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(◇The romance case [azure blue])
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★ヴァン・ダイン氏
◎ガーデン殺人事件
○(letter sokow)
○13章の補足
(※章の前半が恋愛小説風で、本体[letter sokow]に書くと探偵ヴァンスのイメージが崩れそうなのと、恥ずかしかったのでこちらに別記載しました…)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
◆13-ニューヨークの黄昏と蒼い星(アズールスター)
庭園にはヴァンスとビートン嬢、少し離れたところでマーカムとダイン氏が庭園内のベンチに腰掛けていた。
ヴァンスはビートン嬢に気分はどうか尋ねると彼女はだいぶ良くなったと言い、居住まいを正すと眼差しをまっすぐヴァンスに向けて言った。
「ヴァンスさんには何とお礼申し上げたらいいのでしょう。助けて下さってありがとうございます」
「いいえ、貴女も楽しくない目に遭いましたね…」
それからヴァンスはビートン嬢から普段このガーデン家の様子をどう思うか尋ねる。この家は決して円満ではなく、ガーデン教授は根っからの化学者で人間味に欠けてる事、マーサ夫人は何か重い病気を患ってる節がある事、スウィフトからも好意を向けられてたが、それはどちらかというとザリア嬢との埋められない心の隙間を埋めるために利用されてる感じがしたと言う。フロイトだけは裏表なく誠実で彼女自身も好感が持てたと言う。
「ここではすべてが闇の中で、自分がなにをしても無駄なように感じられるのです。でも、あなただっていつも闇のなかで仕事をなさるのでしょう…?」
「ええ。ですが暗闇を手探りで進んで行こうとするのは誰でもそうでしょう」
空は日が沈んで、西の空は夕暮れの鮮やかな色彩を描いていた。空にはひときわ輝く星がひとつ瞬いている。地上には広大なニューヨークのビル群と街並の灯りが数え切れない程の輝くダイヤモンドを散りばめたように地平線まで続いてる。
「ビートン嬢、貴女はなぜアズールスターに賭けようと思ったのですか?」
「実は私、客人の方々の競馬の話題を時折、耳にしてまして興味がありましたのよ。今日は特にヴァンスさんがアズールスターの話をしていた際に、何となく名前の雰囲気に惹かれたんです。それで初めて思い切って賭けをしてみたんです…」
それを聞いたヴァンスは嬉しかったのか、照れ隠しだったのか……不意に庭園の縁にある、一段高くなった段に上がって景色を眺めた。
「黄昏時のニューヨークは素晴らしい…改めて気づきました。きっと世界一だろうな…こんな景色は…」
ふと振り返ると、怯えたようにビートン嬢がヴァンスを見ていた。向こうの方にいたマーカムとダイン氏も心配してやって来る。ヴァンスは平衡感覚が鋭いが、その様子はハラハラさせられて彼女はマーカムの腕を掴んでる。
「降りるんだ、ヴァンス。彼女が不安がる」
「高い所にいる人を見ると、人は不安になるものですよね。お許し下さい、ビートン嬢」
軽い身のこなしで庭園に降りた。するとそこへフロイトがやって来る。
「先生がヴァンスに来て欲しいと。それと看護師さんも」
彼らは庭園から屋内に入って階下に降りて行った。
([letter sokow]に続く)
……☆
*****
◎ガーデン殺人事件
○(letter sokow)
○13章の補足
(※章の前半が恋愛小説風で、本体[letter sokow]に書くと探偵ヴァンスのイメージが崩れそうなのと、恥ずかしかったのでこちらに別記載しました…)
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◆13-ニューヨークの黄昏と蒼い星(アズールスター)
庭園にはヴァンスとビートン嬢、少し離れたところでマーカムとダイン氏が庭園内のベンチに腰掛けていた。
ヴァンスはビートン嬢に気分はどうか尋ねると彼女はだいぶ良くなったと言い、居住まいを正すと眼差しをまっすぐヴァンスに向けて言った。
「ヴァンスさんには何とお礼申し上げたらいいのでしょう。助けて下さってありがとうございます」
「いいえ、貴女も楽しくない目に遭いましたね…」
それからヴァンスはビートン嬢から普段このガーデン家の様子をどう思うか尋ねる。この家は決して円満ではなく、ガーデン教授は根っからの化学者で人間味に欠けてる事、マーサ夫人は何か重い病気を患ってる節がある事、スウィフトからも好意を向けられてたが、それはどちらかというとザリア嬢との埋められない心の隙間を埋めるために利用されてる感じがしたと言う。フロイトだけは裏表なく誠実で彼女自身も好感が持てたと言う。
「ここではすべてが闇の中で、自分がなにをしても無駄なように感じられるのです。でも、あなただっていつも闇のなかで仕事をなさるのでしょう…?」
「ええ。ですが暗闇を手探りで進んで行こうとするのは誰でもそうでしょう」
空は日が沈んで、西の空は夕暮れの鮮やかな色彩を描いていた。空にはひときわ輝く星がひとつ瞬いている。地上には広大なニューヨークのビル群と街並の灯りが数え切れない程の輝くダイヤモンドを散りばめたように地平線まで続いてる。
「ビートン嬢、貴女はなぜアズールスターに賭けようと思ったのですか?」
「実は私、客人の方々の競馬の話題を時折、耳にしてまして興味がありましたのよ。今日は特にヴァンスさんがアズールスターの話をしていた際に、何となく名前の雰囲気に惹かれたんです。それで初めて思い切って賭けをしてみたんです…」
それを聞いたヴァンスは嬉しかったのか、照れ隠しだったのか……不意に庭園の縁にある、一段高くなった段に上がって景色を眺めた。
「黄昏時のニューヨークは素晴らしい…改めて気づきました。きっと世界一だろうな…こんな景色は…」
ふと振り返ると、怯えたようにビートン嬢がヴァンスを見ていた。向こうの方にいたマーカムとダイン氏も心配してやって来る。ヴァンスは平衡感覚が鋭いが、その様子はハラハラさせられて彼女はマーカムの腕を掴んでる。
「降りるんだ、ヴァンス。彼女が不安がる」
「高い所にいる人を見ると、人は不安になるものですよね。お許し下さい、ビートン嬢」
軽い身のこなしで庭園に降りた。するとそこへフロイトがやって来る。
「先生がヴァンスに来て欲しいと。それと看護師さんも」
彼らは庭園から屋内に入って階下に降りて行った。
([letter sokow]に続く)
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