つ。天空より圧縮された風圧がカルルの脳天を狙う。その直前、
≪大いなる深淵の大帝よ。銀の腕を持つ者よ。威光を示せ。暁光を仰げ。極光を差せ――【中級光輝魔法】!≫
カルルの光魔法が発動した。
「うむ。今やこの空間は我がチートスキル【夢想する我が紫庭】の領域と化した。ゲームにはミニゲームというものがよくあるだろう。我がチートスキルはそれを再現する能力である」
例えば、RPGの最中に出てくるパズル。例えば、アクションゲームに突然出てくるシューティングゲーム。そういったプレイ中の寄り道や息抜き、違う角度からの刺激等の目的で出てくるゲーム内ゲームの事をクラネスは言っているのだ。
「全く、この小生にこんなスキルを押し付けるとは転生の女神めも趣味が悪い。だからこそ小生はこういう使い方する」
「やあーっ!」
クラネスがそう言うが早いか、ネロが飛び掛かった。先んじて攻撃してチートスキルの使用を喰い止めようという魂胆だ。だが、
「ルールを説明しよう。一つ、非殺傷設定。この空間内にいる者は互いに互いを攻撃する事ができない」
ネロの拳はクラネスには届かなかった。クラネスから三十センチメートル程のところでネロの身体が拳を突き出した状態で停止させられていたからだ。当然、クラネスには傷一つ付いていない。
「なん……だと……!」
「どうだ。これが非殺傷設定である。平和的であろう? 小生は他の異世界転生者のように野蛮人ではないのだ。くくく」
「くっ……!」
月面にいるかのようにゆっくりとネロの身体が着地する。着地と同時に地を蹴り、クラネスと距離を取るネロ。その顔は悔しげに歪んでいた。自慢のパワーがまるで通じなかったのだからそれも当然だろう。
「まだまだルールはあるぞ。
一つ、勝敗は小生が提示したゲームによって決定し、敗北した者はその瞬間に昏睡する。
一つ、この空間内では新妖精秘語以外の言語の使用を禁ずる」
「新妖精秘語?」
「小生が創作した言語である」
異世界とは創世期から地球とは別の世界だ。地球と異なる歴史を辿り、地球と異なる文明を築いてきた。であれば、言語もまた地球とは異なるものを使っていて然りである。それがクラネスのハイ・ファンタジーに対する思想だ。
スキルのルールはそんなクラネスの思想が反映されたものだ。わざわざ自分で創作した言語をこの場にいる者全員に使用を強いるのである。
≪我が新妖精秘語以外で会話する事は許されない。今や英語も日本語も口に出す事すら叶わないのだ。そして貴公らには小生の創作言語は理解できない。理解できる筈もないな、今日初めて聞いたのだから。貴公らは小生が喋っているのを聞いている事しかできない≫
「――――!」
「――――!? …………ッ!」
ネロとカルルが顔を見合わせて何かを言おうとするが、言葉どころか音にすらならなかった。口がパクパクするばかりで何も伝える事ができない。会話による意思疎通が完全に不可能になっていた。クラネスの言葉だけが何語か分からないままなのに、言っている内容が頭の中に入ってくる。
≪くくく、いつ見てもこの光景は滑稽であるな。地球各国の軍隊と戦っていたのを思い出す。屈強な歴戦の軍人共が小生のチートスキルで全く連携が取れなくなり、自滅にすら至る様は本当に面白かった≫
慌てふためく二人の様子を見て、クラネスがいやらしく嗤う。
≪では、ゲーム自体の内容を決めるとするか。そうだな、『魔法比べ』にするか。初級、中級、上級と互いに魔法を順に繰り出して、その完成度を競う魔法使いのゲームだ。先に二本先取した方の勝ちとなる。くくく、当然、新妖精秘語でなければ魔法は使えんがな≫
魔法の発動にはその魔法名を唱える事が必須だ。言葉を発せない今のカルルでは魔法を使えない事になる。そもそも魔法世界の住人ではないネロは更に不可能だ。つまりこれはクラネスが一方的に勝利するルールのゲームなのだ。
≪審判妖精、召喚≫
蔓の一本が蕾を膨らませ、蕾が艶やかな色合いで花開く。花の中から現れたのは女性の小人だ。身長はカルルの前腕よりも小さい程度。緑色のワンピースに身を包み、花冠を被り、背中には翅が生えている。両手には紅白旗を持っていた。
≪これは審判妖精。魔法の完成度を判定する疑似生命体である。審判は自立していて、判定は公正なのでそこは安心して欲しい。……と言っても信用などしないだろうがな≫
クラネスはにやにやした笑みを隠そうとしない。圧倒的有利な立場にある自分、相手を蹂躙する愉悦に満ち溢れていた。
≪では、行くぞ。――【初級疾風魔法】≫
「――――ッ!」
圧縮大気の刃がカルルを襲う。ルールに則りカルルが傷付く事はなかったが、思わず身を竦ませてしまう。
審判妖精が白旗を上げる。魔法で相手を攻撃したクラネスに勝利判定を、魔法を発動する事すらできなかったカルルに敗北判定が下ったのだ。審判の背後に白い大きな花が咲いて浮遊する。
≪くははははは! さあ次に中級を使うぞ。ついてこられまいがな!≫
調子に乗ったクラネスが魔法を発動する準備に入る。
魔法は詠唱を入れる事でその威力を格段に増す。というよりも、詠唱を入れないと威力が段階的に弱まると言った方が正しい。中級では五節もの詠唱が必要になる。
目まぐるしく状況が変わる戦闘中において長い詠唱は使い勝手が悪い為、通常、高位の使い手は詠唱を破棄するが、彼らとて詠唱入りの方がより強力な魔法が使える。
≪名状し難きものよ。黄衣の王よ。我は天津風を束ねる蒼穹、汝は見えざる鉄鎚。跪け――【中級疾風魔法】!≫
五節の語句を唱えたクラネスが風魔法を放つ。天空より圧縮された風圧がカルルの脳天を狙う。その直前、
≪大いなる深淵の大帝よ。銀の腕を持つ者よ。威光を示せ。暁光を仰げ。極光を差せ――【中級光輝魔法】!≫
カルルの光魔法が発動した。
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途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
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