転輪御伽草子モモタロウ ~ぶっちぎりの最強vs.最強!!! 異世界転生者と輪廻転生者が地球の命運を懸けて正面対決する!!!!!~

ナイカナ・S・ガシャンナ

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第2章 当世のかぐや姫

第10転 理由

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「私は例外。ほら、『竹取物語』で私は竹の中に転生していたでしょ。それで転生のノウハウが月の都にはあるのよ」
「ノウハウの問題なのかよ。……ん? じゃあ、なんで獣月宮は神々に従っているんだ? よく知らない事なんだろ? なのに命懸けでよ」
「お父様の命令だからよ。子が親に従うのは当たり前でしょ」
「そうか? そうかもしれないがよ……それだけでかあ?」

 俺にはいまいち共感できない考えだ。
 竹と違って、俺の戦いに対してのモチベーションはいまいち低い。そもそも輪廻転生者側全体の戦い理由が「異世界転生軍の要求を通したくない」という神々おかみの意向と大量殺人の報復だけである。俺個人の都合には何ら関係がなく、これでやる気など出る訳がない。

 あとは、これ以上の被害を止める為というのもあるが、いずれにしても一介の高校生が背負う問題ではない。自分の国が滅茶苦茶にされたのには腹が立ったが、人類滅亡なんて言われるとスケールが大きすぎてピンと来ないのだ。

「俺はもうちょっと意地の張り甲斐がある理由が欲しいがな」
「例えば、どんな?」
「えぇ……例えば? そうだなあ……『世界を救うんだ! 皆を守るんだ!』って奴よりも『大事な人が生きている世界だから戦う』みたいな奴の方が共感できるかな。そういうの」
「じゃあ私を大事にしなさいよ。それでいいでしょ?」
「お前よくそんなプロポーズみたいな台詞をサラッと吐けるな……今日が初対面なのに。さすが姫様だな」
「姫だもの」

 なんて話をしている内に飛行場に出た。手前には一機の飛行機が止まっている。数人乗りサイズの小型ジェット機だ。あれが竹のプライベートジェットだろう。
 そのジェット機の前に一人の少女が立っていた。

「やあやあ。ここで待っていれば必ずや誰か来ると思っていましたぞ」

 修道服に似た衣装を着ているが、額当に描かれているのは十字ではなく五芒星だ。陰気で、両目はクマが濃く、卑屈そうな笑みを浮かべている。髪型はボサボサで野暮ったい印象だ。肉付きは豊満で、特に一部分が目立つ。
 ふと傍らに立つ竹の一部分を見た。まな板とまではいかないが、豊満とはとてもとても……

「ブッ殺すわ」
「何も言ってねえだろ!?」
「目で語っていたのよ。いやらしい男ね」

 そんな事を言われても目は口と違って閉ざす訳にはいかないし、勘弁してくれ。

「こらこら、こっちを無視して会話するんじゃありませんぞ。デュフフフ。
 拙僧の名はカルル・トゥルー! 異世界転生軍の七番隊長、『僧侶』の――」
「【大神霊実おおかむづみ流剣術】――【追儺ついな】」

 カルルが最後までその台詞を言い終える事はなかった。それよりも早く俺の一太刀がカルルを叩き斬ったからである。

 俺の剣術【大神霊実おおかむづみ流剣術】は鬼退治に向けて編み出された桃太郎おれ固有の戦闘技術だ。膂力で人類を遥かに上回る鬼に対抗する為に速さに特化した。どれほど威力があろうとも、当たらなければどうという事はないという理屈だ。スピードで俺の右に出る地球人類はいない。

 そして、今の技【追儺ついな】は体を大きく前傾させ、重力を利用して素早く移動する古武術・縮地法の究極だ。
 敏捷性に長けたクリト・ルリトールすら上回る神速の斬撃だ。何もできないままカルルは倒された。そう見えたが、

「せっかちな男ですなあ。他人の口上くらい最後まで聞いてくだされ」

 カルルは無傷だった。傷どころか衣服にしわ一つ付いていない。俺の斬撃など何事も起きなかったかのようだ。

「では、改めまして。『僧侶』の異世界転生者、カルル・トゥルー。大帝教会所属の信徒ですぞ。よしなに」

 大帝教会というのはよく分からないが、多分異世界で流布している宗教なのだろう。今は重要な話ではない。

「お前もチートスキルって奴を使うのか」
そのとおりでございますExactly。我が妙技【海の王者リヴァイアサン】、究極攻撃たる【陸の王者ベヒーモス】と対を為す絶対防御ですぞ。デュフフフ」
「絶対防御……!」

 言いながらカルルが左掌をかざす。五指全てをぴったりと閉じて伸ばした形だ。手の甲には海竜の刺青が入れられている。
 クリトの【陸の王者ベヒーモス】は常時発動型パッシブスキル兼任意発動型アクティブスキルだった。【海の王者リヴァイアサン】も同様なのだろう。指をあの形にしている間、如何なる攻撃をも無視できるのだ。

「さて、自己紹介も済んだところでお見せしたいものがありますぞ。喜んで頂けるとよいのですが」

 カルルの手が飛行機のドアを開ける。機内には男が一人縄で拘束されていた。息があるようだが血まみれで、到底無事には見えない。
 スーツを着た男だ。その顔には俺も竹も見覚えがあった。

石上いそのかみ……!?」

 男は竹の部下だった。
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