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凛の話9

泣かないで

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私は、タクシーで理沙ちゃんの元にやってきた。

ピンポーン

「凛ちゃん」

顔を見た瞬間に、涙が溢れる。

「入って」

理沙ちゃんは、家にいれてくれた。私は、リビングにあるソファーに座らされる。

「理沙ちゃん、理沙ちゃん」

私は、理沙ちゃんにしがみついて泣く。

「凛ちゃん、大丈夫!大丈夫だから…」

優しく背中を擦ってくれる。

「私、私ね。あー、あー」

うまく言葉が話せなくて、喉が詰まった感じがする。

「凛さん、大丈夫だよ」

凛君が、私の手を握りしめてくれてる。もう、拓夢に触れられない。会えない。そう思うと、悲しくて辛くて堪らない。

「凛ちゃん、いっぱい泣いていいんだよ」

理沙ちゃんが、頭を撫でてくれる。

どれだけそんな風にしてたかな?気づいたら、私は泣き疲れて眠っていた。目が覚めたら、みんなが私の近くで眠っていた。私は、ソファーから起き上がった。

「起きちゃった?」

まっつんさんが、起きていた。

「理沙ちゃんと凛君寝たんですね」

「ああ、一緒に泣いてたから」

私は、お水をもらった。

「すみません。大人気なくて」

「別に」

「もう、拓夢には会えないと思ったら、泣いちゃってました」

「そう」

「馬鹿ですよね!不倫なのに…」

「別に、いいんじゃない」

まっつんさんは、そう話しながらビールを飲んでいた。

「そうですかね」

「拓夢に会いたいの?」

私は、その問いかけに答えられずにいた。

「わからない?」

私は、ゆっくり頷いた。

「そっか」

まっつんさんは、遠い目をしながら話し出す。

「凛さんが、カラオケBOXにやってきた日に、拓夢が言ったんだよ!凛さんとこれから先も一緒にいる為に、メジャーを目指したいって」

「はい」

「俺、不倫だってわかってるけど応援したいって思ったんだ」

「はい」

「だけど、さすがに…。美紗ちゃんと居たの聞いてドン引きだわ」

そう言って、まっつんさんは頭を抱える仕草をする。

「拓夢は、例えどんな事があっても凛さんを信じてるって思ってたから…。だから、俺は許せなかった」

「どういう事ですか?」

「拓夢に、凛さんに二度と会うなとか言っちゃったんだ!ごめん。凛さんの気持ち考えないで」

「ううん」

「だけど、酷いって思ってさ!やっぱり、俺は許せなかった」

そう言って、まっつんさんは申し訳ない顔で私を見つめる。

「私なんかの為に、そんな風に思わせてごめんなさい」

私の方が、申し訳なくて頭を下げる。

「そんなのいいよ!ただ、俺が会うなって勝手に決めただけだから…。もしも、凛さんが拓夢に会いたいなら反対はしないから…」

私は、まっつんさんの目に嘘はつけなくて、

「傘だけは取りに行きたいかな」と話していた。

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