32 / 42
31 真相
しおりを挟む
食事が終わり、宰相閣下の部屋の居間でお茶を頂いていると、「失礼します」と部屋の持ち主が入ってきた。
まだ挨拶もすましていないどころか、カシュー・ソダイの客間でアルベルトと何をしてしまったか思い出したアラーナは、真っ赤になったまま立ち上がり、カシュー・ソダイを迎えた。
「アラーナ様、よくおいでくださいました」
カシュー・ソダイは、多少は歳をとったとはいえ、まだまだ麗しい顔を満面の笑みに変えてアラーナの手をとって甲にキスの真似をする。
「宰相閣下、このたびは快く部屋を貸してくださってありがとうございました。お蔭さまで旅もとても楽しく……」
「カシュー・ソダイ、連れてきたのか?」
ソファに座ったままのアルベルトがアラーナの言葉を遮って、カシュー・ソダイに訊ねた。
噂のアルベルトの妾妃が来ているのだと、アラーナは気付いた。アルベルトに視線を移すと、安心しろというように鷹揚に頷いた。
「はい。ミリアム殿を連れてきました」
カシュー・ソダイの言葉にアラーナは違和感を覚えた。妾妃に対する言い方ではない。妾妃候補であったアラーナにさえ、カシュー・ソダイは丁寧な言葉遣いを忘れたことはない人だというのに。
不安がないわけではなかったが、側にシエラがいてくれるので我慢することができた。この時点では、アラーナの信頼はアルベルトよりも確実にシエラに寄せられている。
「入れ――」
アルベルトの命じる声に、扉の向こうから人の動く気配がした。
淡いオレンジのドレスが最初に目にとまって、入ってきた人物を見たアラーナは眩暈がした。一瞬、眩んだ身体をシエラが慌てて支えてくれた。
「アラーナ!」
アルベルトがシエラの反対側を支えてくれて、何とかアラーナは倒れずにすんだ。
息を詰めたアラーナに、アルベルトが心配そうに顔を覗き込む。
「あなたは……っ!」
「まて、ちょっと待て。アラーナ何を勘違いしているんだ――」
暴れて、アルベルトを振り切ろうとしたアラーナを心外だとアルベルトは抱き寄せた。
「こんな……小さな――」
「子供に何かするとでも思っているのか?」
きつく抱きしめられて、苦しくてアラーナは喘いだ。
「お前しかいらないと言ったのに、まだ不安だったのか? こんな子供に嫉妬したか?」
酷いとアラーナは泣きそうになりながら、アルベルトの背中を叩いた。
「アルベルト様はっ、……私のことが嫌いなのですか?」
「何故――?」
アラーナがどれだけ嫉妬深いかは告げたはずなのに、頬を寄せて嫉妬しているのかと聞くのだ。
「アルベルト様っ、やめっ……」
アラーナが嫉妬しているというのに、目がくらむ程に怒っているというのに、この男(アルベルト)は抱きしめたアラーナの首筋を舐めたのだ。
「はい。子供の前ですからね、止めてもらえませんか」
カシュー・ソダイの声と共に、シエラがトレーでアルベルトの頭を殴るのを見た少女が笑いだす。
我慢できないというようにコロコロと笑う少女をびっくりしたように皆が見つめる。
「笑った……」
侍女の誰かの呟きが響いた。思わずといった声にアラーナは、少女を改めて見た。
オレンジ色のドレスはとても似合っているもののその顔色は白く、やせ細っていた。
「アルベルト様?」
アラーナの戸惑う声に、アルベルトは頷いた。
「ミリアム、挨拶を」
笑いが何とか収まった少女は、ドレスを摘み「お初にお目にかかります、ミリアムと申します」とうって変わって表情の乏しい顔でアラーナに挨拶をした。先程の爆笑はなんだったのかと思うほどの静かな表情にアラーナは首を傾げ、「アラーナと申します」としか返せなかった。
「ミリアム、もういい――」
アルベルトの言葉にやはり表情のないまま頷いたミリアムは、風が吹けば倒れてしまうのではないかとアラーナには思えた。
