3 / 5
(1927,-s.s.van dine [canary])
しおりを挟む
★ヴァン・ダイン
◎カナリア殺人事件
○The canary murder case
○米国-1927年
○東京創元社
○日暮雅通 先生-訳
○三橋曉 先生-解説
○電子マンガサイト-Renta!
○推理小説
{◎小説ではありません。気になる作品は上記を参考にご検索下さい。ヴァン・ダイン氏の2作目の作品。当初「女性が痛めつけられる作品は読まない」と言う個人的理由でこの小説を避けてたんですが気づけばこの作品以外のダイン氏の作品をほぼ読了してたので読書の一覧も完成させようと思い読むことにしました}
◇◇◇
男性を魅了してやまない元女優で歌姫のマーガレット・オーデルこと「カナリア」は無惨な死を遂げる……容疑者は4人で動機があるが、アリバイがはっきりしない。ヴァンスは容疑者たちにポーカー勝負を挑み犯人をあぶり出す!全30章
《またもや法律家だぜ……マーカムも災難だね
、ヴァンスはひそひそ声で言ったがそんな幸先悪い状況はそうは続かなかった。マーカムを敵に回せば最後、上品で優しい性格とは裏腹に彼はとんでもない策謀家となったので。貴重な情報を得るのに時間はかからなかった~10章~》
《オリジナルには熱意、自発性など鋭気があふれてるものだ。だが模写や模倣した芸術には、その作品に欠点を残せないがゆえに大きく動けない。だから鋭気が全く無く、不誠実で、正確過ぎてて、完璧過ぎてて、整い過ぎてる。鋭気だけは絶対に模写できないんだよ。それこそが模写、模倣、贋作の大きな欠点なんだ~14章~》
“ポーカーは人生の縮図である。ゲームでのふるまい方はその人の生き方である”ドーシー博士
《ポーカーというのはねマーカム君、10のうち9が心理ゲームなんだよ。ゲームを理解してさえいればテーブルついた人間の内面が1年ほど打ち解けて付き合うよりもずっとよく分かるんだ…今回の事件は犯人がどういう人物か判ってる。しかし誰がやったと指摘できるほどに容疑者たちをよく知らない。彼らとポーカーをする事で君に犯人を教えてあげられると思うんだ~26章~》
~登場人物~
ファイロ・ヴァンス…素人探偵
マーカム…ニューヨーク検事
ヒース…殺人課刑事部長
マーガレット嬢(カナリア)…元女優
クリーバ氏…元税務署長
スポッツウッド氏…カナリアの恋人
マニックス氏…毛皮輸入商
リンドクイスト氏…医師
スキール氏…プロの強盗で前科者
アリス嬢…女優
アレン氏…ギャンブラー
エイミー嬢…(カナリア邸の)メイド
ジェサップ氏…電話交換手
スピブリー氏…電話交換手
※90年前のアメリカの話です。
◇◇◇
◆01-美しいカナリア[09月09日(日)]
元女優マーガレット嬢はブロードウェイで突如、彗星の如く現れた美女だった。無名のミュージカルから瞬く間に看板女優として駆け上がり、カナリアの名の由来は彼女の出演した鳥のバレエの役柄がカナリアだった事からだった。だがそんな華々しい活躍から2年経つ頃、若くして命を奪われる。彼女の邸で絞殺されたのだった。
*
禁酒法のあおりでブロードウェイには、怪しげなナイトクラブが建ち並ぶようになり、痴情や金銭の絡む重犯罪が起き始めていた。ナイトクラブはそのような犯罪の温床になっており、ある強盗事件で警官2名が殉職した際には、マーカム検事は自身の案件は二の次で事件解決に勤(いそ)しむのだった。
◆02-雪の足跡[09月09日(日)]
ヴァンスたちはいつものスタイビィサント・クラブ奥の席で夕食を取っていた。いつも冷静なマーカムだったがここ最近立て込んだ事件のせいで珍しく愚痴をこぼすのだった。マーカムは物的証拠についての意見をヴァンスと交わしていた。
*
ある事件で12人の目撃者が雪の上を鶏が歩いてたと証言した。しかし1人の子供がそれをアヒルと言った。足跡の形から水かきがついていてアヒルだと判明した。マーカムはヴァンスに尋ねる、それじゃあ12人の目撃者が雪の上を歩いたのが男性と言い、子供が女性だと言ったら君はどうする?するとヴァンスは、人間はアヒルと違ってずる賢いのだから、その足跡は真犯人が用意した偽物である事を考慮し、目撃者の証言以外にも目を向けて、その人物がブーツだろうと、竹馬だろうと、空中浮遊しようと足跡だけにこだわるのはすぐに止めると言い、マーカムに犯人の思う壺に誘導されてしまってると指摘したのだった。その2日後……カナリア殺人事件は起きたのだった。
◆03-殺された女優[09月11日(火)08:30]
その日、マーカムが慌てた様子でヴァンスのアパートメントにやって来た。朝寝坊を邪魔されるとすこぶる機嫌悪くなるヴァンスを承知で彼を起こしに来たのはブロードウェイでトップクラスの美女であるカナリアが彼女の自宅で絞殺死体で発見されたからだった。彼女の自宅は4階建て高級アパートの1階。同じ階に歯科と他2軒アパートが入ってる。入口からホール奥突き当りがカナリア邸で、垂直に廊下がのびて中庭から回って入口の大通りに出られる。カナリア邸の玄関は1つで部屋の中は無茶苦茶に荒らされ、カナリア嬢は暖炉の前のソファーの上で醜(みにく)い姿で横たわっていた……非力ながら抵抗し、身につけた指輪や宝石が付いたネックレス等装飾品も奪われ、鍵のかかっていた書類箱と宝石箱もこじ開けられていた。しかしヴァンスは、火かき棒でこじ開けられていた宝石箱に疑問を持つ。
*
{◎正直、カナリアの死体状況説明のところ読み飛ばしたくなります。後で事件解明の際に必要になる描写なのかもしれませんが……私はここまで具体的に描写する必要はないのでは?と、やや怒りを感じました}
◆04-指紋[09月11日(火)09:30]
検死官ドアマス氏がやって来て(今回は朝食を邪魔された)カナリア嬢は死後10時間、真夜中前に殺された。また錠前専門の刑事によれば、宝石箱は鉄製ノミでこじ開けられ、鋳鉄(いてつ)火かき棒では折れてしまい開けるのは難しいと言う。最新型シリンダー錠が壊されていた為、プロの仕業のようだ。その他ヴァンスは、カナリア嬢が後ろから首を絞められてるならドレスやコサージュが引き千切られたのは彼女の死後である点、重たいランプがわざと倒されてる点、指紋がソファー後ろから見つかるが、宝石箱や書類箱に全く指紋がなく拭き取られている事から関係はないだろうと推理する。更に彼はこれだけ荒らされた部屋でクローゼットの部屋だけなぜかほとんど元のままである事を指摘し、ドアの「内側」の指紋を調べるよう指示する。
◆05-差し錠をしたままの扉[09月11日(火)10:30]
まずメイドのエイミー嬢から話を聞く。彼女は毎朝7時出勤だが、今朝は繕(つくろ)い物があり、朝6時頃来たと言う。荒らされた部屋とソファーで亡くなってるカナリア嬢を見つけ、ホールの応接室で夜勤をしていた電話交換手ジェサップに警察を呼んでもらった。それから昨夜カナリア嬢は、名前は明かさなかったが殿方と夕食の約束があって外出したと言う。その時は宝石箱の装飾品を身に着け準備していた。また書類箱は事務机の上にいつもあったがカナリアが開けているのを見たことがないという。エイミーはクロゼットの鍵がいつもは外側に差してあるのに内側である事に少し驚いたようだった。それから管理人が毎晩6時に中庭への通路のドアを錠を差して戸締まりしているという。この事からカナリアを殺した犯人は、ホールで夜勤をしていたジェサップに見つかることなく現場を出入りしていた事になるのだった。
※ちなみに1階にあるカナリア邸の窓には全て鉄格子がはめ込まれてます。現在なら消防法とかに引っかかりそうですが…90年前のアメリカの話です。
◆06-助けを呼ぶ声[09月11日(火)11:00]
電話交換手ジェサップは昨夜は夜勤の当番だった。彼は夜10頃仕事にやって来て、夜中11時頃にカナリア嬢が夕食を共にした紳士と帰って来て、男は30分ほど部屋にいたと言う。それから紳士は帰り際にタクシーを呼んで欲しいと頼まれて待っているとカナリアが助けを呼ぶ声をあげたと言う。ジェサップと紳士が急いで彼女の部屋の前に来たが「大丈夫、何でもないの」と言い、その件は終わった。そして1番気がかりなのは夜11時40分頃カナリア宛に電話がかかってきたので通話をつなぐと、応答したのはカナリアしか居ないはずなのに「男性」だったと言う点だった。この話から犯人はカナリア嬢と顔見知りでクロゼットの中に隠れていたのだと推察される。しかしどうやって部屋に入ったか謎が残る。
◆07-怪しい訪問者[09月11日(火)11:30]
