10 / 18
10
しおりを挟む
二年とはいえ、竜の気を受けては寝込んでいたせいで三分の一は記憶にないから余計に時が過ぎるのが速く感じるのかも知れない。最近は随分耐性がついて、気が全身を巡っても丸一日眠ることはなくなった。同時にリュシオンが感情を昂ぶらせた時に気が溢れても苦しくなることが減った。
最後の勉強会を終えて成竜の儀式を終えた後に戻ってくると言ってリュシオンは出かけた。いつもは三日ほどだけど、今回は少し長いらしい。
そう、もう僕がここにいる必要はなくなるのだ。儀式を終えれば、本当の番様を求めるはずだから。
今回は多めの気を受けたので丸一日眠ってしまった。リュシオンの部屋は僕が気を受けて眠っている間はだれも入れないように結界が張られているそうだ。いつまでも起きてこないから母や側仕え達が心配しているかもしれない。貫頭衣とズボンを着て鏡の前に立つと、首や胸の見えるあたりにキスされた鬱血の跡が見えた。皆知っていることだとはいえ、少し恥ずかしいので、リュシオンから与えられた薄い布を被った。これはリュシオンの香りがする。この甘く少しピリッとした香りは、竜体をとっているときに匂うのだが、皆はよくわからないという。でもこれのお陰で勉強で国を空ける時の寂しい日々を慰められたから、出ていくときに下賜していただけると嬉しい。
頭から被って首元を隠し、身体に巻き付ける。元々これは高貴な人が人に顔を見せないようにするための布を模倣している。薄いけれど、外からは顔の判別ができなくなるのにこちらからは見えるという優れものでもある。
「おはよう」
僕が起きた時に一度報せの鈴を鳴らしているので、側仕えの誰かがいるはずだ。
「おはようございます。エリー、あの……あちらに――」
部屋を出ると母くらいの年の側仕えが控えていて、言いにくそうに手で訪問者を示した。
組み木でできた広い廊下に何故か椅子が二つおいてあった。廊下は、竜が竜体でも歩けるように広いけれど部屋ではない。そこに男がいた。父が生きていれば同じくらいの男性だ。自室のように寛いでいることにも驚いた。
「後宮なのに……?」
確か男は入ってはいけないのではなかったかと首を傾げた瞬間、座っていた人が嗤う。
「お前も男ではないか」
全くもってその通りだった。
「そうよ、もう男は必要ありません。さっさと出てお行きなさい」
紅い口紅が鮮やかな女の人が、廊下の向こうを指して言う。その瞬間、僕と同じ金色の髪についている髪飾りが音を立てた。着ているものもつけている装飾品も僕なんかじゃ一生手にすることがないような素晴らしいものだ。命じる声に合わせて、僕の周りを囲んだ彼女の護衛が僕を見下ろした。でていかないと言えば、力ずくも辞さないというのが見てとれた。身を引いた僕の横にリュシオンの側仕えが庇うようにして立った。対立は一瞬だった。
「お父様! 何故ここへ……」
僕と一緒にリュシオンに仕えているジゼルが慌ててやってきて僕達の間に入った。
「ジゼル、お前はここで次代様にお仕えしていながらこんな男を後宮に住まわせて報告もなしとは……何をしているのだ」
「エリー、あの方は宰相閣下です」
ジゼルは自分の父をあの方と呼んだ。それだけで二人の間に壁があることがわかった。
宰相と言えば、竜王の代わりに国民を導く立場の人だ。もちろん僕は見たこともないような高貴な人だ。控えなければいけないと膝をついた。
「お初にお目にかかります、エリーと申します」
エーリッヒと名乗るのも後宮でどうかと思い、通称であるエリーを名乗った。頭を下げると、彼は満足したように「うむ」と頷いた。
「そなたが次代様の無聊を慰めていたと聞いている。男であると聞いて驚いたものだが、娶る番様の嫉妬を煽らないように男にされたのであろう。もうそなたの仕事は終わったのだ。次代様には『番に相応しいものを集めなさい』と命じられた。そなたには相応の金子を渡すので、ここを出て自由に生きるがよい」
鷹揚に言い渡す男からは、この国の宰相としての器量を感じた。
「お父様、リュシオン様がエリーを手放すとは思えません。お姉様を番様にされるとおっしゃったのですか?」