「送ってきます。アラーナ様、ご自宅のおつもりでゆっくりなさってください」
カシュー・ソダイは、そう言ってミリアムを連れて部屋を出て行った。
「アルベルト様……」
アラーナは、ミリアムが正確な意味での妾妃でないことをやっと飲み込むことが出来た。
「アラーナを王城から返した後、あちこちの貴族から妾妃候補が送られてきたんだ。私がアラーナの胸が不満だといったから、来るのはボリューム満点の豊満な美女ばかりだったんだが、正直お前がいなくなってからの私はあまり食も進まず、眠れもぜずといった状態で、そんな気持ちにもなれず、持て余していた。そうしたら今度は何を勘違いしたのか……」
その当時を思い出したアルベルトがうんざりといった風にため息を吐く。アラーナはアルベルトの横に座り、手を繋がれた状態で話を聞いた。
「アルベルト様が好きなのはやはり子供なのではないかと、十二歳から十五歳くらいの少女たちが王城にやってくるようになったのですわ。もうアルベルト様は、ご自分の体調を整えることで精一杯だったらしくて女官長と宰相閣下が決めて、その少女達には二週間ほど行儀見習いと王城の見学などをしてもらって帰ってもらうことにしたそうです。今でも王城お嬢様ツアーとしてやっているんですって。貴族の令嬢であれば誰でも参加できるとあって人気なんですって」
カシュー・ソダイの提案だと直ぐにわかった。王家に親近感をもってもらうのに最適だからだ。
「そこにあのミリアムもやってきた。伯爵令嬢で、父親と一緒に来たらしい。その父親が帰り路で賊に襲われた……。母も兄弟もいないが、叔父がいるというので安心していたら、ミリアムが父親から渡された手紙を持っていたんだ」
内容は、自分の弟が家督を強奪しようとしていて、身の危険を感じるということ。弟が何といってもミリアムが王城にいる間に自分に何かあったときは、どうか娘を護ってほしいということが書いていた。
そうこうしているうちに、弟が姪を返してくれと言ってきた。後見として自分が姪の面倒をみるという。アルベルトが伯爵から預かったと断っても、弟はしつこかった。そこでミリアムを妾妃として匿うことにしたのだ。その後、アルベルトの手のものによって伯爵の弟の罪が明らかにされ、ミリアムは安全となったが、父を殺され表情を失い明らかに弱っていくミリアムを近親者のいない屋敷に帰すのは心配だということで、未だにアルベルトの妾妃として王城にいるのだった。
ミリアムは王の妾妃とはいってももちろん名前だけだ。実際のところは王の客人でしかない。
だからカシュー・ソダイも妾妃としてではなく、ただの伯爵令嬢として対応していたのだ。
「沢山の妾妃候補というのは……」
「多分ツアーに来た子たちのことじゃないかな?」
アラーナは、声も出せず自分の愚かさに打ちひしがれた。
「では、私の想いは……誰の邪魔にもなっていないというのですか?」
控えめなアラーナの言葉にアルベルトは堪らず頬を撫ぜた。頬を染め上目遣いでアルベルトを見つめる瞳が潤んだので、唇を寄せる。
「アラーナ……愛しているんだ――」
アラーナが瞳を閉じようとしたとき、シエラがコホンと咳払いをする。
「すいませんが、今からまた寝室に籠られるとこまります。アルベルト様、今日の祝賀には各国の祝いもきいていますし、アラーナは夜の舞踏会に出ることができませんが……よろしいのでしょうか」
「シエラ……、助かった――。アラーナ、舞踏会では私のパートナーとして、側にいるように」
「ですが、私のパートナーは……」
アラーナはカシュー・ソダイのパートナーとしてここに来たのだった。約束は約束だと思っていうとアルベルトは眉間にしわを寄せた。