次に午前10時から夜7時まで昼の電話交換手だったスピブリーの話を聞く。カナリア嬢が外出する昼間に訪問者がなかったか尋ねるが誰も来てはいないと言う。ただし彼女が外出後、夜9時半頃に男が1人訪ねて来た。その男は呼び鈴だけならし留守を確かめると帰ってしまったと言う。またメイドのエミリー嬢にクロゼットその他ベッドの下、カーテンの後ろ等に人が隠れた形跡はなかったか聞くが彼女のコートはクロゼットにしまっていて、帰りがけに誰かが潜んでいた形跡はなかった。隠れる場所もない。またその時、カナリア嬢のドレスの裾が「外側」に差した鍵に引っかかったと言う。もう1つ、1週間前にカナリア嬢に借金返済を迫っていた男がいたという。少なくともクロゼットに潜んだ者はカナリアが外出した後、この証言で部屋には男が2人も潜んでいたはずなのに侵入方法が全く不明、と言う複雑な状況になるのだった。(部屋を荒らした犯人はクロゼットに誰かが内側から鍵をかけていた為、クロゼットだけは荒らす事が出来なかった)
◆08-姿なき犯人[09月11日(火)11:45]
マーカムが仕事で事務所に戻る車内でヴァンスたちは昨夜の事件の要点をまとめた。目撃されることなくアパートへ入れる中庭のドアは開けられず、カナリア嬢は夜7時に外出し10時に男性と帰宅。10時半まで一緒にいて、11時に帰る時カナリアが悲鳴をあげる、何でもないのと言うのでその話は終わり彼女は12時前に殺された。
*
マーカムは先日の「雪の足跡」の話を思い出す。毒殺ならば自殺として片付けられたかもしれないが、この事件の犯人が足跡も目撃者も残すことなく反抗に及び、途方に暮れてヴァンスに助言を求める。しかしヴァンスはまずヒース刑事部長が容疑者の男性(食事を共にした男、留守宅にやって来た男、借金返済を迫った男…)会ってから考えるというのだった。
◆09-総がかり追求[09月11日(火)pm]
スタイヴェサント・クラブで早めの昼食を取ることにしたマーカムにヴァンス達も付き合う。するとクラブの接客係がマーカムに1通の伝言を持って来る。それはマーカムの知人でスポッツウッド氏だった。手紙には、昨夜カナリア嬢と食事を共にしたのが自分である事と、彼が名門の家柄で醜聞を恐れマーカムに打ち明けたのだった。彼はカナリア邸の後、夜中12時前にこのクラブにやって来て上の階でマーカムの同僚の判事と真夜中3時までポーカーをしていたという。それから、夕方ヒースがカナリア嬢と親しい男性たちを挙げた。元税務署長クリーバー氏は遊び人、毛皮輸入商マニックス氏は浪費家で1年ほど前カナリアと愛人関係だった。ヴァンスが気になってた宝石箱は、やはりプロの仕業で鉄製のノミを使用したのはスキールという前科者による犯行だという。だがヴァンスは、プロの泥棒がわざわざ火かき棒を使ってる点や、クロゼットの中を荒らさなかった点がスキールと矛盾してると言い、スキールを疑うマーカムを嘆くのだった。
◆10-強引な聴き取り-[09月11日(火)20:00]
マーカムはその夜、スタイヴェサントクラブで元税務署長のクリーバー氏と待ち合わせした。ヴァンスたちも同席し、奥の談話室で他に邪魔が入らないよう取り計らった。デリケートな問題でクレーバー氏はなかなか話を切り出さなかったが、新聞で公にされる事を恐れ、昨夜のスピード違反切符を帳消しにするという条件でカナリア嬢との関係を話した。彼女には一時期は熱を上げたこともあったが、次第に金銭の無心ばかりでやがて冷めてしまったという。最近会ったのは、6月頃交際時に書いた手紙を多額の金銭と引き換えにやっと返してくれたという。またカナリアは自分以外も複数の男性を恐喝して金銭を巻き上げてた。そこへクリーバー氏の弟から電話が入ったと伝言を受けるが彼はなぜか苛立っていた。カナリアの個人的な事は女性専門精神科医のリンドクイスト先生が何か知ってるだろうと言う。
◆11-情報収集[09月11日(火)21:00]
夜遅くに訪ねてきたヴァンスたちを気位の高そうな精神科医リンドクイスト氏はやや迷惑そうだった。カナリア嬢との関係について尋ねても「患者の守秘義務」を持ち出してなかなか話そうとしない。彼女とはあくまで職業上の関係だったとは言うが、診療時間外に彼女の邸を訪ねており、医者と患者以上の関係が拭えない。遠回しな質問をしていたマーカムだったが、ヴァンスに促され昨夜のアリバイを唐突に尋ねる。するとリンドクイストは突然怒り出し、ヴァンスたちに出ていけ言う。ヴァンスは、あの医者は穏やかさと激しさの二面性を持っていて、事件に自分の不都合な点があってそれを隠してると確信。後日、有りもしない事実でまくし立てればきっと何かを白状するだろうと、今夜は引き上げたのだった。
◆12-状況証拠[09月12日(水)09:00]
カナリア嬢が殺される1週間前に起きた、別の強盗事件の犯人として逮捕したスキールが検事局に連行される。彼女の自宅を訪ねて借金返済を催促したり、現場にあった宝石箱を鉄のノミで開けてる点、彼女の指輪が押収されてる事から(スキーニはカナリアから貰ったと言ってる)彼が犯人に最も近いが犯行を否認してる上、確固たる証拠もまだなかった。するとヴァンスは、スキーニが実は隠れてたクロゼットの鍵穴からカナリアが首を絞められてる現場を目撃したのではないかと尋ねる。スキーニは話をはぐらかすが明らかに動揺していた。犯行時にクロゼットの中に潜んでいたのはスキーニで、クロゼットの中に隠れ鍵をかけたのは殺人犯から身を守るためだったと思われる。
◆13-昔の愛人[09月12日(水)10:30]
マーカムの元に昨夜の件でリンドクイスト医師が詫び状を送ってきた。昨夜答えられなかったが、事件当時は患者を往診していたと言う。ヴァンスはその患者は恐らくアリバイ証言も出来ない重度の精神疾患者に違いないと言い、医師の疑いは拭えない。毛皮輸入商のマニックスは1年ほど前カナリア嬢と愛人関係だった。ケンカ別れでもなく自然消滅だったというが彼女がゆすりをしていた事を話すと驚くと同時に、とっさにクリーバーの名をあげる。どうやらクリーバーと知り合いらしい。リンドクイスト医師は知らないようだが、前科者のスキーニを知っていて彼との関係を隠したがってるようだった。
◆14-ヴァンスの仮説[09月12日(水)夕方]
スタイヴェサントクラブで待ち合わせしたヴァンスたち。マーカムは新聞記者達との問答ですっかり辟易してしまう。証拠を見つける事ができればスキーニが犯人なのは間違いないと思ってるマーカムにヴァンスは自身の仮説を話す。スキーニは確かにカナリア嬢の指輪を盗んだ。しかし逆に言えばスキーニはそれしか盗めなかったのだ。なぜならが盗もうと物色する前に、部屋は既に荒らされ彼女も殺されていたから。殺人犯はカナリアを殺そうと以前から用意周到に準備していて、その証拠に普通の強盗以上に部屋が「荒らされ過ぎていた」と説明。宝石箱を火かき棒でこじ開けたかのように偽装したのは、物取りに偽装する事が殺人犯にとって最も簡単だったからだ。
◆15-4人の容疑者[09月12日(水)夕方~]
それからヴァンスはマーカムにヒースが報告した4人の容疑者の詳細を尋ねた。
*
スポッツウッド氏は純粋なニューイングランド家系、父親の自動車会社の跡を継いだ高貴な家柄で既婚者。アリバイとしては彼がカナリア邸を後にした時、被害者はまだ生きていた。
*
毛皮輸入商マニックスは両親が移民でイーストサイド出身。実力で今の地位を築いた。結婚はしたが1年ほどで離婚。派手な生活で演劇界の美女を必ずお供させてる。ナイトクラブに出入りしても酒に溺れる事はない。カナリアとは1年前愛人関係。
*
リンドクイスト医師は免許を取得後、シカゴで怪しげな医療を行っていたようだが有罪にはなってない。婚約不履行で訴訟になってるが示談になって現在未婚。
*
クリーバーは政治家としての活動が多いが、弁護士や賭博場経営もしていた。アリバイとしてはスピード違反切符を切られた事があるがヴァンスに言わせればいくらでも偽装できる事だと問題にしない。未婚者。
*
マーカムもヒースもスキーニが犯人である事にこだわり過ぎてると嘆く。そこで彼は単独で「ある人物」に接触を図る事に……。
◆16-重大事の発覚[09月13日(木)am]
実は事件現場を初めて訪れた日、ヴァンスは荒らされた部屋で1枚の写真を見つけ、ヒースとマーカムに内緒で拝借していた。裏にはメッセージと名前が書かれており、男性たちに一切打ち明け話をしなかったカナリア嬢の唯一の親友と思われた。ヴァンスは芸能プロデューサーを装い、その女性が女優のアリス嬢であることを突き止め、彼女に会いに行く。初めはヴァンスを不審そうにしていたが、もしここで知ってることを話してくれたら一切口外しない事を約束すると彼女は重要な証言をする。アリスは現在マニックスと婚約しており、彼からこの事件に関わるなと口止めされてた。またクリーバーはカナリアにまだご執心で事件当日もパーティーに来るよう誘いをかけてたという。12時前に電話をしている。リンドクイスト医師は怒ると我を忘れるタイプでアリスはカナリアが危険な相手と付き合ってる事を心配していた。しかし彼女がマニックスとグルかもしれない疑念は拭えないのだった。