「男ではどのみち卵を産むことなどできない。セシルをと望まれたわけではないが、容姿の美しさや教養の深さを考えれば、次代様も頷かれるだろう」
セシルというのがこの女性の名前だとわかったが、容姿や教養の深さでリュシオンが番様を選ぶとも思えなかった。
「あなたが番様となるのですか?」
セシルは僕をチラリと見て、横を向いた。口も聞きたくないのだと表しているのだろう。
「そうです。きっと次代様はわたくしを選ばれるでしょう。髪は美しいけれど、これがわたくしの代わりをしていたなんて……」
チラッとこちらをみた瞳には、嫌悪がまざまざと見えた。でも、何も言う必要はない。彼女が番様としてリュシオンに愛されるとは思えない。
「わかりました。宰相閣下、すぐに出ていきます。でも、あの……この布だけは思い出のよすがにいただくことはできませんか?」
被っていた布を欲しいというと、セシルは呆れたように声を荒げた。
「まぁ! よくその価値を知っていたこと。お前の価値に相応しいものではないわ。それは竜の火も氷も攻撃も防ぐと言われているものよ。国宝に値するものをねだるだなんてあつかましい!」
「お姉様、それはリュシオン様がエリーにと与えられたものです」
セシルの鬼のような目に驚いているとジゼルが代わりに答えた。
宰相を見ると、首を横に振った。
「価値を知らなかったようだが、それは本来番様に下賜されるものなのだ。ただの愛妾が持つには――」
「お父様!」
「ジゼル、いい加減にしなさい。お前には命じていただろう? 姉のために後宮を把握しておきなさいと」
ジゼルはそう言われて、僕を見た。
「ごめんなさい……」
ジゼルが謝ったわけがわからなかった。裏切ったとでも思っているのかも知れない。けれど、誰も間違っているとは思えない。誰もが自分の役割を果たしているだけだ。
「わかりました。知らなかったとはいえ、恥ずかしいことを申しました」
「リュシオン様が帰っていらっしゃるまで、エリーはここにいていいはずです」
ジゼルはそれだけは譲れないと顔を強張らせながら宰相に訴えた。
宰相も困ったような顔になる。
「だが、早くここを番様のために整えねばならぬのだ。『番に相応しいものを集めなさい』とおっしゃったからには、この娘だけでなく貴族の中でも優れた容姿の者達をここにおかねばならぬ。気位が高いそのものたちが、次代様によく仕えたこの男に何かしては困るのだ」
「お父様! 私、あのものの髪で鬘をつくりとうございます」
ああ、こういうことを言われるからかと僕は納得した。ジゼルも白い目を姉に向けている。仲がよくないのはわかった。
「君、すまないが髪をもらうことはできないだろうか」
宰相の額に汗が浮いている。娘が番様になるなら、願いを叶えないといけないと思っているのだろう。
「馬鹿なことを……。リュシオン様がお怒りになるわ」
ブルブルとジゼルが大げさに震えた。
髪は……リュシオンが大事に大事にしてくれていたものだ。簡単に切っていいとは思えなかった。
「お前の母は追い出す予定だったけれど……、そうね、髪をよこすならここで働かせてやってもいいわ」
チラッと見えた頭を下げて控えているものの中に母の姿が見えた。母がここを追い出されるなんて知らなかった。聞いていない。僕がちゃんと町で生活できるようになったら呼ぼうと思っていたけれど、それが本当に可能なことなのかわからない今、母を危険に巻き込みたくなかった。
「わかりました……」
「エリー!」
ジゼルは駄目だと頭を横に振った。
宰相が胸をなで下ろしたのがわかる。サラサラと流れる髪を背中で括ってそれを切ろうと思った。
「もっとよ! 短かったら粗末な鬘になるじゃないの!」
セシルはそう言って、僕が使おうとしていたナイフを奪って首の後ろで切ってしまった。
最後の勉強会を終えて成竜の儀式を終えた後に戻ってくると言ってリュシオンは出かけた。いつもは三日ほどだけど、今回は少し長いらしい。
そう、もう僕がここにいる必要はなくなるのだ。儀式を終えれば、本当の番様を求めるはずだから。
今回は多めの気を受けたので丸一日眠ってしまった。リュシオンの部屋は僕が気を受けて眠っている間はだれも入れないように結界が張られているそうだ。いつまでも起きてこないから母や側仕え達が心配しているかもしれない。貫頭衣とズボンを着て鏡の前に立つと、首や胸の見えるあたりにキスされた鬱血の跡が見えた。皆知っていることだとはいえ、少し恥ずかしいので、リュシオンから与えられた薄い布を被った。これはリュシオンの香りがする。この甘く少しピリッとした香りは、竜体をとっているときに匂うのだが、皆はよくわからないという。でもこれのお陰で勉強で国を空ける時の寂しい日々を慰められたから、出ていくときに下賜していただけると嬉しい。
頭から被って首元を隠し、身体に巻き付ける。元々これは高貴な人が人に顔を見せないようにするための布を模倣している。薄いけれど、外からは顔の判別ができなくなるのにこちらからは見えるという優れものでもある。
「おはよう」
僕が起きた時に一度報せの鈴を鳴らしているので、側仕えの誰かがいるはずだ。
「おはようございます。エリー、あの……あちらに――」
部屋を出ると母くらいの年の側仕えが控えていて、言いにくそうに手で訪問者を示した。
組み木でできた広い廊下に何故か椅子が二つおいてあった。廊下は、竜が竜体でも歩けるように広いけれど部屋ではない。そこに男がいた。父が生きていれば同じくらいの男性だ。自室のように寛いでいることにも驚いた。
「後宮なのに……?」
確か男は入ってはいけないのではなかったかと首を傾げた瞬間、座っていた人が嗤う。
「お前も男ではないか」
全くもってその通りだった。
「そうよ、もう男は必要ありません。さっさと出てお行きなさい」
紅い口紅が鮮やかな女の人が、廊下の向こうを指して言う。その瞬間、僕と同じ金色の髪についている髪飾りが音を立てた。着ているものもつけている装飾品も僕なんかじゃ一生手にすることがないような素晴らしいものだ。命じる声に合わせて、僕の周りを囲んだ彼女の護衛が僕を見下ろした。でていかないと言えば、力ずくも辞さないというのが見てとれた。身を引いた僕の横にリュシオンの側仕えが庇うようにして立った。対立は一瞬だった。
「お父様! 何故ここへ……」
僕と一緒にリュシオンに仕えているジゼルが慌ててやってきて僕達の間に入った。
「ジゼル、お前はここで次代様にお仕えしていながらこんな男を後宮に住まわせて報告もなしとは……何をしているのだ」
「エリー、あの方は宰相閣下です」
ジゼルは自分の父をあの方と呼んだ。それだけで二人の間に壁があることがわかった。
宰相と言えば、竜王の代わりに国民を導く立場の人だ。もちろん僕は見たこともないような高貴な人だ。控えなければいけないと膝をついた。
「お初にお目にかかります、エリーと申します」
エーリッヒと名乗るのも後宮でどうかと思い、通称であるエリーを名乗った。頭を下げると、彼は満足したように「うむ」と頷いた。
「そなたが次代様の無聊を慰めていたと聞いている。男であると聞いて驚いたものだが、娶る番様の嫉妬を煽らないように男にされたのであろう。もうそなたの仕事は終わったのだ。次代様には『番に相応しいものを集めなさい』と命じられた。そなたには相応の金子を渡すので、ここを出て自由に生きるがよい」
鷹揚に言い渡す男からは、この国の宰相としての器量を感じた。
「お父様、リュシオン様がエリーを手放すとは思えません。お姉様を番様にされるとおっしゃったのですか?」
「男ではどのみち卵を産むことなどできない。セシルをと望まれたわけではないが、容姿の美しさや教養の深さを考えれば、次代様も頷かれるだろう」
セシルというのがこの女性の名前だとわかったが、容姿や教養の深さでリュシオンが番様を選ぶとも思えなかった。
「あなたが番様となるのですか?」
セシルは僕をチラリと見て、横を向いた。口も聞きたくないのだと表しているのだろう。
「そうです。きっと次代様はわたくしを選ばれるでしょう。髪は美しいけれど、これがわたくしの代わりをしていたなんて……」
チラッとこちらをみた瞳には、嫌悪がまざまざと見えた。でも、何も言う必要はない。彼女が番様としてリュシオンに愛されるとは思えない。
「わかりました。宰相閣下、すぐに出ていきます。でも、あの……この布だけは思い出のよすがにいただくことはできませんか?」
被っていた布を欲しいというと、セシルは呆れたように声を荒げた。
