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何故
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ラズは気分を落ち着かせるために食堂に戻った。
「あれ、ラズどうしたんだ?」
マストが気付いて声を掛けてくれる。
「ちょっとお腹空いて……」
「ハハハ! 青竜騎士団は少し遠いからな」
「ラズ君くらいの歳のときにはいつも腹がすいてましたよ」
調理をしている料理人たちも気がいい人ばかりだ。リド様は怒ってラズを追い出したりしないだろうかと考えて、そんな人じゃないと思い返す。
「俺もそうだな、いつも腹が減ってたよ。まかないでよかったら食べていけ」
「ありがとうございます。いただきます」
白鷲騎士団の食堂のまかないは美味しいものばかりだ。
「これ、今日のメインな」
「いいんですか?」
「うまいもん食わなきゃ元気なんて出ないだろう」
マストはラズの頭をクシャと撫でた。涙は拭いたはずなのに落ち込んでいることがばれていた。
「美味しいですね。料理長はどこで修行したんですか?」
鶏の皮までパリッとしている。上に乗ったソースは酸っぱくて美味しい。野菜が沢山敷かれていて、騎士の身体を考えていることがわかる。
「街にある店だよ。たまたま入った店が凄く美味しくてな。毎日通って、どうしても料理人になりたくて弟子にしてもらったんだ。人がいいおっさんとおばちゃんがやっててな。今度連れて行ってやるよ」
「行きたいです!」
美味しいものは力をくれる。落ち込んだ気分が上向きになっていることに気付いてラズは笑った。
マストが心底惚れたという店に連れていってもらう約束をして帰宅した。
「ただいま帰りました」
寮のエントランスを抜けて、寮監の部屋の扉を開けてラズは声を掛けた。
エカテおばさんはいなくて、かわりにダイニングでお茶を飲んでいる人がいた。まるで自分の家のような顔をして「おかえり」と言う。
ラズは力なくうなだれた。
「リド様、どうしてここにいるか聞いていいですか?」
酷く低い声が出たと思う。
「ラズが一人で帰ったから……」
友達か! と叫びたいのを我慢してラズは俯いた。
「俺は……」
「あの男がラズの後を着いていかないか心配だったんだ。ラズが私のことを恋人と思えないことはわかったが、今は我慢してくれ。あのタイプは絶対にしつこい。私を恋人ということにしていないと攫われるような気がしてな」
レイフの顔を思い出して、ラズは背中を震わせた。思い出しただけで夏なのに寒い。
「でも、俺は本当に貴族とは関わり合いたくないんです」
貴族であるリド様に言っていい言葉じゃないけれど、それくらい言わないとわかってもらえない。
言われたリド様は失礼な物言いに憤慨もせず、淡々とラズに言い聞かせる。
「理由はわからないが、ラズがそう思うだけのことがあったんだと思う。理由を知りたいと願うには、知り合って日が浅い私のことを信用できないだろう。でも、あの男を遠ざけるために、私を利用しなさい」
「駄目です。リド様が優しいからって利用なんてできません!」
ラズは考える間もなく即答した。その速さにリド様は驚いたのか瞬きをした。
「私は優しいわけじゃない。ラズを放っておけないのは私が自分勝手だからだ。だからラズは気にせず私の恋人の振りをしていればいい。せめてあの男がどうでてくるかわかるまで……」
リド様からみてもレイフは危なそうな気配を醸し出しているのだろう。
ラズは、ギュッと拳を握った。自分一人でなんとか出来ると言えないのが現状だ。迷ってしまった。それが答えだった。
「お願いします」
満足げなリド様にお茶を注ぎ直して、自分の分も注いだ。
何故こうなった……。さっきの俺の気持ちを返してほしい……。
口の中で紅茶と一緒に愚痴を飲み込んだ。砂糖もいれたはずなのに、何故か渋くてラズは眉をしかめた。
「あれ、ラズどうしたんだ?」
マストが気付いて声を掛けてくれる。
「ちょっとお腹空いて……」
「ハハハ! 青竜騎士団は少し遠いからな」
「ラズ君くらいの歳のときにはいつも腹がすいてましたよ」
調理をしている料理人たちも気がいい人ばかりだ。リド様は怒ってラズを追い出したりしないだろうかと考えて、そんな人じゃないと思い返す。
「俺もそうだな、いつも腹が減ってたよ。まかないでよかったら食べていけ」
「ありがとうございます。いただきます」
白鷲騎士団の食堂のまかないは美味しいものばかりだ。
「これ、今日のメインな」
「いいんですか?」
「うまいもん食わなきゃ元気なんて出ないだろう」
マストはラズの頭をクシャと撫でた。涙は拭いたはずなのに落ち込んでいることがばれていた。
「美味しいですね。料理長はどこで修行したんですか?」
鶏の皮までパリッとしている。上に乗ったソースは酸っぱくて美味しい。野菜が沢山敷かれていて、騎士の身体を考えていることがわかる。
「街にある店だよ。たまたま入った店が凄く美味しくてな。毎日通って、どうしても料理人になりたくて弟子にしてもらったんだ。人がいいおっさんとおばちゃんがやっててな。今度連れて行ってやるよ」
「行きたいです!」
美味しいものは力をくれる。落ち込んだ気分が上向きになっていることに気付いてラズは笑った。
マストが心底惚れたという店に連れていってもらう約束をして帰宅した。
「ただいま帰りました」
寮のエントランスを抜けて、寮監の部屋の扉を開けてラズは声を掛けた。
エカテおばさんはいなくて、かわりにダイニングでお茶を飲んでいる人がいた。まるで自分の家のような顔をして「おかえり」と言う。
ラズは力なくうなだれた。
「リド様、どうしてここにいるか聞いていいですか?」
酷く低い声が出たと思う。
「ラズが一人で帰ったから……」
友達か! と叫びたいのを我慢してラズは俯いた。
「俺は……」
「あの男がラズの後を着いていかないか心配だったんだ。ラズが私のことを恋人と思えないことはわかったが、今は我慢してくれ。あのタイプは絶対にしつこい。私を恋人ということにしていないと攫われるような気がしてな」
レイフの顔を思い出して、ラズは背中を震わせた。思い出しただけで夏なのに寒い。
「でも、俺は本当に貴族とは関わり合いたくないんです」
貴族であるリド様に言っていい言葉じゃないけれど、それくらい言わないとわかってもらえない。
言われたリド様は失礼な物言いに憤慨もせず、淡々とラズに言い聞かせる。
「理由はわからないが、ラズがそう思うだけのことがあったんだと思う。理由を知りたいと願うには、知り合って日が浅い私のことを信用できないだろう。でも、あの男を遠ざけるために、私を利用しなさい」
「駄目です。リド様が優しいからって利用なんてできません!」
ラズは考える間もなく即答した。その速さにリド様は驚いたのか瞬きをした。
「私は優しいわけじゃない。ラズを放っておけないのは私が自分勝手だからだ。だからラズは気にせず私の恋人の振りをしていればいい。せめてあの男がどうでてくるかわかるまで……」
リド様からみてもレイフは危なそうな気配を醸し出しているのだろう。
ラズは、ギュッと拳を握った。自分一人でなんとか出来ると言えないのが現状だ。迷ってしまった。それが答えだった。
「お願いします」
満足げなリド様にお茶を注ぎ直して、自分の分も注いだ。
何故こうなった……。さっきの俺の気持ちを返してほしい……。
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