姉は妹の婚約破棄を所望します!

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後編

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「そうなんだ、とても心強いね。ぜひうちにも来てほしいぐらいだよ」

ほらほらほら!やっぱり!いくらぼんくらでも流石に私の優秀さは理解できるみたいね。ふふん、撫でられてあげてもいいわよ。
それにしてもマオったら、王子の言葉に傷ついてないかしら?いくらなんでもすぐに私に心変わりするなんて、王子もちょっと軽薄すぎるというかなんというか……。

「ええ、お姉さまも一緒ならわたくしも嬉しゅうございますわ!」
「ふふ、君たちは本当に仲が良いんだね」

……ん?あら?あらあらあら?
なんか、私が思ってる話と違うみたいね。一緒にってことは、マオと私が王子のところにいくってこと!?

この男、マオに向かって堂々と二股宣言したわよ!!


許せない、許せないわ!軽薄さが風に吹かれる綿毛の如しよ!人間のくせに愛を一人に捧げないなんて何を考えているのかしら!いっつもお母様と想いあってるお父様を見習いなさいよ!
こいつ、見る目はあるみたいだけど中身はだめだめだわ!マオすらあげるのも口惜しい!

とにかく、私の縄張りからでていきなさーい!!




突然不機嫌になりだした猫にいち早くマオが気付き、王子にとびかかる寸前しっかりと猫を捕まえた。

「もう、お姉さまったら。急にどうしたのかしら」
じたばたと暴れる猫の頭と喉を撫で、落ち着かせる。王子はというと、気分を害したふうもなく微笑んだ。
「僕の親戚も猫を飼っていてね。随分人見知りだから……その子もそうなんじゃないかな?」
「そうですね……そういえば、お姉さまが外から来た方にこんなに近づいたの、初めてですし」
「そうなのかい?君のことを気にかけてやって来たのかもね」
「ふふ、だとしたらとっても嬉しいですわ」

二人は和やかに笑い合う。
そんな中、マオに抱きかかえられた猫が『その男に騙されちゃだめよ!』という意味合いを込めて「にゃーお!」と鳴いたのだが、その意思が伝わることはなかった。



その後、何度か王子がマオたちの屋敷を訪れたが、決まって猫はマオの傍におり王子を警戒するように見つめていたという……。
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