「まぁ! よくその価値を知っていたこと。お前の価値に相応しいものではないわ。それは竜の火も氷も攻撃も防ぐと言われているものよ。国宝に値するものをねだるだなんてあつかましい!」
「お姉様、それはリュシオン様がエリーにと与えられたものです」
セシルの鬼のような目に驚いているとジゼルが代わりに答えた。
宰相を見ると、首を横に振った。
「価値を知らなかったようだが、それは本来番様に下賜されるものなのだ。ただの愛妾が持つには――」
「お父様!」
「ジゼル、いい加減にしなさい。お前には命じていただろう? 姉のために後宮を把握しておきなさいと」
ジゼルはそう言われて、僕を見た。
「ごめんなさい……」
ジゼルが謝ったわけがわからなかった。裏切ったとでも思っているのかも知れない。けれど、誰も間違っているとは思えない。誰もが自分の役割を果たしているだけだ。
「わかりました。知らなかったとはいえ、恥ずかしいことを申しました」
「リュシオン様が帰っていらっしゃるまで、エリーはここにいていいはずです」
ジゼルはそれだけは譲れないと顔を強張らせながら宰相に訴えた。
宰相も困ったような顔になる。
「だが、早くここを番様のために整えねばならぬのだ。『番に相応しいものを集めなさい』とおっしゃったからには、この娘だけでなく貴族の中でも優れた容姿の者達をここにおかねばならぬ。気位が高いそのものたちが、次代様によく仕えたこの男に何かしては困るのだ」
「お父様! 私、あのものの髪で鬘をつくりとうございます」
ああ、こういうことを言われるからかと僕は納得した。ジゼルも白い目を姉に向けている。仲がよくないのはわかった。
「君、すまないが髪をもらうことはできないだろうか」
宰相の額に汗が浮いている。娘が番様になるなら、願いを叶えないといけないと思っているのだろう。
「馬鹿なことを……。リュシオン様がお怒りになるわ」
ブルブルとジゼルが大げさに震えた。
髪は……リュシオンが大事に大事にしてくれていたものだ。簡単に切っていいとは思えなかった。
「お前の母は追い出す予定だったけれど……、そうね、髪をよこすならここで働かせてやってもいいわ」
チラッと見えた頭を下げて控えているものの中に母の姿が見えた。母がここを追い出されるなんて知らなかった。聞いていない。僕がちゃんと町で生活できるようになったら呼ぼうと思っていたけれど、それが本当に可能なことなのかわからない今、母を危険に巻き込みたくなかった。
「わかりました……」
「エリー!」
ジゼルは駄目だと頭を横に振った。
宰相が胸をなで下ろしたのがわかる。サラサラと流れる髪を背中で括ってそれを切ろうと思った。
「もっとよ! 短かったら粗末な鬘になるじゃないの!」
セシルはそう言って、僕が使おうとしていたナイフを奪って首の後ろで切ってしまった。
16
あなたにおすすめの小説
りんご成金のご令息
けい
BL
ノアには前世の記憶はあったがあまり役には立っていなかった。そもそもあまりにもあいまい過ぎた。魔力も身体能力も平凡で何か才能があるわけでもない。幸いにも裕福な商家の末っ子に生まれた彼は、真面目に学んで身を立てようとコツコツと勉強する。おかげで王都の学園で教育を受けられるようになったが、在学中に両親と兄が死に、店も乗っ取られ、残された姉と彼女の息子を育てるために学園を出て冒険者として生きていくことになる。
それから二年がたち、冒険者としていろいろあった後、ノアは学園の寮で同室だった同級生、ロイと再会する。彼が手を貸してくれたおかげで、生活に余裕が出て、目標に向けて頑張る時間もとれて、このまま姉と甥っ子と静かに暮らしていければいいと思っていたところ、姉が再婚して家を出て、ノアは一人になってしまう。新しい住処を探そうとするノアに、ロイは同居を持ち掛ける。ロイ×ノア。ふんわりした異世界転生もの。
他サイトにも投稿しています。
竜神様の番
田舎
BL
いつかX内で呟いた、
『えーん、えーん…💦
竜人の攻めが長いこと探してた番の人間くんを探して(半強制的)に結婚したのに、ツンデレどころかクーデレが過ぎてたせいで、ある日人間くんが「離縁します」と置き手紙残して失踪…!
後悔とブチギレしてる話がなきゃ掃除と洗濯できない😭😭』
という自分の愚痴から始まったツイノベもどきを、再構成と校正しました。
「番」とは何かも知らされず、
選択肢すら与えられなかった人間リオと、
大切にしている“つもり”だった竜人のナガレ。
ちゃんとハッピーエンドです。
紳士オークの保護的な溺愛
こむぎこ7g
BL
■ 世界と舞台の概要
ここはオークの国「トールキン」。
魔法、冒険者、ギルド、ダンジョン、獣人やドラゴンが存在する、いわゆる“典型的な異世界”だが、この国の特徴はオークが長命で、理知的な文明社会を築いていることにある。
トールキンのオークたちは、
灰色がかった緑や青の肌
鋭く澄んだ眼差し
鍛え上げられた筋骨隆々の体躯
を持ち、外見こそ威圧的だが、礼節と合理性を重んじる国民性をしている。
異世界から来る存在は非常に珍しい。
しかしオークは千年を生きる種族ゆえ、**長い歴史の中で「時折起こる出来事」**として、記録にも記憶にも残されてきた。
⸻
■ ガスパールというオーク
ガスパールは、この国でも名の知れた貴族家系の三男として生まれた。
薄く灰を帯びた緑の肌、
赤い虹彩に金色の瞳孔という、どこか神話的な目。
分厚い肩と胸板、鍛え抜かれた腹筋は鎧に覆われずとも堅牢で、
銀色に輝く胸当てと腰当てには、代々受け継がれてきた宝石が嵌め込まれている。
ざらついた低音の声だが、語調は穏やかで、
貴族らしい品と、年齢を重ねた余裕がにじむ話し方をする。
● 彼の性格
• 極めて面倒見がよく、観察力が高い
• 感情を声高に表に出さないが、内側は情に厚い
• 責任を引き受けることを当然のように思っている
• 自分が誰かに寄りかかることだけは、少し苦手
どこか「自分は脇役でいい」と思っている節があり、それが彼の誠実さと同時に、不器用さでもあった。
⸻
■ 過去と喪失 ――愛したオーク
ガスパールはかつて、平民出身のオーク男性と結ばれていた。
家柄も立場も違う相手だったが、
彼はその伴侶の、
不器用な優しさ
朝食を焦がしてしまうところ
眠る前に必ず手を探してくる癖
を、何よりも大切にしていた。
しかし、その伴侶はすでにこの世を去っている。
現在ガスパールが暮らしているのは、
貴族街から少し離れた、二階建ての小さな屋敷。
華美ではないが、掃除が行き届き、静かな温もりのある家だ。
彼は今も毎日のように墓参りを欠かさない。
それは悲嘆というより、対話に近い行為だった。
⸻
■ 現在の生活
ガスパールは現在、
街の流通を取り仕切る代表的な役職に就いている。
多忙な職務の合間にも、
洗濯、掃除、料理
帳簿の整理
屋敷の修繕
をすべて自分でこなす。
仕事、家事、墓参り。
規則正しく、静かな日々。
――あなたが現れるまでは。
クールな義兄の愛が重すぎる ~有能なおにいさまに次期当主の座を譲ったら、求婚されてしまいました~
槿 資紀
BL
イェント公爵令息のリエル・シャイデンは、生まれたときから虚弱体質を抱えていた。
公爵家の当主を継ぐ日まで生きていられるか分からないと、どの医師も口を揃えて言うほどだった。
そのため、リエルの代わりに当主を継ぐべく、分家筋から養子をとることになった。そうしてリエルの前に表れたのがアウレールだった。
アウレールはリエルに献身的に寄り添い、懸命の看病にあたった。
その甲斐あって、リエルは奇跡の回復を果たした。
そして、リエルは、誰よりも自分の生存を諦めなかった義兄の虜になった。
義兄は容姿も能力も完全無欠で、公爵家の次期当主として文句のつけようがない逸材だった。
そんな義兄に憧れ、その後を追って、難関の王立学院に合格を果たしたリエルだったが、入学直前のある日、現公爵の父に「跡継ぎをアウレールからお前に戻す」と告げられ――――。
完璧な義兄×虚弱受け すれ違いラブロマンス
【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。
明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。
新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。
しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…?
冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。
勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される
八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。
蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。
リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。
ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい……
スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)
【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』
バナナ男さん
BL
優秀な騎士の家系である伯爵家の【クレパス家】に生まれた<グレイ>は、容姿、実力、共に恵まれず、常に平均以上が取れない事から両親に冷たく扱われて育った。 そんなある日、父が気まぐれに手を出した娼婦が生んだ子供、腹違いの弟<ルーカス>が家にやってくる。 その生まれから弟は自分以上に両親にも使用人達にも冷たく扱われ、グレイは初めて『褒められる』という行為を知る。 それに恐怖を感じつつ、グレイはルーカスに接触を試みるも「金に困った事がないお坊ちゃんが!」と手酷く拒絶されてしまい……。 最初ツンツン、のちヤンデレ執着に変化する美形の弟✕平凡な兄です。兄弟、ヤンデレなので、地雷の方はご注意下さいm(__)m
愛され少年と嫌われ少年
透
BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。
顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。
元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。
【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】
※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる