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凛の話2

寝よう

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私は、温いお茶を飲み干してお皿を下げた。カチャンカチャンと音を立てながらお皿を洗う。不倫は悪だと思っていた日々が懐かしい。不倫が、自分を救う日が来るなんて思いもしなかった。お皿を洗い終わって、歯を磨いて寝室にやってきた。

スヤスヤと眠る龍ちゃんの隣に寝転んだ。シングルベット別々に寝ていたくせに…。もう一度、新婚の頃みたいに一緒に寝た方がいいかもしれないよなんて話して、シングルベットを処分してダブルベットに変えたのは三年前だった。結局、同じように寝た所で私の体の問題だから関係なかったのだ。

「凛」

突然名前を呼ばれて、龍ちゃんは私を抱き締めてきた。

「凛……行かないで」

ギュッーと引き寄せられる。龍ちゃんの顔が近い。どう見たって眠っているから、寝言だ。私がいなくなる夢でも見ているのだろうか?

「龍ちゃん、愛してるよ」

本当に、愛してる。私は、龍ちゃんにしがみついて目を閉じた。愛だけじゃ駄目だって教えてもらえたら、私はもっと早くに龍ちゃんとさよなら出来たのに…。

ピピピピ……。

「うーん」

「おはよう、凛」

「おはよう、龍ちゃん」

目覚まし時計の音で、目が覚めた。

「まだ、寝てていいよ!朝御飯買ってくから」

「起きるよ」

「本当に?」

龍ちゃんは、朝から私をギュッーと抱き締めてくる。

「寝起きで、チュッーはヤバい」

「歯磨いたら、しようか?」

「馬鹿」

「愛してるよ、凛」

愛されてるのが辛い。

「ありがとう、龍ちゃん」

龍ちゃんは、起き上がって部屋を出て行った。龍ちゃん、私を嫌いになっていいんだよ。私は、ゆっくり起き上がった。泣きそうだ。
私が洗面所についた頃には、龍ちゃんはもう何もかも終えていた。

歯を磨いてると龍ちゃんが後ろから私を抱き締めてきた。鏡越しに目があった。

「昨日さ、怖い夢みたんだ!凛がいなくなっちゃう夢。死ぬとかじゃないんだよ!別の人の所に行っちゃうの」
恐ろしい程の正夢を見ているではないか…。私は、鏡越しに龍ちゃんを見てる。

「浮気してもいいから、捨てないでね」
ギュッーと抱き締められる。私は、うがいをする。

「してもいいの?」

「それは、仕方ないから!赤ちゃん出来ないから…」

龍ちゃんは、そう言って私を自分の方に向けさせた。

「赤ちゃん出来ない事が、凛にとってどれだけ苦痛かわかるから…。だから、浮気していいから…。俺を捨てないで」

「龍ちゃん」

龍ちゃんは、そう言うとキスをしてきた。朝とは思えない程の濃厚なキスをしてくる。私の気持ちを何かしら感じ取っているのがわかる。
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