12 / 15
陽王の名前
しおりを挟む
帰る前に二人で話せて嬉しい。でも碧は陽王の名前を覚えていられないのだ。元の世界に帰れば、記憶がなくなり傷も癒えると言っていた。
でもなぁと、碧は思う。
「どうして笑っている?」
「あんな凄いセックスしててさ、記憶がなくなっても俺の身体は物足りなくなるんじゃないかなって思っただけ」
「物足りない?」
「陽王より大きいアレ、あっちの世界じゃ中々なさそう」
「物足りなくなったらどうするのだ?」
聞かれて困る。何故なら碧はここに来るまで忙しい受験生で恋人もいなかったのだ。どうやって慰めるか、考えても名案はでてこない。
「おもちゃで慰めるか……、まぁそういう出会いの場にいくしかないかな」
大学で同性の彼氏を見つけるのは至難の業だ。
「おもちゃ……? 出会いの場?」
「いや、俺も知らないけどさ。そういうのあっちには結構あると思うし。何とかなるよ」
陽王はムッと顔を顰めて、碧を抱きしめる。
首筋にピリッと痛みが走って、陽王がキスマークをつけたことがわかる。
「んっ! キスマークつけても……向こうに戻ったら治るんだろ?」
「そんな泣きそうな目をしているくせに、何とかなるのか?」
陽王は今までで一番意地悪だ。
「何とかする――。だから次の……はっん……ちょっと、あんたこんなところで……んぅ」
真面目に陽王の心配をしているというのに、陽王は碧の尻を布の上から刺激しながら首筋を舐めた。
「しょっぱいな」
「出かけてたし、汗くらいかいてる! てか……ちょっ」
シャツを開けて、ツンと立った乳首を陽王が咥えて、碧は真剣に焦った。
「結界内だから周りには見えん。いや、見せたいなら入れないだけで見えるようにしてやるが」
どうすると聞かれて、碧は陽王から逃げようともがいた。
「もうどうしようもないんだろう? どんなにヤッても、俺が泣き叫ぶようなことをしたって雨は降らないんだろ!」
「……我は、いや私は祭司として失格だった。碧には謝らなければならない」
「陽王は祭司として失格じゃない! ん……、っふ――」
クスッと笑って、陽王は碧の背中を撫でた。それだけで身体が震えた。
「私は祭司として失格だ。そなたを抱きたくて、時間があればそなたを寝台に連れ込んだ。必要以上の雨に民も困っていただろうな」
碧はどんな顔をしていいのかわからなくなった。そう言えば、最初の方は香の焚かれた日だけだったのに、いつの間にかその他の日も抱かれていた。あれは陽王の独断だったのかと驚いた。
「陽王は、俺を抱きたかったのか?」
「ああ、一生懸命祭司としての使命を振りかざして、そなたを抱いていた。すまなかった」
染み入るように謝罪が碧の心の中に入っていった。最初は、父親のような男だと思っていた。暴力と変わらない性行為に何度陽王を恨んだことだろう。
いつから陽王を受け入れたのか、碧は覚えていない。
「あんたでも謝ることがあるんだな」
「私はあの男の息子だからな。一度謝るともう生きていけないと思っていた。私のためにそなたが怒って、そして泣いてくれて――、私は義父に生かされたことに感謝した。ずっと、私を生かした義父を恨んでいたよ。だからこそ、余計にメイは私のことが許せなかったんだろう。碧、ありがとう。できることなら、もう一度出会いから始めて、一緒に生きて行きたかった」
陽王の穏やかな笑みを初めて見たような気がする。
「俺も、あんたと生きていきたかった」
キスをした。深いキス、蕩けるような激しいキスを。息が上がって、陽王の胸に縋り付く。
「碧、美海が怒っている。あいつは精神感応だけでなく、結界も関係なく、干渉もできるのか。残念だ」
「ああ、美海の魔法は共感とかだったっけ」
普通にしていても相手の感情を感じやすいらしい。だから、侍女に多いと聞いたことがある。
「碧、私の名前はヨウだ。『ヨウの理を解いて、家に帰る』と言えば、いつでも帰ることができる」
知りたくて、知りたくなかった言葉だ。
「ヨウ、偶然だな。俺の元の名前は要というんだけど、ヨウとも呼ぶんだ。そして、俺の国の言葉で陽王の陽は、ヨウと呼ぶ」
「偶然、ではないかもしれないな。神は、私のためにそなたを遣わしたのだ。巫女(アメフラシ)であるそなたに傷をつけるとは思えないが、私がいないところでそなたに害を与えるものがでないとも限らない。いざというときは、先ほど言った呪文を唱えるんだ。だが、もう一度だけ、そなたに会いたいと、我が儘を言っていいか?」
陽王がコツンと額をぶつけて言った。
「うん、待ってる。俺もあんたに会いたい――」
このまま帰りたくなかった。陽王を悪意の中に一人置いていきたくなかったのだ。
陽王が何かを唱えると、結界が解けた。
でもなぁと、碧は思う。
「どうして笑っている?」
「あんな凄いセックスしててさ、記憶がなくなっても俺の身体は物足りなくなるんじゃないかなって思っただけ」
「物足りない?」
「陽王より大きいアレ、あっちの世界じゃ中々なさそう」
「物足りなくなったらどうするのだ?」
聞かれて困る。何故なら碧はここに来るまで忙しい受験生で恋人もいなかったのだ。どうやって慰めるか、考えても名案はでてこない。
「おもちゃで慰めるか……、まぁそういう出会いの場にいくしかないかな」
大学で同性の彼氏を見つけるのは至難の業だ。
「おもちゃ……? 出会いの場?」
「いや、俺も知らないけどさ。そういうのあっちには結構あると思うし。何とかなるよ」
陽王はムッと顔を顰めて、碧を抱きしめる。
首筋にピリッと痛みが走って、陽王がキスマークをつけたことがわかる。
「んっ! キスマークつけても……向こうに戻ったら治るんだろ?」
「そんな泣きそうな目をしているくせに、何とかなるのか?」
陽王は今までで一番意地悪だ。
「何とかする――。だから次の……はっん……ちょっと、あんたこんなところで……んぅ」
真面目に陽王の心配をしているというのに、陽王は碧の尻を布の上から刺激しながら首筋を舐めた。
「しょっぱいな」
「出かけてたし、汗くらいかいてる! てか……ちょっ」
シャツを開けて、ツンと立った乳首を陽王が咥えて、碧は真剣に焦った。
「結界内だから周りには見えん。いや、見せたいなら入れないだけで見えるようにしてやるが」
どうすると聞かれて、碧は陽王から逃げようともがいた。
「もうどうしようもないんだろう? どんなにヤッても、俺が泣き叫ぶようなことをしたって雨は降らないんだろ!」
「……我は、いや私は祭司として失格だった。碧には謝らなければならない」
「陽王は祭司として失格じゃない! ん……、っふ――」
クスッと笑って、陽王は碧の背中を撫でた。それだけで身体が震えた。
「私は祭司として失格だ。そなたを抱きたくて、時間があればそなたを寝台に連れ込んだ。必要以上の雨に民も困っていただろうな」
碧はどんな顔をしていいのかわからなくなった。そう言えば、最初の方は香の焚かれた日だけだったのに、いつの間にかその他の日も抱かれていた。あれは陽王の独断だったのかと驚いた。
「陽王は、俺を抱きたかったのか?」
「ああ、一生懸命祭司としての使命を振りかざして、そなたを抱いていた。すまなかった」
染み入るように謝罪が碧の心の中に入っていった。最初は、父親のような男だと思っていた。暴力と変わらない性行為に何度陽王を恨んだことだろう。
いつから陽王を受け入れたのか、碧は覚えていない。
「あんたでも謝ることがあるんだな」
「私はあの男の息子だからな。一度謝るともう生きていけないと思っていた。私のためにそなたが怒って、そして泣いてくれて――、私は義父に生かされたことに感謝した。ずっと、私を生かした義父を恨んでいたよ。だからこそ、余計にメイは私のことが許せなかったんだろう。碧、ありがとう。できることなら、もう一度出会いから始めて、一緒に生きて行きたかった」
陽王の穏やかな笑みを初めて見たような気がする。
「俺も、あんたと生きていきたかった」
キスをした。深いキス、蕩けるような激しいキスを。息が上がって、陽王の胸に縋り付く。
「碧、美海が怒っている。あいつは精神感応だけでなく、結界も関係なく、干渉もできるのか。残念だ」
「ああ、美海の魔法は共感とかだったっけ」
普通にしていても相手の感情を感じやすいらしい。だから、侍女に多いと聞いたことがある。
「碧、私の名前はヨウだ。『ヨウの理を解いて、家に帰る』と言えば、いつでも帰ることができる」
知りたくて、知りたくなかった言葉だ。
「ヨウ、偶然だな。俺の元の名前は要というんだけど、ヨウとも呼ぶんだ。そして、俺の国の言葉で陽王の陽は、ヨウと呼ぶ」
「偶然、ではないかもしれないな。神は、私のためにそなたを遣わしたのだ。巫女(アメフラシ)であるそなたに傷をつけるとは思えないが、私がいないところでそなたに害を与えるものがでないとも限らない。いざというときは、先ほど言った呪文を唱えるんだ。だが、もう一度だけ、そなたに会いたいと、我が儘を言っていいか?」
陽王がコツンと額をぶつけて言った。
「うん、待ってる。俺もあんたに会いたい――」
このまま帰りたくなかった。陽王を悪意の中に一人置いていきたくなかったのだ。
陽王が何かを唱えると、結界が解けた。
73
あなたにおすすめの小説
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。
星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。
前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。
だが図書室の記録が冤罪を覆す。
そしてレイは知る。
聖女ディーンの本当の名はアキラ。
同じ日本から来た存在だった。
帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。
秘密を共有した二人は、友達になる。
人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。
記憶喪失のフリをしたあざといスパイですが、全部お見通しの皇帝陛下に「嘘の婚約者」として閉じ込められています
たら昆布
BL
処刑寸前のスパイが事故にあった後、記憶喪失のフリをして皇帝の婚約者だと偽る話
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?
米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。
ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。
隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。
「愛してるよ、私のユリタン」
そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。
“最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。
成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。
怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか?
……え、違う?
【土壌改良】スキルで追放された俺、辺境で奇跡の野菜を作ってたら、聖剣の呪いに苦しむ伝説の英雄がやってきて胃袋と心を掴んでしまった
水凪しおん
BL
戦闘にも魔法にも役立たない【土壌改良】スキルを授かった伯爵家三男のフィンは、実家から追放され、痩せ果てた辺境の地へと送られる。しかし、彼は全くめげていなかった。「美味しい野菜が育てばそれでいいや」と、のんびり畑を耕し始める。
そんな彼の作る野菜は、文献にしか存在しない幻の品種だったり、食べた者の体調を回復させたりと、とんでもない奇跡の作物だった。
ある嵐の夜、フィンは一人の男と出会う。彼の名はアッシュ。魔王を倒した伝説の英雄だが、聖剣の呪いに蝕まれ、死を待つ身だった。
フィンの作る野菜スープを口にし、初めて呪いの痛みから解放されたアッシュは、フィンに宣言する。「君の作る野菜が毎日食べたい。……夫もできる」と。
ハズレスキルだと思っていた力は、実は世界を浄化する『創生の力』だった!?
無自覚な追放貴族と、彼に胃袋と心を掴まれた最強の元英雄。二人の甘くて美味しい辺境開拓スローライフが、今、始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる