王と王妃の恋物語

東院さち

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26 あなたはやはり胸が好き?

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 アラーナがアルベルトの寝室に戻ったとき、誰も部屋にいなかった。
 流石に髪まで洗ってしまうと時間がかかってしまうから身体だけを丹念に洗い清めたつもりだったが、アルベルトは長風呂なのだろうかと思い、寝台の端に腰かける。
 肩のところでまとめた髪は背中に流したままのほうがいいのだろうかとか、ナイトガウンの下は下着を穿いたままのほうがいいのかとかアラーナは随分悩んだ。先程から異様に頭がさえている。くだらない、どうでもいいようなことが怒涛のように思考をさらう。
 お風呂はアラーナの大好きなカモミールの香がしていて、誰かの気遣いに感謝する。カモミールの香は少なからず、心を落ち着ける手助けになるはずだ。
 アラーナが化粧はしたほうがよかったのだろうかと悩むころ、アルベルトがガウンを羽織った状態で部屋に戻ってきた。

「あ……」

 風呂で上気したアルベルトの顔は凄絶に色っぽくて、アラーナは思わず見とれてしまった。元々整った顔の人なのだけど、そんな艶めいた雰囲気をアラーナは知らなかった。

「どうした?」

 首を振り、何もないと言うと、アルベルトはそれ以上アラーナの様子を気にかけることはなかった。寝台の横の棚の引き出しを開けると、一瞬ためらうようなそぶりをしつつ何かを取り出した。
 いつの間にか部屋の小さなテーブルに用意されていた飲み物らしきものをグラスに注ぐと、一気に飲み干し、もう一杯をアラーナに差し出した。拳を差し出され、掌で受け取ると小さな薬のようだった。赤い錠剤が一つ。アラーナはそれが子供を作らないための薬だと理解した。

「ありがとうございます」

 渡された薬と一緒に飲み干すと、飲み物は柑橘系の香のする水だった。火照る身体にすっきりと染み込み、アラーナはほぅとため息を吐いた。

「本当にいいんだな?」

 アルベルトももう迷っている様子はなかったが、それでもアラーナのために尋ねてくれたようだった。

「お願いします……」

 アラーナは、意図せず強張る顔を必死の想いで微笑みに変える。
 アルベルトは寝台の端に座っているアラーナを抱き上げて自身も寝台に上がった。胡坐をかいた自身の太ももにアラーナ背後から抱きしめるように座らせて、背後から首筋にかぶりつくのだった。

 痛みに震えたそこを舐めては噛みつき、何度もアルベルトはアラーナを味わった。

 痛いと思っていたのに、何度もなだめるように舌が這うと、アラーナは未知の感覚に身体が熱くなっていくのを感じた。アルベルトの膝頭を掴んでいた指が震え、次第にヒクリと身体が揺れた。

「アラーナの香りが一番好きだ……」

 それだけの言葉で何故こんなに嬉しいのだろうとアラーナは不思議に思った。

「アルベルト様……」

 好きだとも愛してるとも言ってはいけないとわかっているのに、零れそうになる想いはただの吐息となる。

「アラーナ、柔らかい……」

 情欲の混ざった声が耳朶を打ち、唇が寄せられると耳を舐め上げる。

「あっ!」

 とっさの声は普段のアラーナのものとは違って、高くか細く、子猫のようだとアルベルトは思った。

「可愛い――、アラーナ」

 アルベルトの手がアラーナの胸の膨らみにそっと触れる。廊下では強くて痛かったのに、アルベルトはその形を楽しみように優しく撫でた。

「アルベルト……さまっ」

 優しく触れているだけなのに時折引っかかるように先端を指がかすめ、アラーナは堪らずアルベルトの名を呼んだ。

「アラーナ、こんなにして、淫らな身体だな・・・・・・」

 クスッと笑い、アラーナのツンと尖った先を弄るアルベルトは、意地悪な言葉をアラーナにかける。淫らだと言われて嬉しい女性はいないとは思うのだが、何故か下腹のほうがキュゥと収縮した。

「ふぅっあ……んっ……」

 変な声は自分の口から出ているのだと気付いたアラーナはアルベルトの膝を握っていた手を離し、自身の口を閉じようと手で塞いだ。

「アラーナ、気持ちがいいのなら声を聞かせろ――」

 しこりきった先を摘み上げられて、アラーナは悲鳴交じりの声を上げた。

「ああっ! や……」

 嫌だと言いそうになった言葉を喉の奥に押し込め、アラーナは振り返り、アルベルトの瞳を見つめた。

「や、優しくしてください……」

 アラーナの涙の浮いた目尻をアルベルトは唇で吸い取り、「煽るな……」と呟く。
 アラーナのガウンの上は既に用をなしておらず、白い肌にピンクの頂が映えて否が応にもアルベルトを煽っているというのに、アラーナは気付かずにアルベルトを燃えさせるのだった。

