竜の溺愛が国を救います(物理)

東院さち

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「エリー、疲れているのか?」

 夏は暑くて僕の苦手な季節だ。

「少し暑気あたりしてしまったようです」

 リュシオンは、それならと言って、魔法で氷の塊を作ってくれた。

「冷たくて気持ちいいですね」

 山のように大きな氷の塊の一部にひっつくと、リュシオンが駄目だと言った。

「身体が冷えては余計に具合がわるくなる」

 僕よりも僕のことを知っているリュシオンは、そう言って僕を抱きしめた。

「あ、暑いです」
「夏などなくなればいいのに」

 暑いから離れて欲しいと言うと、リュシオンは膨れてしまった。

「ごめんなさい、氷を削ってもらって食べましょう」

 いつも引っ付いている僕らを見ていると余計に熱いとジゼル達が文句を言うから、皆の分の氷を削って、野いちごをシロップでつけたものをかけて食べた。
 シロップよりも甘いと文句を言われながら、気にしないリュシオンに口付けられた。リュシオンは見られていても恥ずかしいと思う事はないようだ。リュシオンに求められれば、僕が恥ずかしいからと拒否するわけにいかない。すぐに気で消耗してしまって僕はあまり楽しめなかった。リュシオンは、僕の唇が果実で紅く染まるのが好きなんだそうだ。
 次の年は黄色の桃のシロップに変えてくれたのはマーガレットなりの気遣いだったけれど、あまり効果はなかった。


 秋はリュシオンの背に乗せてもらった。二つの季節を越えた僕は、少し耐性が出来てきたようで、竜体のリュシオンに触れても平気になったからだ。

「高いです! 麦畑が綺麗……」

 ため息がでるほど美しい風景を空から眺めて見惚れた。現竜王様とリュシオンのお陰でこの国はとても富んでいる。竜がいるだけで、実りがちがうのだと物知りなジゼルが教えてくれた。
 彼女はとてもお金持ちのお嬢様だという。話をしていても僕にはない知性というものを感じる。何故ここにいて仕えることになったのか聞いてみた。

「私の髪の色、赤っぽいでしょ? 我が家の人間は皆綺麗な金髪で、私だけが違うの。お母様は不貞を疑われていたのかもしれない。早くに亡くなって、屋敷にいるのも辛いからここに来たのよ。ここじゃ誰も髪のことは言わないもの」
「ジゼルの髪はとても綺麗だよ」
「エリーみたいな髪の色だったらよかったのに……」

 自信満々に見えていた彼女の心の陰りが見えた。

「その髪は、そなたらしくていいと思うが」

 リュシオンがそう言うと、ジゼルの目が驚きに瞬いた。

「リュシオン様がエリーの事以外で褒めるなんて!」

 結構失礼なことを言っている。それからジゼルは髪を下ろすようになった。彼女の心がリュシオンの言葉一つで救われたのだ。
 

 冬は山の上に行った。雪が降る中で温泉に入るのがリュシオンの楽しみだそうだ。

「エリー、ここの湯は白いぞ。竜は温泉が好きなのだ。今度とっておきの場所に連れて行ってやろう」

 ご機嫌なリュシオンだけど、僕は温泉が苦手だった。何度か湯気にあてられて目を回したのだ。竜の気で具合が悪くなるのとは違って何日も寝込んでしまいリュシオンを心配させた。

 僕の身体は、リュシオンに拓かれていく。リュシオンの指は僕の官能を刺激し、このまま快楽に沈んで戻って来られなくなるのではないかと何度も思った。けれど、リュシオンは風呂に入るとき以外は服を脱がない。どれほど僕が蕩けても、指と舌以外を僕の中に入れようとはしなかった。それが番様ができるまでの間、中継ぎである僕に与えられる全てなのだろう。これほどまでに意識も身体も変えられて、はたして僕は一人で生きていけるのだろうかと不安に思うことは多々あった。けれど許されていないものを欲しいという資格が僕にはない。女であったなら、僕でも番にしてもらうことは出来たのだろうか。そんな頑是無い疑問が胸の奥にずっと燻っている。
 自分の男の身体を認められないせいか、僕の声は未だに少年のように高く、身体も華奢なままだ。髭もなければ喉仏もない未発達な身体のままだった。リュシオンから離れれば、きっとそのうち男らしくなるだろうと思っているのであまり悩んではいないが、後宮のお姉さん達がいつまでたっても弟、いや妹をみるような目をしているのが少しだけ悲しい。
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