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凛の話2

晩御飯

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お肉をフライパンに並べて火をつけた。昨日の残りのあげの味噌汁を温め直す。その間にカプレーゼを作った。晩御飯が出来上がった。トレーに乗せて運んでいく。

「お水飲んでないだろ?凛」

「ありがとう」

私は、龍ちゃんに水を差し出されて飲んだ。

「うまそう」

「うん」

ダイニングテーブルに、晩御飯を並べた。

『いただきます』

向かい合わせで、食べる。二人きりのご飯。誰か教えてくれない?結婚しても赤ちゃんは出来ないのよって!そんな人生もあるのよって!誰も教えてくれなかった。二人で生きてく人生なんて誰も…。

「凛、泣いてるの?」

「ごめんね…」

「やっぱり辛かったんだよな!昨日の話」

「まあ、それなりにね」

「俺、話聞くから」

「うん、ありがとう」

「二人でこれからも乗り越えような」

「うん、冷めちゃうから食べて」

「うん」

カチャカチャとお肉を切る音を立てたり、お味噌汁飲む音が響くだけだった。美味しいけれど、空しい。いつになったら、この感情は消える?いつになったら、報われる?赤ちゃんだけが、全てじゃないと言う人もいるけれど…。こんなに願っている私に、その言葉を言う人がいるのだろうか?二人で生きてく人生も素敵よって言うなら、二人で生きてみてから言ってくれと思ってしまう。隠居老人のような生活と苦痛と絶望だけの交わり。二人で生きてく人生が素敵なのは、どのへんだろうか?
私は、龍ちゃんに申し訳ない気持ちに押し潰される。子連れを見た時、芸能人の出産のニュースを見た時、親戚に会った時、龍ちゃんの職場の人が子供を産んだ時、友人が子供を授かった時…。龍ちゃんも、同じ様に傷ついて落ち込んでるのがわかる。だからこそ、触れないように話さないようにもした。こんなに龍ちゃんと一緒に居たくて愛してるのに、こんなに苦しくて悲しい。

「お団子食べるから、ご飯おかわりしないでおきなよ」

龍ちゃんの言葉で、我に返った。

「しないよ!」

「今日、ご飯少なめだったから…」

「お団子食べるからだよ」

「やっぱり」

赤ちゃんの話しに触れなければ、私達はうまくやっていけてる。

「どっちも食べたいから」

「みたらし団子とあん団子?」

「そう」

「それで、ご飯少なめか」

「そうだよ!」

「最近、家で鍛えてるもんな!凛」

「おばちゃん体型脱出しなくちゃ」

「どうせなら、世界一綺麗な夫婦目指すか」

「子供いて綺麗な人いっぱいいるよ!いなくて綺麗なのは当たり前だよね」

龍ちゃんは、私の言葉に私の手を握りしめる。

「凛、当たり前じゃないよ!赤ちゃん欲しいのは、俺も同じだよ。でも、二人で生きてく方法も手探りでも見つけよう」

そう言われて、頷いた。手探りで見つけた所で、私は愛人を作ろうとしている。そして、すでに龍ちゃんを裏切っているのだ。
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