攻略対象に転生した俺が何故か溺愛されています

東院さち

文字の大きさ
42 / 52

42 ゲームのエンディング

しおりを挟む
 白い花が咲いている。この時期、白やピンクの花が多い。ああ、そうだ。桜の季節なんだと思い出した。この世界には何故か桜はなかったけれど、春のイメージの白っぽいピンクになっているのは絶対桜のせいだと思う。

「リア、卒業おめでとうございます」

 本当は山のような花束を渡したかったけれど、それをするとプリメリアが困るので諦めた。一本の白銀の花、エーデルワイス。オーディクス侯爵家の花だ。

「飾ってくれる?」
「頭でいいですか?」
「ええ——」

 ミリアが前世の記憶を駆使して磨いたプリメリアはもはや悪役令嬢ではなく、女神のような美しさだった。
 俺も澪もプリメリア推しだったからな。
 澪はもちろん『アルサイ』万歳だったが、それはカップル推しというやつだったらしい。
 ミリアは屋敷の修理を終えて帰るのがとても悲しそうだった。もう子爵家にもどっているけれど、週に一度はプリメリアと遊んでいるらしい。前世の妹と今世の姉が仲が良くて、いいことだと思っている。

「わぁ、リア。女神様みたい——」

 ちなみに俺たちのいう女神様は架空のものではなく、本当の女神様だ。

「ミリアったら。そんな風に褒められると困るわ」

 はにかんだ笑顔も神々しい。

「……アルフォンス様は戻ってこなかったね」
「まだやることがあるんだろうな」

 留学という形で隣国へ行っているので、皆はてっきり卒業までには帰ってくると思っていた。
 アルフォンスが突然留学してしまって、副会長だったプリメリアが生徒会長になった。プリメリアは土壇場で踏ん張れる人間だったようで、驚くほど意欲的に生徒会長を務めた。影で支えたライファーの存在が大きかったと思う。今はまだ婚約は認められていないが、それも時間の問題だ。
 俺も結局副会長を務めることになってしまって焦ったが、今日でこの焦燥感ともおさらばだ。

 黒持ちといわれる魔力が多いものたちが貴族、特に高位のものたちに嫌厭されるのは、魔力の色が家の存続に関わるからだ。これは乙女ゲームの仕様であり、仕方のないことではある。俺の髪の色やプリメリアの髪の色が銀なのは、オーディクス侯爵家の魔力のせいだ。プリメリアは母方に多い緑の魔法を継いでいるが、それでもオーディクス侯爵家の魔力の色を継いでいるのでプリメリアの子は銀の髪に生まれるだろう。時折違う色の髪が生まれても次の世代では戻るようになっている。
 どうしても違う色が混ざると人は不安になるもので、黒持ちは嫌がられてしまうのだ。
 黒持ち同士で結婚することが多く、なんなら独り身も多いせいで検証に至っていないというせいもある。だが、俺やミリアは知っている。『ファンブック』に載っていたからだ。
 ライファーとプリメリアが結婚しても大丈夫だと言って信じてもらえたのは、俺の日ごろの行いのせいだと思う。


「リア、時間だよ」

 エスコートするためにライファーが生徒会室へ迎えにきた。来期は俺を支える副会長だ。

「ふふ、ありがとう」

 微笑みあう二人は困難などものともせず、お互いを信じあっているように見えた。

「また後で——」

 卒業生が講堂に集まった後で、追い出す俺たちも花を抱えていかなければならない。だてにフラワー王国という名、フラワーガーデン学園の名前はついていない。
 この世界、花粉症がなくて本当によかったと思う。

「お兄ちゃん、お疲れ様。プリメリア、幸せそうで嬉しいね」
「ああ、望んだ通りのエンディングだ」
「『花』だったら迎えられないエンディングだよ」

 ヒロインはイベントをスルーして、断罪も追放もないゲームやってる人がすっきりしないエンディングだが、それがいい。

 式は粛々と進み、生徒会長であるプリメリアが最後に卒業証書をもらった。

「おめでとう、リア!」

 少しだけ滲んだプリメリアが手を振って微笑む。見られないように、俺は上を向いて目を瞑った。まぁ隣のライファーが大泣きしているから、目立たないだろう。
 
『花咲き誇るフラワーガーデン物語』がエンディングを迎えた。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

処理中です...