けれども、シエラが慌てて「先生はアラーナのドレスを作るためにそう言っただけよ。アルベルト様の衣装と多分対にしていると思うのだけど」とアルベルトの怒りを鎮静化した。
「アラーナ――、私が王を続けるのも辞めるのもアラーナが決めればいい。私は、お前の夫でさえあれば、それでいい――」
「アルベルト様……」
「だから! もう直ぐにそういう雰囲気を作るのはやめてください!」
シエラが「もう止めませんからね」と怒鳴るがそれもなんだかこそばゆくアラーナには感じられた。
隣でアラーナの髪を撫でながら寄り添うアルベルトと、プンプンしながらもアラーナに「良かったわね」と喜んでくれるシエラに、もしかしたら私は夢をみているのかもしれない――、けれど夢なら醒めてほしくないとアラーナ―は願うのだった。
まだ挨拶もすましていないどころか、カシュー・ソダイの客間でアルベルトと何をしてしまったか思い出したアラーナは、真っ赤になったまま立ち上がり、カシュー・ソダイを迎えた。
「アラーナ様、よくおいでくださいました」
カシュー・ソダイは、多少は歳をとったとはいえ、まだまだ麗しい顔を満面の笑みに変えてアラーナの手をとって甲にキスの真似をする。
「宰相閣下、このたびは快く部屋を貸してくださってありがとうございました。お蔭さまで旅もとても楽しく……」
「カシュー・ソダイ、連れてきたのか?」
ソファに座ったままのアルベルトがアラーナの言葉を遮って、カシュー・ソダイに訊ねた。
噂のアルベルトの妾妃が来ているのだと、アラーナは気付いた。アルベルトに視線を移すと、安心しろというように鷹揚に頷いた。
「はい。ミリアム殿を連れてきました」
カシュー・ソダイの言葉にアラーナは違和感を覚えた。妾妃に対する言い方ではない。妾妃候補であったアラーナにさえ、カシュー・ソダイは丁寧な言葉遣いを忘れたことはない人だというのに。
不安がないわけではなかったが、側にシエラがいてくれるので我慢することができた。この時点では、アラーナの信頼はアルベルトよりも確実にシエラに寄せられている。
「入れ――」
アルベルトの命じる声に、扉の向こうから人の動く気配がした。
淡いオレンジのドレスが最初に目にとまって、入ってきた人物を見たアラーナは眩暈がした。一瞬、眩んだ身体をシエラが慌てて支えてくれた。
「アラーナ!」
アルベルトがシエラの反対側を支えてくれて、何とかアラーナは倒れずにすんだ。
息を詰めたアラーナに、アルベルトが心配そうに顔を覗き込む。
「あなたは……っ!」
「まて、ちょっと待て。アラーナ何を勘違いしているんだ――」
暴れて、アルベルトを振り切ろうとしたアラーナを心外だとアルベルトは抱き寄せた。
「こんな……小さな――」
「子供に何かするとでも思っているのか?」
きつく抱きしめられて、苦しくてアラーナは喘いだ。
「お前しかいらないと言ったのに、まだ不安だったのか? こんな子供に嫉妬したか?」
酷いとアラーナは泣きそうになりながら、アルベルトの背中を叩いた。
「アルベルト様はっ、……私のことが嫌いなのですか?」
「何故――?」
アラーナがどれだけ嫉妬深いかは告げたはずなのに、頬を寄せて嫉妬しているのかと聞くのだ。
「アルベルト様っ、やめっ……」
アラーナが嫉妬しているというのに、目がくらむ程に怒っているというのに、この男(アルベルト)は抱きしめたアラーナの首筋を舐めたのだ。
「はい。子供の前ですからね、止めてもらえませんか」
カシュー・ソダイの声と共に、シエラがトレーでアルベルトの頭を殴るのを見た少女が笑いだす。
我慢できないというようにコロコロと笑う少女をびっくりしたように皆が見つめる。
「笑った……」
侍女の誰かの呟きが響いた。思わずといった声にアラーナは、少女を改めて見た。