「優しく舐めてやろう」

 アラーナを寝台に横たえ、アルベルトは赤い舌を見せつけるようにアラーナの胸を舐めて見せた。
 視覚に耐えられずアラーナは目を閉じた。そうすると、今度は敏感にアルベルトの舌の動きを感じてしまう。アルベルトの長い髪がアラーナの身体を滑るのがくすぐったくて、堪らずシーツを掴むと、何も遮るもののなくなった口から意味をなさない声が上がってしまうのだった。

「んっあ……っああっ……アルベルト様、そこは……赤ちゃんがいないので、お乳は出ませんよ?」

 舐めては指で確認して、舐めては確認するような動作は、アルベルトが誤解しているのではないかとアラーナには思えた。

「ああ、そうだな。でももしかしたら、出るんじゃないか?」

 アルベルトはそう言ってアラーナの右の乳房を口に含んだ。
 背中がゾワッと一瞬で泡立ち、突き出すようにアラーナは胸を反らせた。

「ああっ、出ない……でないっです!」

 赤子ではないのにそこに乳があると信じているような力強さでアルベルトはアラーナの敏感に尖っているそこを吸い上げた。胸の下の部分を揉みながら、そんな風にされると、痛みと羞恥とでアラーナはアルベルトの頭を抱きしめた。

「アラーナ……、苦しい」

 力の限り抱きしめたせいでアルベルトがアラーナの乳首を咥えたまま文句を言う。それがもっと刺激になってしまって、アラーナは苦しそうに呻きながらアルベルトをさらに締め付けるのだった。
 アルベルトが胸を解放したとき、既にアラーナは涙ぐんでいた。

「何を泣いているんだ?」
「アルベルト様が……離してくれないから……。お乳が腫れてしまいました」

 いやらしく尖った乳は最初と違って濡れていて、真っ赤に充血している。
 フフッと笑ったアルベルトの吐息だけで感じてしまうと、アルベルトは嬉しそうに微笑んだ。

「そうだな。真っ赤に色づいて、食べてくださいって言ってるようだ」
「アルベルト様は、本当に胸が好きなんですね」
「男とははこういうものだ。どんなすました男だって、乳には抗えない魅力を感じる」

 そうまで言われてしまうと、アラーナもそういうものなのかと納得した。シエラの娘は乳離れが早かったが、同じような時期に産んだアラーナの家に仕える召使いの息子は、未だに乳を触りながらでないと眠ってくれないと言っていた。男と女の違いというものは、そんなところから違うのだろう。

「アラーナ、どうした?」

 アルベルトがモジモジと足をすり合わせたのを目ざとく見つけたようだった。

「いえ、あの……なんでもないのです」

 さっきから何故か下腹が熱いのだ。少し濡れたような感じもしている。まさか月のものがきたわけじゃないわよね? と少し心配になってしまう。でもアラーナの予定はまだ先だ。
 アラーナの胸を解放した後もアルベルトは唇で、あばらを確かめたり、手でアラーナの太ももを撫でたりと器用にアラーナを翻弄する。

「アラーナ、アラーナ」

 行為の最中はアルベルトはアラーナを何度も愛しそうに呼んでくれる。

「アルベルト様……」

 アラーナは、アルベルトの名前を呼ぶことが出来るだけで幸せな気分になる。

「続ける」

 ずっと続いていたような気がするが、アラーナは頷く。

「足を開いて――」

 ナイトガウンを全て抜かれて、アラーナだけが全裸になることが恥ずかしい。でもアルベルトに脱いで欲しいと願うこともアラーナには出来なかった。
 目を閉じて、アラーナは少しだけ太ももに入っている力を抜いて、そろりと足を開いた。アルベルトの手が何とか入る隙間しか開けることが出来なかったが、アルベルトは何も言わなかった。
 アルベルトの指がアラーナの未だ隠された秘所にたどり着き、膨らみを撫でた。
 そこは既に濡れていた。クチュッと音がして、いたたまれず、アラーナは顔を横に向けた。
 真っ赤になっているアラーナの顔を見ながら、アルベルトはそこを指で開く。
 アラーナの太ももに力が入り、アルベルトの手首を絞めるが、無意識の動作だったのだろう。気付いたアラーナは、もう一度太ももの力を抜くために息を吐いた。

「ふっ……あっ……」

 アラーナの秘裂を指でなぞると、アラーナは困ったようにアルベルトを見つめた。

「アルベルト様……、熱いのですっ、そこが熱くてなんだか……」
「それでいい。おかしくないから、力を抜いて、私を信頼してくれ」
 
 アルベルトは安心するように告げた。
 アラーナは、自分でどうしていいかわからない身体をアルベルトがなんとかしてくれるのだと、任せようと力を抜く。稚いアラーナの様子にアルベルトは、何度も風呂で抜いてきたはずの自身が反応していることに少しだけ焦った。
 初めてのアラーナが少しでも痛くないように、心も体もドロドロに溶かしてからと思っていたが、それは随分アルベルトに我慢を強いることになりそうだった。
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