◆17-アリバイ確認[09月13日(木)pm]
アリス嬢のアパートを後にするとヴァンスは昼食にマーカムを誘い、知り得た情報を報告した。ヒースもやって来て報告する。マニックスはここ半年程カナリア嬢のアパートへ出入りしてるがそれは隣室のフリスビー嬢のところで彼女は毛皮商のモデルだと言う。またクリーバー氏が事件の夜にニューヨークにいたと知ると早速その日の夕方、彼の違反切符を切った警官を呼び寄せスタイヴェサントクラブにやって来たクリーバーを観察させる。すると警官は似ているがもっと背が低かったと証言し、実は彼の弟であった事が判明する。そこへスポッツウッド氏がやって来てこの事件の証言台に立たなくて済むか心配そうに尋ねる。マーカムはそれには及ばないと言う。彼女の邸の家具等は彼女の伯母が引き取る事になった。スポッツウッドは彼女の遺品を引き取りたいと希望するのだった。
◆18-罠を仕掛ける[09月14日(金)正午]
翌日、ヴァンスたちはもう一度アリス嬢を尋ねる。昨夜ヴァンスが彼の趣味ではない『スキャンダラス』のミュージカルを観に行ったのは彼女と話を合わせる為だった。彼は言葉巧みにミュージカルのあらすじを混じえアリス嬢の才能を褒めちぎるが、幕が下りた時間の話になった途端「なぜマニックスが夜10時半に来たと証言したのですか?」と言いアリス嬢の嘘を見破る。彼女は上げ足を取られた事に怒るがマニックスからそういう事にして欲しいとお願いされたと言う。本当は彼は真夜中過ぎにやって来た。しかしアリスはマニックスの無実を信じていた。検事局ではヒースの報告でスキーニがカナリア嬢のアパートの合鍵を持っていた事が判明する。
◆19-医者の言い訳[09月14日(金)14:00]
マーカムの事務所に再度リンドクイスト医師を呼び寄せアリバイを尋ねる。彼は先日手紙で知らせた通りだと反論するが、アリス嬢の話(彼女の名は伏せて)カナリア嬢を脅して心中しようとしていた件を追求する。ヴァンスは脅しの際にどのような方法を持ち出したか尋ねる。医師はカナリアに相手にされない嫉妬から脅しただけで殺意はなかったと否定する。また事件当日に対応した患者のアンナ夫人が重度の病人で証言は難しいという。そこでヴァンスは担当した看護婦を呼びつけるようその場でマーカムに提案する。医師が帰った後、マーカムは看護婦アメリア嬢はあの医師に受け答え方を吹き込まれるだろうとヴァンスを咎(とが)めるが、僕らが思いつくならあの医師も同じ事を考えるだろうと敢えて見抜いての事だった。次にマニックスから話を聞くがカナリア嬢の隣室2号室のフリスビー嬢をちらつかせて尋問するよう助言する。
*
この章に「“スキール氏”はトランプ遊びに夢中になってたと思わせようとする」とありますがトランプゲームをしてたのは“スポッツウッド氏”では…。
◆20-真夜中の目撃者[09月14日(金)15:30]
マニックスから改めて事件の夜の行動を尋ねるが彼は口を閉ざす。そこへマーカムは追い打ちをかけて2号室のフリスビー嬢がマニックスの元モデルであり、通用口と電話交換手に目撃されずにカナリア嬢の3号室に入るには、2号室から出入りする者でなければ不可能だと告げる。驚いたマニックスは事件の夜に目撃した事を話し出す。本当は差し錠がかかってない夕方5時半に2号室のフリスビーの部屋を訪れ、12時の5分前に帰った。丁度玄関のドア越しに3号室からクリーバー氏が出て来た所を偶然目撃した。しかもその際、通用口の差し錠は「開いていた」と言う。正面玄関から帰るつもりだったが開いていたので自分も通用口から出て行ったと言う。この証言で開いていた通用口を誰が閉めたのかと言う問題が浮上する。またヒースは荒らされた部屋で、きちんと鍵で開けられてたカナリアの書類箱が気がかりだった。おそらくクリーバー氏の手紙が入っていたと思われる。
◆21-矛盾する日付[09月15日(土)09:00]
朝早くにクリーバー氏を呼び出し、手紙を買い戻したのが本当に6月だったか尋ねる。クリーバーはその通りだと言うがヒースの強行な家宅捜索で7月分の手紙も見つかる。彼は実は手紙は8月に買い戻したという。事件に関わりたくなかったから嘘をついたのだと言い、事件の夜もカナリア嬢の部屋に電話した際、別の男性が訪問していたようだったので会わずに帰宅したという(部屋から驚いた様子の男性の声がした。クリーバーも通用口から出入りした。彼の知る限り夜中に通用口が開いてたのはそれが初めて)するとヴァンスはカナリアの元を訪ねて、玄関先に訪問するまで電話をする余裕はなかったはずだと問い詰める。(11時50分頃彼がアリス嬢に電話してた点を知らない素振りで)するとクリーバーは玄関先でリンドクイスト医師と会った事を白状する。
◆22-謁見希望[09月15日(土)10:00]
クリーバーとの謁見後、リンドクイスト医師がやって来る。彼は事件当日、カナリア嬢が自分の約束を破り、スポッツウッド氏と外出したのを見かけて殺意を持ったと告白する。精神的に追い詰められ、本気で帰宅した2人を撃とうと彼女のアパート前で待ち伏せていた。しかしいざ現実に2人を目の当たりにすると怖気づいてしまい、2人はアパートに入ってしまった。スポッツウッド氏がタクシーで去ってしまい、クリーバー氏にも目撃されて意気消沈してそのまま帰宅したという。リンドクイストが帰った後、スタイヴェサントクラブの近所のゴミ箱で盗まれたカナリア嬢の宝石が新聞に包まれて発見される。新聞の日付は昨日で、クラブの新聞が使われたのではと調べるがバックナンバーは残っていた。そこへスキール氏が明日、マーカムとの謁見を申し出る。無理強いして、今日聞き出そうとしたら何も喋らないと言うのでマーカムは承諾する。ヴァンスはスキールはおそらく殺害時の状況を語るつもりだろうと言う。
◆23-約束の時刻[09月16日(日)10:00]
翌朝は霧雨の降る中、ヴァンスたちは日曜の静かな検事局へ向かう。ヒースも合流して、スキール氏の自宅に部下を配置し、自宅から出発したら連絡が入る事になっていた。しかし10時を20分を過ぎてもスキールは現れない。ヒースが部下に連絡するがスキールは昨夜9時に帰宅した後、1歩も外に出てないと言う…。
その時、突然ヴァンスが取り乱して叫ぶ「なぜ気づかなかったのだろう、すまない僕の落ち度だ!」すぐにマーカム、ヒースと共にスキールの自宅へ駆け付ける。スキールの自宅は汚れた通り沿いの古い邸宅にあった。ヒースが部下と共にドアを蹴破って中に入る。その場にいた者たちは愕然とした。狭い部屋の奥にあったベッドの上でスキールはのけぞるように倒れていたのだった。彼は首を絞められ死んでいた。どうやら絞殺されたようだ。
◆24-突然の逮捕[09月16日(日)pm~09月17日(月)am]
ヒースと部下たちによってスキール殺しの捜査は迅速に行われた。死亡推定時刻は夜10時~12時。マーカムも率先して捜査にあたり、ヴァンスもスキールの部屋を入念に調べ特に夜会服に興味を持っていた。しかしその捜査にも関わらず事件は進展しない。カナリア事件容疑者の1人だったリンドクイスト医師は昨日の午後に精神病院に搬送され、回復まで1週間はかかり容疑者から除外となる。他3人はスポッツウッド氏はパーティに出席していたがいつでも抜け出せる状況で、マニックスもクリーバーも自宅にいてアリバイは不透明だった。
*
ところが午後に事件は急展開し、電話交換手ジェサップを逮捕したとヒースが報告して来る。ジェサップは昨日、突然仕事を退職して長期旅行の準備をしていた。警察が調べたところジェサップは数年前刑務所におり、スキールと刑務所で知り合っていた。電話交換手の仕事の際にスキールと再会し、カナリア嬢アパートに盗みに入る事を共謀したと思われ、通用口の差し錠を開閉出来たのも彼だけだった。ヴァンスは動機を尋ねるが、捜査初日に聞き出したジェサップがカナリア嬢に好意を寄せていた点ではないかとヒースは言うが、ヴァンスは可能性の1つとして尋ねた事でジェサップは犯人ではないと断言。そして、犯人の名はまだ言えないが差し錠を開閉したのはクロゼットに潜んでいたスキールであると言い、今から現場でその方法を実証して見せるというのだった…!
※25章以降はネタバレです。未読の方は…
(>0<;)見ないで下さいな!