オレンジ色のドレスはとても似合っているもののその顔色は白く、やせ細っていた。
「アルベルト様?」
アラーナの戸惑う声に、アルベルトは頷いた。
「ミリアム、挨拶を」
笑いが何とか収まった少女は、ドレスを摘み「お初にお目にかかります、ミリアムと申します」とうって変わって表情の乏しい顔でアラーナに挨拶をした。先程の爆笑はなんだったのかと思うほどの静かな表情にアラーナは首を傾げ、「アラーナと申します」としか返せなかった。
「ミリアム、もういい――」
アルベルトの言葉にやはり表情のないまま頷いたミリアムは、風が吹けば倒れてしまうのではないかとアラーナには思えた。
「送ってきます。アラーナ様、ご自宅のおつもりでゆっくりなさってください」
カシュー・ソダイは、そう言ってミリアムを連れて部屋を出て行った。
「アルベルト様……」
アラーナは、ミリアムが正確な意味での妾妃でないことをやっと飲み込むことが出来た。
「アラーナを王城から返した後、あちこちの貴族から妾妃候補が送られてきたんだ。私がアラーナの胸が不満だといったから、来るのはボリューム満点の豊満な美女ばかりだったんだが、正直お前がいなくなってからの私はあまり食も進まず、眠れもぜずといった状態で、そんな気持ちにもなれず、持て余していた。そうしたら今度は何を勘違いしたのか……」
その当時を思い出したアルベルトがうんざりといった風にため息を吐く。アラーナはアルベルトの横に座り、手を繋がれた状態で話を聞いた。
「アルベルト様が好きなのはやはり子供なのではないかと、十二歳から十五歳くらいの少女たちが王城にやってくるようになったのですわ。もうアルベルト様は、ご自分の体調を整えることで精一杯だったらしくて女官長と宰相閣下が決めて、その少女達には二週間ほど行儀見習いと王城の見学などをしてもらって帰ってもらうことにしたそうです。今でも王城お嬢様ツアーとしてやっているんですって。貴族の令嬢であれば誰でも参加できるとあって人気なんですって」
カシュー・ソダイの提案だと直ぐにわかった。王家に親近感をもってもらうのに最適だからだ。
「そこにあのミリアムもやってきた。伯爵令嬢で、父親と一緒に来たらしい。その父親が帰り路で賊に襲われた……。母も兄弟もいないが、叔父がいるというので安心していたら、ミリアムが父親から渡された手紙を持っていたんだ」
内容は、自分の弟が家督を強奪しようとしていて、身の危険を感じるということ。弟が何といってもミリアムが王城にいる間に自分に何かあったときは、どうか娘を護ってほしいということが書いていた。
そうこうしているうちに、弟が姪を返してくれと言ってきた。後見として自分が姪の面倒をみるという。アルベルトが伯爵から預かったと断っても、弟はしつこかった。そこでミリアムを妾妃として匿うことにしたのだ。その後、アルベルトの手のものによって伯爵の弟の罪が明らかにされ、ミリアムは安全となったが、父を殺され表情を失い明らかに弱っていくミリアムを近親者のいない屋敷に帰すのは心配だということで、未だにアルベルトの妾妃として王城にいるのだった。
ミリアムは王の妾妃とはいってももちろん名前だけだ。実際のところは王の客人でしかない。
だからカシュー・ソダイも妾妃としてではなく、ただの伯爵令嬢として対応していたのだ。
「沢山の妾妃候補というのは……」
「多分ツアーに来た子たちのことじゃないかな?」
アラーナは、声も出せず自分の愚かさに打ちひしがれた。
「では、私の想いは……誰の邪魔にもなっていないというのですか?」
控えめなアラーナの言葉にアルベルトは堪らず頬を撫ぜた。頬を染め上目遣いでアルベルトを見つめる瞳が潤んだので、唇を寄せる。
「アラーナ……愛しているんだ――」
アラーナが瞳を閉じようとしたとき、シエラがコホンと咳払いをする。
「すいませんが、今からまた寝室に籠られるとこまります。アルベルト様、今日の祝賀には各国の祝いもきいていますし、アラーナは夜の舞踏会に出ることができませんが……よろしいのでしょうか」
「シエラ……、助かった――。アラーナ、舞踏会では私のパートナーとして、側にいるように」
「ですが、私のパートナーは……」
アラーナはカシュー・ソダイのパートナーとしてここに来たのだった。約束は約束だと思っていうとアルベルトは眉間にしわを寄せた。
けれども、シエラが慌てて「先生はアラーナのドレスを作るためにそう言っただけよ。アルベルト様の衣装と多分対にしていると思うのだけど」とアルベルトの怒りを鎮静化した。
「アラーナ――、私が王を続けるのも辞めるのもアラーナが決めればいい。私は、お前の夫でさえあれば、それでいい――」
「アルベルト様……」
「だから! もう直ぐにそういう雰囲気を作るのはやめてください!」
シエラが「もう止めませんからね」と怒鳴るがそれもなんだかこそばゆくアラーナには感じられた。
隣でアラーナの髪を撫でながら寄り添うアルベルトと、プンプンしながらもアラーナに「良かったわね」と喜んでくれるシエラに、もしかしたら私は夢をみているのかもしれない――、けれど夢なら醒めてほしくないとアラーナ―は願うのだった。
2
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
白い結婚に、猶予を。――冷徹公爵と選び続ける夫婦の話
鷹 綾
恋愛
婚約者である王子から「有能すぎる」と切り捨てられた令嬢エテルナ。
彼女が選んだ新たな居場所は、冷徹と噂される公爵セーブルとの白い結婚だった。
干渉しない。触れない。期待しない。
それは、互いを守るための合理的な選択だったはずなのに――
静かな日常の中で、二人は少しずつ「選び続けている関係」へと変わっていく。
越えない一線に名前を付け、それを“猶予”と呼ぶ二人。
壊すより、急ぐより、今日も隣にいることを選ぶ。
これは、激情ではなく、
確かな意思で育つ夫婦の物語。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
四人の令嬢と公爵と
オゾン層
恋愛
「貴様らのような田舎娘は性根が腐っている」
ガルシア辺境伯の令嬢である4人の姉妹は、アミーレア国の王太子の婚約候補者として今の今まで王太子に尽くしていた。国王からも認められた有力な婚約候補者であったにも関わらず、無知なロズワート王太子にある日婚約解消を一方的に告げられ、挙げ句の果てに同じく婚約候補者であったクラシウス男爵の令嬢であるアレッサ嬢の企みによって冤罪をかけられ、隣国を治める『化物公爵』の婚約者として輿入という名目の国外追放を受けてしまう。
人間以外の種族で溢れた隣国ベルフェナールにいるとされる化物公爵ことラヴェルト公爵の兄弟はその恐ろしい容姿から他国からも黒い噂が絶えず、ガルシア姉妹は怯えながらも覚悟を決めてベルフェナール国へと足を踏み入れるが……
「おはよう。よく眠れたかな」
「お前すごく可愛いな!!」
「花がよく似合うね」
「どうか今日も共に過ごしてほしい」
彼らは見た目に反し、誠実で純愛な兄弟だった。
一方追放を告げられたアミーレア王国では、ガルシア辺境伯令嬢との婚約解消を聞きつけた国王がロズワート王太子に対して右ストレートをかましていた。
※初ジャンルの小説なので不自然な点が多いかもしれませんがご了承ください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる