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幼年期
3、準ヨウキャラ─本庄 澪
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「あー!?宇宙人だ!」
うるさっ。そして仮にも二年ぶりの再開の初言がそれかよ…。
「え、宇宙人?また何言ってるの?れい」
車イスの後ろから僕より少し歳上にみえる少女が身を乗り出してこちらを見る。その隣に同じ様にこちらを覗き込む小さな影が一つ。
「ハヅキ!宇宙人だよ!さいとうじんっていう宇宙人!」
〔お?なんだ、ちゃんと名前覚えてくれてたのか〕
…ってそこじゃないぞ僕!そしてれい!見ず知らずの人の前で宇宙人呼ばわりするのはやめろ!!そこまで考えたところでハヅキと呼ばれた少女の右手が閃いた。
「ぬわぁいたぁっ!!」
どこから取り出したのか、ハヅキが大きめの絵本でれいの頭をべしっと叩いた。
「もう、宇宙人じゃなくてちゃんと人間の男の子じゃない!お友だちには優しくしないとダメっていつもいってるでしょ!」
「はーい…ごめんなさーい…」
─なんだと!?あれを手懐けているだと!?ハヅキ…一体何者だ…
「えーっとー、じんくんだっけ?れいがいきなりごめんね!はじめまして!桐島葉月です!」
絵本を車イスの後ろに掛かるトートバッグにしまうと僕の方へ向き直り、ハキハキと元気よく言った。僕は軽く会釈をするとポケットからメモ帳とペンを取り出し葉月に駆け寄る。
〔よろしくはづき!ぼくはさいとうじん れいのいとこだよ〕
「じん、あなた…しゃべれないの?」
コクコクと二度頷く。
「え、宇宙人しゃべれなくなっちゃったの?」
れいの質問に再度コクコクと二度頷く
「れい、『なっちゃった』って、じんくん前はしゃべれてたの?」
「うん、そーだよ!すっごい前だけどそのときはしゃべってた」
そこまで聞くと葉月は僕の目をじっと見据え、ゆっくり僕の頭を撫でた。心の底からいたわるような暖かい眼差しが僕の心へも注がれているような気がする。
「あー!ズルい!れいも!れいも!」
…やかましい奴だなぁ、本当に。そう思ったところで再度葉月が絵本でれいの頭を叩いた。
その年の十一月、僕はれいと同じ小学校の入学試験を受けたが不合格になり、四月に地元の小学校へ入学した。僕がかわり映えしない学校生活をおくっている間にもれいは病気と戦い続け、僕が小学五年生になった頃にれいは白血病に打ち勝ち退院した。病院には院内学級というものがあり、れいはそこへ在籍して勉強していたため退院後は僕と同じ小学校の一つ上の学年、六年生のクラスへ転入することができた。元々運動が好きだった彼女は男子達に混ざってサッカーをやったり、髪型もボーイッシュであったため女子のくせに女子にモテていた。それだけでなく、驚くことにれいは勉強も出来た。転入早々の定期試験で学年一位の成績をとりそのまま難なく小学校を卒業し、中学はまた受験をして私立の中学校へ入学した。受験といっても進学校ではなく、全校生徒数が190人程の言わば《面倒見の良さ》を売りにしている学校だったこともあり、れいが入学した翌年僕も同じ中学校へ入学した。
僕らの中学校生活は散々なものだった。僕は声が出ないことをからかわれ、感染すると話せなくなるという設定の《無音菌》扱いは日常茶飯事。明るい性格の澪でさえ、病気を患っていたことがどこかからか漏れ、尾ひれがついて噂として広まり心無い奴らから酷い扱いを受けていたらしい。─しかし僕はある日、僕とれいの差が圧倒的なものだということを知ることになる。
澪が二年生になったときの前期期末テスト期間のことだった。連日の暑さで元々病弱なれいは体調を崩し期間内にテストが受けられず、他の生徒が休校になっている時間帯にテストを受けた。休み明けにテストの結果の総合順位の上位十名程が教室の窓に張り出される。名前が載った生徒やその友達がわいわい騒いでいるが、翌日になればその騒ぎもおさまる─はずだったのだが、二年生だけはそうはならなかった。何故なら翌朝、二位と三位の名前の間の余白に新たな細い紙が貼られていたのだ。《二位─本庄 澪》順位表の下にはこんなことまで書かれている。《事情により後日実施した試験の結果の採点・集計が終了しました。これにより順位に変動があった為、順位表を修正致します。》生徒たちの大半は素直に称賛の声をあげた─一人を除いて。その一人とは、澪の名前が表に載ったことで順位が十位から十一位に落ち表から名前を消した《河本櫻子》だった。櫻子は《陽キャラ》や《陰キャラ》等という誰が決めるのかも定かではない下らないものにすがり、《陰キャラ》の生徒たちを蔑み《陽キャラ》のメンバーに必死に入ろうとしているのだがその《陽キャラ》の中のリーダー的存在の奴からは仲間として見て貰えていないという、端から見たらなかなかに可哀想な奴だった。ここから先は、当時澪や櫻子と同じクラスだった先輩から聞いた話なのだが、HRを始めるために担任の教師を待っている時のこと─
「澪ってさー、陰キャラだよね」
突如、教室全体に響く音量で櫻子が澪に話しかけた。
「…そうなんだ?それで?」
「ほら、今だって何だか知らないけどうつ向いて本読んでさーそういうところが既にもう陰キャラ」
櫻子は満足げに鼻を膨らませながら言った。
「あぁ…そう。え、だから何?」
「なんでもないよ。陰キャラだねって。それだけ」
櫻子は踵を返し澪に背中を向ける。《陽キャラ》のリーダーも、その他も生徒もクスクスと笑う。そのとき
「ならこっちも言わせて貰うけど」
澪が櫻子の背中に声をかける。他の生徒は状況を観察しようと黙る。
「…なに?」
「私はインキャラなんて称号なんてどうでもいいし、そんなものになった覚えはない。好きなこと気ままにやってるだけだし。それに、例え"インキャラ"が蔑まれるようなものだとしても、長い人生で考えればたっっった三年間。これっぽっっちの小さななもの。私から言わせると、そんな小さなもののために"ヨウキャラ"にしがみついて、自分がしたいことさえも自由に出来ない人の方が、よっぽどカッコ悪いと思うけど?」
《陽キャラ》のリーダーや幹部格の奴らも含め、クラス全員がクスクス笑いだした。笑われているのが澪ではなく自分だということが分かると、櫻子は顔を耳の先まで真っ赤にしながら自分の席へ戻った。すると先生が教室に表れ、HRをはじめた。
翌日から澪の生活は変わった。元々明るい性格だったこともあいまって、一夜にして《陰キャラ》から《今までの陽とはひと味違う陽キャラ》へと変貌を遂げたのだ。友達も一気に増え、体調をくずして大会そのものには参加出来なかったにしろ、球技大会ではキャプテンも任されるようになったり、当選はしなかったが生徒会長へも推薦されるようにまでなったのだ。ボーイッシュな髪型だったため知る人は少なかったが中々の美人に成長していて、僕の学年も含め男子の間では密かな《噂の人物》にもなっていたのだ。後輩が増えると澪の人気は男子だけに留まらず、女子からも人気を得てゆくようになっていった。─僕は、相も変わらず《無音菌》であり続けているにも関わらず。
うるさっ。そして仮にも二年ぶりの再開の初言がそれかよ…。
「え、宇宙人?また何言ってるの?れい」
車イスの後ろから僕より少し歳上にみえる少女が身を乗り出してこちらを見る。その隣に同じ様にこちらを覗き込む小さな影が一つ。
「ハヅキ!宇宙人だよ!さいとうじんっていう宇宙人!」
〔お?なんだ、ちゃんと名前覚えてくれてたのか〕
…ってそこじゃないぞ僕!そしてれい!見ず知らずの人の前で宇宙人呼ばわりするのはやめろ!!そこまで考えたところでハヅキと呼ばれた少女の右手が閃いた。
「ぬわぁいたぁっ!!」
どこから取り出したのか、ハヅキが大きめの絵本でれいの頭をべしっと叩いた。
「もう、宇宙人じゃなくてちゃんと人間の男の子じゃない!お友だちには優しくしないとダメっていつもいってるでしょ!」
「はーい…ごめんなさーい…」
─なんだと!?あれを手懐けているだと!?ハヅキ…一体何者だ…
「えーっとー、じんくんだっけ?れいがいきなりごめんね!はじめまして!桐島葉月です!」
絵本を車イスの後ろに掛かるトートバッグにしまうと僕の方へ向き直り、ハキハキと元気よく言った。僕は軽く会釈をするとポケットからメモ帳とペンを取り出し葉月に駆け寄る。
〔よろしくはづき!ぼくはさいとうじん れいのいとこだよ〕
「じん、あなた…しゃべれないの?」
コクコクと二度頷く。
「え、宇宙人しゃべれなくなっちゃったの?」
れいの質問に再度コクコクと二度頷く
「れい、『なっちゃった』って、じんくん前はしゃべれてたの?」
「うん、そーだよ!すっごい前だけどそのときはしゃべってた」
そこまで聞くと葉月は僕の目をじっと見据え、ゆっくり僕の頭を撫でた。心の底からいたわるような暖かい眼差しが僕の心へも注がれているような気がする。
「あー!ズルい!れいも!れいも!」
…やかましい奴だなぁ、本当に。そう思ったところで再度葉月が絵本でれいの頭を叩いた。
その年の十一月、僕はれいと同じ小学校の入学試験を受けたが不合格になり、四月に地元の小学校へ入学した。僕がかわり映えしない学校生活をおくっている間にもれいは病気と戦い続け、僕が小学五年生になった頃にれいは白血病に打ち勝ち退院した。病院には院内学級というものがあり、れいはそこへ在籍して勉強していたため退院後は僕と同じ小学校の一つ上の学年、六年生のクラスへ転入することができた。元々運動が好きだった彼女は男子達に混ざってサッカーをやったり、髪型もボーイッシュであったため女子のくせに女子にモテていた。それだけでなく、驚くことにれいは勉強も出来た。転入早々の定期試験で学年一位の成績をとりそのまま難なく小学校を卒業し、中学はまた受験をして私立の中学校へ入学した。受験といっても進学校ではなく、全校生徒数が190人程の言わば《面倒見の良さ》を売りにしている学校だったこともあり、れいが入学した翌年僕も同じ中学校へ入学した。
僕らの中学校生活は散々なものだった。僕は声が出ないことをからかわれ、感染すると話せなくなるという設定の《無音菌》扱いは日常茶飯事。明るい性格の澪でさえ、病気を患っていたことがどこかからか漏れ、尾ひれがついて噂として広まり心無い奴らから酷い扱いを受けていたらしい。─しかし僕はある日、僕とれいの差が圧倒的なものだということを知ることになる。
澪が二年生になったときの前期期末テスト期間のことだった。連日の暑さで元々病弱なれいは体調を崩し期間内にテストが受けられず、他の生徒が休校になっている時間帯にテストを受けた。休み明けにテストの結果の総合順位の上位十名程が教室の窓に張り出される。名前が載った生徒やその友達がわいわい騒いでいるが、翌日になればその騒ぎもおさまる─はずだったのだが、二年生だけはそうはならなかった。何故なら翌朝、二位と三位の名前の間の余白に新たな細い紙が貼られていたのだ。《二位─本庄 澪》順位表の下にはこんなことまで書かれている。《事情により後日実施した試験の結果の採点・集計が終了しました。これにより順位に変動があった為、順位表を修正致します。》生徒たちの大半は素直に称賛の声をあげた─一人を除いて。その一人とは、澪の名前が表に載ったことで順位が十位から十一位に落ち表から名前を消した《河本櫻子》だった。櫻子は《陽キャラ》や《陰キャラ》等という誰が決めるのかも定かではない下らないものにすがり、《陰キャラ》の生徒たちを蔑み《陽キャラ》のメンバーに必死に入ろうとしているのだがその《陽キャラ》の中のリーダー的存在の奴からは仲間として見て貰えていないという、端から見たらなかなかに可哀想な奴だった。ここから先は、当時澪や櫻子と同じクラスだった先輩から聞いた話なのだが、HRを始めるために担任の教師を待っている時のこと─
「澪ってさー、陰キャラだよね」
突如、教室全体に響く音量で櫻子が澪に話しかけた。
「…そうなんだ?それで?」
「ほら、今だって何だか知らないけどうつ向いて本読んでさーそういうところが既にもう陰キャラ」
櫻子は満足げに鼻を膨らませながら言った。
「あぁ…そう。え、だから何?」
「なんでもないよ。陰キャラだねって。それだけ」
櫻子は踵を返し澪に背中を向ける。《陽キャラ》のリーダーも、その他も生徒もクスクスと笑う。そのとき
「ならこっちも言わせて貰うけど」
澪が櫻子の背中に声をかける。他の生徒は状況を観察しようと黙る。
「…なに?」
「私はインキャラなんて称号なんてどうでもいいし、そんなものになった覚えはない。好きなこと気ままにやってるだけだし。それに、例え"インキャラ"が蔑まれるようなものだとしても、長い人生で考えればたっっった三年間。これっぽっっちの小さななもの。私から言わせると、そんな小さなもののために"ヨウキャラ"にしがみついて、自分がしたいことさえも自由に出来ない人の方が、よっぽどカッコ悪いと思うけど?」
《陽キャラ》のリーダーや幹部格の奴らも含め、クラス全員がクスクス笑いだした。笑われているのが澪ではなく自分だということが分かると、櫻子は顔を耳の先まで真っ赤にしながら自分の席へ戻った。すると先生が教室に表れ、HRをはじめた。
翌日から澪の生活は変わった。元々明るい性格だったこともあいまって、一夜にして《陰キャラ》から《今までの陽とはひと味違う陽キャラ》へと変貌を遂げたのだ。友達も一気に増え、体調をくずして大会そのものには参加出来なかったにしろ、球技大会ではキャプテンも任されるようになったり、当選はしなかったが生徒会長へも推薦されるようにまでなったのだ。ボーイッシュな髪型だったため知る人は少なかったが中々の美人に成長していて、僕の学年も含め男子の間では密かな《噂の人物》にもなっていたのだ。後輩が増えると澪の人気は男子だけに留まらず、女子からも人気を得てゆくようになっていった。─僕は、相も変わらず《無音菌》であり続けているにも関わらず。
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