*
*
*
*
*
*
*
*
*
◇
*
*
*
*
*
*
*
*
*
◇
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
◆25-ヴァンスの実証[06月17日(月)11:30]
ヴァンスたちはカナリア嬢のアパートへ到着した。先程1人の訪問者がいたがカナリアの遺品を所望する気の毒なスポッツウッド氏だった。現場でヴァンスは泥棒のスキール役、ヒースは電話交換手役、マーカムとダイン氏は観客になった。ヴァンスは自分がホールから立ち去ってから3分後にカナリアのアパートのチャイムを鳴らすよう指示する。
*
まずヴァンスは留守宅を訪ねたスキールと同じように電話交換手の前を通り過ぎてチャイムを鳴らし、少ししてドアもノックした。そしてヴァンスはホールから立ち去った。指示通り3分後にチャイムを鳴らすと、なんと部屋の中からヴァンスが出迎えた。仕掛けは…まず電話交換手にはチャイムを鳴らしている姿は見えない為、急いで通用口の鍵を開けておき、そのまま帰るふりをして、通用口から電話交換手に見られる事なくアパート内に侵入したのだった(ちなみにスキールはカナリアの合鍵を持っていた)
*
しかしこれだけではジェサップの容疑は晴れない。スキールが立ち去ってから差し錠が再度閉められたからだ。次にヴァンスはその点を実証すると言い、合図をしたら通用口の廊下を見に来て欲しいとお願いするとそのまま通用口へ向かった。しばらくして通用口ドアを叩く音がしたので行って見ると、ヴァンスの姿はどこにもなく差し錠もかけられていた。差し錠を開けると中庭でヴァンスがアパートのレンガ壁は素晴らしいと言ってくつろいでいたのだった。マーカムがじれったそうに差し錠の閉め方を聞くと…ヴァンスは毛抜きに細い紫色の飾り紐を結びつけた物を取り出す。まず内側の差し錠のつまみに毛抜きを引っかけて、紐はドアの下の隙間に通し外に出る。仕上げに外から紐を引っ張ると毛抜きでつまみが捻(ひね)られて鍵がかかるのだった。
*
この飾り紐を結び付けた毛抜きは昨日、スキールの夜会服から見つけたという。毛抜きはカナリア嬢の化粧台の上にあった身だしなみセットの中にあった物で、紫の紐はカナリアがひいきにしていた洋服店の包装用の紐だった。事件の夜、スキールは殺人容疑をかけられることを恐れ、とっさに部屋にあった道具で脱出し密室を作り出したのだ。
◆26-推理の再構成[09月17日(月)正午]
ヴァンスたちは事件のアパートを後にすると昼食を取りながら今までの経緯を再検討する。
*
事件の夜、スキールはヴァンスが実証した方法でアパートに侵入。おそらくお金に困ってカナリアの元を訪ねたのだろう。帰宅時にスポッツウッド氏も一緒だった為、とっさにクロゼットに身を隠した。スポッツウッドが帰宅後、突然クロゼットから出て来たスキールに驚いてカナリアは悲鳴を上げる。しかし顔見知りだったので何でもないのと言って済ませた。その後、犯人が訪問して来たので再びクロゼットに隠れてたがカナリアは殺されてしまう。スキールは殺人現場と強盗に見せかけて部屋を荒らして立ち去る犯人の行動をクロゼットの中から見ていたのだった。犯人を知っていたスキールはその人物を脅したと思われ、口封じに殺されたのだった。
*
ヴァンスが差し錠の問題を解決して、残る容疑者はマニックスとクリーバーになる。しかし犯人の決め手になる情報には欠けていた。そこでヴァンスは容疑者の人柄をより深く知るためにマーカムの邸で彼らとポーカーゲームを興じさせてくれと提案する。半信半疑のマーカムだったが、心理学とベンスン殺人事件を解決してみせた彼の力量を信じポーカーゲームに彼らを招待する。
◆27-ポーカーフェイス[09月17日(月)21:00]
夕方、マーカムがマニックス、クリーバー、スポッツウッド(彼は容疑者から外されてたが頭数が欲しいとヴァンスが希望した)3人と約束が取れたと連絡を受けると、ヴァンスはどこかへ出かけ夜8時に帰宅した。9時にマーカム邸で待ち合わせに行く際、車には見知らぬ男がいた。彼はアレンと言い、ヴァンスの昔ながらのポーカー仲間だと言う。
*
マーカム邸では、暖炉のある応接間で煙草や上等スコッチをたしなみながら、マーカムが皆を和やかに接待した。集まった容疑者たちも事件に関しての緊迫感は解(ほど)かれた。夜11時に円型のテーブルで5人は席に着いてポーカーを始めた(円卓には時計回りにヴァンス、アレン、クリーバー、マーカム、スポッツウッド。マニックスは円卓を挟んでヴァンスの真向かいに円卓から離れて座った)マニックスはルールが分からないのと、カードゲームに興味がないと参加しなかった)皆、ポーカーの熟練者たちで特にヴァンスとスポッツウッド氏は今夜の最高額を賭けるほどの一騎討ち勝負となる。時々ヴァンスはわざとらしくハンカチで汗を拭く振りをしていた(それはアレンに対する何かの合図らしかった)またヴァンスは参加しなかったマニックスにも簡単にルールをアレンジした賭け事を持ちかける。こちらも高額な賭けとなり賭け金が4倍にもなって最後はマニックスが勝つ。ゲームもお開きとなったがヴァンスは何かを考え込んでいた。そして明日、マーカムにクラブで昼食を一緒に食べようと約束をすると、事件の話はせずにそのまま帰ってしまったのだった。
◆28-犯人は…[09月18日(火)13:00]
翌日、スタイヴェサントクラブでマーカムと待ち合わせたヴァンスは、遅い朝食をおごってもらう事で犯人を明かす。ヴァンスは昨夜のポーカーゲームでカナリア嬢を殺したのはスポッツウッドであると言い出しマーカムは耳を疑う。実はヴァンスが連れてきたアレン氏は有名なギャンブラーで昨夜のゲームでアレン氏に“イカサマ賭博”をさせる事で容疑者である3人をわざと「勝たせるように」仕向けさせたのだった。その決め手となったのは、彼らの賭けに対する反応だった。ヴァンスはアレンに合図をして、カードを切るたびに相手に有利になる札を与えてそれぞれの出方を伺っていた。そして3人のうちスポッツウッドだけが綿密に計算高く、慎重さがない、リスクも無視した大胆不敵な賭けをしており、ヴァンスが言う今回の犯人像に当てはまる人物だった。だが当初から、スポッツウッドには電話交換手とカナリア嬢の悲鳴を聞いていて彼女がまだ生きていたと言う完璧なアリバイがあった(ヴァンスが言うにはその完璧なアリバイを用意してる点も真犯人を示していると言う)ヴァンスたちはマーカムと共にカナリアのアパートへ向かい、スポッツウッドがどこかに残してたアリバイ工作の痕跡を探しに行く…。
◆29-ベートーヴェンの曲[09月18日(火)14:00]
現場のアパートへやって来たヴァンスたちだが部屋を隅々まで観察しても決め手になりそうな物は何も見つからない。連日、報道陣たちに叩かれ疲れ果てたマーカムはヴァンスの推理が間違ってるのではと言い出す始末。そんなマーカムを慰めようと、ヴァンスは玄関先に保管された蓄音機を見つける。これは先日、家主のカナリア嬢が買ったばかりの新品だったが、なぜかキャビネットの上に壺と共に並べられ、隠すように布が被(かぶ)されていた。音楽でも聴いて気晴ししようと勧める。レコードは既にセットされていて針を落とすが全く音が聞こえてこない。ヴァンスが壊れてるのかもと軽蔑するのでたしなめたマーカムが直そうとした時だった。突然、女の凄まじい悲鳴が蓄音機から飛び出した!それから「……大丈夫、何でもないの」と言う声。これを聞いたヴァンスたちは絶句していたが、やがてヴァンスが「マーカム君、これが君の信じていたアリバイの種明かしさ。僕らはまんまと騙されたんだ!」と嘲笑うのだった。ドア越しに聞けば、カナリア嬢の声と聞き間違えるだろう。声の主は、裏声で録音したスポッツウッドだった。
◆30,-理論的でまともな殺人犯[09月18日(火)15:30]
マーカムからスタイヴェサントクラブの3階にスポッツウッド氏がいると連絡を受け、逮捕状を持ったヒース刑事部長と部下が到着した。やって来たヴァンスたちから殺人容疑を伝えられてもスポッツウッドは少しも動じる事なく、カナリア嬢を殺したことを認める。カナリアは金銭だけでなく、社会的安定の地位も欲しがり、妻と離婚し自分と結婚しなければ今までの手紙と不倫関係を暴露して家庭を破壊してやると脅されたと言う。またスキールは、殺人現場を目撃され口封じに殺したのだが、1番は卑劣な人間が大嫌いである事が理由だった。彼は連行される前に妻に手紙を書きたいから、少しひとりにさせてくれとお願いする。マーカムは迷ったが、ヴァンスがそれくらいは赦してやるべきだというので彼の言う通りにする。ところが数分後、ドアの向こうから銃声が聞こえ駆け付けるとスポッツウッドは自殺してしまったのだった……「自殺しそうな気がした」と言うヴァンスに、予兆を察して引き止めなかった事をマーカムは咎めるが「彼は理論的でまともな人間だった。自分の命を自分でどうにかするのは彼に残された唯一の権利だ」と言い、犯人を見つけ出したのに恩知らずな奴だ、とマーカムに言うと哀しそうに笑うのだった……。
《終》
{◎個人的に女性が痛めつけられる話を読まないのは、彼女がか弱く反抗する術がないからなのですがカナリア嬢の犯人に対するあの「脅し」は正直やってはいけない事だと思いました。あんな事をすれば逆鱗に触れて当然です……欲深くなってしまった事へのツケでしょうか……
あと29章のヴァンスの台詞が印象的でした…「誰かを殺したいほどに憎んだことがない人間は、感情がないんだ。殺人を踏み止まらせてるのは、神学や倫理ではない。勇気がないからだ。苦悩や良心の呵責や自分の人生を失う事を恐れるからだ。戦争で、人間の集団が…国と国とで宣戦布告し合っては、法的には何ら縛られることなく、大量殺人で欲望を発散させてる。殺人犯は、殺人を犯す勇気を備えた理性的な動物にすぎないのさ」
これは第一次世界大戦を経験したダイン氏の、戦争に対する率直な意見のように思えました。大切なものを失って…奪われて…悔しい思いがあるならば、敵国への仕返しとして殺したいと思うのは当然の成り行きです。戦争の何が恐ろしいって…単純に、法的な事も含めて「縛りが何も無くなること」です。戦争では…人を殺し放題だし、他人様の財産は盗み放題だし、お年寄り、女性、子供たちは残酷な快楽のためにいたぶられしかも罪人は何の罪も問われない。そんな場面で小さな疑問や良心だって心をよぎるかどうかだって怪しい。自由過ぎるのも問題、縛りがない事は問題、なんて恐ろしい事だろう…!!世界中にいる独裁者が皆、臆病者になってしまえばいい。人殺しする勇気まで持たなくていい}
*****
◎カナリア殺人事件
○The canary murder case
○米国-1927年
○東京創元社
○日暮雅通 先生-訳
○三橋曉 先生-解説
○電子マンガサイト-Renta!
○推理小説
{◎小説ではありません。気になる作品は上記を参考にご検索下さい。ヴァン・ダイン氏の2作目の作品。当初「女性が痛めつけられる作品は読まない」と言う個人的理由でこの小説を避けてたんですが気づけばこの作品以外のダイン氏の作品をほぼ読了してたので読書の一覧も完成させようと思い読むことにしました}
◇◇◇
男性を魅了してやまない元女優で歌姫のマーガレット・オーデルこと「カナリア」は無惨な死を遂げる……容疑者は4人で動機があるが、アリバイがはっきりしない。ヴァンスは容疑者たちにポーカー勝負を挑み犯人をあぶり出す!全30章
《またもや法律家だぜ……マーカムも災難だね
、ヴァンスはひそひそ声で言ったがそんな幸先悪い状況はそうは続かなかった。マーカムを敵に回せば最後、上品で優しい性格とは裏腹に彼はとんでもない策謀家となったので。貴重な情報を得るのに時間はかからなかった~10章~》
《オリジナルには熱意、自発性など鋭気があふれてるものだ。だが模写や模倣した芸術には、その作品に欠点を残せないがゆえに大きく動けない。だから鋭気が全く無く、不誠実で、正確過ぎてて、完璧過ぎてて、整い過ぎてる。鋭気だけは絶対に模写できないんだよ。それこそが模写、模倣、贋作の大きな欠点なんだ~14章~》
“ポーカーは人生の縮図である。ゲームでのふるまい方はその人の生き方である”ドーシー博士
《ポーカーというのはねマーカム君、10のうち9が心理ゲームなんだよ。ゲームを理解してさえいればテーブルついた人間の内面が1年ほど打ち解けて付き合うよりもずっとよく分かるんだ…今回の事件は犯人がどういう人物か判ってる。しかし誰がやったと指摘できるほどに容疑者たちをよく知らない。彼らとポーカーをする事で君に犯人を教えてあげられると思うんだ~26章~》
~登場人物~
ファイロ・ヴァンス…素人探偵
マーカム…ニューヨーク検事
ヒース…殺人課刑事部長
マーガレット嬢(カナリア)…元女優
クリーバ氏…元税務署長
スポッツウッド氏…カナリアの恋人
マニックス氏…毛皮輸入商
リンドクイスト氏…医師
スキール氏…プロの強盗で前科者
アリス嬢…女優
アレン氏…ギャンブラー
エイミー嬢…(カナリア邸の)メイド
ジェサップ氏…電話交換手
スピブリー氏…電話交換手
※90年前のアメリカの話です。
◇◇◇
◆01-美しいカナリア[09月09日(日)]
元女優マーガレット嬢はブロードウェイで突如、彗星の如く現れた美女だった。無名のミュージカルから瞬く間に看板女優として駆け上がり、カナリアの名の由来は彼女の出演した鳥のバレエの役柄がカナリアだった事からだった。だがそんな華々しい活躍から2年経つ頃、若くして命を奪われる。彼女の邸で絞殺されたのだった。
*
禁酒法のあおりでブロードウェイには、怪しげなナイトクラブが建ち並ぶようになり、痴情や金銭の絡む重犯罪が起き始めていた。ナイトクラブはそのような犯罪の温床になっており、ある強盗事件で警官2名が殉職した際には、マーカム検事は自身の案件は二の次で事件解決に勤(いそ)しむのだった。
◆02-雪の足跡[09月09日(日)]
ヴァンスたちはいつものスタイビィサント・クラブ奥の席で夕食を取っていた。いつも冷静なマーカムだったがここ最近立て込んだ事件のせいで珍しく愚痴をこぼすのだった。マーカムは物的証拠についての意見をヴァンスと交わしていた。
*
ある事件で12人の目撃者が雪の上を鶏が歩いてたと証言した。しかし1人の子供がそれをアヒルと言った。足跡の形から水かきがついていてアヒルだと判明した。マーカムはヴァンスに尋ねる、それじゃあ12人の目撃者が雪の上を歩いたのが男性と言い、子供が女性だと言ったら君はどうする?するとヴァンスは、人間はアヒルと違ってずる賢いのだから、その足跡は真犯人が用意した偽物である事を考慮し、目撃者の証言以外にも目を向けて、その人物がブーツだろうと、竹馬だろうと、空中浮遊しようと足跡だけにこだわるのはすぐに止めると言い、マーカムに犯人の思う壺に誘導されてしまってると指摘したのだった。その2日後……カナリア殺人事件は起きたのだった。
◆03-殺された女優[09月11日(火)08:30]
その日、マーカムが慌てた様子でヴァンスのアパートメントにやって来た。朝寝坊を邪魔されるとすこぶる機嫌悪くなるヴァンスを承知で彼を起こしに来たのはブロードウェイでトップクラスの美女であるカナリアが彼女の自宅で絞殺死体で発見されたからだった。彼女の自宅は4階建て高級アパートの1階。同じ階に歯科と他2軒アパートが入ってる。入口からホール奥突き当りがカナリア邸で、垂直に廊下がのびて中庭から回って入口の大通りに出られる。カナリア邸の玄関は1つで部屋の中は無茶苦茶に荒らされ、カナリア嬢は暖炉の前のソファーの上で醜(みにく)い姿で横たわっていた……非力ながら抵抗し、身につけた指輪や宝石が付いたネックレス等装飾品も奪われ、鍵のかかっていた書類箱と宝石箱もこじ開けられていた。しかしヴァンスは、火かき棒でこじ開けられていた宝石箱に疑問を持つ。
*
{◎正直、カナリアの死体状況説明のところ読み飛ばしたくなります。後で事件解明の際に必要になる描写なのかもしれませんが……私はここまで具体的に描写する必要はないのでは?と、やや怒りを感じました}
◆04-指紋[09月11日(火)09:30]
検死官ドアマス氏がやって来て(今回は朝食を邪魔された)カナリア嬢は死後10時間、真夜中前に殺された。また錠前専門の刑事によれば、宝石箱は鉄製ノミでこじ開けられ、鋳鉄(いてつ)火かき棒では折れてしまい開けるのは難しいと言う。最新型シリンダー錠が壊されていた為、プロの仕業のようだ。その他ヴァンスは、カナリア嬢が後ろから首を絞められてるならドレスやコサージュが引き千切られたのは彼女の死後である点、重たいランプがわざと倒されてる点、指紋がソファー後ろから見つかるが、宝石箱や書類箱に全く指紋がなく拭き取られている事から関係はないだろうと推理する。更に彼はこれだけ荒らされた部屋でクローゼットの部屋だけなぜかほとんど元のままである事を指摘し、ドアの「内側」の指紋を調べるよう指示する。
◆05-差し錠をしたままの扉[09月11日(火)10:30]
まずメイドのエイミー嬢から話を聞く。彼女は毎朝7時出勤だが、今朝は繕(つくろ)い物があり、朝6時頃来たと言う。荒らされた部屋とソファーで亡くなってるカナリア嬢を見つけ、ホールの応接室で夜勤をしていた電話交換手ジェサップに警察を呼んでもらった。それから昨夜カナリア嬢は、名前は明かさなかったが殿方と夕食の約束があって外出したと言う。その時は宝石箱の装飾品を身に着け準備していた。また書類箱は事務机の上にいつもあったがカナリアが開けているのを見たことがないという。エイミーはクロゼットの鍵がいつもは外側に差してあるのに内側である事に少し驚いたようだった。それから管理人が毎晩6時に中庭への通路のドアを錠を差して戸締まりしているという。この事からカナリアを殺した犯人は、ホールで夜勤をしていたジェサップに見つかることなく現場を出入りしていた事になるのだった。
※ちなみに1階にあるカナリア邸の窓には全て鉄格子がはめ込まれてます。現在なら消防法とかに引っかかりそうですが…90年前のアメリカの話です。
◆06-助けを呼ぶ声[09月11日(火)11:00]
電話交換手ジェサップは昨夜は夜勤の当番だった。彼は夜10頃仕事にやって来て、夜中11時頃にカナリア嬢が夕食を共にした紳士と帰って来て、男は30分ほど部屋にいたと言う。それから紳士は帰り際にタクシーを呼んで欲しいと頼まれて待っているとカナリアが助けを呼ぶ声をあげたと言う。ジェサップと紳士が急いで彼女の部屋の前に来たが「大丈夫、何でもないの」と言い、その件は終わった。そして1番気がかりなのは夜11時40分頃カナリア宛に電話がかかってきたので通話をつなぐと、応答したのはカナリアしか居ないはずなのに「男性」だったと言う点だった。この話から犯人はカナリア嬢と顔見知りでクロゼットの中に隠れていたのだと推察される。しかしどうやって部屋に入ったか謎が残る。
◆07-怪しい訪問者[09月11日(火)11:30]
次に午前10時から夜7時まで昼の電話交換手だったスピブリーの話を聞く。カナリア嬢が外出する昼間に訪問者がなかったか尋ねるが誰も来てはいないと言う。ただし彼女が外出後、夜9時半頃に男が1人訪ねて来た。その男は呼び鈴だけならし留守を確かめると帰ってしまったと言う。またメイドのエミリー嬢にクロゼットその他ベッドの下、カーテンの後ろ等に人が隠れた形跡はなかったか聞くが彼女のコートはクロゼットにしまっていて、帰りがけに誰かが潜んでいた形跡はなかった。隠れる場所もない。またその時、カナリア嬢のドレスの裾が「外側」に差した鍵に引っかかったと言う。もう1つ、1週間前にカナリア嬢に借金返済を迫っていた男がいたという。少なくともクロゼットに潜んだ者はカナリアが外出した後、この証言で部屋には男が2人も潜んでいたはずなのに侵入方法が全く不明、と言う複雑な状況になるのだった。(部屋を荒らした犯人はクロゼットに誰かが内側から鍵をかけていた為、クロゼットだけは荒らす事が出来なかった)
◆08-姿なき犯人[09月11日(火)11:45]
マーカムが仕事で事務所に戻る車内でヴァンスたちは昨夜の事件の要点をまとめた。目撃されることなくアパートへ入れる中庭のドアは開けられず、カナリア嬢は夜7時に外出し10時に男性と帰宅。10時半まで一緒にいて、11時に帰る時カナリアが悲鳴をあげる、何でもないのと言うのでその話は終わり彼女は12時前に殺された。
*
マーカムは先日の「雪の足跡」の話を思い出す。毒殺ならば自殺として片付けられたかもしれないが、この事件の犯人が足跡も目撃者も残すことなく反抗に及び、途方に暮れてヴァンスに助言を求める。しかしヴァンスはまずヒース刑事部長が容疑者の男性(食事を共にした男、留守宅にやって来た男、借金返済を迫った男…)会ってから考えるというのだった。
◆09-総がかり追求[09月11日(火)pm]
スタイヴェサント・クラブで早めの昼食を取ることにしたマーカムにヴァンス達も付き合う。するとクラブの接客係がマーカムに1通の伝言を持って来る。それはマーカムの知人でスポッツウッド氏だった。手紙には、昨夜カナリア嬢と食事を共にしたのが自分である事と、彼が名門の家柄で醜聞を恐れマーカムに打ち明けたのだった。彼はカナリア邸の後、夜中12時前にこのクラブにやって来て上の階でマーカムの同僚の判事と真夜中3時までポーカーをしていたという。それから、夕方ヒースがカナリア嬢と親しい男性たちを挙げた。元税務署長クリーバー氏は遊び人、毛皮輸入商マニックス氏は浪費家で1年ほど前カナリアと愛人関係だった。ヴァンスが気になってた宝石箱は、やはりプロの仕業で鉄製のノミを使用したのはスキールという前科者による犯行だという。だがヴァンスは、プロの泥棒がわざわざ火かき棒を使ってる点や、クロゼットの中を荒らさなかった点がスキールと矛盾してると言い、スキールを疑うマーカムを嘆くのだった。
◆10-強引な聴き取り-[09月11日(火)20:00]
マーカムはその夜、スタイヴェサントクラブで元税務署長のクリーバー氏と待ち合わせした。ヴァンスたちも同席し、奥の談話室で他に邪魔が入らないよう取り計らった。デリケートな問題でクレーバー氏はなかなか話を切り出さなかったが、新聞で公にされる事を恐れ、昨夜のスピード違反切符を帳消しにするという条件でカナリア嬢との関係を話した。彼女には一時期は熱を上げたこともあったが、次第に金銭の無心ばかりでやがて冷めてしまったという。最近会ったのは、6月頃交際時に書いた手紙を多額の金銭と引き換えにやっと返してくれたという。またカナリアは自分以外も複数の男性を恐喝して金銭を巻き上げてた。そこへクリーバー氏の弟から電話が入ったと伝言を受けるが彼はなぜか苛立っていた。カナリアの個人的な事は女性専門精神科医のリンドクイスト先生が何か知ってるだろうと言う。
◆11-情報収集[09月11日(火)21:00]
夜遅くに訪ねてきたヴァンスたちを気位の高そうな精神科医リンドクイスト氏はやや迷惑そうだった。カナリア嬢との関係について尋ねても「患者の守秘義務」を持ち出してなかなか話そうとしない。彼女とはあくまで職業上の関係だったとは言うが、診療時間外に彼女の邸を訪ねており、医者と患者以上の関係が拭えない。遠回しな質問をしていたマーカムだったが、ヴァンスに促され昨夜のアリバイを唐突に尋ねる。するとリンドクイストは突然怒り出し、ヴァンスたちに出ていけ言う。ヴァンスは、あの医者は穏やかさと激しさの二面性を持っていて、事件に自分の不都合な点があってそれを隠してると確信。後日、有りもしない事実でまくし立てればきっと何かを白状するだろうと、今夜は引き上げたのだった。
◆12-状況証拠[09月12日(水)09:00]
カナリア嬢が殺される1週間前に起きた、別の強盗事件の犯人として逮捕したスキールが検事局に連行される。彼女の自宅を訪ねて借金返済を催促したり、現場にあった宝石箱を鉄のノミで開けてる点、彼女の指輪が押収されてる事から(スキーニはカナリアから貰ったと言ってる)彼が犯人に最も近いが犯行を否認してる上、確固たる証拠もまだなかった。するとヴァンスは、スキーニが実は隠れてたクロゼットの鍵穴からカナリアが首を絞められてる現場を目撃したのではないかと尋ねる。スキーニは話をはぐらかすが明らかに動揺していた。犯行時にクロゼットの中に潜んでいたのはスキーニで、クロゼットの中に隠れ鍵をかけたのは殺人犯から身を守るためだったと思われる。
◆13-昔の愛人[09月12日(水)10:30]
マーカムの元に昨夜の件でリンドクイスト医師が詫び状を送ってきた。昨夜答えられなかったが、事件当時は患者を往診していたと言う。ヴァンスはその患者は恐らくアリバイ証言も出来ない重度の精神疾患者に違いないと言い、医師の疑いは拭えない。毛皮輸入商のマニックスは1年ほど前カナリア嬢と愛人関係だった。ケンカ別れでもなく自然消滅だったというが彼女がゆすりをしていた事を話すと驚くと同時に、とっさにクリーバーの名をあげる。どうやらクリーバーと知り合いらしい。リンドクイスト医師は知らないようだが、前科者のスキーニを知っていて彼との関係を隠したがってるようだった。
◆14-ヴァンスの仮説[09月12日(水)夕方]
スタイヴェサントクラブで待ち合わせしたヴァンスたち。マーカムは新聞記者達との問答ですっかり辟易してしまう。証拠を見つける事ができればスキーニが犯人なのは間違いないと思ってるマーカムにヴァンスは自身の仮説を話す。スキーニは確かにカナリア嬢の指輪を盗んだ。しかし逆に言えばスキーニはそれしか盗めなかったのだ。なぜならが盗もうと物色する前に、部屋は既に荒らされ彼女も殺されていたから。殺人犯はカナリアを殺そうと以前から用意周到に準備していて、その証拠に普通の強盗以上に部屋が「荒らされ過ぎていた」と説明。宝石箱を火かき棒でこじ開けたかのように偽装したのは、物取りに偽装する事が殺人犯にとって最も簡単だったからだ。
◆15-4人の容疑者[09月12日(水)夕方~]
それからヴァンスはマーカムにヒースが報告した4人の容疑者の詳細を尋ねた。
*
スポッツウッド氏は純粋なニューイングランド家系、父親の自動車会社の跡を継いだ高貴な家柄で既婚者。アリバイとしては彼がカナリア邸を後にした時、被害者はまだ生きていた。
*
毛皮輸入商マニックスは両親が移民でイーストサイド出身。実力で今の地位を築いた。結婚はしたが1年ほどで離婚。派手な生活で演劇界の美女を必ずお供させてる。ナイトクラブに出入りしても酒に溺れる事はない。カナリアとは1年前愛人関係。
*
リンドクイスト医師は免許を取得後、シカゴで怪しげな医療を行っていたようだが有罪にはなってない。婚約不履行で訴訟になってるが示談になって現在未婚。
*
クリーバーは政治家としての活動が多いが、弁護士や賭博場経営もしていた。アリバイとしてはスピード違反切符を切られた事があるがヴァンスに言わせればいくらでも偽装できる事だと問題にしない。未婚者。
*
マーカムもヒースもスキーニが犯人である事にこだわり過ぎてると嘆く。そこで彼は単独で「ある人物」に接触を図る事に……。
◆16-重大事の発覚[09月13日(木)am]
実は事件現場を初めて訪れた日、ヴァンスは荒らされた部屋で1枚の写真を見つけ、ヒースとマーカムに内緒で拝借していた。裏にはメッセージと名前が書かれており、男性たちに一切打ち明け話をしなかったカナリア嬢の唯一の親友と思われた。ヴァンスは芸能プロデューサーを装い、その女性が女優のアリス嬢であることを突き止め、彼女に会いに行く。初めはヴァンスを不審そうにしていたが、もしここで知ってることを話してくれたら一切口外しない事を約束すると彼女は重要な証言をする。アリスは現在マニックスと婚約しており、彼からこの事件に関わるなと口止めされてた。またクリーバーはカナリアにまだご執心で事件当日もパーティーに来るよう誘いをかけてたという。12時前に電話をしている。リンドクイスト医師は怒ると我を忘れるタイプでアリスはカナリアが危険な相手と付き合ってる事を心配していた。しかし彼女がマニックスとグルかもしれない疑念は拭えないのだった。
◆17-アリバイ確認[09月13日(木)pm]
アリス嬢のアパートを後にするとヴァンスは昼食にマーカムを誘い、知り得た情報を報告した。ヒースもやって来て報告する。マニックスはここ半年程カナリア嬢のアパートへ出入りしてるがそれは隣室のフリスビー嬢のところで彼女は毛皮商のモデルだと言う。またクリーバー氏が事件の夜にニューヨークにいたと知ると早速その日の夕方、彼の違反切符を切った警官を呼び寄せスタイヴェサントクラブにやって来たクリーバーを観察させる。すると警官は似ているがもっと背が低かったと証言し、実は彼の弟であった事が判明する。そこへスポッツウッド氏がやって来てこの事件の証言台に立たなくて済むか心配そうに尋ねる。マーカムはそれには及ばないと言う。彼女の邸の家具等は彼女の伯母が引き取る事になった。スポッツウッドは彼女の遺品を引き取りたいと希望するのだった。
◆18-罠を仕掛ける[09月14日(金)正午]
翌日、ヴァンスたちはもう一度アリス嬢を尋ねる。昨夜ヴァンスが彼の趣味ではない『スキャンダラス』のミュージカルを観に行ったのは彼女と話を合わせる為だった。彼は言葉巧みにミュージカルのあらすじを混じえアリス嬢の才能を褒めちぎるが、幕が下りた時間の話になった途端「なぜマニックスが夜10時半に来たと証言したのですか?」と言いアリス嬢の嘘を見破る。彼女は上げ足を取られた事に怒るがマニックスからそういう事にして欲しいとお願いされたと言う。本当は彼は真夜中過ぎにやって来た。しかしアリスはマニックスの無実を信じていた。検事局ではヒースの報告でスキーニがカナリア嬢のアパートの合鍵を持っていた事が判明する。
◆19-医者の言い訳[09月14日(金)14:00]
マーカムの事務所に再度リンドクイスト医師を呼び寄せアリバイを尋ねる。彼は先日手紙で知らせた通りだと反論するが、アリス嬢の話(彼女の名は伏せて)カナリア嬢を脅して心中しようとしていた件を追求する。ヴァンスは脅しの際にどのような方法を持ち出したか尋ねる。医師はカナリアに相手にされない嫉妬から脅しただけで殺意はなかったと否定する。また事件当日に対応した患者のアンナ夫人が重度の病人で証言は難しいという。そこでヴァンスは担当した看護婦を呼びつけるようその場でマーカムに提案する。医師が帰った後、マーカムは看護婦アメリア嬢はあの医師に受け答え方を吹き込まれるだろうとヴァンスを咎(とが)めるが、僕らが思いつくならあの医師も同じ事を考えるだろうと敢えて見抜いての事だった。次にマニックスから話を聞くがカナリア嬢の隣室2号室のフリスビー嬢をちらつかせて尋問するよう助言する。
*
この章に「“スキール氏”はトランプ遊びに夢中になってたと思わせようとする」とありますがトランプゲームをしてたのは“スポッツウッド氏”では…。
◆20-真夜中の目撃者[09月14日(金)15:30]
マニックスから改めて事件の夜の行動を尋ねるが彼は口を閉ざす。そこへマーカムは追い打ちをかけて2号室のフリスビー嬢がマニックスの元モデルであり、通用口と電話交換手に目撃されずにカナリア嬢の3号室に入るには、2号室から出入りする者でなければ不可能だと告げる。驚いたマニックスは事件の夜に目撃した事を話し出す。本当は差し錠がかかってない夕方5時半に2号室のフリスビーの部屋を訪れ、12時の5分前に帰った。丁度玄関のドア越しに3号室からクリーバー氏が出て来た所を偶然目撃した。しかもその際、通用口の差し錠は「開いていた」と言う。正面玄関から帰るつもりだったが開いていたので自分も通用口から出て行ったと言う。この証言で開いていた通用口を誰が閉めたのかと言う問題が浮上する。またヒースは荒らされた部屋で、きちんと鍵で開けられてたカナリアの書類箱が気がかりだった。おそらくクリーバー氏の手紙が入っていたと思われる。
◆21-矛盾する日付[09月15日(土)09:00]
朝早くにクリーバー氏を呼び出し、手紙を買い戻したのが本当に6月だったか尋ねる。クリーバーはその通りだと言うがヒースの強行な家宅捜索で7月分の手紙も見つかる。彼は実は手紙は8月に買い戻したという。事件に関わりたくなかったから嘘をついたのだと言い、事件の夜もカナリア嬢の部屋に電話した際、別の男性が訪問していたようだったので会わずに帰宅したという(部屋から驚いた様子の男性の声がした。クリーバーも通用口から出入りした。彼の知る限り夜中に通用口が開いてたのはそれが初めて)するとヴァンスはカナリアの元を訪ねて、玄関先に訪問するまで電話をする余裕はなかったはずだと問い詰める。(11時50分頃彼がアリス嬢に電話してた点を知らない素振りで)するとクリーバーは玄関先でリンドクイスト医師と会った事を白状する。
◆22-謁見希望[09月15日(土)10:00]
クリーバーとの謁見後、リンドクイスト医師がやって来る。彼は事件当日、カナリア嬢が自分の約束を破り、スポッツウッド氏と外出したのを見かけて殺意を持ったと告白する。精神的に追い詰められ、本気で帰宅した2人を撃とうと彼女のアパート前で待ち伏せていた。しかしいざ現実に2人を目の当たりにすると怖気づいてしまい、2人はアパートに入ってしまった。スポッツウッド氏がタクシーで去ってしまい、クリーバー氏にも目撃されて意気消沈してそのまま帰宅したという。リンドクイストが帰った後、スタイヴェサントクラブの近所のゴミ箱で盗まれたカナリア嬢の宝石が新聞に包まれて発見される。新聞の日付は昨日で、クラブの新聞が使われたのではと調べるがバックナンバーは残っていた。そこへスキール氏が明日、マーカムとの謁見を申し出る。無理強いして、今日聞き出そうとしたら何も喋らないと言うのでマーカムは承諾する。ヴァンスはスキールはおそらく殺害時の状況を語るつもりだろうと言う。
◆23-約束の時刻[09月16日(日)10:00]
翌朝は霧雨の降る中、ヴァンスたちは日曜の静かな検事局へ向かう。ヒースも合流して、スキール氏の自宅に部下を配置し、自宅から出発したら連絡が入る事になっていた。しかし10時を20分を過ぎてもスキールは現れない。ヒースが部下に連絡するがスキールは昨夜9時に帰宅した後、1歩も外に出てないと言う…。
その時、突然ヴァンスが取り乱して叫ぶ「なぜ気づかなかったのだろう、すまない僕の落ち度だ!」すぐにマーカム、ヒースと共にスキールの自宅へ駆け付ける。スキールの自宅は汚れた通り沿いの古い邸宅にあった。ヒースが部下と共にドアを蹴破って中に入る。その場にいた者たちは愕然とした。狭い部屋の奥にあったベッドの上でスキールはのけぞるように倒れていたのだった。彼は首を絞められ死んでいた。どうやら絞殺されたようだ。
◆24-突然の逮捕[09月16日(日)pm~09月17日(月)am]
ヒースと部下たちによってスキール殺しの捜査は迅速に行われた。死亡推定時刻は夜10時~12時。マーカムも率先して捜査にあたり、ヴァンスもスキールの部屋を入念に調べ特に夜会服に興味を持っていた。しかしその捜査にも関わらず事件は進展しない。カナリア事件容疑者の1人だったリンドクイスト医師は昨日の午後に精神病院に搬送され、回復まで1週間はかかり容疑者から除外となる。他3人はスポッツウッド氏はパーティに出席していたがいつでも抜け出せる状況で、マニックスもクリーバーも自宅にいてアリバイは不透明だった。
*
ところが午後に事件は急展開し、電話交換手ジェサップを逮捕したとヒースが報告して来る。ジェサップは昨日、突然仕事を退職して長期旅行の準備をしていた。警察が調べたところジェサップは数年前刑務所におり、スキールと刑務所で知り合っていた。電話交換手の仕事の際にスキールと再会し、カナリア嬢アパートに盗みに入る事を共謀したと思われ、通用口の差し錠を開閉出来たのも彼だけだった。ヴァンスは動機を尋ねるが、捜査初日に聞き出したジェサップがカナリア嬢に好意を寄せていた点ではないかとヒースは言うが、ヴァンスは可能性の1つとして尋ねた事でジェサップは犯人ではないと断言。そして、犯人の名はまだ言えないが差し錠を開閉したのはクロゼットに潜んでいたスキールであると言い、今から現場でその方法を実証して見せるというのだった…!
※25章以降はネタバレです。未読の方は…
(>0<;)見ないで下さいな!
*
*
*
*
*
*
*
*
*
◇
*
*
*
*
*
*
*
*
*
◇
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
◆25-ヴァンスの実証[06月17日(月)11:30]
ヴァンスたちはカナリア嬢のアパートへ到着した。先程1人の訪問者がいたがカナリアの遺品を所望する気の毒なスポッツウッド氏だった。現場でヴァンスは泥棒のスキール役、ヒースは電話交換手役、マーカムとダイン氏は観客になった。ヴァンスは自分がホールから立ち去ってから3分後にカナリアのアパートのチャイムを鳴らすよう指示する。
*
まずヴァンスは留守宅を訪ねたスキールと同じように電話交換手の前を通り過ぎてチャイムを鳴らし、少ししてドアもノックした。そしてヴァンスはホールから立ち去った。指示通り3分後にチャイムを鳴らすと、なんと部屋の中からヴァンスが出迎えた。仕掛けは…まず電話交換手にはチャイムを鳴らしている姿は見えない為、急いで通用口の鍵を開けておき、そのまま帰るふりをして、通用口から電話交換手に見られる事なくアパート内に侵入したのだった(ちなみにスキールはカナリアの合鍵を持っていた)
*
しかしこれだけではジェサップの容疑は晴れない。スキールが立ち去ってから差し錠が再度閉められたからだ。次にヴァンスはその点を実証すると言い、合図をしたら通用口の廊下を見に来て欲しいとお願いするとそのまま通用口へ向かった。しばらくして通用口ドアを叩く音がしたので行って見ると、ヴァンスの姿はどこにもなく差し錠もかけられていた。差し錠を開けると中庭でヴァンスがアパートのレンガ壁は素晴らしいと言ってくつろいでいたのだった。マーカムがじれったそうに差し錠の閉め方を聞くと…ヴァンスは毛抜きに細い紫色の飾り紐を結びつけた物を取り出す。まず内側の差し錠のつまみに毛抜きを引っかけて、紐はドアの下の隙間に通し外に出る。仕上げに外から紐を引っ張ると毛抜きでつまみが捻(ひね)られて鍵がかかるのだった。
*
この飾り紐を結び付けた毛抜きは昨日、スキールの夜会服から見つけたという。毛抜きはカナリア嬢の化粧台の上にあった身だしなみセットの中にあった物で、紫の紐はカナリアがひいきにしていた洋服店の包装用の紐だった。事件の夜、スキールは殺人容疑をかけられることを恐れ、とっさに部屋にあった道具で脱出し密室を作り出したのだ。
◆26-推理の再構成[09月17日(月)正午]
ヴァンスたちは事件のアパートを後にすると昼食を取りながら今までの経緯を再検討する。
*
事件の夜、スキールはヴァンスが実証した方法でアパートに侵入。おそらくお金に困ってカナリアの元を訪ねたのだろう。帰宅時にスポッツウッド氏も一緒だった為、とっさにクロゼットに身を隠した。スポッツウッドが帰宅後、突然クロゼットから出て来たスキールに驚いてカナリアは悲鳴を上げる。しかし顔見知りだったので何でもないのと言って済ませた。その後、犯人が訪問して来たので再びクロゼットに隠れてたがカナリアは殺されてしまう。スキールは殺人現場と強盗に見せかけて部屋を荒らして立ち去る犯人の行動をクロゼットの中から見ていたのだった。犯人を知っていたスキールはその人物を脅したと思われ、口封じに殺されたのだった。
*
ヴァンスが差し錠の問題を解決して、残る容疑者はマニックスとクリーバーになる。しかし犯人の決め手になる情報には欠けていた。そこでヴァンスは容疑者の人柄をより深く知るためにマーカムの邸で彼らとポーカーゲームを興じさせてくれと提案する。半信半疑のマーカムだったが、心理学とベンスン殺人事件を解決してみせた彼の力量を信じポーカーゲームに彼らを招待する。
◆27-ポーカーフェイス[09月17日(月)21:00]
夕方、マーカムがマニックス、クリーバー、スポッツウッド(彼は容疑者から外されてたが頭数が欲しいとヴァンスが希望した)3人と約束が取れたと連絡を受けると、ヴァンスはどこかへ出かけ夜8時に帰宅した。9時にマーカム邸で待ち合わせに行く際、車には見知らぬ男がいた。彼はアレンと言い、ヴァンスの昔ながらのポーカー仲間だと言う。
*
マーカム邸では、暖炉のある応接間で煙草や上等スコッチをたしなみながら、マーカムが皆を和やかに接待した。集まった容疑者たちも事件に関しての緊迫感は解(ほど)かれた。夜11時に円型のテーブルで5人は席に着いてポーカーを始めた(円卓には時計回りにヴァンス、アレン、クリーバー、マーカム、スポッツウッド。マニックスは円卓を挟んでヴァンスの真向かいに円卓から離れて座った)マニックスはルールが分からないのと、カードゲームに興味がないと参加しなかった)皆、ポーカーの熟練者たちで特にヴァンスとスポッツウッド氏は今夜の最高額を賭けるほどの一騎討ち勝負となる。時々ヴァンスはわざとらしくハンカチで汗を拭く振りをしていた(それはアレンに対する何かの合図らしかった)またヴァンスは参加しなかったマニックスにも簡単にルールをアレンジした賭け事を持ちかける。こちらも高額な賭けとなり賭け金が4倍にもなって最後はマニックスが勝つ。ゲームもお開きとなったがヴァンスは何かを考え込んでいた。そして明日、マーカムにクラブで昼食を一緒に食べようと約束をすると、事件の話はせずにそのまま帰ってしまったのだった。
◆28-犯人は…[09月18日(火)13:00]
翌日、スタイヴェサントクラブでマーカムと待ち合わせたヴァンスは、遅い朝食をおごってもらう事で犯人を明かす。ヴァンスは昨夜のポーカーゲームでカナリア嬢を殺したのはスポッツウッドであると言い出しマーカムは耳を疑う。実はヴァンスが連れてきたアレン氏は有名なギャンブラーで昨夜のゲームでアレン氏に“イカサマ賭博”をさせる事で容疑者である3人をわざと「勝たせるように」仕向けさせたのだった。その決め手となったのは、彼らの賭けに対する反応だった。ヴァンスはアレンに合図をして、カードを切るたびに相手に有利になる札を与えてそれぞれの出方を伺っていた。そして3人のうちスポッツウッドだけが綿密に計算高く、慎重さがない、リスクも無視した大胆不敵な賭けをしており、ヴァンスが言う今回の犯人像に当てはまる人物だった。だが当初から、スポッツウッドには電話交換手とカナリア嬢の悲鳴を聞いていて彼女がまだ生きていたと言う完璧なアリバイがあった(ヴァンスが言うにはその完璧なアリバイを用意してる点も真犯人を示していると言う)ヴァンスたちはマーカムと共にカナリアのアパートへ向かい、スポッツウッドがどこかに残してたアリバイ工作の痕跡を探しに行く…。
◆29-ベートーヴェンの曲[09月18日(火)14:00]
現場のアパートへやって来たヴァンスたちだが部屋を隅々まで観察しても決め手になりそうな物は何も見つからない。連日、報道陣たちに叩かれ疲れ果てたマーカムはヴァンスの推理が間違ってるのではと言い出す始末。そんなマーカムを慰めようと、ヴァンスは玄関先に保管された蓄音機を見つける。これは先日、家主のカナリア嬢が買ったばかりの新品だったが、なぜかキャビネットの上に壺と共に並べられ、隠すように布が被(かぶ)されていた。音楽でも聴いて気晴ししようと勧める。レコードは既にセットされていて針を落とすが全く音が聞こえてこない。ヴァンスが壊れてるのかもと軽蔑するのでたしなめたマーカムが直そうとした時だった。突然、女の凄まじい悲鳴が蓄音機から飛び出した!それから「……大丈夫、何でもないの」と言う声。これを聞いたヴァンスたちは絶句していたが、やがてヴァンスが「マーカム君、これが君の信じていたアリバイの種明かしさ。僕らはまんまと騙されたんだ!」と嘲笑うのだった。ドア越しに聞けば、カナリア嬢の声と聞き間違えるだろう。声の主は、裏声で録音したスポッツウッドだった。
◆30,-理論的でまともな殺人犯[09月18日(火)15:30]
マーカムからスタイヴェサントクラブの3階にスポッツウッド氏がいると連絡を受け、逮捕状を持ったヒース刑事部長と部下が到着した。やって来たヴァンスたちから殺人容疑を伝えられてもスポッツウッドは少しも動じる事なく、カナリア嬢を殺したことを認める。カナリアは金銭だけでなく、社会的安定の地位も欲しがり、妻と離婚し自分と結婚しなければ今までの手紙と不倫関係を暴露して家庭を破壊してやると脅されたと言う。またスキールは、殺人現場を目撃され口封じに殺したのだが、1番は卑劣な人間が大嫌いである事が理由だった。彼は連行される前に妻に手紙を書きたいから、少しひとりにさせてくれとお願いする。マーカムは迷ったが、ヴァンスがそれくらいは赦してやるべきだというので彼の言う通りにする。ところが数分後、ドアの向こうから銃声が聞こえ駆け付けるとスポッツウッドは自殺してしまったのだった……「自殺しそうな気がした」と言うヴァンスに、予兆を察して引き止めなかった事をマーカムは咎めるが「彼は理論的でまともな人間だった。自分の命を自分でどうにかするのは彼に残された唯一の権利だ」と言い、犯人を見つけ出したのに恩知らずな奴だ、とマーカムに言うと哀しそうに笑うのだった……。
《終》
{◎個人的に女性が痛めつけられる話を読まないのは、彼女がか弱く反抗する術がないからなのですがカナリア嬢の犯人に対するあの「脅し」は正直やってはいけない事だと思いました。あんな事をすれば逆鱗に触れて当然です……欲深くなってしまった事へのツケでしょうか……
あと29章のヴァンスの台詞が印象的でした…「誰かを殺したいほどに憎んだことがない人間は、感情がないんだ。殺人を踏み止まらせてるのは、神学や倫理ではない。勇気がないからだ。苦悩や良心の呵責や自分の人生を失う事を恐れるからだ。戦争で、人間の集団が…国と国とで宣戦布告し合っては、法的には何ら縛られることなく、大量殺人で欲望を発散させてる。殺人犯は、殺人を犯す勇気を備えた理性的な動物にすぎないのさ」
これは第一次世界大戦を経験したダイン氏の、戦争に対する率直な意見のように思えました。大切なものを失って…奪われて…悔しい思いがあるならば、敵国への仕返しとして殺したいと思うのは当然の成り行きです。戦争の何が恐ろしいって…単純に、法的な事も含めて「縛りが何も無くなること」です。戦争では…人を殺し放題だし、他人様の財産は盗み放題だし、お年寄り、女性、子供たちは残酷な快楽のためにいたぶられしかも罪人は何の罪も問われない。そんな場面で小さな疑問や良心だって心をよぎるかどうかだって怪しい。自由過ぎるのも問題、縛りがない事は問題、なんて恐ろしい事だろう…!!世界中にいる独裁者が皆、臆病者になってしまえばいい。人殺しする勇気まで持たなくていい}
*****
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる